豊かな自然と利便性の高さ。
このまちで暮らし、育て、働く。

広島市の西側。

瀬戸内海から中国山地にまで及び、観光地、住宅地、山間部など、さまざまな特性を擁する広島県廿日市市(はつかいちし)。

 

子育て環境を求めて移住し、仕事も充実の一途をたどる左官職人。
温泉旅館を継ぎ、地域にも積極的に関わる若女将。
このまちで、夢を開花させた二人の女性移住者に、廿日市市の魅力を語ってもらいました。

 

左官ママの移住の決め手は、教育環境と住環境。

子どもの頃から大工に憧れていた金澤萌さん。
「ものつくり大学」(埼玉)を卒業後、埼玉を拠点に、24時間体制で左官仕事の経験を積みました。この頃、余った漆喰やタイルなどを使って看板や表札を造るmarumo工房も始めました。

2010年、建築管理の仕事をしている夫との間に、男の子をもうけた金澤さん。
出産後は子どもを保育園へ預け、現場へ出ていました。

2013年、marumo工房を埼玉で正式に立ち上げ独立。
翌年、息抜きの場を持とうと「アトリエLEAD」をオープンし、ものづくりの好きな仲間とイベントグループを作って、全国でワークショップを開催。広島市でもイベントを開催したことで、「東と西に拠点があってもいい」と思うようになりました。

 

ワークショップで制作するかまどのサンプル。固形燃料で加熱することでご飯が炊ける優れもので、金澤さん宅でも使用している

 

仕事が忙しくなるにつれ、「両親に子育てを助けてもらいたい」「子どもが小3になるまでには引っ越したい」と思った金澤さんは、実家のある広島市周辺に新しい拠点を探すことにしました。

廿日市市の空き家バンクを介して今の家を紹介されると、小学校まで徒歩約15分の立地、左官の仕事に必要不可欠な広い倉庫があったこと、そして何より交通の便が良く、金澤さんも夫も関東の仕事を続けられることが決め手となり、すぐに購入を決意しました。

金澤さんと夫は、引っ越す前に時間をかけて仕事の調整をしました。
特に、保守的な職人の世界に生きる金澤さんは、新天地でスムーズに仕事をするため積極的にあいさつをし、人間関係を築いていったそうです。「引っ越す直前、ではなく、前々から段取りをしておくのはとても大切なこと」とアドバイスしてくれました。

 

引っ越してきて半年。
関東と広島、2つの拠点の仕事も順調です。

金澤さんは「岩国錦帯橋空港へは渋滞なしで約50分、駐車場は無料。隔週で関東へ出張する夫も、飛行機移動は本当に楽だと言っています。私も出張が可能になり、工期が長い大きな現場にも行けるようになりました」と話してくれました。

 

日々の生活や子育て環境については、住むほどに良さを実感。車で少し走れば小児科もスーパーもホームセンターもあります。川で魚や亀を、野で虫を採る、自然あふれる環境にも満足。
知り合ったママから「生活しやすいでしょう?子育てにはいいところでしょう?」と言われるのもいいなと感じている金澤さん。
「海も山もあり、何もかもが面白く、ちょうどいいところですよ」と、すっかり廿日市ライフになじんでいます。

廿日市市に移住しマイホームを手に入れたことで、念願の薪ストーブも設置することができた。「薪は乾くほどいいので、あと1年はこのまま乾燥させます」と説明してくれた。

 

現在、広い畑の一部を整備中。
いずれはここで「アトリエLEAD」のようにワークショップを開催したり、地域の人や県外の友人が集う場にしたりしたいと考えています。倉庫にある工具を貸し出し、自由にものづくりが楽しめる「シェア工房」などを計画中です!

子どものためにと決めた廿日市移住でしたが、大好きな仕事を手放すことなく、新天地でさらにすてきな縁を紡いでいる金澤さん。強い気持ちがあれば、距離や住む場所は関係なく、自分らしく生きていけるのだと教えてくれました。

 

利便性と将来性を兼ね備えたまちで、地域交流を深めたい。

東京生まれの東京育ちの檜谷美奈子さんは、旅行会社に勤務していました。
仕事は多忙を極め、通勤ラッシュにもまれ、クタクタになって帰宅し寝るだけの毎日。
遊びに行きたい、ジムに行きたいと思っても、楽しむ気力がありませんでした。

そんな檜谷さんの人生の転機は、1998年に結婚し、夫の実家のある廿日市市の宮浜温泉へ移住したこと。
「廿日市市に来てすぐに、夫の家業である宮浜グランドホテルを手伝うようになりました。半年くらいは、やはり寂しくて、帰りたいと思うこともありました」と振り返ります。

しかし、次第に持ち前の好奇心が湧き上がり、東京時代はできなかったゴスペルやヨガ、異業種交流会などを楽しむように。当時は今と違ってインターネットがそこまで普及していない時代。「まずは行ってみよう」とアクションを起こしてみれば、「廿日市市は、雪山、海、繁華街……どこへも、1時間以内で行ける便利な場所。」と分かったそうです。現在は岩国錦帯橋空港もできて、さらに便利な場所となり、行動範囲も広がりました。

「海と一体になる」と評判の屋上露天風呂。朝は美しい朝焼けと輝く朝日、夜は星空と夜景を見ることができる。

 

子どもが生まれると、豊かな自然と充実した施設の総合公園があるなど、子育てするにも便利な地域だと気付いた檜谷さん。「今の廿日市市では、子どもの数が増えているのを実感します。公立の一貫校もあり、細やかな指導が受けられて、教育環境の充実をうれしく思います」と母親の表情。

また、「大野の人は、秋祭り以外に、年に4・5回はお祭りを楽しんでいます。宮浜温泉まつりでも、『SUP体験』や『まくら投げ世界選手権大会』・『宮島ピンポン選手権大会』などを開催して大盛り上がり。子どもから大人まで、地域の人が交流しにぎわいを創り出しているところがいいですね」と笑顔を見せます。檜谷さんの夫も、週1回旅館組合で集まり、いろんな仕掛けを考えているそうです。

「廿日市市の広さを逆手にとり、地域間がさらに連携していけばいい。」

今では「東京に帰ると疲れ、廿日市市の海が見えるとほっとする」とまで感じる檜谷さん。
「移住を考えるときは、仕事の有無がネックになりますが、宮島やその周辺はいつも人材を募集中。ホテル業界で夢をかなえるのもいいのでは?ぜひ廿日市市で新しい事にチャレンジしてみてください」と移住を考えている人にエールを送ります。

 

「住めば都、といいますが、本当に廿日市市に来てよかったと思っています」。
そんな檜谷さんを見て育ったからか、「子どもが、将来は宮浜温泉を大きくしたいと言ってくれたのは、本当にうれしかった」と教えてくれました。

東京からやってきた若女将は、自らアクションを起こすことで新生活を楽しいものにし、地域の魅力を発見してきました。そのパワーは、温泉旅館や温泉郷周辺、次の世代を担う人たちに伝わって、廿日市市の明るい未来につながっています。

 

ちょうどいいまち廿日市で、充実の子育てライフ。

「廿日市市の子育て支援は、妊娠期から始まっています」と話すのは、廿日市市 福祉保健部 こども課の尾之上陽介さん。

「ネウボラはつかいち」では、妊娠や出産、子育てに不安のあるママたちをそっとサポートし、必要に応じ相談窓口を紹介してくれるので安心。もっと気軽に行政の情報を収集したいママには、子育て支援サイトやアプリ「はついく」もおススメです。

また、子育てを支える施設も充実しています。
働く女性の増加とともに、保育園の入園希望も増えたため、ここ5年で12園、保育園を新設しました。かつての公立保育所の良さと、対応がスピーディーな私立保育所の良さを併せ持った、公私連携型保育所も誕生しています。

 

公私連携型保育所で、ママも園児も笑顔。

今年4月に開園した、社会福祉法人 さくら福祉会 公私連携型保育所 丸石保育園。

前田由美園長は「公私連携型保育所とは、公立・私立保育所どちらの良さも合わせ持つ、新しい保育所のスタイルです。わが園では、働くお母さんの忙しい朝の負担を少しでも減らそうと、使用済オムツの持ち帰りや、名前を書いたビニール袋の持参、ご飯の持参などを廃止。週末に持ち帰りが大変だったお昼寝布団のうち、敷き布団の持参を廃止し『コット』という専用マットを導入しました。園内に併設された給食室で作る、温かい手作り給食は従来のままですが、旬の食材が手に入ったらすぐに調理して提供するなど、柔軟な対応が可能です。これからも、園児さんの健やかな成長を願い、保育士全員でより良い保育所を目指したいです」と話してくれました。

 


食事を楽しむ幼児組さんたち。新しい園舎の2階は明るく開放的で、景色も抜群。

 


この日は旬の栗を使った「栗ご飯」や「豆腐のまさご揚げ」「キャベツのおかか和え」「白菜のみそ汁」がメニューに登場。陶器の食器には、廿日市市の市花、桜が描かれている。

 

安心や確実性につながる事は、積極的にICT化を導入している。登園や降園は、タッチパネルを押すことで漏れなく素早く情報共有される。

 

公立保育園で導入されていた「竹馬」を、丸石保育園でも同様に取り入れて運動会を行った。良いところは引き継ぐのが公私連携型保育所の特徴だ。

(文:門田聖子 写真:堀行丈治)

                   

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