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親子で十和田市に暮らしてみたら
後編
|十和田市で、子どもと暮らすことについて考える。3|親子でお試し移住記

初めて訪れた2016年9月から、たびたびご縁をいただいている青森県十和田市。知り合いもたくさん増えて、すっかり馴染みとなった街並みだけど、行くたびに新たな表情を見せてくれる十和田市は、都会と田舎の両側面をもつギャップのある街です。

そんな十和田市で、息子とともにお試し移住を体験してきたレポートの後編。田園風景が広がり田舎っぽさが溢れる十和田市で、子供と暮らすことについて考えたことをお届けします。

前編はこちら

 

どこにでもあるような田舎の、ここにしかない贅沢な環境。

市街地を少し離れると、雰囲気は一変して長閑な田園風景が広がっています。

私は最初、このギャップにとても驚きました。前編でお伝えした通り、初めて十和田市を訪れたときの印象がとても都会的だったからです。

そのあとに訪れた時、車を走らせど走らせど、畑や田んぼしか見えないので、道を間違えたかな?と思ったほど(笑)。私が見ていた都会的な部分は十和田市の一部に過ぎず、十和田市もふつうの田舎なんだと思い知らされました。

 

それでも、十和田市がどこにでもあるような田舎の街と少し違うのは、その自然の雄大さにあると思っています。その象徴的な場所が、十和田湖と奥入瀬渓流です。

写真はすべて2016年に開催された十和田市移住体験ツアーの時のもの(撮影:服部希代野)

十和田市に移住した人の話を聞いていても、十和田湖や奥入瀬渓流の話題を出す人は少なくありません。現に、ここの自然の奥深さに魅了されて、十和田市でネイチャーガイドを営む移住者もいます。

滞在中は十和田湖や奥入瀬渓流まで足を伸ばすタイミングはなかったのですが、都会的な市街地から車を30分走らせれば、豊かな自然に触れられる環境は、十和田市に暮らしたいと思う大きな理由になる気がします。

今回は、そんな奥入瀬渓流にほど近い里山エリアに移住された2組のご家族を訪ねました。

 

「この地で叶えたい夢を追い続ける、移住家族の物語。」

最初にお会いした丹上たんじょうさんご家族は、Iターンで十和田市に移住し新規就農。二人の娘さんを育てながら夫婦二人三脚で、子育てと農業を両立しています。

「いろいろ大変です」と言いながら、大変じゃなさそうに笑う奥さんの嘉美よしみさん。その言葉からは、どんな環境でも前向きに楽しんでいく、芯の強さを感じました。

知らない土地で子育てをするのは簡単なことではないけれど、大変大変と思い詰めるより、今ある環境を存分に楽しむこと。それはどんな場所で暮らす上でも、大事なことだと気づかされます。

ちなみに、普段はトマトを食べない我が息子も、丹上さんがつくった採れたてミニトマトにはご満悦の様子。畑で採ってその場で食べるというのは、都会っ子にはとても貴重な体験でした。

 

どこに住むかより、誰がそこにいるか。
”十和田の親” に見守られて、成長する家族のこれから。

もう1組は、十和田市の空き家バンクを利用して昨年古民家を購入し、今年生まれたばかりの娘さんと暮らす、移住1年目の佐藤さんご家族。

子育てはまだまだ始まったばかりですが、移住したばかりとは思えないほど十和田市での暮らしに馴染んでいるようで、これからの暮らしにワクワクしている様子が伝わってきました。

世界や日本各地を巡ってきた佐藤さんご夫婦にとって、十和田市は初めて腰を下ろした場所。お二人の話を聞いていると、偶然のような必然のようなご縁だったと感じましたが、暮らす場所を選ぶ理由に、周りにいる人たちの存在は大きく関係するんだと改めて実感しました。

うちの息子はと言えば、山あいの集落ならではのアブの大群に怯えながら、「トンボがいればアブは来ないよ」というアドバイスを頼りに、必死にトンボを探していました。

これも、虫や動物の生態系が暮らしの一部にある山間部ならではの体験です。

車を走らせていたら、目の前をゆうゆうと走る大きなトラクターに息子は大興奮。こんな体験も、私たちにとっては一つのアトラクションのようでした。

よく田舎に行くと、山や森のような深い自然があっても、子供が身近に遊べる場所が少ないと聞きますが、十和田市は子供を遊ばせられる場所に恵まれているなあと感じます。しかも、そのほとんどが無料だったり、お金を使わずに済むんです。

丹上さんご家族も行きつけと言っていた「道の駅 奥入瀬 ろまんパーク」については、丹上さんのインタビュー記事内で詳しく紹介しています。

「道の駅 奥入瀬 ろまんパーク」もその一つですが、ここでは子供と楽しむ十和田市の過ごし方についてご紹介します。

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十和田市馬事公苑 駒っこランド

市街地を歩いていても気づく人は多いかもしれませんが、十和田市は馬とゆかりがあり、馬と暮らす文化が根付いていた場所です。そのため、街なかの至るところに馬にまつわるものが溢れています。

街なかには、馬を象ったモニュメントがたくさんあります。

「十和田市馬事公苑 駒っこランド」もそのひとつ。全国でも珍しい馬の文化資料館が開設されており、様々な馬文化について知ることができます。が、子供たちの目当ては、広大な敷地にそびえたつ遊具です。

高さが約8.7mもある、馬をかたどったモニュメント遊具「UMA」。

山の高台に位置する駒っこランドは、空が近く感じられて、大人も子供ものびのびできます。遊具だけでなく、たくさんの馬と触れ合える牧場もあり、軽食が食べられる休憩所もあり、お金をかけずに家族でのんびり過ごせます。

親子向けのイベントも多く企画されていて、暖かい季節にはピクニックしながら一日中楽しめそうな場所でした。

 

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疲れた身体をほっと癒す、青森の銭湯文化

そして、いつも青森県にくるたびに、楽しみにしているのが「銭湯」です。実は青森県、地元の人は車の中にお風呂道具を積んでいるというほど銭湯文化が根付いています。Google マップで「銭湯」と調べれば、15分圏内の近い距離に数件は銭湯情報が出てくるんです。

何よりすごいのが、その多くが温泉であるということ。しかも、入浴料はだいたいが300〜500円程度。子供に限っては、150円とかですよ?安すぎません? だから、つい毎日入りたくなってしまいます。

ちなみに、個人的におすすめなのは「ポニー温泉」。

2年前のお試し移住をした時に初めて立ち寄ったのですが、色々ギャップがすごくて。まず、外観は改装されているのに中に入ると ”THE・昭和レトロ” で、いわゆる昔ながらの洗い場。あんまり銭湯に行ったことのない私は、その使い方に格闘しました。しかも、これまた予想を超えるほどに泉質がヌルヌルしていて、洗っても洗ってもヌルヌルしていて。洗い場のお湯も全てヌルヌルしていて。笑

初めて来たとき、かなり衝撃でした。そのことを地元の方に話したら、びっくりされて。だって、地元の人にとっては当たり前なんですよね。毎日入っていたら、美肌効果間違いないと聞いてからは、十和田市に行くたびに立ち寄るスポットになりました。

昭和レトロな味のある銭湯に、南部鈍りの会話が聞こえてくると、心も体もあったかくなりました。

他にも、十和田市では市民プールが無料で利用できたり、市外へ少し足を伸ばせば海もありますよ、と現地の皆さん。

十和田市内だけでも十分いろんなスポットがありますが、他の街へもフラッと遊びに行けるところは、都会っぽさと田舎っぽさを兼ね揃えた十和田市の絶妙なアクセスの良さなのかもしれません。

 


親子で十和田市にお試し暮らしをして、思ったこと。

きっと、この記事を読んでいると、とても充実した楽しい滞在だったように見えるかもしれませんが、実は滞在中に息子と何度もケンカをしていました。

一番の原因は、息子が自由に遊べる時間が少なかったことですが、「せっかく十和田まで来ているのに」と思ってしまう母と、「友達とたくさん遊びたい」と思う息子の葛藤は、どこにいても続いていくんだと実感させられました。

都会的な暮らしが身についている私は、ついつい「どこかへ連れていかなきゃ」と思ってしまいますが、十和田市で暮らす人々を見ていると、大人が子供に何かさせることは、あまり必要ないのかなと感じました。

それよりも、子供と思いっきり遊べる時間をつくること、子供の生活リズムに大人も合わせること、周りにいる人たちとみんなで子育てを楽しむこと、それが何より大切なんだと思います。

子育てをしていて思うのは、日本中、世界中、どこに住もうと、”その街に住めば子育てがしやすくなる” なんて理想郷のような街はない気がしています。結局は、暮らしやすい環境を自分が作れるかどうか、それだけです。

 

この仕事をしていると、日本各地で暮らすさまざまな人に出会いますが、共通しているのは、自分の力で仕事や暮らしを作りだしていることだと感じています。もちろん、自分で仕事や暮らしを作り出すというのは、簡単なことではありません。移住してから挫折することもたくさんあると思います。

ただ、一つだけ言えることは、自分が住みたいと思う街で、一緒に過ごしたいと思う人たちと子育てしたほうが、格段に楽しくなるだろうし、そういう仲間は、自分が一歩踏み出した時に助けてくれる人なのかもしれません。

そういう意味で、私にとっての十和田市は、一緒に居たいと思う人がたくさんいるし、よそ者であっても前から知っていたかのように迎えてくれる人たちがいて、アートな文化が育んだ多様性が、街にも暮らす人々にも根付いているのが、十和田市に惹きつけられる魅力のように感じました。

もし十和田市に移住したいと思っている人がいたら、足を運ぶだけでなく、現地の人たちと出会える場所を、ぜひ訪ねてほしいと思います。どうしたら会えるか分からないという人は、ぜひ十和田市役所の移住相談窓口を尋ねてください。

十和田市で出会った人々は、それぞれに業界や職種も違っていて、いろんな仕事をしている人がいます。分野が違っていると相入れない部分が多いように思いましたが、そうではなくて。分野が違うからこそ、役割分担ができているというか、お互いに補い合って支え合って、仕事も子育ても一緒に楽しみながら暮らしているのだと分かりました。

それは、人口が多い都心部ではまずあり得ないことで、何よりの地方の特権なのかもしれません。市役所の人もデザイナーも建築家もカフェ店主も地域のおじちゃんも、みんな距離が近くて、一人知り合いになったら、きっとたくさんの人に出会えます。

それが、一度訪れるとたびたび訪れたくなる、十和田市に魅せられる一番の理由だと思います。

(文:須井直子)

 

|十和田市で、子どもと暮らすことについて考える。|連載

1) 佐藤さん一家の暮らしかた

どこに住むかより、誰がそこにいるか。”十和田の親” に見守られて、成長する家族のこれから。

2) 丹上さん一家の暮らしかた

この地で叶えたい夢を追い続ける、移住家族の物語。

3) 親子で十和田市に暮らしてみたら

前編 ・ 後編