50代で挑戦を決めたワインづくり。
ドメーヌヒデの渋谷英雄さんが多彩な知見に基づく独自のセオリーにしたがって選んだ土地は山梨県南アルプス市でした。
2015年に移住し、2020年の今ではすっかり地元の輪にも馴染んでいる渋谷さん。
移住までの経緯と、暮らしてみてわかった山梨のことをうかがいました。
「かたちのあるモノをつくりたい」
東京から単身で南アルプス市に移住し、マスカットベーリーAやピノ・ノワール、メルローなどの品種を中心に赤ワインをつくる醸造家・渋谷英雄さん。
移住のきっかけは「『モノづくり』がしたいと思ったこと」といい、自身のキャリアについて聞かせてくれます。
「生まれは東京、育ちは大阪です。20代は沖縄で航空管制官として空港に勤めたり、ダイビングスクールを設立してインストラクターをしたりしていました。30代でもう一度大学院に戻って臨床心理学を学び、それからはスクールカウンセラーを担当し、大学でスポーツ心理学を教えています。
心理というのは、“かたちのない”世界。50代にさしかかる頃、今度は“かたちのあるもの”をつくりたいと思うようになりました」
そんな折、頭に浮かんだのがお酒。
「お酒は人の心を豊かにしてくれます。私自身ワインが大好きだったので、ワインをつくりたいと思ったのです」と渋谷さんは続けます。
全国46ヶ所をテストして、最も水はけの良かった土地
2011年頃からワイナリーの見学のために山梨をしばしば訪れるようになり、2012年に勝沼の東夢ワイナリーで修行を始めた渋谷さん。
それからはより頻繁に東京と山梨を往復し、2015年に果実酒製造免許を取得します。
「どこでワインづくりをするのか、土地の選択は迷いました。そこで、日本全国46カ所に水をまき、水はけの良さをテスト。最も良かったのが南アルプス市でした。調べていくと、この近くには昔飛行場があったそう。不思議な縁を感じるとともに、空港は雨の少ない土地に設けられることを空港勤務の経験から知っていたことも後押しになりました」
畑の都合で選んだという南アルプス市は、“月夜にも灼ける”と言われるほど、日照りがあり、雨が降らないワイン用葡萄に最適地。
こうして渋谷さんは「美味しい日本ワインをつくる」という自身の夢を叶える土地を南アルプス市に決めたのでした。
地元の輪も応援する、50代の挑戦
ワインづくりを始めて5年、ドメーヌヒデの現在の生産量は年間1万2000本ほど。土地選びの他にも、月の満ち欠けを見ながらブドウの収穫時期を決める「ビオディナミ」と呼ばれる手法も渋谷さんのこれまでのキャリアを反映した哲学です。そんな渋谷さんのワインがどこで購入できるのかを尋ねると、地元のネットワークが見えてきます。
「僕のワインが置いてあるのは、地元の『ルーブル』というパン屋さん。ルーブルさんとは、発酵つながりのうえ、店主がワイン好きという共通点から親しくなりました。加えて、地元を発信しようと活動されていらっしゃいます。僕もここから日本ワインの美味しさを伝えていきたいと考えている人間ですから、意気投合できました」
渋谷さんがつくるワインの中でも特にめずらしいワインが「マシュマロネーロ」。世界にただ1本、南アルプス市にしかない品種「マシュマロネーロ」から醸造したロゼスパークリングです。
「この木、地元のおじいちゃんがつくった品種です。『マシュマロネーロ』というネーミングもとても洒落ていますよね。山梨に移住する前は、山梨はもっと田舎なのかな? と思っていたのも事実ですが、とても研ぎ澄まされた感覚を持った方が多いですね。人と出会い、いろんな刺激をもらえます」
マシュマロネーロは、現在渋谷さんだけが醸造。地域のいくつもの出会いが、渋谷さんのワインづくりに欠かせないものとなっています。
何かしたい人が、「何か」をはじめるなら
ワインづくりありきで南アルプス市に移住し、個人でワイナリーを設立した渋谷さん。明確な意思をもった“よそ者”は、地元に馴染むことができるか、反発されて孤立してしまうことはないのか、率直な意見を求めてみました。
「やりたいこと、とくに“ここで”やりたい仕事のある人はいくらでも繋がりができると思います。僕自身、『仕事で必要でしょ!じゃあ紹介してあげるよ』という具合でどんどん人の輪が広がっていきました」。こう話す渋谷さんはぶどうとワインをテーマにした「無尽」という山梨特有の飲み会に参加し、地元の輪にもすっかり打ち解けています。
ワインのために選んだ土地で、「まだまだやることがありますね」とはつらつとした笑顔を見せる渋谷さん。土と気候、ブドウ、月の満ち欠け、そしてつくり手の人柄も関与するというワインづくり。南アルプス市で、渋谷さんの挑戦は続きます。
「水はおいしいし、桃やさくらんぼで冷蔵庫をいっぱいする幸せも味わうことができました。これだけフルーツがおいしい土地は他にありませんね。映画館が空いていて、なおかつ設備がいいのも自分的にはとても嬉しいポイントです。山梨は、悪い所を探す方が大変な場所です」
プロフィール
山梨県 南アルプス市 在住
渋谷英雄(しぶたにひでお)さん
ドメーヌヒデ代表。東京都生まれ、大阪府育ち。沖縄・慶良間空港で航空管制官として勤務し、24歳で空港長に就任。沖縄に暮らしたことをきっかけに海洋に興味を持つと、ダイビング専門学校を設立。その後、学生との関わりの中で人の心や思考に興味を持ち、心理学を学ぶために東大大学院へ。現在は東洋大学客員教授としてスポーツ心理学を担当しながら、山梨県南アルプス市でワインづくりに情熱をそそぐ。2015年、単身で移住。
文・小栗詩織 写真・西 希
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