⼦どもと⼀緒に親も育ててくれる。
「⽣きる」ことを感じる天草の暮らし

⿊沢三穂さんは⽣まれも育ちも東京都。同じく東京出⾝のご主⼈と結婚後、神奈川県川崎市に住まいを購⼊して⼦育てをしていたが、それから1年も経たないうちに東⽇本⼤震災にみまわれる。これを機に、⿊沢さん夫妻は移住を決意。たどり着いたのが熊本県天草の海辺のまちだった。

移住して 11 年、⼦育てのかたわら⾃宅兼サロンでアロマセラピストとして活動する⿊沢さんを訪ねてお話を伺った。

天草に住みたいと思った1通のメール。
⼼のこもった⾔葉に感動しました

2011 年の震災後、⿊沢さんは⽇々の⽣活や⼈とのやりとりに敏感になっていたという。「⼦どもたちが⾷べるものだから、⾷材の産地や安全性は特に気になっていました。給食をお弁当に切り替え、小学校と保育園それぞれのメニューに合わせて作るために、仕事終わりに何軒もスーパーをハシゴしたり、この外遊びはダメだとか、ゴールの見えない生活に⼼が疲れてしまったんです」。

そこで、⿊沢さん夫妻は、⾃分たちが責任をもち、納得した⽣活ができる場所に⾝をおきたいと、移住を考え始めた。当初は海外も視野に⼊れ、ご主⼈の姉⼀家が住むオーストラリアへ。「⼦どもの夏休みに1ヶ⽉くらい滞在したけど、海外で仕事を探して⽣活するのは現実的じゃないよねって(笑)」。

帰国後に改めてネットで調べたところ、『移住』というキーワードでヒットしたのが天草市だった。「⼦どもがいるので移住の施策がある、⼦育てを応援してくれるところが良いなって。それに、移住するからには、地域の⼈に受け⼊れてほしいし、⾃分たちもしっかりとその地に⾜をつけて暮らしたいと思ったんです」。

天草市の市役所にメールで問い合わせると、すぐに返事が届いた。「そのメールにすごく感動して。都会だとお役所は事務的なイメージで、特におしゃべりもしないですよね。でも、天草市の職員さんからの返信メールは、定型⽂じゃなく、その⼈の⾔葉で⽂章が書いてあったんですよ。私も移住の理由や今の⼼情をさらけ出したメールを送っていたんです。すると、『⼤変な思いをされましたね』って。都会でほとほと疲れていた時に、⼼がこもったメールが本当に嬉しくて。天草に住みたい!って思いました」。

⼦どもはまちの宝もの。
地域がひとつになって⼦育てを応援

2012 年 2 ⽉に天草での暮らしがスタート。空き家バンクで⾒つけた海岸近くの住まいは、もともと海の家。⾃分たちで⾃由に改修でき、⼦どもが歩いて通える距離に学校があるのも決め⼿となった。

引っ越し前の冬休み、初めて⼩学校を⾒学した際に、⿊沢さんは教頭先⽣から思いがけない質問を受ける。「真剣な⾯持ちで『よく考えて移住を決めましたか?』と聞かれたんです。ちょっと驚きましたが、『今まで移住されてきても不便だからと出て⾏く⽅が多い』と仰いました。うちの⼦どもたちのために、あえて決意を聞いてくださったんだと思います」。

教頭先⽣に移住に対する真摯な思いを語った黒沢さん。ふと窓を⾒ると、校庭で遊んでいた⼦どもたちが、新しい友達を⼀⽬⾒ようと鈴なりになっていた。「地元の⼦たちが⽬を輝かせているのが可愛くて。この先⽣⽅、この⼦たちがいる学校なら安⼼だと思いました」。

教員と保護者という壁を感じることがなく、同じまちの住⺠同⼠として気軽に話せる雰囲気も魅⼒だという。学校や児童の数は決して多くはないが、その分、⼀⼈ひとりの⼦どもに⽬が⾏き届く。また、ご近所さんも⼼強い存在だ。「私がいないところで⼦どもが遊んでいると声をかけてくれたり、近所のおじいちゃんやおばあちゃんが⾒守ってくれる感じです」と⿊沢さん。

⼦どもはまちの宝もの。地域がひとつになって⼦育てを応援してくれる様⼦が伝わってくる。

天草のゆたかな⾃然と⾷が、
⼤切なことを教えてくれる

⻘い海と緑の⼭々。どこにいても⾃然を⾝近に感じられる天草は、⾷の宝庫としても知られている。「関東では産地や栽培⽅法とかを調べて買い物をしていたので、その感覚が抜けなくて、移住したばかりの頃にお店で野菜の産地を聞いたら『全部、天草産だ』って(笑)。この辺はほとんど地産地消で、畑で育てている⽅も多い。今思えば当たり前のことを聞いちゃったかな」と、笑いながら話してくれた。

また、アロマセラピストとして魅⼒を感じたのが、天草の薬草の豊富さだった。「ヒノキや⽉桃、枇杷の葉など工房で使う精油の原料も⾊んな種類が採れます。今では天草産の薬草を蒸留・調⾹して、⾃分で作るようになりました」。

さらに、⿊沢さんがすごいと思ったのが学校給⾷。「この地域では『天草陶⽯』という⽩磁の原料が採れて、その陶⽯でつくられた『⾼浜焼』の⾷器が、⼩中学校の給⾷で使われています。磁器はアルミやプラスチックと違って重いし、落とすと割れますよね。でも、それを体験することが⼤事で、給⾷そのものが⾷育になっている。これは素晴らしいことです。親である私たちにとっても、⽇々の⽣活の中で気づきや学びがいっぱいあります」。

⽇常的に地域の伝統や⾷⽂化に触れることができる天草。⾃然のゆたかさ、モノの⼤切さを⼦どもも⼤⼈も⾝をもって学びとることができる。

⼆拠点⽣活は⼦どもたちが
都会と⽥舎の良さを知る機会

現在、⿊沢さん家族は天草と神奈川の⼆拠点⽣活。関東での仕事が多いご主⼈と、神奈川に就職した⻑男は、移住前に暮らしていた住居へ。天草には⿊沢さんと、⾼校の寮にいる次男、⼩学⽣の三男と四男が暮らしている。「⼦どもの誕⽣⽇や学校⾏事、夏休みなどにお互いが⾏き来して⼀緒に過ごします。⼦どもたちは都会で学ぶことも多いですよ。この辺は信号機が1つくらいしかないし移動⼿段は⾞だから、バスや電⾞の乗り⽅、⼈が多いところでの⾝の置き⽅がピンとこないですよね。歩く速度も違うし、些細な動きが⼦どもにとって不安要素になる。それを取り除くためにも都会の⽣活を練習させています」と、⿊沢さん。⼆拠点⽣活は、⼦どもたちにとって、都会と⽥舎それぞれの違いと良さを肌で感じる良い機会になっている。

最後に、住んで実感した天草の良さを教えてもらった。「⼈、⾷、暮らし。天草は魅⼒がいっぱいです。仕事も決めずゼロの状態で天草に来たけど、⾊んなご縁をいただいて、⼈との出会いから思い描いていた以上のものがどんどん⽣み出されています。毎⽇、⽣きる喜びを感じられるところです」。

 

文・山田美穂 写真・藤本幸一郎

 

あまくさライフ/天草市移住・定住サイト
「島のような穏やかなまちに移住したい。でも島暮らしって不便かな…」と悩んでいる方に特におすすめしたいのが、天草市。ここ数年で20〜30代の移住者が続々と増加している全国的にも珍しい地域です。どんなまち?人気の理由は?などを探るには移住・定住サイト「あまくさライフ」を覗いてみましょう。
https://inaka.amakusa-web.jp/

あまくさライフ公式Instagram
天草に移住した方の暮らしやお店の紹介、移住相談会情報、その他いろんな移住に関する情報発信をしています。移住担当者による空き家紹介のライブ配信もお見逃しなく!
https://www.instagram.com/iju.amakusa/

天草市ふるさと住民登録制度
天草市では、出身者などとつながりを深めながら、魅力的な地域づくりを行うため、「天草市ふるさと住民登録制度」をはじめています。これは出身者などがふるさと住民(あまくさンサポーター)として登録し、自身が市に協力できること、市のためにやりたいことを記載するもので、登録情報をもとに市内の団体などの利用希望に応じてマッチングし、お互いにつながりを深めながら、ともに市を盛り上げていこうというものです。
https://www.city.amakusa.kumamoto.jp/kiji0034927/

                   

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