地域おこし協力隊リレーTALK Vol.41
​「フリーランスの「熱波師」を経て琴浦町へ移住」

鳥取県 琴浦町 現役隊員
石黒明日香さん

 

活動内容:サウナを起点としたアウトドアツーリズム関連イベントの企画・広報

鳥取県のほぼ中央に位置する琴浦町。日本海と大山に抱かれた、自然豊かなまちである。石黒明日香さんは、2021年に神奈川県からこのまちへ地域おこし協力隊として着任した。石黒さんは、昨今のサウナブームの中で「アウフギーサー(熱波師)」として注目を集める存在であり、「五塔熱子(ごとうねつこ)」の名でも活動している。以前は関東を拠点に、フリーランスの熱波師として全国各地の温浴施設を巡る日々を送っていた石黒さん。そうした経験を活かせる場所を求めて、琴浦町を選んだ 

「2020年、琴浦町の一向平(いっこうがなる)キャンプ場内に、知人がプロデュースを手掛ける『Nature Sauna』が開業しました。その頃私自身は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、熱波師として全国を移動してイベントを巡るライフスタイルに厳しさを感じ始めていました。しかし、関東で9年に渡り活動してきたサウナ関連の仕事と全く関係のない道に進んだとしても、自分自身の技能を活かせないのでは?とも考えていました。そこで、サウナに関連した活動ができる地方自治体について調べ始め、その結果『琴浦町への移住』という答えに辿り着きました。地域おこし協力隊への応募ありきで考えていたわけではありませんでしたが、自分のスキルを活かしつつ、協力隊の制度を活用することで安定して働けるのではと考え、決断しました。」 


琴浦町・一向平キャンプ場にある「Nature Sauna」。石黒さん鳥取移住するきっかけとなった 

 

サウナを切り口としたアウトドアツーリズムの推進に挑む

鳥取県は、2021年9月より新たな観光キャンペーン「ととのう とっとり」を開始した。アウトドアツーリズムという切り口から、観光客に鳥取県の自然や人気スポットを楽しんでもらう新プロジェクトだ。 

「地域おこし協力隊としての活動内容は、『ととのう とっとり』プロジェクトをはじめ、アウトドアツーリズムに関連するイベントの企画・広報です。例えば、朝は琴浦町役場内で会議、日中は町内を回ってイベント運営に必要な各種調整、夕方になると一向平キャンプ場の『Nature Sauna』に出向いて取材・撮影への対応、といった日々を過ごしています。」 

その『Nature Sauna』周辺地区で、地域の人々を招いてテントサウナの体験会を開いたことは着任後一番の忘れられない体験になったという。 

「今までサウナそのものを敬遠していた人たちも皆揃って和気藹々とサウナに入り、アウフグース(熱波)などを体験してもらいました。入浴後は、屋外でサウナストーブを囲み、皆で食事も楽しみました。一向平キャンプ場は、琴浦町の中でもかなり山深い場所に位置していて、豊かな自然と巨木が多く点在するエリアです。山深いが故に、従来は町内の方にすらあまり馴染みがない場所でした。こうした大自然とサウナの掛け合わせで新たな体験ができることを地元の方々にも実感・共感していただけただけでなく、今まで誰も見たことがなかったような新たなツーリズムの題材を発掘でき、地域の可能性を感じる良い機会となりました。」 


地域の人々を招いて、テントサウナ体験会を開催。琴浦町の豊かな自然に囲まれてアウフグース(熱波)や食事を楽しむひとときを提供した 

 

鳥取県・琴内に新たな観光の目玉を定着させたい 

地域おこし協力隊として、アウトドアツーリズムの牽引役を担う石黒さん。琴浦町内に新たな観光の目玉を定着させることをミッションとして、今後さらに地域の魅力を発掘・強化していきたいと意気込む。 

「県内には、古くからの温泉地も数多くあります。そのような文化と新たな体験を関連付けて、今までになかった価値を創出すべく、現地調査をはじめ一歩一歩プロジェクトを前進させています。」 

琴浦町役場や、地域の人々からのサポートにも大いに助けられているという。 

「琴浦町は、新しい取り組みに対して非常に寛容な風土だと感じます。『やりたいことをやっていい』という雰囲気です。もちろん、一つ一つのイベントに対して企画書はしっかりと作り込みますし、役場内でしっかりと相談をさせてもらいながら活動を行っています 

町内の人々も皆さん、フレンドリーで温かいです。まちで出会った際には気軽に声を掛けていただいたり、業務での連絡や交渉ヒアリングなどもスムーズに進みます。町内には他の地域おこし協力隊員も複数名在籍していますが、行く先々で良くしていただいているので他の隊員がまちに溶け込むのも早かったと聞いています。」 


海、山、田んぼなど、豊かな自然に囲まれた琴浦町。町内の住民と親交を深めながら、日々汗を流す。 

 

関係人口創出を目指して

琴浦町への移住後は「生活の質が豊かになりました」と語る石黒さん。その理由を詳しく尋ねると、次のような答えが返ってきた。 

「関東に住んでいた頃と比べて、自分の時間が凄く充実しています。空気も水も食べ物も良く、健康的に過ごすことができます。静かな環境に囲まれて、時間の流れも都会にいた頃とは変わり、いつも何かに追われてせかせかした感じではなくなりました。気持ちに余裕が生まれたことは、自分にとって大きな変化でした。」 

さらに、移住や地域おこし協力隊への応募を考えている人にはこんなアドバイスも。 

地方移住はシンプルに考えるほうが意外とうまくいきます。その土地や社会と素直に向き合い、自分の中でうまく課題を捉える、変化に柔軟に対応する。そうすれば、どこへ移住してもうまくやっていけるのではないでしょうか。」 

今後は地域おこし協力隊として、琴浦町により深く貢献できるようになりたい、と語る。 

「県外から旅行者を呼び込むイベントやプロジェクトは従来から数多くありますが、私は、琴浦町の人も一緒に参加できるものを企画したいです。琴浦町へ実際に訪れていただき、地元の人達と直接のコミュニケーションを通して旅の満足度を高めたり付加価値の創出に取り組んでいきたいと考えています。忘れられない体験を提供することで、地域の熱いファンを増やしていきたい。こうした取組を通じて、旅行者が地域のファンになり、その後もコミュニケーションが継続できるような関係人口の創出を目指したいです。観光はあくまできっかけであり、それ以上に、いかにコミュニケーション深めていけるかがテーマです。協力隊としての任期終了後も例えば琴浦町の案内役など、何かしらこの地域の良さを県外に発信し続けるような関わりを持ち続けていきたいと考えています。」 

アウトドアツーリズムの開拓に向けて、石黒さんは日々力強く前進している。 


琴浦町内の豊かな自然とサウナ文化を掛け合わせ、新たなツーリズムの開拓を目指す写真の時だけマスクを外しています

 

鳥取県 琴浦町 現役隊員
石黒 明日香さん 

神奈川県出身。関東の温浴施設での勤務時代に、サウナの「アウフギーサー(熱波師)」の仕事と出会う。関東を拠点に全国のサウナ施設を巡るフリーランスの熱波師「五塔熱子」としての活動を経て、その技能・知名度を活かすべく鳥取県琴浦町へ地域おこし協力隊として着任。サウナを起点とした鳥取県内の新たなツーリズム体験の開拓に取り組む。 

 

鳥取県琴浦町地域おこし協力隊:https://www.facebook.com/kotourachioko/ 

Nature Sauna:https://tottori-camppark.jp/sauna.html 

地域おこし協力隊とは? 

地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に移住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。具体的な活動内容や条件、待遇は、募集自治体により様々で、任期は概ね1年以上、3年未満です。 

地域おこし協力隊HP:https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei

発行:総務省 

 

 

 地域おこし協力隊リレーTALK トップページへ

                   

人気記事

新着記事