【TURNS編集部が行く-東京都青梅市-】
都心までほどよい距離感の青梅で、リノベ&起業する人々

東京都の北西部、自然豊かな環境にありながら、新宿まで約1時間とアクセスのよさを誇る青梅市。自然と都市、田舎のよさを併せ持ち、いま、移住希望者の注目を集めています。江戸時代の宿場町と昭和の商店街の情緒が入り混じる旧青梅街道沿いは、どこか懐かしさを感じる街並み。

そんな旧青梅街道沿いで、空き物件をリノベーションし起業した人たちを、TURNS編集部が訪ねました。

青梅市文化交流センターから旧青梅街道の青梅駅前方面の眺め。左の写真は昭和43年頃の様子

生活に身近なモノ作り。
静かで自然豊かな青梅で目指す働き方を実現へ

BUTLER  森井隆介さん

生活に寄り添う家具屋さん

青梅駅から旧青梅街道を東京方面に歩いて5分。無垢の家具が印象的なお店が現れる。2017年9月、森井隆介さんは家具工房兼ショールームの『BUTLER』をオープンした。

「BUTLER(執事)のように生活に寄り添い、そっとお手伝いする」

そんな思いが名前の由来になっているという。

美術系の大学に進み、最初はファインアート系の彫刻を学んでいたが、次第にプロダクトのように使えるものに魅力を感じ、家具を製作するように。卒業後は家具メーカーに就職したが、長男の誕生を機に、子育てしやすい静かなところに住みたいと考えて青梅に引っ越した。

その後独立して『BUTLER』を構えることに。

「青梅市の創業支援センターに独立の相談をしに行ったときに、アキテンポ不動産の存在を知りまして。そこでお世話になり、この物件に出合いました。

通りに面した表側がハンコ屋さん、奥が印刷工場になっていて、防音対策もされており、工房にすごく向いていたんです。大工さんと2人がかりで改修工事を行い、壁を塗ったり床を張ったりして、けっこうな部分を自分たちで作り上げました」

お客さんの顔が見えるモノ作り

店内にはメイプル、チェリー、ウォールナットを基本とした木材で作られた、様々な家具や小物が並ぶ

今年で7年目を迎えた『BUTLER』だが、現在はどのような仕事を行なっているのだろうか。

「主にオーダーの箱物、テーブルや椅子、キャビネットとかテレビ台を作ってます。あとは工務店や設計事務所と一緒に仕事をして作り付けの家具を作ったり。小物のオーダーも受けているので、ほぼ何でもですね」

ショールームには思わず手にしたくなる小物、家や部屋を明るく彩ってくれる椅子やテーブルといった家具が並ぶ。

「多摩地域のオーダーが多くて、ちゃんと顔の見える距離でモノを作りたいと思っていたので、それにはだいぶ近づいてる状態かと思います。」

青梅に居を構え15年、その魅力については次のように云う。

「山も川も近いので、自然が好きな人はいいのではないでしょうか。公園が多いのと、新宿まで1時間ぐらいで行けるのでそこは利点だし、生活しやすいと思います。いい場所ですね。たぶん一生ここでやっていくと思います」

落ち着いた様子に青梅暮らしの充実ぶりを感じさせた森井さん。そのお店も青梅の街にしっかりと融け込んでいた。

「BUTLER」
東京都青梅市本町150
https://butler-furniture.jp/

毎日色を変える山が感動的。
都心での打ち合わせも快適で移住者を受け入れてくれる街

EMDesigns 齋藤貴志さん

自然豊かな西東京への憧れ

旧青梅街道の青梅駅と東青梅駅のほぼ真ん中、ガラス張りの建物。入り口で迎える大きなクマが目を引くこの事務所で『EMDesigns』の齋藤貴志さんは仕事をしている。

「ずっと音楽をやっていたんですが、Eマイナーの曲が大好きで(笑)そこから屋号を取りました」

名前はもちろん、一歩事務所に入ってもデザイナーらしい遊び心と居心地のよさに配慮した空間が広がる。

「僕は東京の東側の葛飾区の出身。工場ばかりの自然が全くない場所だったので西東京にずっと憧れを持っていたんです」

まず西東京に2年住み、西東京の暮らしに満足を覚え、青梅に家を購入。そこからもう14年になる。

「青梅暮らしは、ちょっと歩いたところに自然があって、それがすごく魅力的です。山は毎日見てると色が変わっていくことをここに来るまで知らなくて、感動しました。いまだにいいなと思います」

現在は独立して青梅の事務所で仕事を行うが、以前は都内の職場に通勤していた時代もあった。

「移住後2年ほどは表参道まで通勤していたんですけど、始発なので毎回必ず座れるんです。だから電車の中で本を読んでデザインの勉強をしたり、そういう場としてすごくいいなって。今でも通勤したいぐらいです(笑)」

通勤組も見方を変えれば大きな利点を見出せる。生活を独自に捉える齋藤さんのデザイナー的視点が感じられた。

【右上】以前はお弁当屋さんだった物件をリノベーション。「経年変化した看板も面白く、改装後のイメージができたのでここに決めました」【右下】事務所内の壁は自身で塗ったそう 【左】入口のクマは自宅から持ってきたもの。今では事務所のシンボルとなっている。その後ろにあるオレンジ色のタイルは、以前のお弁当屋さんの名残をそのまま生かした

地元に根づく開いたデザイン

「ここを借りて事務所を開いて5年ぐらいです。中心市街地活性化事業で空き店舗を紹介してもらって、ここを知りました。元々はお弁当屋さんで、外見がすごく気に入ってリノベーションをしてから開業しました」

向かいの通りから見ると(左下写真)黄色いテントにかすかにお弁当屋の名残が見られるが、中は完全にデザイン事務所として様変わりしている。

「壁はDIYして自分で塗って、建具も全部新しく作りました。作業用のテーブルは『事務所に合うテーブルを』と青梅の大工さんにデザインからお願いして作ってもらいました」

室内を飾る絵や版画もほとんどが青梅近隣の作家さんの手によるものだとか。

「以前はほとんど都心の仕事だったのが事務所を構えてから青梅の仕事が増えてきました。

何となく地域に受け入れられたという感覚があって、今までそういうことを感じた街はなかったので、すごく好きです。今後のプランは特にないけど、必要とされる人間であり続けたいと思っています」

自らイベントも手掛け街の人たちと積極的に交流するなど、すっかり青梅人として暮らしている齋藤さん。その暮らしを語るときの表情は、とても満足そうだった。

 

EMDesigns
東京都青梅市西分町2丁目2−38
https://emdesigns.me/

アパレル業から転職し起業。
街の理解と援助を得て、武蔵野うどん店をオープン

こみちの製麺所 幸太郎うどん 浜辺尚弘さん・よしみさん

ゼロから作れる感動を求めて

青梅駅から旧青梅街道を右に。小さい看板『幸太郎うどん』から左へ路地を下がる。アパート?とおぼしき物件の1階にその店はある。

「僕も妻も以前はアパレルの仕事をしていました。結婚やコロナを機に働き方を見直し、何か事業をやりたいと思って、その中でうどん屋が思い浮かんだのです」

2人はアパレル時代に赴任していた名古屋で出会い、意気投合。自分たちの好む東京や埼玉式のうどんが名古屋ではあまり見られないことから、自宅で趣味としてうどん作りを始めた。特に尚弘さんは、仕事を終えて帰宅が夜11時や12時の深夜となってもそこから作り始めるほど、うどん作りにのめり込んだという。

「自分が好きなものをゼロから作れる感動がある、とすごく楽しそうでした」(よしみさん)

「何か自分で作り上げるっていうのを元々やりたかったのかなって。ストレスを感じたとかにうどんを打つとポジティブになれて、無心でやっていました」(尚弘さん)

その後、仕事の都合で川崎市に移るが、うどんの道を極めたいと練馬区にある『正太郎うどん』に弟子入り。

「結構遠いし朝も早かったですけど、お休みの日に練馬まで通って習ってました。そして2年後に、師匠から独立の許可を頂きました」(尚弘さん)

屋号は師のお店から太郎をもらい、『幸太郎うどん』とした。

〝近所に当たり前にあるうどん屋〟を目指して

のれん分けの許可を得てから約1年かけて当時の仕事を整理。並行して物件探しに取り掛かったものの、なかなか場所が決まらず苦労したという。自然が多い場所を求めて秩父など埼玉方面にも足を運ぶなか、ふと青梅が思い浮かんだそうだ。バイクが趣味の尚弘さんは青梅にもツーリングで訪れたことがあり、久しぶりに電車で足を運ぶと「ビビっと」くるものがあったという。

青梅に決めてからは動きが早かった。21年4月に前職を退職、6月末に青梅に来て、8月初めから1ヵ月をかけ元はワンルームだった住居をお店に改築。9月末にオープンという怒涛の展開。緊急事態宣言中の開店だったこともあり、お店は朝と昼オープンの2部制。現在もこのスタイルで営業している。

「今はコロナも落ち着いてきましたけど、結果的にこれが合っていたということで続けています。」(尚弘さん)

店は3年目を迎え、青梅暮らしも間もなく2年半となる。最近、少し奥に入ったエリアに古民家を買い、2人でリノベも始めたそうだ。

「知らない土地で心細くなるんじゃないかと思っていましたが、応援してくださる方がすごく多くて、この場所にしてよかったと思います。昔から住んでいるような気持ちになっています」(よしみさん)

目指すのは『正太郎うどん』のような地域に根づく“当たり前にあるうどん屋”。思わずうどんを買って帰る雰囲気のよさがすでにお店に溢れていた。

こみちの製麺所 幸太郎うどん
東京都青梅市上町352−2
https://koutaro-udon-de-happy.com/

文・長谷川亮 写真・北原千恵美 阪本勇

一般社団法人 こーよ青梅

「人と人」「人とまち」を繋げる役割を担いながら、関係する諸団体と連携・協働し、「アキテンポ不動産」「おうめマルシェ」など、まちのにぎわい創出および地域経済の活性化と好循環を図る事業を行うことで、青梅市の発展に寄与している。

青梅市内での開業を支援。アキテンポ不動産

一般社団法人こーよ青梅が実施する、空き物件のオーナーと開業希望者のマッチングをサポートする事業。定期的に賃貸されていない空き物件を丁寧に調査し、物件の開拓を行う。開業希望者が安心して開業できるよう、青梅商工会議所の創業支援センターと連携を図りサポートも行う。


青梅市移住情報

◆青梅市移住・定住ポータル「My Home, My Ome」

https://myome.jp

◆青梅市 地域経済部 シティプロモーション課 シティプロモーション係

〒198-8701 東京都青梅市東青梅1-11-1

電話:0428-22-1111(内線2309 シティプロモーション係)

                   

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