みどり市は、群馬県でもっとも新しく誕生した市。

東京からは100キロ圏内、乗り換えなしでアクセスできる利便性がありながらも、名前どおりの豊かな緑に囲まれ、穏やかな空気を纏う場所だ。笠懸町、大間々町、東村の2町1村が郡の垣根を越えて合併し、それぞれが持つ歴史や文化を大切に尊重してきた。

そんな3つの個性が混ざり合うみどり市で、今、少しずつ起こり始めている変化をレポートする。

みどり市はこんなところ

1.歴史と文化を大切に守り継ぐ

日本史の新たな扉を開いた旧石器時代の遺跡「岩宿遺跡」が示すように、先史時代から人が集まっていたこの地では、400年近い歴史を持つ「大間々祇園まつり」、戦前からの面影を残す「ながめ余興場」、明治8年創業の「近藤酒造」や江戸時代から続く醸造所「岡直三郎商店」など、先人が作り上げた文化を大切に守り継いでいる。

2.豊かな自然とともに暮らす

市の総面積の半分以上を山地が占め、市街地のどこからでも山を望むことができる。渡良瀬川や高津戸峡、草木湖など水にも恵まれており、休日にはキャンプやリバーアクティビティを楽しむ人々も。豊かな自然は豊かな農作物を育み、日々の暮らしのなかでその恩恵を感じることができるだろう。

【Topics】未来の世代のために。特色ある子育て・教育環境

みどり市の市政は「未来に渡って投資」がキーワード。 子育て・教育支援もその大切な要素と捉え、具体的かつ現実的な取り組みを数多く行っている。

・子育て4つのゼロ

18歳までの医療費ゼロ、小中学校の給食費ゼロ、市内保育園の待機児童ゼロ、特色ある校外学習の負担ゼロの「4つのゼロ」を掲げる。所得による制限の撤廃や、質の高い教育の提供など、一歩踏み込んだ支援が特徴だ。

・公立小学校を新設

令和4年に「笠懸西小学校」を新設。木の温もりが感じられる学び舎は、子どもたちの「主体的で深い学び」につながる仕掛けと最新の技術を取り入れている。また、同年には小中一貫校「あずま小中学校」も開校した。

・子ども未来基金

今年度より新設された、子どものための基金。ボートレースによる収益金、年間20億円を子育て支援や教育事業等に活用していく予定だ。基金の運用は来年度からとなり、使途は市民にも見える形で公開される。

・MIDORIジュニアアカデミー

「子どもたちに一流の学びを」をテーマに、プロスポーツ選手や地域の伝統工芸作家、芸術家などを呼んで無料の校外学習を実施。幼少期から本物に触れることで感性を養い、子どもたちの可能性を広げる取り組みだ。

移住者インタビュー

キャリアも夢も諦めない。理想の教育をみどり市から全国へ
松島 咲季子さん

真夏のうだるような暑さをものともせず、明るい声が響く。たくさんの笑顔に囲まれているのは、この学童施設を運営する松島さんだ。子どもたちから気軽に「おいちゃん」と呼びかけられる姿に、日頃の信頼関係が伺える。

都内の設計事務所で順調にキャリアを重ねていた松島さんが、生まれ育ったみどり市に戻ってきたのは約7年前。長男の出産を間近に控えた頃だった。子育ては地元でしたいという夫の強い意向を受け、何度も話し合いを重ねた末に決断したという。

松島さんの本業は、大学などで学生たちの学ぶ意欲を高める空間設計を行う「学習環境デザイン」だ。当時勤めていた会社とはうまく関係性を築けていたため、独立してもやっていける目処は立っていたが、これまでのような仕事中心の生活を送ることはできない。キャリアと子育ての両立という働く女性の多くが抱える問題に松島さんも直面し、鬱屈とした想いを抱えたままの帰郷。

「今となっては、東京で子育てをしながら同じように働くなんて不可能だな、と思いますが、当時はかなり悩みました」

しかし3年が過ぎる頃には生活にも慣れ、緑豊かで両親のサポートも受けやすいみどり市に戻ってきてよかったと感じるようになっていた。と同時に「ここでしかできないことをしたい」という思いが強まっていったそうだ。

そしてそのヒントは子育ての中にあった。

長男の小学校進学を目前に改めて理想の教育を考えた松島さんは、地方と都会の教育格差に思い至る。

「地方と東京では情報量や最新のものに触れる機会、関わる人の多様性などに大きな差があります。それはそのまま、子どもたちの未来の選択肢の差になる。

子どもには放課後にいろいろな人と触れ合える環境を用意してあげたかったので、それなら地域をベースに両方のいいとこ取りができる場所を自分で作ってしまえ! と(笑)」

こうして2023年4月、「放課後こどもラボPLDL.」を設立。かねてより興味を持っていた「プレイフルラーニング」を取り入れた学童事業をスタートさせた。

楽しさの中に学びの本質があるという考え方に基づいたこの教育スタイルは、子どもたちの自主性を重んじ、日々の遊びの中からそれぞれの可能性を引き出すものだ。また学校に属さない学童という特性から学校や学年の壁を超えた繋がりが生まれており、家庭や学校に次ぐサードプレイスとしての機能にも期待が高まる。

「もともとは自分のため、子どものために始めた事業が、こんな風にたくさんの方から必要とされているのは、すごくうれしいことです」と松島さん。

「今後は通ってもらえる拠点を増やすことはもちろん、出張ワークショップなどでまずはこの考え方に触れてもらう機会を増やしたい。みどり市発の教育を、全国の地方に広めていくことが今の夢ですね」

 

満を持しての地元出店。こだわりの「おいしい」を大間々で
阿久津 智志さん

2023年8月、大間々地区に焼き菓子を扱う専門店「オオママビブリオテーク」がオープンした。桐生市内で人気を集めるベーカリー「The Bakery」の姉妹店となる。

店主の阿久津さんはみどり市出身。桐生市内のパン屋で修行したのち、2013年に独立した。今回は、満を持しての地元出店。

「桐生の店舗がだんだんと手狭になってきまして。もともと独立したタイミングで大間々に戻っていたこともあり、2号店をここに出したのは自然な流れでした」

店内に並ぶのは、バラエティ豊かな焼き菓子とパン、ちょっとした食材の数々。朝は桐生市の店で2店舗分のパンを焼き、それを持って大間々の店へ。そのまま大間々の店で焼き菓子を焼いたら、それを持って桐生市の店へ……と、店舗間を忙しく移動する毎日。

「近いですし、製造も販売も頼れるスタッフがいますから」と見せる、素朴な笑顔が印象的だ。

「ものづくりが好きで、たまたまパンづくりを始めたら、そのままのめり込んでしまいました」という生粋の職人気質。その仕事に対するこだわりは、「おいしい素材でおいしいものを作ること」と至ってシンプルだ。

「だから、別に地産地消に強いこだわりはありません。ただ、やっぱり素材を探すときに近くでおいしいものがあれば使いたくなるし、県内は海の幸以外はなんでもあるので、地元産のものはいろいろと情報を集めていますね。

みどり市の近くでは、イチジクやルバーブ、パッションフルーツなども手に入るんですよ」

棚に並んだ食材も、カフェで出すドリンクも、すべて商品に使用しているものか、自身が試して納得したアイテムのみ。「おいしいものしか扱わない」というこだわりは、どこまでも一貫している。

その姿勢は地元住民にも快く受け入れられているようで、店には若者から親子連れ、高齢者まで幅広い年代の客がひっきりなしに訪れている。

「大間々にはうちのような雰囲気のお店はほとんどないので、地元の方には馴染みにくいのでは、という不安もありました。でも、いいものさえ扱っていれば柔軟に受け入れてくれる土壌があります」と、阿久津さんは分析する。

「移住者同士のコミュニティなどはありませんが、それが逆に地元の人の懐にスッと直接入り込みやすい状況を作っているのかもしれませんね。土地も安いし競合も少ないので、肩肘張らずに商売を始めたい方にはいい環境だと思いますよ」

独立と同時に大間々に戻って約10年。

「移住といってもずっと隣の桐生市にいましたし、生まれ育った場所なので改めて良いところって聞かれると困っちゃいますね」と阿久津さん。「買い物にも学校にも困らないし、強いて言うなら桐生よりはちょっと田舎かな」。

しかし「なんの不満もなく、快適に暮らしています」というなにげない一言に、仕事と暮らしの充実ぶりがあらわれているように感じられた。

守り継ぐ決意と叶えたい夢。100年の歴史のその先へ
渡邉純規さん・宏佳さん

山間にぽつりと見える、趣ある古民家。神梅館かんばいかんは創業100年を数える温泉茶屋だ。「角地蔵尊のお告げの湯」と伝えられる鉱泉が湧き、往時は多くの湯治客で賑わったという。

女将を務めるのは渡邉宏佳さん。3年前に夫の純規さんとともにみどり市に戻り、神梅館を継いだ。現在は温泉やランチ・カフェ営業の傍ら、宏佳さんはパーソナルヨガ教室を、純規さんは「KANBAI-BASE」を立ち上げて近くの草木湖でSUPなどのアクティビティを提供している。

各々の好きなことを生業にする夫婦の姿に憧れを抱く人も多いだろう。しかし、その裏にはたくさんの苦労があった。

宏佳さんは三女一男の三番目。当初は家業を継ぐつもりはなく、高校卒業後は桐生市役所に就職。伊勢崎市の消防職員だった純規さんと出会う。その後、カナダへのワーキングホリデーを経て帰国。レスキューのインストラクターを志す純規さんが、必要なスキル習得のためラフティングガイドとして岐阜県で働くことになり、宏佳さんも名古屋市内の百貨店に美容部員として赴いた。

かねてより興味があった美容の仕事に就き、充実していた宏佳さん。しかし、ブランドの人気に急に火がつき、休憩が取れないほど忙しくなったそうだ。

「体を壊して肌もボロボロで。お客様を美しくしたいと思っているのに自分が輝けていない状況にすごく違和感がありました。そんなときにヨガと出会って、インナービューティーに興味が湧いたんです」

その後は働きながらヨガインストラクターの資格を取得。独立を考えはじめた頃、ちょうど神梅館の事業継承問題が持ち上がった。

「姉二人は外に嫁いでいるし、弟は自分の仕事にやりがいを感じている。主人も資格が取れて独立できるタイミングだったこともあり、それなら私が継ごう、と」

しかし、時はコロナ禍。経営はかなり苦しかったという。両親も高齢になり、宿泊業を続けることも難しくなった。

ただそんな中でもどうしても譲れない部分があった。

「高祖父がここを開いたのは、この神梅鉱泉があったから。お風呂は言わばこの館のアイデンティティなんです。だから、何があっても絶対に残したかった」。

老朽化したお風呂を修繕し、昨年から旅館営業を終了、日帰りの貸切風呂とランチ・カフェ営業を行っている。

宏佳さんの目標は、神梅館をリトリート施設にすること。これまで培ったヨガやアーユルヴェーダの知見を生かし、人々を内面から美しくしたいと考えているそうだ。そして純規さんが提供するアクティビティも一緒に楽しみながら心も体も元気になってもらいたい、と夢は広がる。

「今は課題だらけで、まだまだ夢物語。でも、いつか実現できたらいいですね」

好きなことを生業にするのも、古いものを受け継ぐことも、容易ではない。しかし、形にしていく楽しみはこれからだ。100年の歴史のその先に期待したい。

みどり市で手に入れた人間らしい暮らし。地域の課題解決に夫婦で取り組む
伊藤友樹さん・英里さん

大間々の市街地からわたらせ渓谷鉄道沿いに北へ。川のせせらぎとともに穏やかな緑に囲まれた美しい景観が続く。

みどり市は総面積の約8割を森林が占め、その大部分がこの旧東村地区に集まる。森林があれば当然、必要となるのは林業に携わる人々だが、全国的にその人口は減少しており、人材確保は重要な課題だ。

その施策のひとつとして、みどり市が力を入れているのが林業をミッションとする地域おこし協力隊。伊藤友樹さんもそのひとりだ。

前職はサービス業に従事していたという友樹さん。昼夜逆転も当たり前の激務に、度重なる転勤。そこに会社の事情も加わり、みどり市に来る直前には心身ともに疲弊しきっていたという。

「そろそろ腰を落ち着けて生活したい」と思いはじめたとき、まず頭に浮かんだのが第一次産業を生業とすること。

「海の近くよりは山がいいな、くらいの気持ちで農業か林業で生活する術を探しました。そして『林業 みどり市』で検索したところ、地域おこし協力隊の募集を見つけたんです(友樹さん)」

前職時代にみどり市に住んだことがあり、「暮らしやすい場所だな」と夫婦ともに好印象を抱いていたそう。英里さんも快く背中を押してくれたため、そのまま移住を決断。市内の自伐林業家のもとで経験を積むこととなった。

「ところが、初日に3メートルほどの高さから滑落しまして。足を骨折していきなりの入院生活から始まりました(友樹さん)」

しかし、この期間も無駄にはならなかった。海外の安価な木材に押されて日本の木が売れないという問題にじっくりと向き合う時間が生まれ、その解決策のひとつにエッセンシャルオイルとしての活用があることを知る。独学で精製法を学び、退院後からさっそくチャレンジ。自作の設備で何度も試作を重ね、昨年の秋頃から「森の香。foreal」のブランド名で販売を始めた。

地域おこし協力隊の任期は3年。あと半年ほどで満了となる。「やることが多くて全然スローじゃない」という田舎暮らしにもすっかり慣れ、地域の活動に参加しながら木々と向き合う毎日。

「朝起きて日が沈んだら帰って寝る。すごく人間らしい暮らしができていますね」と笑顔で語る友樹さんに、英里さんも大きく頷く。

「今後は林業とエッセンシャルオイルの2本柱で生活していけたらと。また、獣害などで商品価値が下がってしまった木を薪として活用するプロジェクトにも関わっているので、継続して取り組んでいく予定です(友樹さん)」

「この暮らしにも慣れてきたので、次は地域の方の健康寿命を伸ばすことに取り組みたい。ヨガインストラクターの資格を生かして、教室を開こうと思っています(英里さん)」

地域おこし協力隊制度のおかげでチャレンジができたと語ってくれた友樹さん。“みどり市の人”として歩む日々は、まだまだ始まったばかりだ。

 

写真:Yossy

Information

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詳しくはコチラをご覧ください。

 

<新しい移住相談窓口ができました!>

大間々駅前に、新たに「観光・移住ステーション」がオープン。観光案内から暮らしの相談まで、気軽にお立ち寄りください!

【営業時間】

平日/午前9時〜午後4時 土曜・日曜日、祝日/午前9時〜午後5時

※休業日/月曜日 (※月曜日が祝日の場合は火曜日)

https://www.city.midori.gunma.jp/ijuteiju/1005147/1005440.html

 

<みどり市への移住に関するお問い合わせ>

■みどり市地域創生課 定住交流推進係

TEL:0277-46-9067
mail:chiiki-s@city.midori.gunma.jp

■群馬県みどり市移住定住サイト
https://www.city.midori.gunma.jp/ijuteiju/index.html

■Instagram「みどり暮らし」
https://www.instagram.com/midori_gurashi/

                   

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