「北薩摩のほっくほく」鹿児島県北薩地域へのU・I・Jターン者の暮らしぶり

鹿児島県の「北薩摩」って、どんなところ?

鹿児島県の「北薩摩」は、薩摩半島の北部に位置し、熊本県との県境に接する阿久根市・出水市・薩摩川内市・さつま町・長島町の3市2町で構成されています。

鹿児島県の中でも農林水産業や製造業が盛んな地域であり、九州新幹線や南九州西回り自動車道も走っており、鹿児島市や熊本市、福岡市などへの交通の便にも恵まれています。

POINT①:農林水産業
北薩摩の西側には、東シナ海が広がっており、甑島や獅子島等の離島があります。各地でブリや鯛などの養殖が行われ、ばれいしょや豆類、かんきつ類などの栽培も盛んです。

POINT②:製造業
特産の農林水産物や食肉等の食品加工、芋焼酎の製造が盛んで、自動車部品や電子部品等の製造工場も立地しています。また、伝統の和紙や竹細工、薩摩切子などの製造、太陽光や風力等の発電事業も行われています。

POINT③:観光
国定自然公園の甑島、日本文化遺産の麓武家屋敷群、雲仙天草国立公園の一部である長島町の島々、ラムサール条約登録湿地である藺牟田池や出水ツルの越冬地があり、紫尾温泉や市比野温泉、川内高城温泉など県内有数の温泉地でもあります。

 

北薩摩のほっくほく
会いたい時に、逢いたい人に、あえるまち。

コロナ禍が私たちの世界を一変させてから、二年近い月日が経ちました。今年1月に総務省が発表した統計では、ついに東京23区の転出者が転入者を超えたそうです。これは日本人のみの統計だった頃にさかのぼって1996年以来のこと。

人は、夢を求めて都会を目指した時代から、豊かさを求めて地方を目指すようになったのでしょうか。いえ、今はこうしてインターネットでだれともすぐにつながれる時代、豊かな地方に暮らしながら同時に夢を求められるようになったのかもしれません。

今、社会は大きな転換期にあります。ここ、鹿児島県の北薩地域でも同様です。家業を継ぐため、パートナーの地元だから、子どもを自然の中で育てたい、さまざまな理由でU・I・Jターンしてきた人々の生活を少し覗いてみました。

※本記事は、鹿児島県北薩地域の移住者の暮らしぶりを伝える動画「北薩摩のほっくほく」の紹介です。詳しく知りたいという方は、紹介のあとにあるURLから動画をご覧ください。

 

地元の阿久根にUターン
大人になったいま新たな発見を楽しむ

阿久根市出身の松﨑翼さん。一度は福岡に移り住んだものの、都会に疲れ、「地元の阿久根だったら落ち着ける」と思いUターンを決意。以前より収入も増えて、余裕のある暮らしを送っているそうです。そんな中でデメリットはというと、とくに体を動かす体験の選択肢が少なくなること。趣味のジャグリングも、都会のイベントに参加しづらいのが少し難点。

でもその分、ほっと落ち着ける魅力もたくさんあります。都会生活と違って車を運転するようになった松﨑さん、意外で、新しい発見が増えました。たとえば道の駅周辺の海辺からは毎日いろんな風景が見られ、とくに夕日がきれいだそう。地元でのふれあいは「みんな陽気でリラックスしていて、雑に喋るのでかえって過ごしやすい」と話します。

昔なじみの友だちもおり、何かあれば声をかけてくれるので安心。今はいっしょに働く仲間にもなりました。仕事は生ゴミを肥料に変えるという、地域に貢献すること。「農業という形から阿久根を盛り上げたいと思います」と想いを語ってくれました。

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出水で実家のみかん農家を継ぎ
前職を活かしIT農家とカメラの日々

出水市出身の福脇慎一さん。神奈川の半導体メーカーに16年勤めたあと戻ってきました。実家は代々続くみかん農家、昔から子どもながらに自分が引き継ぐと思っていたとのこと。「帰ったタイミングはちょうどいいか、少し遅かったくらい」と振り返ります。収入が下がった点はデメリットであるが、食べるものについては野菜などが家庭菜園で調達できる点がメリットであるようです。前職は後ろ髪を引かれながら辞めた分、お世話になった人たちに恩返しとして自分が育てたみかんを贈ります。

帰ってきて一番よかったと感じることは、雑踏から離れて自然に囲まれ過ごすこと。ずっと夢だった写真を、自分で撮って自分で発信。自然豊かな出水、「人間以外の被写体は何でもありますから」と話す福脇さん。みかんは温度も湿度も管理が大事、前職で使っていたセンサーの知識を積極的に取り入れます。今後やっていきたいことは情報発信、今は離れていても自分の考えを伝えられる。「やりたいことを決めて、実現する方法は時代ごとに変わるので、その認識でいればブレずに進められるんじゃないかと思います」と語ってくれました。

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京都から薩摩川内にIターン
意外と便利で、子どもも生き生きしてる。

京都からIターンした田村翼さんは、ガス会社で働きながら画家活動も行う二足のわらじ。仕事ではお客さんとの会話で、方言で何を言っているか分からない場面があるものの、お茶やお菓子を振る舞われることも多いそうです。京都では食べないことが礼儀でしたが、こちらは「これ持って帰り」とお菓子や、ときには農家さんからスイカやイモといった野菜までもらうことも多い、と笑う田村さん。

薩摩川内には広い公園が多く、家のすぐ近くにも公園があり、川や海など自然も豊富。晴れの日は外で遊ぶことも多く、妻の有沙さんは「娘がお転婆な方なので外で遊べた方が私たちも安心する。子どもも生き生きしていてそれがよかったです」と話します。田村さんは今後について「個展などもやっていきたいと思います」と語ってくれました。

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いちごまんじゅうを継ぐために
さつま町でないと食べられないこと発信したい

東京で7年働いてUターンした、是枝樹さん。ご両親と三人で、さつま町の銘菓であるいちごまんじゅうをつくっています。弟さんが帰らないと宣言したこともあり、「兄弟では自分しかいない」と家業を引き継ぐことを決心して帰ってきました。

地元での生活は、話を聞いてくれる先輩が多く、温かさを感じることに以前の生活と比べて「帰ってよかったな」と思うとのこと。一方で、東京で働いていたパスタ屋とは客層が違うため、話題を考えることも多いそうです。地元に帰った時期が2020年11月頃。最近では時間に追われることも減り、ゆっくりとした田舎の生活リズムに戻ってきたと感じています。

さつま町はおいしいものが多いことが自慢で、「気持ちにゆとりが出て、仕事も生活も成果が出るのではと思う」とのこと。やっていきたいことは、やはりいちごまんじゅうをたくさんの人に食べていただくこと。「さつま町に来ないと食べられないと認識してもらうためにも、これからは情報発信に力を入れたいです」と語ってくれました。

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子どもを小さい頃から慣れさせたいと長島に移住
地域の応援を受けながらカフェオープン

栃木からIターン、「ら・ら・ら珈琲」を切り盛りする小﨑彰子さん。「子どもが小さい頃から土地に慣れていた方がいい」と考え、夫の昭邦さんの地元である長島に移住しました。彰子さんの移住前の居住地は都会の宇都宮、移住当初は「店がないな、移動がとても大変だなと思いました」と振り返ります。はじめは子どもの具合が悪くなったときに小児科探しで苦労もしましたが、今では島内の医療施設もずいぶんと整ったそうです。

開店準備にあたりダメ元で役場に相談したところ、町長が「若い人がイチからお店をはじめるなら」と親身に話を聞いてくれ、協力もあって景色の良いところを借りることもできました。長島のよいところは「どこもかしこも景色がよく、お魚がおいしいところ」と小﨑さん。栃木では刺身は高くて食べなかったとのことですが、長島では本当にオススメだそうです。

お店では、長島の農家さんが作ったさつまいもを使ったスイーツを提供。これからも情報発信をしながらお店を盛り上げたいと考えています。「子どもには心豊かにこの長島で育っていってもらいたいなと思っています」と語ってくれました。

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座談会で北薩の魅力を再発見
日本各地の魅力もお互いに知っていきたい

これまで紹介した5組のU・I・Jターンしたみなさんに、地域の自慢の特産品を持ち寄って集まってもらいました。それぞれの移住ストーリーがありながらも、共通する部分や違った部分を通して、北薩生活の新たな魅力を再発見できる座談会になっています。

沖縄のような南国をイメージしていたら意外と冬が寒くて驚き。でも夏は木陰などが多く、カラッとしていて過ごしやすいそうです。春は桜、秋はキンモクセイと四季はハッキリ。ちょっと行けば、海あり川あり山ありと自然が豊富で子どもが遊べる場所も恵まれている。

北薩にはおいしいものがたくさん。米、地鶏、黒毛和牛、黒豚、焼酎。もっと世に知られてもいいはず。地方は不便と言われるけど、買い物なら生鮮食品はむしろ新鮮。そうでないものもネット注文で短時間で届くので、「今は地方の方がメリットが多いんじゃないか」という声も。ただ、都会で通っていたチェーン店がないのは少し残念という意見もありました。

方言は、Iターンにとって悪戦苦闘。聞き返すと悪いと感じてそこは笑顔でフォロー。ふつうに喋っていても上から言っているように思われたり、逆に怒ってると思ったり、感情を伝えたり受け取ることには時間が必要みたいです。でもUターンにとっては方言は安心要素。

そして最後に、出水市にUターンした福脇慎一さんのお話が印象的でした。

「我々の町への移住のきっかけになるか分からないですが。日本津々浦々素晴らしいポイントはあると思うんですよね。たとえば、姉妹都市を結んで、お互いの土地を知ることからスタートして、その先に住んでみようという動機が湧いてくるのはありえるかなと思います」

それぞれの土地に暮らしながら、ほかの土地を知るきっかけが常にあるというのは、自由に住む場所を選ぶ上でとても素敵なことだと思います。これを機に、ぜひ北薩地域の紹介動画「北薩摩のほっくほく」をご覧になってみてください。それがきっかけになれば幸いです。

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文/ネルソン水嶋

                   

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