【求人】ものづくりの可能性に挑戦する「白河だるま地域おこし協力隊」を募集

福島県白河市 地域おこし協力隊

福島県の南部に位置する白河市は、かつて奥州三関の一つ白河の関が置かれ、「みちのくの玄関口」と呼ばれた歴史ある街。あの渋沢栄一も敬愛してやまなかったという松平定信ゆかりの小峰城(白河城)や、日本最古の公園と言われる南湖公園もあり、文化の香りが色濃く感じられます。近年はご当地グルメ「白河ラーメン」が人気となり、ラーメンの街としての認知度も急上昇。東京駅から新幹線で1時間15分とアクセスの良さも魅力で、移住先としての注目度も高まっています。


白河市のシンボル 小峰城

そんな白河市のシンボルといえば「白河だるま」。江戸時代に松平定信が、城下の繁栄のために広めたのが始まりとされ、現在はふたつの工房が伝統を受け継いでいます。
今回はそんな「白河だるま」の未来を担う地域おこし協力隊を募集します!

 

白河だるま伝統をアップデートする

今回、募集する地域おこし協力隊には、「佐川だるま製造所」にて、だるま製造の基礎的な技術を習得していただきながら、自らのアイディアによるオリジナルデザインのだるま創作や、白河だるまに関する情報発信、PR活動、イベントの開催等を通じて白河だるまの新たな価値の創造に携わってもらいたいと考えています。「佐川だるま製造所」は江戸後期の創業。代々家業として、だるまの製造を行ってきました。13代目の佐川理沙さんも幼い頃からだるまに親しみ、高校生の頃にはすでに職人として手伝っていたそう。現在工房で働いているのは主に女性の7人です。「佐川だるま製造所」ではだるまの原型に貼る和紙作りも手がけ、紙すき、下塗り、赤塗り、絵付けとさまざまな工程を分業で行っています。

 

絵付けの作業

紙漉きの作業

佐川さん「どの作業も手を抜くと次に響いてしまうので緊張感があります。絵付けは同じものをいくつも仕上げるのでスピードも大事。50年描いていた祖父も自信を持って『これだ!』と思える絵が描けたことはないと言っていましたから、ずっと修行ですよね。だから続けられるんだと思います」

「白河だるま」の特徴はまゆに鶴、ひげに亀、あごひげは松でびんひげは梅、顔の下には竹と縁起物の象徴が全体にあしらわれていること。デザインは江戸期の著名な絵師・谷文晁が行ったとされており、いずれも寒い季節に節を伸ばす植物であることから、強くいられるようにと願いが込められています。お腹には大きく「福」や「宝」の文字。顔周りの唐草模様には「芽がたくさん出るように」との意味があるそう。「人生の節目や思いを新たにするときに購入する方が多いですね」と佐川さん。最近は、応援したい人に向け、お守りとして贈られることも増えました。誰かの人生にそっと寄り添い、見守ってくれる存在として大切にされてきたようです。

「ダルライザープランニング」代表・和知健明さん

ご当地ヒーロー「ダルライザー」として、市のPRやイベント出演、映画製作など幅広く活躍する和知健明さんも「白河だるま」に背中を押されたひとり。トレードマークの赤い衣装はだるまをイメージしています。「最初は身近すぎて気づかなかったんですよね(笑)」と話すほど、白河の人にとってだるまは当たり前にあるもの。しかしそれだけ馴染んでいたら、キャラクター化の声に反対も多かったのでは?

和知さん「特にありませんでしたよ。今は伝統的でありながらも、いろんなアイデアを出してだるまをアップデートしていきたいと考えている作り手や愛好家の方も多いんです」

見れば、「佐川だるま製造所」の店先にも戦国武将の甲冑を着たものやアマビエ柄など、ユニークなだるまがずらり。お客さんからのリクエストに応じてオーダーメイドすることもあり、伝統の枠におさまらないだるま作りを実践しています。ちなみに佐川さんも趣味のフラダンスをモチーフにしただるまを作ったことがあるそう。

佐川さん「好きなものや得意なものと、だるま作りを掛け合わせることで新しいものが生まれると思うんです。協力隊になる方にもどんどん自分のアイデアを投影してほしいですね」

「佐川だるま製造所・佐川理沙さん

先行して配属されたもうひとりの白河だるま協力隊は、映像を学んだ経験を活かしPR動画の製作を精力的に行っているとのこと。今回、協力隊は和知さんが代表を務める「ダルライザープランニング」(http://www.dharuriser.com/about/)に所属することになるため、だるま作りの空き時間には和知さんが街を案内してくれたり、今後の相談にのったりもしてくれるそう。ヒーローがバックアップしてくれるなんて、こんなに心強いことはありません!

佐川さん「たとえ不器用でも、コツコツ努力できれば上達していくのがものづくり。失敗にめげず粘り強く取り組める人には向いています。白河だるまを未来につなぐためにも、だるまに関わる一員になってくれたらうれしいです」

和知さん「ヒーローで言えばウルトラマンや仮面ライダーもいろいろ進化している一方、初代は今でも愛されていますよね。裾野が広がっていくのは伝統を残していくためにも必要なことではないでしょうか」

ものづくりの技を継承しながら、自らのアイデア次第で新たな世界を広げていけるのが今回の「白河だるま地域おこし協力隊」の魅力。きっと自分らしいクリエイティブな力を発揮できる場所になるに違いありません。

 

思いをかたちにしやすい街・白河市

取材当日、市内東地区にて、白河だるまのワークショップが行われていると聞き、訪ねてみました。会場となったコミュニティスペース「温室」にはオリジナルのだるま作りに挑戦する親子連れの姿が。講師を務めていたのは理沙さんの母の明子さん。夢中になって和紙を貼る子どもたちの表情に、ものづくりの楽しさが浮かんでいました。

ワークショップで子供たちにレクチャーする佐川明子さん

イベントを企画したのは、白河市地域おこし協力隊の久野宏さん。1年半前に赴任し、市内の東地区をフィールドに地域を盛り上げる活動を行っています。実は、会場となった「温室」を立ち上げた張本人。もとは倉庫だったスペースを大学生たちの力を借りながらリノベーションし、毎週土曜にコミュニティスペース兼休憩所として開放しています。現在は地域住民の意見をもとに、活用法を模索している真っ最中。そもそもなぜ「温室」という名前なのでしょうか?

久野さん「この場所を使っていろんな取り組み、つながりが育まれていくようにという思いで名付けました。建物自体もガラス張りで温室っぽいんですよね」

もともとWeb業界で働いていた久野さん。移住先を探す中で白河市を訪れた際に、住民の方々と仲良くなり、地域おこし協力隊に志願しました。折しもコロナ禍の赴任となり、予定していた都内でのイベント等は開催できませんでしたが、「温室」というかたちで“人が集まる場づくり”という目標が叶ったことは成果のひとつです。

「地域や市のフォローアップのおかげです。こんなに活動に協力的な自治体も珍しいんじゃないかなと思うくらいです(笑)」

白河市地域おこし協力隊の久野宏さん

白河市には久野さんを含め、3名の地域おこし協力隊が在籍していますが、
市の担当職員がそれぞれと頻繁にコミュニケーションを取り、活動について相談し合っているほか、協力隊同士もミーティングを行うなど風通しのいい関係を築けているそう。この日のワークショップも市の後援で行われていました。「久野さんのようにどんどん地域の人とつながって、私たちが思いつかないようなイベントをかたちにしてもらえるのはとてもありがたいです。協力隊を目指す方には、だるま作りはもちろんぜひいろいろなアイデアに挑戦してほしいですね」と市役所の塚野さん。協力隊の活動をバックアップする体制は万全と言えそうです。

久野さん「白河は思いをかたちにしやすい場所。何か仕掛けたいという野望のある人に来てもらえたら心強いです。街自体の知名度はまだまだこれからなので、そういったところのPRも一緒にやっていきましょう!」

ミッションの枠を超えてイベントを企画したり、連携プレーで地域を盛り上げたいと語る久野さん。生き生きと活動する先輩がいてくれることは、実際に赴任した後も大きな励みとなるはず。ものづくり以外の活動をするチャンスにも恵まれそうです。

 

伝統を未来へつなぐために

“伝統”と聞くと昔のままの堅苦しい世界を想像しがちですが、白河だるまを取り巻く状況はいい意味でフラットで挑戦する人を受け入れる土壌があるように感じました。いつの時代も未来を切り拓いていくのは、思いもよらないアイデアや変化に柔軟に対応する感性。白河だるまの300年に及ぶ歴史の中にも、そんな転換点はいくつもあったに違いありません。ここから先に進んでいくためにも、新たな可能性を掘り起こしてくれる力が求められています。
地域の誇りを次世代につなぐものづくりに興味がある方、伝統産業に携わってみたいという夢をお持ちの方からのご応募をお待ちしています。

 

(文:渡部あきこ 写真:高橋由香)

 

                   
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