TURNS vol.40より|暮らしのかたわらにあるモノを 作り続けた20年と、 エフスタイルのこれから

F / s t y l e

「地場産業」という言葉が今ほど注目されていなかった二十年前から、土地に根ざした確かな技術や風土に適った素材を使ったプロダクトを作り続けてきた、エフスタイル。

移ろいやすい世の中で、変わらずに暮らしのかたわらにあり続けるための「モノづくりの芯」とは。


鉛筆の「F」のようなしなやかさ 

モノづくりの芯

新潟駅からバスで約二十五分。閑静な住宅街の一角に、真っ白いL字型の建物が見えてきた。ここにオフィス兼ショールームを構えるのは、エフスタイルの五十嵐恵美さんと星野若菜さん。ショールームには玄関マットやラグ、スリッパ、バッグやニット製品など、生活にまつわる品々が並んでいる。シンプルで控えめな印象ながら、一つひとつにどこかきりっとした佇まいを感じるものたち。エフスタイルの二人を通して世に差し出されるさまざまなプロダクトは、日常にすっとなじみ、人生のどんなときも寄り添ってくれそうな凜とした頼もしさがある。

2001年に彼女たちが創業した当時、「地場産業」や「ファクトリーブランド」などという言葉は今ほど一般的ではなかった。そんななか、生まれ育った新潟、そして大学時代に学んだ山形の地場産業を中心に、土地に根ざした確かな技術や風土に適った素材を使った、生活にまつわる商品を生み出してきたエフスタイル。新潟を中心として、山形、東京など全国約二十の工場との協業によるモノづくりを中心に、近年は作家との協業によるモノづくりなどにも活動の場を広げてきた。

エフスタイルの「エフ」は鉛筆の濃さと硬さを示す記号のF。HはHARD(ハード:硬い)、BはBLACK(ブラック:黒い)を表す。FはFIRM(ファーム:しっかりした)の略で、HとHBの中間に位置し、「濃さと硬さを持った芯」であることを示す。2B、3B、4Bや2H、3H、4Hなどと、さまざまなバリエーションがあるBやHとは異なり、FはFだけ。

「鉛筆のFって、一般的で量産品のHBと、硬くてストイックなHのちょうど中間。そういう感覚をもったモノづくりをしたいという思いで名付けました」と星野さん。エフスタイルの生み出すプロダクトが、元気なときはもちろん、ちょっと落ち込んだときや体調が優れないようなときにも、心を平らかにしてくれるような、静かなエネルギーを湛えているのは、BでもHでもない「F」のもつ独立性ゆえなのだろうか。名前の由来が鉛筆にあるように、エフスタイルのモノづくりにはしなやかな芯がある。

(続きはTURNS vol.40本誌で)

文:石倉 葵 写真:高橋 希

                   

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