都心からすぐに行ける里山
神奈川県松田町で日帰りワーケーション体験

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神奈川県松田町で日帰りワーケーション体験

東京新宿から小田急線に乗って1時間20分で行ける里山。神奈川県の西部に位置する松田町は、都心からのアクセスに優れた街です。1月中旬〜2月初旬にはロウバイ、2月初旬〜3月初旬は河津桜の名所として、一足早く春がやってくるエリアでもあります。大きくは小田急線の新松田駅やJR御殿場線の松田駅、町役場などがある市街地の松田地区と、山間部の寄(やどりき)地区に分かれ、利便性と大自然の良さを両方味わえるところも魅力。移住、2拠点、ワーケーションなど、さまざまなつながり方ができるエリアでもあります。

今回は、東京から松田町を訪ね、日帰りワーケーションを体験。そのレポートをお届けします。

〈AM10:00〉

小田急線新松田駅から徒歩数分の松田町役場へと向かいます。新宿駅から8時半過ぎの電車に乗り、資料を読んでいる間に到着。車なら東京から約1時間で着くそうです。イメージしていたより松田町はずっと近いエリアでした。

▲小田急線新松田駅までは新宿から急行で1時間20分

まずは、松田町役場の定住少子化担当室の鎌田拓哉さんの案内で、松田地区を徒歩で散策。新松田駅と松田駅はすぐ近くで、駅周辺にはコンビニ、カフェ、食堂などもあり、生活に不便はなさそうです。駅近くの商店街からは富士山がキレイに見えました。松田町は丹沢山地にも近く、周辺の山々の登山の起点になる街でもあります。

▲晴天の日の松田町では、あらゆる場所から富士山がキレイに見える

東京からも通える距離なので、郊外暮らしがしたいなら、仕事を変えずにこの周辺に住むことも現実的に考えられます。駅前の誰でも無料で利用できる無人休憩所「つむGO」は、デジタルサイネージも設置され松田町の情報収集や時間調整にもってこいの場所。その隣の産直所では、松田町の特産品のミカンをはじめ、キャベツやブロッコリーなどの旬の野菜も販売しているので、帰りにはぜひ立ち寄りたい場所です。

【つむGO】

神奈川県足柄上郡松田町松田惣領1215

▲駅前には飲食店もあります

JR松田駅の前を通って、線路を渡って駅の南側へ。通りを一本入ると、昔ながらの風情を残す塀瓦に囲まれた一角が見えてきます。日本酒好きの方ならその名を知る「松美酉」をつくる『中沢酒造』です。創業は文政8(1825)年。約200年に渡り、この地で酒造りを続け、現在は10代目と11代目が親子で杜氏を務め、それぞれの個性を活かし、さまざまな銘柄の日本酒をつくっています。

▲塀瓦に囲まれた立派な建物が並ぶ『中沢酒造』

酒蔵の前には直売所があり、できたての日本酒はもちろん、酒粕、日本酒を使ったスイーツ、フェイスマスクなども販売。そして、いくつかの銘柄を、有料の試飲サーバで試飲や利き酒をすることもできます。この試飲サーバーは大人気で、登山者が下山後の楽しみとして立ち寄ることも多いそうです。11代目が「中沢」という名前が付いた幻の酵母を復活させてつくった松みどり 純米吟醸 S.tokyo」をいただきましたが、優しい甘みと酸味のバランスがワインのような味わいで美味しい! しっかり冷やしてワイングラスで飲むと、肉料理にも合うとのこと。お土産に酒ケーキや酒粕も購入し、小旅行気分を楽しみました。『中沢酒造』では、毎週土曜日に酒造見学(要予約)も開催しています。この日に合わせて松田町を訪れるのも良さそうですね。

▲『中沢酒造』の直売所。新酒ができた合図として軒先に杉玉が吊り下げられている(この杉玉はクリスマスの頃に吊り下げられたもの)

▲『中沢酒造』の試飲サーバーで利き酒

【中沢酒造】

住所:神奈川県足柄上郡松田町松田惣領1875

電話:0465-82-0024

HP  https://www.matsumidori.jp

 

〈PM13:00〉

駅近くの定食屋さんで昼食をいただいた後は、寄地区に移動して、ワーケーションができる施設へと向かう予定ですが、その前に、松田地区にある『西平畑公園』を散策しました。『西平畑公園』は、「松田山ハーブガーデン」、富士山や相模湾を一望できる「展望台レストラン」、子どもにも大人にも大人気のミニ蒸気機関車「ふるさと鉄道」の運行などもあり、家族で楽しめるスポット。ブランコに乗りながら富士山を見ることができる「スカイスウィング」もあります(このブランコは富士山を背景に空中ブランコに乗っているような写真を撮影することもできます)。ブランコに乗りながら、2月〜3月頃に『西平畑公園』で開催される「まつだ桜まつり」でこの場所が賑わうことを想像し、富士山と青空、河津桜のピンク、菜の花の黄色が織り成す春らしい景色を見てみたいなと思いました。

▲ブランコに乗りながら富士山を見ることができる「スカイスウィング」

【西平畑公園】

住所:神奈川県足柄上郡松田町松田惣領2951

電話:0465-85-1177

HP  https://nisihira-park.org

その後、「寄ロウバイまつり」が開催中の『松田町寄ロウバイ園』にも立ち寄りました。日本最大級の2万本のロウバイが、山の斜面に広がり、優しい色合いの黄色い花であたり一面が覆われ、ロウバイの良い香りが漂います。会場では地元の農産物やそれらを使った加工品、温かい甘酒や豚汁、お土産なども販売され、たくさんの人で賑わっていました。

▲寄地区の斜面に咲き誇るロウバイ

▲近くには茶畑も。足柄茶も松田町の特産品

「寄ロウバイまつり」の会場では、「焚き火あったまり処」を管理していた移住者の根本佐和子さんとの出会いがありました。もともと神奈川県茅ヶ崎市に住んでいた根本さんは、ご夫婦で山登りが好きで、山の近くで暮らしたいと6年前に家族で松田町に移り住んだそうです。寄地区を散策していたときに出会った築100年超の古民家を、DIYで修繕しながら暮らしています。古民家の土間には薪ストーブを設け、地元の森林から採れる間伐材を燃料として、暖を取るだけでなく料理もつくるといいます。

▲「寄ロウバイまつり」の会場で焚き火に薪くべて「あったまり処」を提供

根本さんはご主人が代表を務める「NPO法人仂」のメンバーの一員。地域資源を掘り起こし、持続的活用の場をつくりあげること、来訪者・移住者と地域との交流を活性化することを目的に、さまざまな事業を展開しています。たとえば土に埋もれていた炭焼き窯を再生させたり、里山整備により発生した間伐材を販売したり、バイオマス燃料として加工するなど、森林を保全しながら木をエネルギーとして循環させていくことで、地域が持続的に活性化することを目指しています。また、森のエネルギー利用だけでなく、野生動物の生息調査や巣箱の設置などを実施し、生き物の多様性に配慮した森を作っていきたいと考えています。

「いろいろな活動をやってきましたが、人のつながりが一番大切で、コミュニティをつくっていくことで、地域がサステナブルに結びつくと考えています。仂では定期的に里山保全に関連するイベントも開催していて、都内から通ってくれている仲間もいます。最近では都心との2拠点として週末移住してくる人も増えました。都心にもすぐに出られて、これだけの自然に触れられる場所はそう多くありませんから、今後もさまざまな形で松田町に興味をもってくれる人と地域をつないでいければと考えています」と根本さんは話してくれました。

▲ご主人が運営する「NPO法人仂」のメンバーとして活動している根本佐和子さん

【NPO法人仂】

住所:神奈川県足柄上郡松田町寄4639

HP  https://www.yadrok.com

この後は、車で20分ほど移動し、寄地区にある『寄七つ星古民家やえか』へ向かいます。途中、推定樹齢約550年の大スギがある「寄神社」、中津川の清流を眺める「大寺橋」などにも立ち寄って、松田町の歴史や自然の豊かさもしっかりと堪能しました。

▲「寄神社」の樹齢推定550年の大スギを眺める

▲「大寺橋」からは中津川の清流や上流の山並みを眺める

〈PM15:00〉

『寄七つ星古民家やえか』は、かつてはこの集落の村長さんの家だったという築100年の古民家をリノベーションした体験施設。自然体験、移住体験、ワーケーション、ワークショップ、イベントなど、多目的に活用することができ、事前に予約すれば宿泊することも可能です。玄関を開けると土間、小上がりの先には畳の広間があり、昔のまま残されている神棚や縁側など、おばあちゃんの家のような懐かしい雰囲気。一番広い15帖ほどの和室で掘りごたつに入って、パソコンを開いてワーケーションを体験しました。とても静かで落ち着きのある空間で、Wi-Fiも完備され、集中して仕事をするにはうってつけの場所です。水まわりやキッチンは新しいものに交換されているので、滞在中も快適に過ごせます。

▲築100年の古民家をリノベーションした『寄七つ星古民家やえか』

▲玄関を入ると大きな土間。ここで藍染めのワークショップをしたこともあるという

▲掘りごたつに入って、ほっこりしながらワーケーション

『寄七つ星古民家やえか』を管理・運営する株式会社DASI代表の御簾納(みすの)聖子さんは、千葉出身で東京から松田町に移住しました。移住のきっかけは、御簾納さんが狩猟に目覚め、ハンター仲間の紹介で寄に通うようになったこと。狩猟が目的で何度か訪れるうちに、丹沢山地の麓にひっそりとある隠れ里のような雰囲気の松田町の虜になってしまったといいます。

「寄地区は、丹沢山系の清らかな伏流水がいたるところに流れ、山も川も海もすぐ近くにあり、季節の移り変わりを色濃く感じます。自然がとても豊かなのですが、ものすごく厳しい自然というわけではなく、街とも程よい距離感があり、アウトドアが好きな人にはたまらない場所です。現在、『寄七つ星古民家やえか』の他にも、関東で最大級の広さの『寄七つ星ドッグラン』の管理・運営など、さまざまな仕事をしながら、狩猟で獲ったシカやイノシシを使った、ジビエメニューの提供やドッグフードへの加工などにも挑戦。野生生物による農林業被害を減らし、環境を保全しながら、シカやイノシシを無駄なく使えるような事業を進めていきたいと考えています」

そう話す御簾納さんは、『寄七つ星古民家やえか』を拠点に、さまざまな自然体験プランや定期的なワークショップなどを提供しています。中にはジビエ料理の夕食付きの猟師体験などのプランもあり、里山に関わるきっかけや移住の疑似体験として、活用していきたいと感じました。

 

【寄七つ星古民家やえか】

住所:神奈川県足柄上郡松田町寄709

HP https://yaeka.jp/

※『寄七つ星古民家やえか』の体験メニューは、遊んで学べる体験プラットフォーム「aini」でも申込みができます。

ainiHP https://helloaini.com/users/212085

 

また、今回は立ち寄ることができませんでしたが、寄地区にはコワーキングスペース付き貸し農園『Farmers’ Park 西湘うみかぜふぁーむ』もあり、月額会員制で畑のレンタルが可能です。農具貸し出しは無料で、都心から手ぶらで通いながら野菜づくりが楽しめます。都心住まいで農的な暮らしがしたい人にもぴったりの場所なのです。

【Farmers’ Park 西湘うみかぜふぁーむ】

住所:神奈川県足柄上郡松田町寄3057

HP https://umikaze.farm/fp/

 

最後に松田町役場の鎌田さんからこんな言葉をもらいました。

「松田町も少子高齢化で、地域の産業や活動の担い手不足が加速していますが、それらすべてを住人や移住者でやろうとするのは大変です。移住する人が増えるのが一番嬉しいのですが、通ってくれる人や積極的に関わってくれる人が増えることでも、地域の産業や活動は活性化すると感じています。根本さんや御簾納さんのような移住者が吸引力となり、人と人がつながることでコミュニティができ、たくさんの仕組みが生まれ、それが松田町に興味をもってくれる人を、柔軟に受け入れる器になっていけばいいなと考えています。今後もそのような活動に興味を持つ人を、松田町としてもサポートしていく予定です」

里山暮らし、ワーケーション、2拠点生活、半農半X、農的生活など、時代のニーズを満たす場所が、都心から気軽に行ける場所にある。もしかしたら仕事を変える必要もなく、理想の暮らしが一足飛びに叶ってしまうかもしれない。関わり方は一つではなく、一人ひとりのスタイルに合わせてフレキシブルに選んでいける。松田町はそんなポテンシャルを感じさせてくれる地域です。実際に神奈川県から田舎暮らしを目指し、県外への移住を検討しながらも、探しに探した後に同じ県内の松田町に移住を決める人も多いといいます。灯台もと暗し。幸せの青い鳥は、意外と近くにあるのかもしれません。

河津桜も見頃を迎えたこの季節、ぜひ、一度松田町に足を運んで、春と新しいライフスタイルを先取りしていただければと思います!

 

文:村田保子

                   

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