地域おこし協力隊リレーTALK Vol.28
​「航空会社を退職し、故郷にUターンして協力隊に着任」

山口県 山口市 現役隊員
田中美穂子さん 

活動内容:商店街活性化のための企画と情報発信 

客室乗務員として大阪の航空会社に就職、6年間勤務した田中美穂子さん。意欲的に仕事に励んでいたのだが、もともと将来的には故郷の山口に帰りたいという気持ちを抱いていた。

「国内線を運行している会社でしたので、国際線も飛んでみたいという気持ちと、大学で学んだ中国語を活かせればという思いもあって一時は転職も考えました。ただ、27歳になって自分の将来をしっかり考えた時に、山口に帰りたいという思いがかなり強くなりました。そこで山口での仕事探しを始めたのですが、CAよりも自分がワクワクする仕事でないと、会社を辞める決心ができない気もしていました。」

故郷にUターンする気持ちが固まったとはいえ、大好きな仕事を辞める以上は、本当に打ち込める仕事でなければという思いから、田中さんの職探しのハードルはおのずと高くなっていった。

「なかなかピンとくる仕事が見つからなくて、2019年に大阪の梅田にある、やまぐち暮らし大阪支援センターに行きました。そこで紹介されたのが、地域おこし協力隊でした。企業に就職するより、自分のアイディアを活かして活動できるので面白そうだなと思い、興味を持ちました。たまたま前日に山口市の募集が開始されたところで、タイミングもよかったです。」

山口市の地域おこし協力隊のミッションは、山口市中心商店街の活性化だった。高校時代に毎日のように通った懐かしい場所だったこともあり、田中さんの決意は固まる。こうして2020年6月に故郷に戻り、地域おこし協力隊としての新生活が始まった。


電動アシスト自転車で市内を移動する田中さん

 

商店街活性化のため、賑わいの創出に奮闘する毎日

10年ぶりに帰ってきた山口市。田中さんはまちづくり団体に所属し、7つの商店街を集積して名付けられた山口市中心商店街の活性化に取り組むことになる。しかし、商店街の様子は以前と大きく変わっていた。

「以前あった店舗が閉店していたり、シャッターが閉まったままの店舗も多かったです。記憶ではすごく栄えていた場所が、ほぼシャッター街になってしまっていることにショックを受けましたが、新たな賑わいを見せている場所もあって、よし頑張ろうという気持ちになれました。」

商店街活性化に向けて課せられたミッションは、①賑わいの創出、②空き店舗の改善、③情報発信の3本柱だった。

「空き店舗については、同じ団体のタウンマネージャーが主に担当し、私は賑わいの創出を中心に活動することになりました。例えば新規事業者が試験的に出店する〝チャレンジショップ〟や〝まちゼミ〟の開催といったイベント運営などを行っています。特にまちゼミは現在全国の商店街でも盛んに行われていますが、山口市ではさまざまなジャンルの第一人者を招いて講義をしてもらうなど、特に力を入れています。」

田中さんはこれに加えて〝まちなかバル〟や〝シャッターアート〟、〝街歩きツアー〟など、次々に賑わい創出のための仕掛けを行った。情報発信については、タウンマネージャーと手分けする形で、公式サイトとInstagramなどSNSを活用して精力的に実施している。

「着任した当初は自分の未熟さを思い知り、落ち込むこともありました。意気込みだけはあったものの、具体的な企画やアイディアがなかなか思いつかず、行動力も欠如していた部分があったからです。3年間の任期の中で、しっかり結果を残さなければと、気ばかり焦ってしまっていたのだと思います。」


空き店舗のシャッターに絵画を描く〝シャッターアート〟も企画

 

まちづくり団体のスタッフや市役所の全面的なサポートが心地良い

限られた任期ということもあり、いかに大きな功績を残せるか、どうすれば周囲に認めてもらえるか、という思いが先に立って焦っていた自分に気が付いた田中さん。自分の考えた企画が商店街の人たちになかなか理解されないこともあったという。

「結果を出さなければ、という思いに縛られていました。でも、商店街の店主さんたちと話をしていくなかで、私が考えていた〝結果〟というものが、少し違うことに気づきました。来店者数や売上の総額といった、目に見える数字だけが結果ではありません。数字を求めるのではなく、生身の存在である商店街の店主さんたち、一人ひとりに喜んでもらえることをすればいいと考えるようになって、気持ちが楽になっていきました。その後も商店街を隅々まで歩き回り、挨拶を欠かさず、積極的に店主さんたちにお声がけをするようにしました。今では皆さんから食事に誘っていただくことも多く、本当に楽しく活動できています。」

まちづくり団体のスタッフも田中さんを力強くサポートしてくれている。

「タウンマネージャーは私を採用してくれた時の担当者で、元地域おこし協力隊として鹿児島で活動していた経験のある方です。協力隊の活動を熟知していることもあり、全面的に相談に乗ってくれて、本当に助けてもらっています。もう1名は市役所の担当者です。新しい企画の相談や悩み事など、なんでもしっかり話を聞いてくれます。シャッターアートの企画をした際は、プレスリリースの作り方などを具体的に助言してもらいました。市役所には毎日必ず顔を出すのですが、担当者以外の皆さんもしっかりサポートしてくれるので心強いです。」


商店街の店主の皆さんを笑顔にしたいという思いが原動力に

 

より強くなった「人と関わり続けたい」という思い

地域おこし協力隊の活動は、「出会いが多いことが魅力」と語る田中さん。

「商店街の店主さんたちはもちろん、商店街活性化にアドバイスをしてくださる外部の関係者との出会いも多いです。まちゼミの第一人者の方と意見交換させていただいたことも貴重な体験でした。地元の商工会議所主催のイベントでは、非常に幅広い業種の方々とお話ができてとても刺激的でした。CAをしていた頃はこのようなネットワークはありませんでしたし、知らない世界を知ることができたというメリットを強く感じます。地域おこし協力隊になって、人脈が本当に広がりました。」

生活面では、毎朝同じ時間に起きて食事も規則正しくとれるということが、とても有難く感じられるという。

「前職では不規則な生活が当たり前でしたので、毎日三食をしっかり食べられてとても健康的になれましたし、土日に友人に会えることも嬉しいです。“幸せ太り”なのか、体重は少し増えてしまいましたけど、生活が安定してストレスも激減しました。」

今後の活動に向けては、「人と関わり続けたい」という思いがより強くなったそうだ。

「誰かに喜んでもらえて、笑顔にできる仕事をしていきたいです。赤ちゃんの〝ハイハイレース〟を新たに企画したのですが、できれば親子参加型のイベントを今後も開催したいと考えています。任期終了後のプランは未定ですが、山口市に定住することだけは決めています。将来に備えて資格取得のための勉強にも力を入れていて、2021年にキャリアコンサルタントの資格を取りました。また、実家が設計事務所なので、地域おこし協力隊を通じて経験や人脈を活かして、新たに面白いことをしたいという夢も描いています。」


地域の人との交流が深められるのも協力隊の魅力だ

 

​山口県 山口市 現役隊員 
田中美穂子さん  

1991年生まれ。山口県出身。大学卒業後に大阪に拠点を置く航空会社に就職し、客室乗務員として6年間勤務。故郷である山口市へのUターンを決意して退職。2020年6月、山口市の地域おこし協力隊に着任。山口市内の商店街の活性化に尽力している。

山口市地域おこし協力隊:https://www.facebook.com/yamaguchishi.chiikiokoshi/

地域おこし協力隊とは? 

地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に移住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。具体的な活動内容や条件、待遇は、募集自治体により様々で、任期は概ね1年以上、3年未満です。 

地域おこし協力隊HP:https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei

発行:総務省 

 

 

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