【地域×企業のミライを考える】
オンライントークイベント vol. 1 開催レポート

楽天とJALから学ぶ、 “本気の地方創生” とは?
これからの “地域×企業” のあり方には、無限の可能性がある

4月28日(水)、宮崎県新富町に本拠地を置く一般財団法人「こゆ地域づくり推進機構」(以下、こゆ財団)と、“これからの地域との繋がり方”を提案するローカルライフマガジン「TURNS」が、「地域×企業のミライを考える」と題したオンライントークイベントを開催しました。

全12回に渡ってシリーズ化されることが決定したこの「地域×企業のミライを考える」トークセッション。記念すべき第1回は、企業による地方創生を牽引するトップランナーの楽天・塩沢友孝さんと、JALのキーパーソン・小檜山大介さんをゲストに迎え、それぞれが経験した「地域×企業」ストーリーを紹介し、意見を交わしあう展開となりました。

【ゲスト】
楽天グループ株式会社 コマースカンパニー地域創生事業 ジェネラルマネージャー 塩沢友孝さん
日本航空株式会社 営業推進部観光推進室 小檜山大介さん

【モデレーター】
一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 高橋邦男さん
TURNSプロデューサー 堀口正裕

開催にあたりモデレーターの堀口は、「今、こゆ財団のある新富町をはじめとする様々な地域で、ワクワクするような官民協働の取り組みがたくさん起こっている。その活動を知るとともに、地域とコラボレーションしている企業の第一人者であるゲストの皆さんと、地域と企業における今後の可能性を探っていきたい」と挨拶。満を持してスタートしたトークセクションは、こゆ財団および楽天、JALの取り組み紹介へと続いていきました!

 

「日々、新たな挑戦が生まれている」。新富町発、こゆ財団の多彩な取り組み

最初に紹介されたのは、こゆ財団の取り組みです。宮崎県新富町の役場からスタートしたその歩みと多彩な活動内容に、モデレーター堀口をはじめゲストの皆さんも聞き入りました。
以下、その活動内容をまとめてお届けします。


まずはモデレーター高橋さんの自己紹介から!

こゆ財団とは?

2017年に宮崎県新富町の役場、行政が設立した地域商社。「世界一チャレンジしやすい町をつくる」というビジョンを掲げ、「外貨を稼ぐ」「人を育てる」の2軸で活動しています。地域課題は「空き家増加」をはじめ、「農業の衰退」「担い手不足」を抱えていますが、そのような課題を解決するべくtechnologyを活用した新しい農業にチャレンジ中です。

“いかにチャレンジをたくさんつくっていけるか”  に挑戦し、進学で地域外に出て行く子どもたちが「帰ってきたい」と思える「持続可能な地域づくり」を目指しています。

 

〜「こゆ財団」のこれまでの取り組み〜

①農業で「稼ぐ」ふるさと納税の運営において、3年間で40億以上の寄付を実現。
野菜セット定期便や、グッドデザイン賞を受賞した1粒1000円のライチ販売など、希少価値の高い作物を活用し、さまざまな農家と独自の取り組みを実施しました。

②ふるさと納税で得た利益を、人材育成に活用。
都市部と地域でゼミ式講座を開き、起業家精神を醸成。新しい価値、機運をつくってきました。3年間で77名受講、7名が新富町に移住し、新商品開発、空き店舗で飲食店開店など、新規事業の種がここから誕生しているのです。

③地域×企業による取り組み
・ユニリーバ ジャパンと2019年に連携協定を締結し、持続可能なまちの実現にチャレンジ中!同社グローバルブランドのマネージャーが町の子どもたちに特別授業を実施し、子どもが書いた絵を「ダヴ」に掲載し、売上金の一部をウミガメ保護に活用されました。

2021年にはサッカーJ3に参戦するテゲバジャーロ宮崎のホームスタジアム「ユニリーバスタジアム新富」が完成。女子クラブチームも誕生するなど、サッカーまちづくり計画も進行中です。

・ENEOSとの協働プロジェクトにおいて、農地の上部に太陽光発電システムを設置するソーラーシェアリングを導入。スマート農業推進へと進みます。

・本社工場を新富町に移転してきたクリエイティブファクトリーと協働し、まちのキャラクター「おとみちゃん」が2021年に誕生しました。「アートでまちづくり」の推進へ!

新富町の多種多様な取組みに参加者たちが感嘆する中、高橋さんは今後の企業連携の可能性として、「ウミガメが来る砂浜を馬で歩くことができる」という観光体験の実施や、「民泊における企業研修プログラムなどを企業と一緒に磨いていきたい!」と語りました。

また、モデレーター堀口はこれらの取り組みを改めて振り返り、「新富町は、訪れる度に新しいトピックのあるまちなんです」と、新富町の持つエネルギーの魅力を紹介しました。

 

“地域×企業”のきっかけになりうる、「企業版ふるさと納税」

次に高橋さんは、新富町が  “まち全体で企業と地域の連携を推進する動きに力を入れている”  ことに触れ、そのきっかけとなっている「企業版ふるさと納税」についても詳しく紹介しました。

「企業版ふるさと納税」は、企業が自治体に寄付すると税負担が軽減されるという仕組みですが、制度改正により税控除の割合が9割になるなど、非常に利用しやすくなりました。これを受けて高橋さんは「今後は、地域×企業の新たな可能性として、ぜひ多くの企業に注目し、活用をしてほしい」と期待を寄せています。

 

Eコマースとデータ活用で「地域を盛り上げる」楽天と、
観光事業、人材活用で「地域への人流を作り出す」JAL

この後はいよいよ、ゲストの塩沢友孝さん(楽天)と小檜山大介さん(JAL)による自己紹介、企業としてこれまで行ってきた地方創生、地域とのコラボレーションについての紹介です。

 

楽天の地域創生活動

まず塩沢さんが語ったのは、これまで楽天は「稼ぐ地域をつくる」ことを掲げ、イーコマースを使っての経済活性化、外貨獲得を積極的に支援してきたということでした。

「プラットフォームとしてインターネット通販という武器をつかって、地域のお店の販売促進を支援していきたい、地域課題を伺いながら一緒になってサービスを提供していきたいというのが私達の思いです」(塩沢さん)

また現在は、楽天会員の買い物、旅行、ふるさと納税などの各データを活用して、各地域が「今後どこに注力すべきか」などの戦略を共に練り、地域ブランディングやPRを一緒に行う取り組みも実施中とのこと。

その他にも楽天では、39の自治体と協定を結び、「まち楽」としてWEB上の物産展を開催。ページ構築、広告露出、クーポンなどの販促実施支援などを通して、自治体や地域事業者への支援が行われていることが紹介されました。

塩沢さんから紹介された取り組みの中で、こゆ財団の高橋さんが「ぜひ、一緒にやってみたい!」と声を上げたのが、「VOYAGIN(ボヤジン)」。日本において様々な体験を提供するサービスです。たとえば、岐阜県鳥羽で実施している鍛冶体験は、サムライナイフを自分で作り、持ち帰ることができると言うことで、58,000円という価格ながら外国人に大人気だといいます。

ここでは、高橋さんからの「新富町のウミガメの来る海岸を馬で歩く体験も展開できれば」という提案に、「ぜひ、一度話をしましょう!」と塩沢さんが答え、すでに新たなコラボレーションが生まれる兆しがありました。

その後は、JALの小檜山さんから、JAL独自の地域とのコラボレーション活動が紹介されました。

 

JALの地域創生活動

JALの地域創生、ふるさとプロジェクトは、地域の密着活動、地域紹介、ニューノーマル対応、販路・流通支援など、自治体・世間・未来・JALの「四方よし事業」となっています。

具体的な活動としては、CAを中心としたアンバサダー、ふるさと応援隊の活動や新商品の協働開発、プロモーションなど。その他、移住や2拠点居住に向けた促進記事や、デュアルライフ体験型の旅パック開発などを地域と協働して行っているといいます。

「私達は、関係人口のその先、“常連人口” を増やしていこうとしています。そこから2拠点居住、移住へと進むモデルをつくることをしていきたい。そして、ゆくゆくは、日本だけではなく海外からの人流も作っていきたいと考えています」(小檜山さん)

その他、海外客も視野に入れた「ワーケーションの提案」などインフラと人材をフル活用し、直接的な地域支援だけでなく、国内外から地域への人流を作り上げようというダイナミックな取組みは、JALならでと言えるのではないでしょうか。

 

地域×企業の可能性を最大化するために、今、何ができるか

後半は4人による活発なトークセッションが展開。そこで語られたのは、「地域における観光への考え方をどうシフトしていくか」、「自治体職員と企業社員のチームビルディングについて」、「自治体と企業、それぞれの組織体制をどう活用していくか」などでした。

様々な議論の中で、各参加者からは、下記のような発言がありました。

「日本のほとんどの地域、“観光資源がない”という悩みを持っていますが、それは地域の可能性に気づいていないだけかもしれません。例えば2つの地域を1つのテーマでつなぐことができれば、“カテゴリー観光”という可能性が出てくる。“焼き鳥が美味しいまち”、“歴史的な物語があるまち”などのカテゴリーを自ら作り、連携すれば、観光ビックネームに対抗する力をつけていくことができるはずです」(小檜山さん)

「いい意味で仕事の領域が決まっていて越権行為が認められないのが自治体。一方で楽天は横ぐし刺すようなプロジェクトもあり、枠を飛び越える我々の動き方に驚いてもらえることもあります。様々な動き方ができるからこそ、業者ではなく地域に寄り添うパートナーとして自治体に入っていきたい。それを受け入れて課題をぶつけていただければ、目標を共有し、全力で一緒に走り出すことができきると感じています」(塩沢さん)

「コラボレーションの仕方、カテゴリーは無限にあると感じました。地域の課題は日本の課題。ここに目標がない人はいません。企業と自治体は、できることも立場も違いますが、人と人とのつながりの中で課題解決に向けて一緒に動いていきたいですね」(高橋さん)

「人と人との関係性など、それぞれのコラボレーションの背景には、言葉では説明できないようなストーリーがあるのだと気づくことができました。人口減少社会の中で、人口が増えたら幸せかといえばそうではない。官民が補い合うだけでなく、それぞれが目的をもって力を合わせ課題解決をしていくことが、これからは必要になるのだと改めて感じました」(堀口)

また、「どのような地自体が企業とのミライを上手に作っていけるのか」というテーマに関して、モデレーターの堀口は、「役割分担をしっかりしつつ、安心してチャレンジできる土台を作ることのできる地域。TOPが掲げるビジョンを全体で共有できている地域は、企業とのミライを上手に築くことができるのではないか」と語り、これには全員が大きくうなずきました。

 

“地域×企業” は “人×人” であり、何万通りもの可能性を秘めている

閉会にあたり高橋さんは、「皆さんのお話を聞いて、何でもできる気がしてきました」と笑顔に。全員がこの言葉に笑みを浮かべ、今後のコラボレーションの可能性を強く感じる瞬間がありました。

さらに高橋さんは、「あらゆるストーリーの解像度をあげていくと、そこにはやはり人がいると思う。つまり、“地域×地域” は、かみ砕くと “人と人” になるということ。例えば新富町の人口は約1万6千人。ここに1万6千通りの未来があるのだと思うと、これからの未来が楽しみでなりません」と締めくくりました。

「地域と企業の連携の仕方は無限にある。まだ気づいていない可能性を、これから続くこのオンライントークセッションでさらに深く考えていきたい」という堀口のメッセージもあり、これにて第一回のトークセッションは終了です。

 

次回は、「投資家やシンクタンクが注目する「地域の魅力」をテーマに、第二回トークセッションが5月25日(火)17:00~に開催される予定です。今回で明らかになった“地域×企業”の多様なコラボレーションの可能性を、さらに広く、持続的に展開するために具体的に何が必要なのかを掘り下げます。

「地域×企業のミライの形」がよりはっきりと、目の前に姿を現してくれそうなトークセッションシリーズ。次回も新たな可能性が生まれることを期待せずにはいられません。

 

●トークセッションアーカイブはこちらから
https://www.facebook.com/301761553206062/videos/200703181663332

 

~参加者プロフィール~

ゲスト

楽天グループ株式会社 コマースカンパニー 地域創生事業
ジェネラルマネージャー
塩沢 友孝(しおざわ ともたか)さん

2003年、楽天株式会社入社。社員番号555番。
入社後10年間、ECコンサルタント(楽天市場の出店店舗の売上アップのサポート役)として主に食品ジャンルを担当。「地域×EC」の可能性を思う存分、体感。その後、広報/PR/イベントの責任者として、大手百貨店との共同催事「楽天うまいもの大会」担当。名古屋タカシマヤでは1週間で3億円という記録樹立。2013年に地域活性部の立ち上げに関わりそのまま現職。現在は、39の自治体と包括連携協定を締結し、地域経済の活性化と地域課題の解決のために、地方自治体と楽天の70のサービスを繋ぐ役割として、全国を奔走する日々。趣味は高校野球とラグビーを観戦すること。

日本航空 営業推進部観光推進室
小檜山 大介(こひやま だいすけ)さん

1961年(昭36年)北海道旭川市生まれ。1984年に日本エアシステム入社し、2002年のJALとの経営統合後は長崎支店長やエリア販売室長を歴任。2014年4月、本社エリア販売室長、地域活性化推進室長を兼務。2018年4月山口県宇部市の総合戦略統括監。2020年4月日本航空路線統括本部レベニューマネジメント部地域振興担当マネ―ジャーを経て、21年4月から現職に。

 

モデレーター

一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 執行理事/最高執行責任者
高橋 邦男(たかはし くにお)さん

宮崎市出身。徳島県の出版社、大阪府の編集プロダクションを通じて地域情報誌や講談社、リクルートなどの大手メディアの企画編集に20年間携わった後、2014年にUターン。行政広報紙のリニューアルに朋なう官民連携プロジェクトのチーフディレクターを経て、2017年4月に一般財団法人こゆ地域づくり推進機構事務局長に就任。人材育成事業や視察研修を通じた1万人以上の関係人口を生み出しながら、企業誘致や移住促進に取り組んでいる。現役編集者として新富町やこゆ財団の広報活動にも関わっているほか、各種人材育成プログラムのモデレーターや講師としても登壇している。2020年4月より執行理事兼最高執行責任者に就任。

㈱第一プログレス 代表取締役社長
TURNSプロデューサー/総務省地域力創造アドバイザー
TOKYO FM『Skyrocket Company』 内「スカロケ移住推進部」ゲストコメンテーター
堀口正裕さん

北海道生まれ。早稲田大学卒。新しいライフスタイル、自立した自分らしい豊かな暮らし方、生き方を追求し、雑誌「tocotoco」「カメラ日和」「LiVES」等の創刊に尽力。
東日本大震災後、これからの地方との繋がりかたと、自分らしい生き方、働き方、暮らし方の選択肢を多くの若者に知って欲しいとの思いから、2012年6月「TURNS」を企画、創刊。「TURNSカフェ」や「TURNSツアー」、「TURNSのがっこう」といった、地域と都市の若者をつなぐ各種イベントを展開。地方の魅力は勿論、地方で働く、暮らす、関わり続ける為のヒントを発信している。

                   

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