コロナ禍において、U・Iターン転職を考える人が増えています。そこで東京から愛知へ転職した女性二人に、転職活動や現在の暮らし、働き方などを伺いました。
松木優佳さん(左)
1990年生まれ。愛知県出身。愛知の大学を卒業後、就職のために東京へ。マーケティング関係の企業に2年間勤めた後、「大学職員になる」と一念発起。「地域にこだわりはなかった」という転職活動だが、縁あって学校法人名城大学へ転職しUターン。現在は入学センターで高校生向けの広報や入試対応などに携わる。取材当時、第一子の妊娠7カ月。産休・育休を取得予定で、ワーママとしての復職を目指している相川静香さん(右)
1987年生まれ。神奈川県出身。東京の大学を卒業後、都内の広告会社にてメーカーの販促・プロモーションに携わる。愛知で働く夫との結婚を機にIターン。現在はオーガニックコスメなどを製造・販売する株式会社ネオナチュラルの広報を担当。百貨店の催事では店頭に立つ他、自然あふれる岐阜の自社農場で畑仕事も。現在2歳と0歳の女の子のママ。テニスを楽しんだり、バンド活動でボーカルを務めたりと多趣味な一面も
|Iターン、Uターン。それぞれの経験者が語るメリット・デメリット
――相川さんはIターン転職を経験していますが、移住したばかりの頃に不安はありませんでしたか?
相川:知り合いゼロからのスタートだったので、そこは少し不安でした。
でも、いざ移住生活を始めてみると、夫の友人たちと仲良くなったり、会社の仲間とプライベートでも出掛けたり、趣味でバンドのボーカルに挑戦したりして(笑)、孤独を感じることはほとんどなく、それはうれしい誤算でした。
結婚する前、今の夫との遠距離恋愛時代に愛知へは遊びに来ていたので、「買い物するところもいっぱいあるし、思っていたよりずっと便利な街だな」という印象も強かったですね。
――Uターン転職の松木さんは地元に戻って感じたことはありますか。
松木:名城大学がある愛知は土地勘もあったので、安心感はありました。私が転職を決めた理由の一つは「長く働きたい」という思いがあったからなんです。
いま妊娠中なので、「実家が同じ県内にあると、育児へのサポートが心強いね」と言っていただくことがあるのですが、実は両親に「サポートしてもらいやすい」ことより、両親を「サポートしやすい」ことにメリットを感じています。
――それはちょっと意外な意見ですが、確かにそういう視点も大切ですね。
松木:今は元気な両親ですが、いずれ病気をしたり介護をしたり……ということが出てくるはずです。そのとき、自分が「サポートしやすい」ということも、女性が長く働くためのUターンのメリットだなと感じています。
|コロナ禍を経て、働き方はより柔軟に変化
――お二人の転職活動は、スムーズに進みましたか?
相川:ええ。愛知にはさまざまな業種の企業があって、東京と比べても引けを取らない印象です。東京から愛知に来ることで、就ける仕事の幅が狭まる、なんてことはなかったですね。
松木:私が転職活動したときには、面接のために東京-愛知間の行き来が、時間的にも金銭的にも大変でした。
でも、新型コロナウイルスの流行があってからは、Web面接を取り入れる企業も増えましたよね。そういう意味では、Uターン転職のハードルは下がったのではないでしょうか。
相川:リモートで働く人も増えていますよね。私もここ数カ月、ずっとリモートワークです。
松木:私は国の緊急事態宣言時にリモートワークでした。
ただ、公共交通機関は、やはり東京の方が便利だったなと思うこともありますね。東京は、どこへ行くにも車不要でしたから。
とはいえその分、朝の通学・通勤ラッシュは過酷なので、あれがずっと続くと考えたら、大変だっただろうなと思います。
相川:確かに、公共交通機関は東京ほどの便利さはないんだけれど、それでも十分便利。愛知は車と公共交通機関とのバランスがうまく取れていると感じます。
東京だったら、コロナ禍のこの状況で、あの満員電車に乗っていたかと思うと……。朝の通勤でも東京みたいに、駅員さんにぎゅうぎゅう押されてようやく乗車完了、というほどの満員電車は、愛知ではまずありませんよね。
愛知に来て、通勤がとってもラクになりました。
|リモート化が進む今、以前ほどの東京との格差は感じない
――愛知と東京を比べて、ズバリ「愛知のココがもう少しこうだったら」と思うところは?
松木:実はそれほど感じていません。強いて言うならセミナーやイベントの数が、東京に比べるとまだまだ少ない点でしょうか? でも今は「リモートでの参加OK」というものも増えてきましたよね。
相川:確かに! わざわざ東京まで出掛けるのは、子どもを持つ私には特にハードルが高かったですが、リモート化が進むことで「これまでは愛知だとできなかったことができる」と感じています。
|マイホーム購入も保活も。愛知だからこそ叶えられた
――子育てや住環境はどうでしょうか。
相川:うちは二人とも認可保育園に入ることができました。愛知は基本的に保育園には入りやすいんですよね。
住んでいるエリアがたまたま激戦区だったので、第一希望というわけにはいかなかったのですが、とっても良い園にめぐり会えて。東京の友人の“保活”の過酷さを聞いていると、愛知はスムーズに入れてありがたかったです。
松木:プレママの私としては相川さんのその言葉が聞けて心強いです!
あとは、マイホームの購入ですよね。わが家は戸建てを購入予定ですが、東京で同じぐらいの広さと利便性の家を買おうとすると……無理だったかもしれません(笑)
相川:私もです(笑)。わが家はマンションを購入したのですが、東京の同世代の友人に「家買ったんだ」という話をすると、すごく驚かれますね。
愛知なら、私たち夫婦のような年ごろでも無理なく、家族4人住むのに十分な広さの家が買える。おかげで、のびのび快適に暮らしています。
|女性の暮らしと仕事、どちらも両立しやすい環境を探して
――U・Iターン転職を検討中の方にメッセージをお願いします!
松木:東京は魅力的な街で、仕事も充実していました。私は働くだけならずっと東京でも良かったなと思うほどです。
でも、結婚、出産、育児、いずれは親の介護を、というライフイベントを考えたら、私にはちょっと難しかったかなと。
暮らしがあるから、仕事も頑張れるし、仕事があるから暮らしも充実する。Uターンした愛知でとても充実した毎日を送れています!
相川:忙しくて時間にもお金にも必死だった東京での暮らしに比べて、愛知に来てからは「人生を楽しもう!」という気持ちが芽生えて、自分でも驚いています。
愛知は働きやすく住みやすい、まさに暮らしやすい街!地元愛の強い人も多いなとは感じるのですが、だからといって、私みたいな県外出身者に対して「よそ者NG」というような雰囲気もない。
すぐ馴染める、気さくで良い土地柄だなと思います。
――プライベートではどのように楽しんでいますか?
松木:私が愛知ってあらためて良いなと思うのは、海にも山にも近いことです。ちょっとドライブすればきれいな海もあるし、離島もある。岐阜や三重へのアクセスもスムーズですよね。
紅葉狩りに訪れた犬山市の寺院での、松木さん夫婦の一枚
相川:わが家がよく行くのは王道のファミリースポット「東山動植物園」! 名古屋市内と思えない広々とした園内に驚きました。
松木:相川さん、動物園だと豊橋の「のんほいパーク(豊橋総合動植物公園)」もオススメですよ!
相川:良い情報ありがとうございます。あと私は、西尾の一色に美味しいうなぎを食べに行くのが楽しみです。
相川さんお気に入りの西尾市一色町のうなぎ店は、滝のある庭園も見事
\数字で分かる/
働きやすくて暮らしやすい「愛知のデータ」*求人倍率が高い
愛知の有効求人倍率は全国7位。製造業を中心に優良企業が数多く、雇用環境は全国トップレベルです。〜厚生労働省「一般職業紹介状況」(2018年平均)
*働く女性が使える時間が多い
愛知は、有職女性の1日あたりの趣味・娯楽時間(平均)が全国2位。男性は4位。仕事と子育ての両立やシェアが目指せます。〜総務省統計局「平成28年社会生活基本調査結果」
*住宅も家賃も物価も安い
住宅地の平均地価は東京の3割以下。家賃は東京の6割以下。物価水準も全国平均より低いのがポイント。〜国土交通省「令和元年都道府県地価調査」、国土交通省「土地総合情報システム」の地価・建物取引価格から算出(2018年)、総務省統計局「小売物価統計調査(構造編)結果」(2018年)
*待機児童数が少ない
愛知の保育所等待機児童数は、東京の約1/14。働きながら子どもを育てやすい環境です。〜厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ」(2019年4月)
※すべて「愛知に住みたくなるBOOK」(発行/愛知県)より
取材・文/矢野裕子
構成/竹内葉子
撮影/ウラタタカヒデ
提供:愛知県