「くりエイト」するまち栗山町
新しい自分の可能性を発見する移住体験 1

クリエイター向けお試し移住
「くりやまクリエイティブステイ」体験記1

2019年12月、栗山町に1週間の「くりやまクリエイティブステイ」体験に訪れた大阪の脇中真優美さん。高校卒業後は別業界の会社で働きながらデザイナーへの道を模索、現在は専門学校でキャラクターデザインを学んでいます。


デザイナーへの道を歩きだす、
栗山町が私の出発点
10代の頃からデザイナー志望だった脇中さん。学校で習う技術や知識に、五感で味わった経験を加えて、クリエイターとして自分の個性に活かしていきたいと言います。10月に大阪で開催された北海道暮らしフェアのブースで「くりエイトするまち」を目指す北海道の栗山町に興味を持ち、クリエイティブステイに応募しました。

栗山町のハンドメイド雑貨店「クリエイターズマーケット」で作品を展示販売した脇中さん。

町営の施設で最新設備のレーザーカッターやUVプリンターなどの操作を教えてもらいながら、オリジナルキャラクターのグッズを製作、展示・販売も行った脇中さん。栗山町での経験が、クリエイターとしての出発点になったと語ります。

 

レーザーカッターやUVプリンターでキャラクターグッズを製作
JR栗山駅前にある、町営のハンドメイド雑貨店「くりやまクリエイターズマーケット」。町内外の作家20組以上のバラエティに富んだ手作り作品が並んでいます。店内のゆとりあるスペースにはテーブルやキッズスペースもあって、町民や観光客が利用できる交流スポットにもなっています。

滞在中は、クリエイターズマーケットの店番も担当しました。

脇中さんが参加した「くりやまクリエイティブステイ」は、デザイナーやハンドメイド作家、フォトグラファー、ライターなど地域に根ざしたローカルクリエイターを目指す人を対象に、栗山町で1週間以内のお試し移住ができる取り組みです。滞在の様子をまちのブログで発信すれば、定額の謝礼金をもらえます。

UVプリンターとレーザーカッター。職員手作りの分かりやすいマニュアルや操作講習もあります。

家具・家電に加えて、Wi-Fi完備の滞在施設が無料。滞在施設から徒歩10分に位置するあさひ工房は、木工や陶芸などの製作ができるほか、今回の参加特典(特別モニター)としてレーザーカッターやUVプリンターも利用できます。脇中さんのように、クリエイターズマーケットで作品を展示・販売することも可能です。

左のマグネットステッカーは、デザインしていたものをレーザーカッターでまるく切って製作しました。

これまでは手で切り抜いていたため、作品の縁がギザギザになっていたという不満も解消。

「こんなにきれいにできたんですよ!」。マグネットステッカーの一つひとつを、うれしそうに見せてくれました。

 

北海道暮らしフェアで知った「くりやまクリエイティブステイ」

あさひ工房に展示されているサンプル作品。

脇中さんが北海道に興味を持ったのは、ネットの求人検索で、札幌の印刷会社とスカイプ面接をしたことがきっかけです。

面接官がとても明るく気さくな人で、会社の説明だけでなく北海道暮らしの良さをたくさん話してくれたといいます。「私も豊かな自然が好きで、北海道に住めたらいいなとも思っていたので、大阪であった北海道暮らしフェアにも2回行きました」

そこで出会ったのが、栗山町の移住コーディネーター、腰本さん。「くりエイターのまち」と聞いて、すぐに興味を持った脇中さんは、最新設備も備わった町の工房やクリエイターズマーケットなどの説明を受け、くりやまクリエイティブステイに「参加したい!」と手を挙げました。「栗山町のクリエイターの方たちとも交流できると思うとワクワクしました」


特別じゃない、誰もがまちを愛する『くりエイター』
「くりエイトするまち」を合言葉にしている栗山町。有名ホテルでも使われるオーダー家具のブランド「KURIYAMA FURNITURE」の製品など、町内には木工や陶芸などの工房も散在。そのなかには栗山町に根付いた移住者の人たちもいます。

頭にかぶれば栗の形になる、3starsさんの「くり帽子」。お土産用も含めて二つ購入しました。

栗山町は、すべての住民が何かをつくる・築く「くりエイター」と考えています。クリエイターズマーケットの参加条件は、自作のハンドメイドの作品であること、栗山町や「栗」にちなんだ作品を1点以上展示すること、月2回お店番をすることの三つだけ。

あるとき、人形作りの得意な地元のおじいさんが「置かせてもらえるだけでいいから」とクリエイターズマーケットに来店しました。最初は人形に値段をつけることに遠慮していましたが、棚に並べるとさっそく子どもたちが「かわいい!」とお買い上げ。その反応に、おじいさんは「次は季節だから節分のものがいいかな」と、お客さんに喜ばれる人形を意識して作るようになったそうです。

このように、「くりエイト」の心は栗山の人たちに浸透しています。町民有志が集まって、栗山のオリジナルカラーも決めました。「じゃがいもの花」「稲穂」「オオムラサキ」「酒蔵」「泣く木」など、地元の名産や伝承にちなんだ名前がつけられています。

「栗山の色」を展示した木製ボード。12色のオリジナル塗料も販売しています。

栗山町の基幹産業である農業生産者も、おいしい作物を生みだす「くりエイター」です。約60戸の農家さんが自慢の野菜や果物を並べる直売所「値ごろ市」では、札幌圏からもたくさんの人が訪れ、SNSにアップされることもよくあるとか。農家さんの励みにもなっています。

 

充実した施設や設備で、クリエイティブを刺激し合うまち
クリエイターズマーケットで店番の1日体験をした脇中さん。「自分の作品を直接手にとってもらえることが、すごくうれしいですね」

買ってもらうだけでなく、お客さんから生の反応をもらうことが刺激になります。

「私の展示をブログやインスタでも発信しているのですが、『投稿を見たよ~』と言って来てくれる作家さんもいました。いろいろな方から作品の意見をもらえたりして、次の創作へつなげられるのは本当に貴重だと思います」

店内に並ぶ、ほかの作家たちの作品を見ることも勉強になったといいます。町名にちなんだ「栗」や、栗山町にまつわる作品も出展者によってさまざま。栗の形をしたキーホルダーやアクセサリー、帽子や小銭入れもあれば、『はらぺこあおむし』のような愛らしいオオムラサキの幼虫キャラクター、地元のタンポポや綿毛を摘んで作ったリースなど発想も豊か。

栗山町に住む出展作家の一人、「nijiiroのkumo」さんも、クリエイターズマーケットについて「ここに来ると、創作意欲がお互いにかき立てられるというか、また新しい作品に挑戦したくなるんですよね」と話してくれました。

 

 

脇中さんも、栗山町はクリエイターにとって最高のまちだと語ります。

「最新設備がある工房で製作ができて、すぐにお店に自分の作品を置ける。ほかの作家さんや地元の人たちとも交流ができるなんて、栗山町に住んでいる方が羨ましいですし、ものづくりをする人にとっては、ずっと住んでいたいまちですよ」

文・高橋明子 写真・和田北斗

 

後編はこちら
「くりエイト」するまち栗山町 新しい自分の可能性を発見する移住体験 2

滞在のすべてが書かれた、脇中真優美さん(クリエイティブステイ)のブログはこちら
くりやまクリエイティブステイ

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