秋田にUターンしてSee Visionsを設立し、エリアリノベーションなどを手掛ける東海林諭宣さんと、同じくUターンでそこで働く山本美雪子さん。
いつか故郷の商店街を盛り上げたい、と不動産事業に取り組もうとする山本さん、それを会社として支援するという東海林さんに、TURNSプロデューサー堀口が、秋田に帰って働くということについて聞きました。
別に「いつか」じゃなくていいな、そんなに待たなくてもいいなって。
堀口:まずはお二人の経歴や、どんな人生を歩んできたかを教えていただけますか?
東海林さん:秋田県美郷町出身で、農家の21代目の長男に生まれました。進学するのも歓迎されず、公務員になれ、って感じだったんですけど、それを振り切って東京に進学して。
なにかやりたいことを見つけよう、と思ってデザインを始めて、デザイン会社に入って店舗デザインやグラフィックデザインをしていました。その後フリーランスになって、2006年にご縁で秋田に会社を作るということになり、今17期目の株式会社See Visionsをやっています。
堀口:山本さんはいかがですか?
山本さん:私は秋田県秋田市出身です。実家があるのは秋田市の新屋という商店街の通りで、祖父の代にクリーニング屋さんをやっていたんですけど、そこで生まれ育ちました。
小学校、中学校と吹奏楽部、高校は軽音楽部に入っていたんですけど、そこで演奏会を企画したりしているうちに人が集まるのってすごくおもしろいなと思うようになって。
それをきっかけに、イベントや音楽の力でまちが元気になったらいいなと思うようになり、まちづくりに関する勉強がしたくて、横浜市立大学に進学しました。
卒業後は関東で就活して内定ももらったんですけど、「やっぱり秋田に帰りたい」って気持ちがどんどん強くなってしまって。ちょうどその頃ヤマキウ南倉庫がオープンしたという情報を目にしたんです。
「こんなところで働きたい」って思って猛アタックをして、在学中にインターンをさせてもらって、新卒で入社し、今年の4月で3年目になったところです。
堀口:私の世代では、まちづくりに関わりたいっていう人は全然いなかったんですけど、今は多いですよね。
山本さん:多いかもしれないですね。地方がおもしろいよね、って同年代で同じように思っている人が多くて。
私も高校生のころは東京や横浜みたいなところに憧れたんですけど、向こうで暮らしているとやっぱり秋田の方が好きだなって思うようになりました。
堀口:なるほど。「いつかは」と思っていたのが、大学を出てすぐに帰ってこられたと。
山本さん:そうですね、別に「いつか」じゃなくて、そんなに待たなくてもいいなって思って。
堀口:東海林さんはなぜ秋田で起業されたんですか?
東海林さん:帰巣本能的なところだと思うんですけど、なんか秋田と関わりたいなと思っていて。
デザインの事業をフリーランスでやっていたらどんどん仕事が増えてきたので、まあ起業しようか、という感じで。
起業家精神とか、社長になりたいとかの思いは全く無くて、なんとなく今に至るというところなんですけど。
堀口:空き家や、空き物件をなんとかしたいという思いは最初からあったんですか?
東海林さん:そうですね、最初からありました。古いものをみると燃えるんですよね。誰もが見離しているようなものこそ、光をあてたら目立つんじゃないかっていう。
©︎オジモンカメラ
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堀口:なるほど。空き店舗を利用した飲食店が4店舗あるんですよね。もっと増やす予定はあるんですか?
東海林さん:いえ、飲食の事業はそれほど増やそうとは思っていなくて、当初3店舗で打ち止めにしようと思っていたほどなんですけど。
ただやっぱり僕も農家の人間なので、秋田の食材とか、「食」で誰かをハッピーにするってことをしていきたいとは思っています。コンテンツを活用しながら食で地域を盛り上げていきたいなと。
彼女のように若い人たちのやりたいことを、会社として支援していく
堀口:See Visionsには秋田出身者が多い、というイメージがあるんですけど、それは意図しているわけではなくて、やっぱり秋田に帰って何かしたい、という方が多いのでしょうか?
東海林さん:そうですね。秋田出身者の中でも、秋田にずっといる人より一度県外に出てこっちに戻ってきてなにかやりたいっていう人が多いかもしれないです。
堀口:山本さんの今のお仕事は?
山本さん:企画部です。ヤマキウ南倉庫運営担当というのをベースに、いろんなイベントの企画をしたり、館内の管理や、入っているテナントさんとコミュニケーションとったり。コミュニティマネージャーのようなことを基本的にはやっています。
あと宅地建物取引士の資格を取ったので、今は不動産業を新しく始める準備段階に入っています。
東海林さん:彼女のように、若い人たちがやりたいことを社内でベンチャー的に事業としてやっていこうと思っているんです。それは同年代の社長たちとも話をしながら進めていたりして。
彼女がしたいまちづくりっていうのをちゃんと事業ベースに乗せてやっていくために、会社としても支援する。そうすることで、色々なスキルが社内に育って多角化して、結果的に会社も大きくなるとも思うんですよね。
堀口:そうしていかないともったいないですよね。
宅建のように、やりたいことがあればスキルを学ぶことへの投資もするんですか?
東海林さん:そうですね。
堀口:よき理解者ですね。東海林さんは秋田に住まれてから長いですが、移住する際に気をつけることや、地域でなにかするときの秘訣みたいなのはありますか?
東海林さん:なんでしょうね。やりたいことを発言していると自然とコミュニティが生まれてくるし、みんなが支え合う状況を作れるんじゃないかなと思います。
堀口:なるほど、発信するのは大事ですよね。
山本さんはなにか感じていることはありますか?
山本さん:秋田に帰って働き始めてからは、関わるのが年上の年代の方ばかりだったので、はじめはどんなふうに接したらいいかわからず、コミュニケーションをとるのが難しいなと思っていました。
でも、自分が自分らしくいれば、いつかお互いにどんな人かはわかってくるし、あまり気取らないでありのままでいていいんだなと思い始めてからは、いろんな人とのコミュニケーションを楽しめるようになりました。
亀の町も地元ではないので知らないまちだったんですが、ここで働く地域のみなさんが会うたびにお話ししてくれたりして、今は第二の自分の居場所だなと思えるようになりましたね。
こんなふうに楽しく暮らせるし、帰ってきたらいつでも受け入れるよっていう姿勢を見せておきたい
堀口:秋田のいいところってどういうところですか?
突出してるなとか、やっぱり秋田のここがいいんだよっていうような。
東海林さん:自然はどこにでもありますし、食っていっても全国それぞれの土地においしいものがあるので、これはっていうのはない。だけど、僕はもう離れられないなと思っています。よく釣りをするんですが、秋田市は30分あれば海も山もいけますし、暮らしていてすごく楽しい。
山本さん:私は「地元だから」っていうのが一番強くて。地元の商店街がどんどんシャッターだらけになっていくのを見て、ここをなんとか守りたいという危機感のような思いが原動力となって、帰ってきたっていう感じです。
堀口:先ほどこの建物を案内してくださっているときも思ったのですが、ご表情や話し方から、会社のことがめちゃくちゃ好きで、仲間が好きで、仕事が楽しいっていうのが伝わってくるんですけど、同世代の友達で、山本さんの働き方とか話を聞いて地方に行きたいって言う人はいたりしますか?
山本さん:結構いますね。中学、高校の頃の友達ってほとんど関東のほうで働いているんですけど、いつか子育てするなら帰ろうかなとか、なにかのタイミングで秋田に帰りたいなって言っている人はたくさんいるんですよね。ただ多分、自分の中でタイミングを探しているというか。
だから私は秋田の暮らしをたくさんいろんな人に見せて、こんなふうに楽しく暮らせるし、帰ってきたらいつでも受け入れるよっていう姿勢を見せておきたいなと思っています。
堀口:なるほど。今後やってみたいことやチャレンジしたいことはありますか?
山本さん:先ほどもお話しした不動産の事業がこれから本格的に始まっていくので、亀の町エリアはもちろん、私がもともとやりたかったことである新屋の商店街など、そういうエリアにどっぷりと関わっていきたいと思っています。
それと個人としては、同年代で面白いことをしている人が秋田にどんどん増えているので、そういう人たちともっとたくさんつながって、秋田の暮らし楽しいよね、という共通認識を広げていけたらいいなと思います。
堀口:素敵ですね。移住で悩んでる人とか悶々としてる人にアドバイスするとしたらどんなことがありますか?
例えば慎重になるよりも飛び込んだ方がいいのかどうか、とか。
東海林さん:飛び込んだ方がいいと思います。
秋田の給与水準をあげないといけないとか地域としての課題もあるんですけど、そこじゃない「ゆとり」の方が秋田の若者は楽しんでいるなと思っていて。僕も同時並行で「秋田のゆとり」を楽しんで発信していけたらいいなと思います。
堀口:山本さんは移住に対してはどうですか?
山本さん:まずは一度、短期間でもいいから暮らしてみてほしい、と思っています。
私も最初は秋田に帰るかどうか悩んでいて、だんだん帰りたい気持ちが大きくなったのでUターンを決意したんですが、多分、どうしようかな、いつ帰ろうかな、と思っている人はいると思うんです。
それなら、一度どんな暮らしなのかを体験してみれば、「今かもな」って思えるかもしれないし、「今じゃないかもな」って思えるかもしれないし。
都市にいてずっと悩んでいるようだったら、まずは短期間でもいいから暮らしてみてほしいなって思います。
堀口:移住というものを「まず体験してみる」っていうのはおすすめかもしれないですね。
写真・文/横尾涼
INFIORMATION
■『Find New Life!』特設サイト
秋田は田舎、というイメージがどうしても先行する。そこでの暮らしは、時々「何もない」と言われることもあるかもしれない。だけど、他にはない“地域資源の恵”がそこにはある。
今、秋田にはそうした魅力を感じ、「理想の生き方や暮らしはここ・秋田にある!」 と信じて移住してくる若者が増えている。
彼ら・彼女らは、秋田のフィールドを存分に活かして、やりたいことにチャレンジし、生き生きと暮らしている。そう、秋田はそれができる場所。
自分らしい生き方が見つかる場所。
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秋田県内の移住に関する情報や支援制度などが検索できるポータルサイトです。
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