地域おこし協力隊リレーTALK Vol.37
​「不思議な縁に導かれ、東栄町での活動を開始 」

愛知県 東栄町 現役隊員
青木彩乃さん 

 

活動内容:ビューティーツーリズム推進、情報発信など

メイクアップアーティストを目指し、名古屋市でヘアメイクサロンなど美容業界で勤めていたという青木彩乃さん。 

昔から開発途上国の課題解決に関心があり、大学の在学中にピースボートで世界を一周しました。80日間で約20カ国を巡ったのですが、実際に開発途上国を訪れ、その現状を目の当たりにして自分の手で何かを変えられるほど貧困問題は甘くないと無力さを痛感しました。」 

その旅の最中船の中でファッションショーが開催された。モデル、観客、そしてメイクアップをするのも全て旅客だ 

旅で立ち寄ったカナリア諸島のラスパルマスで購入した50色ほどのメイクのパレットで初めて自分以外の人にメイクをしてあげたらとても喜んでもらいました。その経験がずっと心に残っていました。」 

青木さんはその経験から、「人を輝かせることが自分の喜びにもつながることに気づいたというそこから、大学卒業後にメイクアップスクールへ通い、約8年間メイクの仕事をして経験を積んできた。そんな青木さんには、同じ旅で発見した目標があったという。 

「南米のグアテマラを訪れた時に出会ったウィピルという鮮やかな民族衣装がとても素敵でした女性の自立支援活動にも興味があったので現地の女性たちが作る手織りや刺繍をアレンジして日本で販売し、作り手の人たちが豊かになるような活動ができないかと思いました。」 

青木さんは自分の気持ちが本物かどうかを確かめるため、その後もグアテマラを訪れて様々な場所を見て回るなどしながら、活動への思いを深めていった 

「グアテマラで頑張ろうと気持ちが固まり実行に移そうとしたときに新型コロナウイルス感染症拡大の影響で海外へ行くことが難しくなりました。そうしたときにたまたま求人で、東栄町の地域おこし協力隊の募集を知りました。その募集で東栄町が美を通した地域づくりをしていることを知り挑戦してみたいと思いました。母と一緒に東栄町を訪れた際には、観光協会の方からもぜひ来て欲しいと声をかけていただきました。」 

そこからは話がとんとん拍子で進んだ東栄町は青木さんにとって特別な縁がある場所だったという 

「実は、母も1年間ボランティアとして、東栄町にほど近い旧富山村(現・豊根村)で山村留学のサポート活動をしていました。そこで教員をしていた父と出会ったそうです。不思議な縁を感じましたし、自分が求められているところで挑戦してみたいという気持ちが芽生えました。」 


ビューティーツーリズムに関わる仲間たちと(真ん中が青木さん)

 

イベントを仕掛け、ビューティーツーリズムを促進 

青木さんの協力隊としての主な活動内容は、東栄町が推進するビューティーツーリズムの発信だ。東栄町はファンデーションの原料となる「セリサイト」という鉱物を日本で唯一産出している土地でもあり、この資源の活用に力を入れている。 

「1年目は地元の方や観光客の方と一緒に、このセリサイトを活用したミネラルファンデーション作りをする手作りコスメ体験 naoriの講師などを務めました。また、ビューティツーリズムの促進ということで、ブランドロゴを作ったり、コンセプトを固めたりと多岐に渡ってさまざまな業務を担当しました。」 

2020年11月には「BEAUTY TOURISM WEEK」を実施。五感で自然や文化を感じ、自分の中にある本来の美に出会う体験ができるという5日間のイベントだった。 

30年前に使われていた旅館でのヘアメイク体験や森林散策地域の花祭をテーマにした切り絵を地元の人に教わる体験など様々なイベントを実施しました。また、飲食店の方とオリジナルメニューの考案にも取り組みました思いを形にしていくプロセスがとても楽しかったです。これまで経験したことのないことばかりで、手探り状態ではあったのですが、色々な事業さんや、ビューティツーリズムに賛同してくれる大勢の方たちを巻き込んで、やり切った気持ちでした。」 

こうして無事に1年目を終えた青木さんだが、2年目に入り、燃え尽き症候群に陥ってしまったという。 

イベントはいい形で終わったのですが、それまで駆け抜けてきた疲れからか1年目を終え、ふと卒業後のことまで考えたときに、今後どうすればいいのかと悩んでしまいました。」 

一時はこのまま辞めてしまおうかとまで思い詰めた青木さんだったが、新たな目標を見つけたことで思いを新たにした。 

「最終的にはイベントの時に感じられた東栄町の伝統文化や神秘的な空気感をまだ知らない人にちゃんと届けたいなと改めて思いました。私自身が惹かれた綺麗な川や、今後も自分が残していきたいと思っている文化や自然の魅力を発信することを自分の中で突き詰めてみようと覚悟を決めました。」 


元旅館でのヘアメイク体験。ヘアメイク時代の仲間も呼んで行った(写真手前メイクをする青木さん)

 

燃え尽き症候群から立ち直り、森林アロマで新しい試みを

イベント終了後に抱えた思いから深く悩んでいた時に力になってくれたのは、周りの人たちだった。 

思い詰めて辞めたいと観光協会の方に伝えたときは、『一人でいろんな負担を背負わせてしまって申し訳なかったと言ってくださいました町役場の担当の方にも、自分の悩みを打ち明けたところ、『あなたがやりたいことをやったらいいんだと言ってもらいました。思い返せば着任した当初から同じ言葉をかけてもらっていました。地域おこし協力隊のことをあまり知らずに飛び込んだためその名に相応しい活動をしなければいけないといつの間にか自分で追い込んでしまったようです。また、ほかの協力隊の方に会う機会もあって、協力隊の活動内容も十人十色なのだと気付きました。自分はこれまで決められた範囲内で頑張ることは得意でしたが、一から自分で決めて物事を進めることがはじめてだったのでそこに怖さがあったのだと思います。」 

そうして思い悩んだ後に、自分の気持ちを見つめ直して始めたのが森林アロマという新しい活動だった。 

そもそもこの森林アロマは、林業専門の高校に通う女子生徒から『スギとヒノキの間伐材を使って精油を作ったので何かに活用できないか』という話をもらったことがきっかけです地域の素材を使って化粧品を作りたいという思いもありましたし東栄町は森林面積が町全体の9割を占めるという特色を活かしてスギやヒノキ、クロモジの葉を蒸留して化粧水を作るワークショップを催してみてはどうかと考えました私自身も森の植物から精油をつくること蒸留についても勉強しました。その甲斐もあって、東栄町の樹木を蒸留して活用する森林アロマのワークショップが軌道にのり、2年目の活動の中心になっています。」 


地元の人たちがモニター体験する様子 

 

森林アロマブランド「kiyomari」の製品開発にも注力 

こうして青木さんの地域おこし協力隊としての活動は、独自に生み出した森林アロマが中心になった。 

「3年目からは観光協会から森林組合に異動して活動をすることになります。森林アロマという林業にも深い関係のある事業を始めるなら、森林組合にいた方が動きやすいだろうと観光協会の方と町役場の担当者の方が森林組合の方に話をしていただいてまとめてくれました。森林アロマのイベントは、町内でモニター体験を20回ほど実施し、今では名古屋のイベントなどにも呼んでいただいす。また、森林アロマ商品の「kiyomari」という製品開発も進め数量限定で販売して販路を開拓しているところです。」 

これまでは海外ばかりに目が行っていたという青木さんだが、東栄町で暮らすことで、日本の地域の伝統文化や自然の良さを改めて感じたという。
「地域おこし協力隊になっていなかったら、地域に目を向けることもなかったと思います。今後は商品開発やワークショップを続けていくのと同時に林業の現場の情報発信もできればと考えています。林業の世界は、なかなか外からは見えにくい面があるので、わかりやすく伝えていきたいです。」
東栄町に、自分の居場所を見つけた青木さん最後にこんなメッセージをくれた
 

これから地域おこし協力隊に応募する方はぜひ現地に行ってみることをおすすめします。土地と自分との相性がかなり大事だと思うので、現地でフィーリングが合うかを確認してみてください。〝これがやりたいからここにきたという軸を自分の中にしっかりと持っていれば、そこで出会いが広がっていい方向に進んでいくと思います。」


左)間伐材を森林アロマに活用する、林業のメンバーと 右)青木さんが手がける森林アロマ商品の「kiyomari」 

 

愛知県 東栄町 現役隊員
青木彩乃さん 

1991年生まれ。名古屋市で約8年間メイクアップアーティストを目指し、美容業界に勤める。その後、
東栄町が発信するビューティーツーリズムを推進する地域おこし協力隊に着任。東栄町ブランドの商品開発に力を注ぐ一方で、森林アロマのワークショップもスタートし、ますます活躍の幅が広がっている。 

愛知県東栄町地域おこし協力隊:https://www.facebook.com/toeitai/
森林アロマkiyomari https://www.instagram.com/kiyomari__labo/?utm_medium=copy_link 

地域おこし協力隊とは? 

地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に移住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。具体的な活動内容や条件、待遇は、募集自治体により様々で、任期は概ね1年以上、3年未満です。 

地域おこし協力隊HP:https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei

発行:総務省 

 

 

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