【移住者インタビュー】
出産をきっかけに東京から石川県小松市へ。
充実した子育て環境があるから、私らしく働ける

石川県能登地方で震度7の地震が発生した元日から、まだ1ヶ月も経っていません。被災された方々には、心よりお見舞いを申し上げます。救助活動や復旧作業はまだ続いていますが、そんな中でも、石川県の魅力や住みやすさを知っていただくために、今回は小松市に移住した方のインタビューをお届けします。

 

西に日本海、東に白山を望む豊かな自然と、産業・文化等の都市機能を兼ね備えた石川県小松市。全国でも有数の住み良い街として、ここ数年で注目を集めています。その理由は、「子育てしやすい環境」「多様な働き方が実現できる」ことにあります。

2021年に日本経済新聞と東京大学が実施した調査で、小松市は「多様な働き方」ができる自治体として全国1位に選ばれました(※)。この調査は、各都市のデータを集計し、多様な働き方が可能な特徴を点数化したもので、小松市は保育環境や福祉施設の充実度、金沢市への通勤アクセスの良さなどで高い評価を得ました。

子育てをしながら働く若い世代にとってたくさんのメリットがある小松市。実際に移住してきた人たちは、このまちでの暮らしをどう感じているのでしょうか。2018年に東京から移住し、日本の食文化の発信拠点「EATLAB(イートラボ)」を運営しながら3人のお子さんを育てている瀬尾裕樹子(せのおゆきこ)さんにお話を伺いました。

(※)出典:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO74074220R20C21A7MM8000/

 

出産をきっかけに夫の故郷である小松市に移住

瀬尾さんは神奈川県川崎市出身。長野県の信州大学で生物学を学んだ後、群馬県のビール製造会社に就職しました。クラフトビールの魅力を広めたいとの思いで始めたブログがスタートアップ企業の事業に発展。その後、フリーランスに転身し、東京を拠点にビールや食に関するウェブメディアのディレクションを行っていました。瀬尾さんは当時のことを次のように振り返ります。

「当時はかなりワーカホリックな働き方をしていました。スタートアップ企業で働いていた時は毎日終電で帰るような日々を過ごしていました。フリーランスになってからも仕事中心の生活は変わらず。夫もフリーランスで仕事をしていたので、家がオフィス代わりでした。仕事とプライベートの区別がなく、夕食を取るとまた仕事を再開して、夜遅くまで働き通しでした」

夫の雄大さんは小松市出身。いずれは故郷に帰りたいと考えていたため、年に10回ほど二人で小松市を訪れていました。当時は羽田空港の近くに住んでいて、小松空港までは飛行機で約1時間。週末を含めて数日間滞在し、小松市での暮らしや風土を知るようになりました。「いずれは」と考えていた小松市への移住が、「いま」に変わったのは何がきっかけだったのでしょうか?

「2018年7月に長女が生まれて、川崎市の実家に里帰りしました。出産前から子育てと仕事についてシミュレーションしていて、徐々に仕事量を戻していく予定でした。しかし、実際にその状況になってみると想像した以上にシビアで、仕事は出産前の10%もできません。それまで未満児保育を利用する選択肢を考えていなかったので、保育園探しもしていませんでした。娘が幼稚園に入る3年先までを想像できず、このまま東京で暮らし続けることに不安を覚えました。いずれはと思っていた小松市への移住ですが、引っ越すなら仕事をセーブしているいましかないと。小松市には何度も来ていて、町での暮らしが想像できたので決断は早かったです」

 

幼児期の子育て環境として小松市は理想的

移住を決めてから4カ月後には小松市のアパートに引っ越し、瀬尾さん家族の新たな暮らしが始まりました。年度の途中でしたが、住まいの近くの保育園に入園することができました。小松市内には、認定こども園・保育所・幼稚園が40カ所もあり、待機児童はゼロです。未満児の保育料は、第2子から半額になり、第3子は無料になります。

小松市では保育料の支援に加えて、子育てサポートも充実しています。例えば、「赤ちゃん紙おむつ定期便」は、生後3カ月~1歳の誕生月までの子を持つ保護者に月に1回、無料で紙オムツを自宅に届けるサービスです。これは、親子の見守りを兼ねた小松市独自の取り組みで、子育ての孤独感や辛さを解消する目的もあります。

さらに、小・中学校生および義務教育学校生の給食費は無料0歳から18歳までの子どもの医療費も保険適用分は無料です。このように子育て支援が手厚い小松市ですが、瀬尾さんはそれ以上に良かったのは、自分たちに合った教育環境を選べることだと言います。

瀬尾さんは移住前に小松市の保育園の情報をほとんど調べておらず、初めは家から一番近い保育園に長女を入園させました。しかし、後になって市内の中山間部に少人数で自然の中での保育を積極的に行っている園があることを知り、見学に行くことに。この保育園は全市から児童を受け入れていて、長女もこの園を気に入り、転園を希望したところ快く受け入れてくれました。

「東京ではお金を掛ければ選択肢は増えますが、小松市では大きな経済的な負担がなく教育環境を柔軟に選べることが魅力です。幼児期の子育て環境として小松市は理想的で、移住して良かったと実感しています」

小松市内には、小学校が22校、中学校が9校、義務教育学校が1校あります。また、高校は7校もあり、公立大学が1校あるなど、進学時の選択肢も豊富です。

 

食文化の発信拠点をつくり、地域の人とつながる


瀬尾さん夫妻が2019年春にオープンしたEATLAB

現在、瀬尾さんは3人のお子さんを育てながらフルタイムで働いています。上の2人のお子さんは保育園に通っていて、まだ5ヶ月の末っ子は瀬尾さん夫婦の仕事場である「EATLAB」に連れていき、一緒に時間を過ごします。近くには夫の実家があり、必要な時はお子さんの面倒を見てもらっているそうです。

EATLABは、瀬尾さん夫婦が運営するコワーキングスペース・レンタルスペースです。シェアキッチン機能があり、「食」をテーマにしたイベントやワークショップも開催しています。また、瀬尾さんのライフワークである「食」に関する情報を発信するWEBマガジンも発行しています。

「EATLABを始めたのには、2つの理由があります。一つは、小松市に私たちのようなフリーランスが利用できるコワーキングスペースがなかったので、それならば自ら作ろうと。もう一つの理由は、自分たちの仕事を『場』という形にして、地域の人に理解してもらいたかったからです。私は編集を、夫はマーケティングを仕事にしていますが、実物として見えるものではありません。私たちの仕事を可視化させることで、地域の人とつながるきっかけにしたかったのです。小松市を含めて加賀地域は独特な食文化を持っています。その潜在的な魅力を掘り起こし、付加価値をつけることで地域に還元していきたいと考えました」

EATLABには、個人事業主やスタートアップ企業の経営者など、地域とつながって一緒に活動したいという人が集まってきます。互いに仕事の相談に乗るなど、コミュニティに貢献し合える好循環も生まれているようです。


EATLABで開催したイベントの様子

 

文化や習慣の違いを楽しみ、地域に溶け込む暮らし

小松市に移住して5年が経ち、瀬尾さんはさまざまな人とのつながりを築いています。しかし、移住者にとって地域になじむことは簡単ではありません。地域の方々とうまく付き合うコツや心構えを瀬尾さんに聞いてみました。

「初めのうちは地域の人も私たちに対して慎重に接している印象を受けましたが、一度コミュニティの中に入ると家族のように接してくれます。印象的な出来事があります。ある時、一緒に町内活動をしていた人から『どんな仕事やっとれん?』と声を掛けられて、『食とWEB関係の仕事です』と答えたら、お店のWEBサイトをリニューアルしようと思っていると。私たちの仕事についてよく知っているわけではないのですが、地元のよしみで仕事を頼んであげたいと思ってくれたのでしょう。小松市内には意外にもチェーン店は少なく、昔ながらのお店がたくさん残っています。地域の中で助け合う土壌があるように思います。移住とは既存のコミュニティに入れてもらうこと。だから、人とつながるためには、地域への興味や敬意が欠かせません。土地が違えば当然ながら文化や習慣も違います。そうした違いをネガティブに捉えるのではなく、面白いと感じることが大切です。相手を知りたいという気持ちで、敬意をもって接すれば地域で受け入れてもらえると思います」

 

子育てするならダントツ小松!多彩な魅力が詰まったコンパクトな街

小松市には身近なところにお店もあれば自然もある。瀬尾さんは生活環境として、また子育て環境としての小松市に満足していると話します。

「私の出身地である川崎市北部は、都会でありながらも家から駅までが遠く、バスに乗らないとどこにも行けないような場所でした。それに比べて、小松市はコンパクトに必要なものが街中にまとまっていて、こちらの方がむしろ便利だと感じます。子どもの教育環境を柔軟に選べることも大きなメリットですね

瀬尾さんは、自分で会社を経営しているため、なかなか長期の休みを取ることができません。しかし、小松市にはキャンプ場や海岸、スキー場など、家族で楽しめる場所がたくさんあります。瀬尾さんは、休日には家族と一緒にそうした場所に出かけて、リフレッシュしているそうです。インターネットやスマートフォンの普及で、どこにいても情報にアクセスできる時代ですが、子どもたちには広い視野を持って実際に自然や文化に触れる経験をしてほしいと考えています。取材の数日前には、ドイツに住む友人を訪ねて、家族で海外旅行に行っていたそうです。

取材の最後に、小松市への移住を考える人へのアドバイスを伺いました。

「新しい土地での生活は、期待と同時に不安も伴います。移住後の生活をより楽しむためには、自分の希望や条件に合った街かどうかを実際に足を運んだり、いろいろな移住情報サイトを見たりして入念に確かめておきましょう。地元の人たちの暮らしや文化に興味と敬意を持つことも必要です。私は移住経験者として、小松市への移住を考える人のお役に立ちたいと考えています。暮らしや子育てのことなど、知りたいことがあればEATLABをお訪ねください。私が実際に住んで感じたことなどをお話しできます。小松市は知れば知るほど面白いところですよ」

 

小松市には、住宅や教育の補助金、医療費の助成、就職や起業のサポートなど、子育て世帯にうれしいさまざまな支援制度があります。詳しくは、小松市の移住・定住促進サイト「Hello!こまつ」をチェックしてみてください!

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小松市は、市街地の近くに高速道路や鉄道、空港が整備されていてとても便利です。2024年3月16日には新幹線駅が開業し、さらにアクセスが良くなるので、その気になればすぐに行けます! 小松市での暮らしに興味を持ったら、ぜひ一度、小松市を訪れてみてください。

取材・文:鈴木俊輔 写真提供:EATLAB

                   

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