今回は、飯能市にある発酵のテーマパーク「OH!!!~発酵、健康、食の魔法!!!~」を拠点に、市内外問わず様々な事業者の方々がツアーに参加。 “発酵”をテーマとした食事やワークショップを通して、お互いに楽しみながら交流を深めました。そんな当日の賑やかな様子を、飯能市の魅力とともにお届けします。
〈飯能市について〉
埼玉県の南西部に位置する飯能市は、山地、丘陵地、台地を有し、市域の約75パーセントを森林が占めている自然豊かなまちです。都心から40キロメートル、西武池袋線・池袋駅から電車で1時間ほどで、アクセスも至便です。
飯能の魅力的な農産物を多くの方に知ってほしい
ツアーの冒頭は、今回の主催者である飯能市農業振興課・片野陽介(かたの ようすけ)さんからツアーについての想いをお話いただきました。
「このツアーは飯能の魅力的な農産物を多くの方に知っていただくため、飯能の農家さんと飲食店のご縁を繋ぐために始めた事業です。今回で第6回となりますが、ここからこれまでに多くのご縁や新しい商品も生まれました。新しいつながりが生まれていく中、より多くの人のマッチングをはかるツアーにしていく必要性を感じ、今日は市内外・業界問わず多種多様な取り組みをされている方に参加していただきました。ぜひ、参加者同士がつながる素敵なひとときになりますよう楽しんでいきましょう」(片野さん)
挨拶の後は参加者同士の自己紹介。今取り組んでいることや、それぞれのツアー参加の経緯を語りました。飯能市内や都内はもちろん、わざわざ静岡県からやって来た参加者も。飲食業に限らず、林業や観光に取り組む方々など、まさに〝業界も行政区域も飛び越えた〟参加者が集まりました。
OH!!! 施設で発酵を体験!
ツアーの説明の後は今回の会場である「OH!!!~発酵、健康、食の魔法!!!~」を見学。敷地内には4つの施設があり、発酵を「食べる」、「買う」、「体験する」といった様々な角度で楽しめる場所となっています。
まず訪れたのは発酵食品と地元野菜を販売するセレクトショップ「八幡屋」。八幡屋自慢のお漬物をはじめ、全国から厳選した発酵食品、飯能の新鮮な野菜や特産品を購入できます。テイクアウトコーナーやイートインスペースも併設されており、「お漬物食べ比べセット」や「糀ソフトクリーム」も楽しめます。平日の朝でしたが店内はお客さんで賑わい、活気に溢れていました。
採れたての野菜やフルーツがいっぱいの飯能マルシェ
ツアー参加者のみなさんは商品に興味津々。片野さんや飯能市の方々にお話いただきながら、見学と同時に買い物を進めていました。飯能市の魅力が詰まった商品がたくさん並んでおり、参加者にとって飯能市の資源と何かコラボできないかを考えるきっかけや、新しいつながりが生まれるきっかけになったのではないかと感じました。
発酵のレストランで食事タイム
参加者同士の交流も盛り上がる中、あっという間に昼食の時間に。参加者は敷地内にある薪火と発酵のレストラン「Femy_」に向かいました。店内は古い木材を使っており、木のぬくもりを感じる落ち着きある空間。この施設、60人規模の収容が可能で宴会・会議後の会食にも使用可能で、地元の方が結婚式の会場として利用されたこともあるそうです。
記念日にぴったりな個室
今回は「健酵彩菜コース」という、旬の食材を使用した身体に優しいコース料理をいただきました。こちらのメインの肉料理はFemy_自慢の薪窯で焼いたものであり、香ばしさと薫香を楽しめる一品でした。
食事を終えた後、実際に薪窯を見学させていただき、職人の方が丁寧に薪窯の説明をしてくださいました。
Femy_の薪窯は飯能市の間伐材を利用しているとのこと。食材だけでなく薪も飯能市のものを活用しているという話に、参加者も驚いていました。薪窯は客席に併設されているので、五感で食事を楽しめる空間となっています。
飯能の特産品で、フルーツビネガーづくり
美味しいランチをいただいた後は、ツアー最後のプログラムであるワークショップを体験。今回は、「パリシャキ研究所」でフルーツビネガーづくりを行いました。普段はこのほかに、“ごはんがススムキムチ”づくりや発酵米ぬか床づくりも体験できます。施設はレンタルスペースとしての貸し出しも行っているとのことで、料理教室やマルシェの場としての利用も期待されています。
まずは、講師の方から今回使用するお酢、スパイス、フルーツの説明。今回は飯能の天空の集落で採れるはるみオレンジ、サイパンレモン、ライムと、飯能にある小久保果樹園の農薬不使用のブルーベリーを提供いただきました。それぞれの味や香りの特徴を聞いた後、実際にお酢も試飲しながらどの組み合わせでビネガーを作るかを考えます。みなさんで和気あいあいと話し合いながら進めている姿が印象的で、それぞれのグループに笑顔が見えました。
試飲の後は、早速フルーツビネガーづくり。スパイスと氷砂糖とフルーツをうまく詰めた後、お酢を入れるというシンプルな工程なのですが、実際にやってみると瓶に詰める作業に苦戦します。たくさん詰めようとすると蓋が閉まらなくなったり、フルーツがおさまりきらなかったり。参加者は協力しあいながらビネガーを完成させていました。
完成後はおいしいビネガーの使い方を伝授していただきました。水、牛乳、炭酸で割るというスタンダードな食べ方に加え、ノンアルサングリアやサラダドレッシングにも使えるとか。また、取り出したフルーツと砂糖を一緒に煮詰めたものを、ヨーグルトやアイスにかけてもおいしいとのこと。冷蔵庫で1週間熟成させて完成なので、使えるようになるのが待ち遠しくなります。
出来上がったフルーツビネガー
農業を軸足に飯能の地域活性化に取り組んでいきたい
ツアー終了後、主催者の片野さんにお時間をいただき、これからの展望についてお話を伺いました。
「これからも、農業を軸足に飯能の地域活性化に取り組んでいきたいと考えています。農業×〇〇のように業界を限定するのではなく、多種多様な業界とコラボしていきたいですし、地域の垣根を越えて飯能を盛り上げていきたいですね。今回ワークショップで使用した柑橘類に限らず、飯能ではぶどう、なし、キウイも採れるんです。この話をするととても驚かれますし、案外知られていません。いいものはあるのに知られていないという状況が飯能にはまだまだあります。もっといろんな人に飯能の魅力を知っていただきたいですね。今回のマッチングツアーのように生産者と事業者がつながる機会をどんどん増やしていくことで、新たな商品が生まれるきっかけになればと思います。これからも飯能の活性化に力を入れていきたいです」
ツアーを終えて
OH!!!!の施設見学や食事、飯能産のフルーツを使ったワークショップを通して参加者同士が新たにつながった今回のツアー。最初は緊張した様子の参加者でしたが、ツアーが進むにつれ打ち解けていき、終盤はとても盛り上がっている様子でした。今回の出会いをきっかけに、また新たな商品が生まれるかもしれません。
OH!!!!の施設から駅までの帰路には、カフェやシェアスペースが建ち並んでおり、飯能の若い人たちが共にまちを盛り上げようとする動きが盛んなように見えました。みなさんも飯能を訪れて、その熱量を感じてみてください。
文・角田結梨 写真・増田遥