サウナ・滝・森林セラピー… 水と森のまち
茨城県大子町で自分をみつめる時間はいかが?

【ツアーレポート/インタビュー】

東京から約2時間半。常磐道と国道118号を経由し、久慈川の清流を辿って行った先に茨城県大子町があります。

大子町は日本三名瀑・袋田の滝でよく知られ、行楽シーズンには多くの観光客で賑わう、県内でも有数の観光地。太平洋に面する茨城県の中でも、内陸部に位置し、寒暖差が大きい気候が特徴です。そうした環境を生かしたりんごやお茶は、甘みが詰まった茨城の知る人ぞ知る名産品。
一方で広大な森林面積を有し、林業で栄えた町でもある大子町。地域の資源として、大子の森は古くから大切に扱われてきました。

今回はそうした森林資源を生かしたワーケーションプログラムのモニターツアーに参加。サウナ・滝・森林セラピーなどなど… 盛りだくさんのコンテンツで、心も体もリフレッシュ。心なしか参加者同士の距離もググッと近づく、そんなツアーの様子をレポートします。

また、後半では大子町に暮らし、大子の森とともに生きるお二人のインタビューも掲載。大子の豊かな自然の中で、自らのなりわいを営みながら楽しく生きるお二人のお話は、日々の生活のなかで私たちが忘れていたものを思い出させてくれました。

 

1日目
〜新感覚! 古民家のお庭を眺めながらテントサウナ!?〜

ツアーの集合場所に指定されたのは、JR水郡線の常陸大子駅。水郡線は茨城の県都である水戸から、清流久慈川沿いに、福島県の郡山まで伸びる路線。久慈川が織りなす雄大な自然を眺めながら、水戸から約1時間半の電車旅です。

駅に到着し、電車を降りるとキリッと冷たい、冬の空気に全身が包まれます。今回のツアーに参加したのは東京など首都圏在住の会社員のみなさん。日々都会で暮らしているみなさんは、大自然に囲まれるのは久しぶりという方が多いようです。一行はさっそく送迎バスに乗車し、最初の目的地に向かいます。

大子町の名産である奥久慈茶の茶畑を眺めながらバスに揺られること約20分。到着したのは、その昔林業で財を成したという名家の邸宅、旧吉成邸です。旧吉成邸は現在、大子町が主体となりリノベーションを実施し、町の新たな観光スポットとして生まれ変わっている真っ只中。今回はそんな旧吉成邸の広々としたお庭を使って、テントサウナを体験します。

立派な古民家のお庭を使わせていただき、テントサウナを体験します。

テントサウナを準備してくれたのは、茨城県の地域おこし協力隊として活動されている鈴木友貴さんです。


とても気さくで笑顔が素敵なお方でした。

鈴木さんは、東京都内有名サウナ店での勤務や、海外でエコツーリズムを学んだという経験の持ち主。そうした経験から、現在はサウナというコンテンツを通じて、その地域の魅力やポテンシャルを引き出し、活性化をはかる活動をされているのだとか。この日用意してくれたテントサウナにも、鈴木さんがチョイスした大子の魅力がたっぷり詰め込まれていました。

まずはサウナストーブの燃料となる薪木。こちらは大子の特産であるりんごの木を剪定した枝木を使用しています。さらに、ロウリュに使われる水には、奥久慈茶の茎茶をアロマとしてブレンド。一般的な奥久慈茶には葉っぱの部分が使用され、茎の部分は廃棄となってしまいます。一方で、茎茶は甘い風味が特徴で、時間をかけて抽出すると優しい香りがふわっと広がります。また、熱々のサウナストーンにかけても焦げ臭くならないという特徴もあり、鈴木さんは茎茶をアロマとして採用。地域の特産品を生かし、なおかつ食品ロスの軽減にも寄与できる、エコロジーでサステナブルな、一石二鳥のアイディアです。


茎茶は休憩中のドリンクとしても振る舞われました。まろやかな甘さが◎でした

そんな大子の魅力がたっぷり詰まったサウナでは、初対面の参加者同士が膝を突き合わせ、ゆったりと揺れる火を眺めながら汗を流します。

そしてサウナを出れば、待ち構えているのは澄み渡った大子の冬の空気。深呼吸をすると、体の中に溜まった澱んだ空気が一掃され、サウナで出た汗とともに、デトックス効果も倍増した気分でした。


初対面の参加者同士でも思わず笑顔がこぼれます

大子の大自然に包まれながら、鈴木さんの至れり尽くせりのサウナパフォーマンスを楽しんだ参加者一行は、身も心もととのった様子。鈴木さんに見送られながら旧吉成邸を後にしました。

すっかりサウナに心奪われた一行でしたが、時計を見てみると、すでにお昼をまわる頃に。次の目的地、ゆばの里では、大子のもう一つの名産である湯葉をふんだんに使ったランチをいただきました。

大子町の湯葉は、地元茨城県産の大豆と、大子町の北に鎮座する八溝山から湧き出る水を使用しており、まさに大子の大自然を味わえる逸品。タンパク質が豊富である一方、脂質が少ない湯葉は、体にやさしい食材でもあり今回のツアーにはぴったりの食事です。


ゆばのやさしい味が体に染み渡りました

食事の後には、特別にゆばの里の工場内でゆばの引き上げをしている様子も見せてもらいました。先ほどのランチで出てきた湯葉やお豆腐は、こちらの工場でその日の朝に作られた新鮮なものを使用。文字通りできたてほやほやの湯葉やお豆腐を食べられるのです。

ゆばの里でお腹も心も満たされ、次に向かうのは日本三名瀑の一つ、袋田の滝。

袋田の滝は「四度の滝」とも呼ばれ、四段の大岩壁に勢いよく水が流れ落ちる、圧巻の大パノラマが特徴。また、四季によって大きく姿を変えるのも、袋田の滝の魅力。夏の新緑や秋の紅葉、それに真冬の厳寒期に現れる氷瀑と、訪れる人を飽きさせません。


氷瀑はこの時期ならではの季節の表情です

ちょうどこの日は大子町で今シーズン一番の寒さを記録した日だったということもあり、水墨画のように美しい氷瀑を見ることができました。

大子の雄大な自然の中で大いにリフレッシュし、1日目の日程はこれにて終了。初日から大子の魅力を、まさに滝のように浴びてきましたが、2日目には今回の旅のもう一つの目玉である森林セラピーが待ち構えています。真冬の大子で大自然を満喫するモニターツアー、このままの勢いで2日目に行ってみましょう!

 

2日目
〜冬空のもとで五感を開放! ツアーの目玉・森林セラピーへ〜

1日目に引き続き、2日目も大子の空は広く晴れ渡り、すっきりとしたお天気。厳しい冷え込みは1日目と変わらずですが、朝の景色はまさに一級品で、朝日が照らす木々の梢や、久慈川に浮かぶ川霧の美しさには、思わず心惹かれます。

さて、大子町の大自然を巡るモニターツアー、2日目はいよいよおまちかねの森林セラピーです。さっそく宿からバスに乗車し、会場へと向かいます。

大子町の中心部から山あいの道をたどり、約15分ほど。深い森の中に現れたのは、広大な敷地を有する奥久慈憩いの森です。森の中に入ったことで先ほどよりもさらに冷え込みが強くなってきましたが、トレーナーの方にカイロや手袋をご用意いただき、準備万端。いざ冬の大子の森へと出かけます。

※今回は屋外ということもあり、森の空気を目一杯呼吸するためにもマスクを外して森林セラピーを実施しました。

今回の森林セラピーを案内していただくのは、大子町森林セラピートレーナーの会の大関慧美さん。


引率よろしくお願いします!

大関さんは元々ヨガの先生もされていたことから、十数人が在籍するトレーナーの会の中でも、ヨガを織り交ぜた森林セラピーが得意なんだそう。このように、大子町の森林セラピーは、異なる特技を持ったトレーナーの方が在籍しており、複数回参加してさまざまなタイプのセラピーを楽しむ方もいるとか。

(記事の後半では大関さんのインタビューも掲載しています。ぜひご覧ください)

森林セラピーの最初、まずは広場で荷物を降ろしてから準備体操を始めます。ヨガのポーズを取ったり、深呼吸をしたりしながら、少しずつ体を自然の方へと預けていく感覚です。そして、耳の後ろに手をあてて、森が奏でる小さな音を体に集めます。


耳に手をあてて神経を集中させます

このように耳をすましてみると、聞こえてくるのは鳥のさえずりや木の枝の葉が擦れる音−−−。日常の中では雑音にかき消されてしまいそうな音ですが、大自然の中に包まれると、普段の生活の中で私たちがいかに多くのものごとを見落としているかということに気付かされます。

徐々に自然に体を慣らしながら、さらに森の奥へと進んでいきます。


木漏れ日が美しい冬の森

道すがら、森の中に植えてある木を見つけては、幹に触れてみたり、葉っぱの匂いを嗅いでみたりと、五感を使って自然を体験します。


木の皮についている薄緑のものはウメノキゴケという苔の一種なんだそう


こちらは木の枝を使って指のツボを押している様子


葉に顔を近づけて匂いを嗅いでみます

印象的だったのは、葉っぱを擦って匂いを嗅いだ時に、「香水の匂いがする!」と感じたこと。でも本来であれば、葉っぱの香りをまねて香水を作ったはず…… いかに自分の存在が自然から離れていたかを思い知らされました。

森の中には、この時期ならではの自然が見せる表情も。池には氷が張り、近づいてみると、その表面はまさに自然が織りなす芸術そのもの。小さな気泡や落ち葉が標本のようになって、氷に閉じ込められています。さらに、池の水際にはふきのとうの小さな芽も。森林セラピーの開始時には気づかなかった自然のささやきも、だんだんと聞こえるようになってきました。


近づいてじっくり見てみると、ちいさな自然の美しさに気付かされます

しばらく森の中を歩いていると、だんだんとおなかが空いてきました。すると、何やら遠くの方に白い煙が……?

なんと森の奥で待ち構えていたのは、焚き火とお昼ご飯! 森林セラピートレーナーの会のみなさんがサプライズで用意してくれていました。今期最低の気温を記録したという寒空のもと森の中を歩いてきた一行は、飛びつくように焚き火の周りへ。


火の周りには自然と人の輪ができ、会話が始まります


ほかほかのスープとおにぎり。寒さでかじかむ体に染み渡ります

そして、お昼は手作りのおにぎりとスープ。見てのとおり、ホクホクです。ちなみに、先ほどトレーナーの方にはそれぞれ得意技があると書きましたが、お昼ご飯を作ってくださった方は、ハーブやアロマの専門家でもあるトレーナーさん。この日のために、オリジナルのブレンドでハーブを配合したスープやドリンクをご用意いただきました。トレーナーのみなさんのスペシャルなサービスにより、参加者一同身も心もぽっかぽかです。

焚き火とお昼で温まったあとは、森の中でいちばん見晴らしがいいところまで登ってみました。ここからは、栃木県の那須や福島県の会津駒ヶ岳の方まで見通せるんだとか。雄大な山並みを前にすると、自分がちっぽけな存在に感じられて、普段抱えている悩みなんて大したことないように思えてきます。

広い空と向こうまでずっと続く山並み。私たちは自然のおおらかさに抱かれて生きている…

景色を眺めたあとは、一人一人がそれぞれの場所につき、瞑想タイム。頭の中を空っぽにして、風や大地と一体化する感覚を味わいます。


童心に帰ってそのまま地面にゴロン

完全に自然と一体化した境地に達したところで、盛りだくさんのプログラムもいよいよ終盤に。最後は輪を囲んで1日の振り返りをします。


参加者同士の絆も深まりました

森林セラピーは1ヶ月に1度くらいのペースで続けるのがいいとのことで、参加者のみなさんも「ぜひまた参加したい!」と、森林セラピーの効果を実感している様子でした。

森林セラピーはこれにて全プログラムが終了。トレーナーの方に別れを告げ、最後に向かったのは天然温泉「関所の湯」です。


山奥にひっそりと佇む名湯です

大子町には大子温泉、袋田温泉、月居(つきおり)温泉と、三つの個性豊かな温泉が湧き出ており、それらを合わせて奥久慈温泉郷と名乗っています。その中でも「関所の湯」は「百病を治す湯」と言われる袋田温泉のうちの一つ。トロッとした湯質が特徴で、真冬の外気で冷えた体を芯から温めてくれます。

大子の大自然を巡るモニターツアーはこれにてすべての行程が終了。最後は解散場所の常陸大子駅で皆さんと笑顔で手を振り合いました。


最後は常陸大子駅で記念撮影

この2日間、取材という名目でツアーに参加しましたが、僕自身がいちばん楽しんだのではないかというほど、大子の大自然を満喫しました。本当に子どもの頃に戻ったかのように、自然と戯れ、他の参加者の方と仲良くさせていただき、自分の素の部分を見つめ直す良い機会となりました。

東京からも2時間半でアクセスできる大自然、大子町でのワーケーションはもちろん、暮らすも良し、まずは観光も良し! 大子町を知る最初の一歩としての森林ツアーに、あなたも参加してみてはいかがでしょうか?

 

森林ツアーや移住の相談窓口:大子町まちづくり課

TEL:0295-72-1131

▼参照URL
移住関連:https://www.town.daigo.ibaraki.jp/page/dir003270.html
森林セラピーや森林ツアー:https://daigo-foresttherapy.com/

 

インタビュー 〜大子の森と生きる〜

ここからは現在大子町に暮らし、森と関わることをなりわいとされているお二方へのインタビューをお届けします。

まず一人目は建築士で工務店の社長でもある、菊池均さん。大子の地で長年森や木を扱う仕事をされてきた菊池さんは、自らのスキルや経験を活かし、木や自然を身近なものとして感じてもらうためのさまざまな取り組みを行ってきました。

二人目の大関慧美さんは、先ほど記事でご紹介した森林セラピーのトレーナーをしながら、ご主人の実家で営まれている「月待の滝 もみじ苑」のお手伝いもされている方。大関さんは県都・水戸市からの移住者でもあり、都市部と大子の暮らしの違いについてもお聞きしました。

 

これまでも、これからも大子の森と生きるために。

−「大子の大工」一級建築士 菊池均さん

一級建築士の菊池均さんは建築士の資格を持ちながら、もともとは大工としてずっと現場に立ち、自らの手で木と関わってきた方。「古い伝統の中から新しい住まいを考える」をキャッチフレーズに、その人その人の生活に合った、心から居心地が良いと思える家づくりをされてきました。「当たり前のことをずっとやってきただけ」と語る菊池さんですが、一方で木と触れ合う木工教室を開催したり、自らが作成した木工家具を公共施設に贈られたりと、木を通じた社会貢献にも積極的に取り組まれています。「もっと多くの人に森への関心を持ってほしい」という菊池さんの想いを伺ってきました。

菊池さんが大子の森と関わるようになったのは、高校の担任の先生に大工になることを勧められたのがきっかけ。当時、地元の有名ホテルを設計するなど、大子町の中で大きな信頼を置かれていた親方のもとで、菊池さんは大工の修行を始めました。

「一級建築士と名乗っているけど、それは肩書きのために取ったの。大元は大工の仕事をやっていて、親方に教えてもらった『自分で作りたいものを自分で作る』仕事をしている。今も昔もそうやって当たり前のことをやり続けているだけ」


工場には大子産の木材が整然と積み重ねられていました

そう語る菊池さんの家づくりは、徹底した「住む人目線」が持ち味。現代的な建売住宅のような「住む人が住まいに合わせる」家づくりではなく、「住まいが住む人に合わせる」、人にやさしい家づくりを心がけているそうです。

「家づくりは建物を作れば終わりというわけじゃない。その土地土地の気候や土壌、そして住む人の生活スタイルによって都度都度必要な住まいというのは変わってくる。だから長い時は数年かけて、施主さんと顔を合わせて話し合って設計するんだ。今いるこの家は自分で設計してつくったけど、どうしても施主さんに納得してもらえない時は自分の家を見せて説明することもある」

ご自宅に使われている建材はほとんどが木から削り出した自然由来のもの。部屋に入った瞬間に、あたたかな木の風合いに包まれ、自然と肩の力が抜けるような居心地の良さでした。


建物自体はもちろん、建具や家具も手作りです

そんな菊池さんのこだわりの家づくりには、現代のライフスタイルへの危機感が隠れているようです。

「昔は家づくりのための建材はもちろん、燃料となる炭も山の木から採っていた。生活丸ごと山からいただいていたようなものだから、人間と森はすごく距離が近かったんだよね。それが今はどうか。周りを見渡してみても化学物質由来のものが多く、木のような自然由来のものはほとんどない。そうなると当然森との距離は離れ、山は荒れるよね。数年前に台風があって久慈川が氾濫したけれども、あれは山の木に元気がなくなって保水力が落ちたのが原因の一つだと言われている。森を大事にしないといつか良くないことが起きるという自然からのメッセージだと思うな」

ずっと木や森と関わり続けてきた菊池さんだからこそ、森とともに生きることがどれだけ大切なことかがひしひしと伝わってきます。こうした意識をより多くの人に持ってもらうため、菊池さんは現在、一般の方向けの木工教室や、山での植樹活動など、森に触れ合うさまざまな活動を行っています。


現在製作中だという腰掛け椅子。座ってみると作りの良さがわかります

「当たり前のことをやり続ける」。菊池さんが繰り返し言っていたこの言葉こそが、人と森とが長いお付き合いをしていく中で、最も大切なことなのかもしれません。

 

自然に身をゆだね、どんな状況でも楽しんで生きる。

−森林セラピートレーナー 大関慧美さん

二人目の大子の森と生きる人は、森林セラピートレーナーの大関慧美さん。森林セラピーではトレーナーとして引率していただきました。

出産を機に茨城県水戸市から大子町へ移住し、「月待の滝」の前で蕎麦屋を営むご主人の実家へ嫁いだ大関さん。水戸とは大きく異なる環境で日々を過ごす中、どのようにして森林セラピーと出会ったのでしょうか。

大関さんが大子町へやってきたのは、今から13年前の2009年のこと。結婚と出産を機に、出身地の水戸から、ご主人の実家がある大子町へと移住してきました。


ご主人の実家は、袋田の滝と並ぶ大子のもう一つの名瀑「月待の滝」の目の前にあるお蕎麦屋さん。

窓から滝を眺められる、絶好のロケーションを誇るお蕎麦屋さんです

そんなお家に嫁入りし、まさに夢のような田舎暮らしがスタートしたかのよう。ですが、大自然に囲まれた大子での暮らしは、すべてがはじめてのことばかり。お蕎麦屋さんの手伝いをしながら、家事に育児にと、日々奔走する生活を送っていました。

そんなある時、大関さんはふとしたきっかけでヨガの教室に通い始めることに。

「当時は出産や子育てなどもあり、身の回りの環境が目まぐるしく変わっていくさなかで、心身ともに疲れ果ててしまっていて。息抜きで何か新しいことを始めようと探していた時に、大子でヨガの教室をやっている方がいると聞いて、ちょっと気になって行ってみたんです」


移住して13年が経ち、大子町を支える存在に

実際にヨガをはじめてみたところ「しっくりきた」と大関さん。それから2年後、これまでヨガを教えてくれた先生に勧められ、講師の資格を取得し、今度は大関さん自身がヨガを教える立場に。

それからさらに2年後には、友人の誘いがきっかけで、今度は森林セラピーの講師資格取得にもチャレンジ。エコツーリズムの第一人者であるC・W・ニコルさんの講演を聞いたり、大子町森林セラピートレーナーの会に入会するなど、徐々に森林セラピーの知識を習得。そして、2021年度から始まった大子町の森林セラピープログラムでは、1期生のトレーナーとして、大子の森の魅力を参加者に伝えています。

「大子に来てからは家を出たらすぐ森がある環境で、それが当たり前だと思っていました。でも、そうした環境に自分がヨガをやっていた経験を掛け合わせることで、自分だけでなく、より多くの方に大子の森を知るきっかけを提供できてるのかなって。自分が経験してきたことをうまく活かせているなって思います」


ヨガ講師の経験は丁寧な説明にも表れていました

「やりたい!」と思ったことをやり、そこで積み上げた経験を次の挑戦へと活かしている大関さん。その生き方にはどこか憧れを感じます。

一方で、そうした生き方の陰には、常にご家族の支えと、自らを包み込んでくれる大子の環境があったといいます。

「主人の家族には本当によくしてもらっています。森林セラピーをやっている間は主人の両親に子どもの面倒を見てもらったりしていて。家族の支えがあるからこそ、自分の好きなことにも取り組めています。それと、やっぱり家から出てすぐのところにこれだけ豊かな自然があるというのは大きいですね。コロナで子どもたちも出かけにくくなってしまいましたけれど、森の中だったら周りを気にせず遊ばせることもできます。それはやっぱり大子町の魅力だなと思いますね」


森を案内する中で、ご自身も自然に癒されているそう

大子の自然に身をゆだね、自らの人生を謳歌する大関さん。大関さんのお話を聞いていると「自分も大子町に移り住んで、大関さんのように人生を楽しみたい!」と思えてきます。そんな揺れる心を後押しする言葉を、インタビューの最後、大関さんからいただいてきました。それはずばり……

「どんな状況でも、楽しもうと思えば楽しめる!」

移住というのは人生の中でも大きな決断。いつかしたいと思っていても、不安なことがたくさん思い浮かんでなかなか一歩踏み出せない人も多いはずです。でも、大関さんのように新しい土地で自らを開放し、自然の中でのびのびと生きる人の姿を見ると、大子の森との暮らしが人をいきいきさせている事を実感します。みなさんもぜひ大関さんの朗らかな笑顔に会いに行ってみてはいかがでしょうか?

 

清らかな水と豊かな森に囲まれた大子町の今回のツアーでは、自然と素の部分をさらけ出すことができ、自分の悩みや迷いを忘れることができました。参加されたみなさんが次第に自らの心を開き、打ち解けていく様子もとても印象的でした。

大子町ではサウナや森林セラピーなどを盛り込んだワーケーションや研修のプログラムを用意し、企業の受け入れも行っているとのこと。都心から2時間半の距離で味わえる大子町の大自然に、あなたも飛び込んでみてはいかがでしょうか?

 

文・久保田貴大 写真・中島悠二

                   

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