郡上八幡の魅力大解剖 〜日本の「かつて」と「明日」が見えてくる〜

郡上藩江戸蔵屋敷 vol.5 レポート

昨年6月から連続開催されてきた郡上藩江戸蔵屋敷もいよいよ最終回。
今回のタイトルは「郡上八幡の魅力大解剖 〜日本の『かつて』と『明日』が見えてくる〜」霊峰白山の山あいの狭い平地に張り付くように、ぎっしりと建物が並ぶ郡上八幡は、古くから城下町として栄え、現在4,000人ほどが住む小さな町ながら、夏の踊りシーズンには数十万人の観光客で溢れる郡上市の中心。

そんな歴史ある城下町に近年、「郡上八幡らしさ」を大切にしながら自分の夢を実現しようと新たな働き方に挑んでいる人々が集まって来ています。今回はそんな多様な人々を引き寄せる郡上八幡の魅力とは何なのか紐解いていこうというもの。

まずは司会を務める井上博斗(いのうえひろと)さんが地鎮祭や祝い唄に歌われる「郡上地搗唄」を披露。会場全体が凛とした空気に包まれ、まるでその場所一帯も清められたようでした。

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魅力大解剖のStep1は、郡上生まれで郡上育ち、長年町づくりに携わってきた武藤隆晴(むとうたかはる)さんから郡上八幡の特長紹介。

夏の踊りシーズンに32夜もの間続けられ、町の人はもちろん観光客も参加し一緒になって踊る「郡上踊り」は、町最大の交流のコンテンツで、そこで知り合い、友達ができ、翌年もその翌年も参加しに、みな郡上八幡を訪れます。日本最古の木造再建城で「日本で最も美しい山城」と評される郡上八幡城は町のシンボル。

「町全体で約3,000棟の建物の内、約1,000棟が伝統的な工法で作られ、特定のエリアだけでなく町全体に広がる古くからの町並み。江戸の昔からそこに集まり近所で支え合いながら暮らしていくためのたくさんの工夫がなあり、今日までそれがずっと守られています」

文化や歴史、それらを取り巻く環境や自然といったものが何層にも重なり、この小さなエリアに魅力的なものが凝縮されて存在しています。
そして「都会でもなければ田舎でもない、その中間的で狭いエリアにたくさんの人が住み、いろんな要素がごちゃ混ぜに詰まっている郡上八幡のような『町』にこそ、夢の実現や豊かに暮らす可能性が満ちている環境にあるのではないか」ということでした。

大解剖Step2はそんな郡上八幡の多様性を、水の恵みという切り口から猪股誠野(いのまたせいや)さんが考察。
猪股さんは宮城県出身。東京の大学在学中に郡上八幡に魅せられ昨年3月大学院卒業後すぐに移住しました。現在は空き家対策の仕事をしつつ「NPO法人 郡上八幡水の学校」で水の研究を続けています。

「都会にいると毎日使っている水もどこから来ているか分からない。一方で郡上八幡は水源まで約3km。毎日触れている水の元がすぐ近くに見える所にあります。暮らしを支えるものがとても身近にあることが見えてくる。それが町の魅力の一つだと思います」

白山麓に降る雨・雪が集まり流れる長良川・吉田川の合流地点に位置する郡上八幡。清流には、夏は子どもたちが橋から飛び込み、自分たちの遊び場のようにして楽しんでいるとのこと。まちなかには水路が張り巡らされ、とても清々しいところです。

「水ひとつをとっても、いろんな水が溢れています。山に降った雨が谷に流れると谷水。一度浸透して山から湧き出ると山水。地下に浸透していったものを穴を掘り組み上げたものが井戸水。川辺のあたりで湧き出てくると湧水。それらとは別に人工的に川から引いた水路があり、道路の下を水道が流れている。それらを生活の中でいろんな用途に分けて使っています。郡上八幡は狭い町ですが、こんなにいろんな水がある。どこにいても水の音や匂いを感じることができます」

そんな多様な水を、実際どれだけ違うのか体験してみようということで、次は「郡上八幡水利きクイズ」

郡上八幡の山水、同じく水道水、井戸水、そして会場近くで汲んだ東京の水道水の入った4種類のコップが参加者全員に配られ、それぞれの水がABCDどれに相当するか当てるというもの。ルールはテーブル対抗のチーム戦。

まず参加者全員が4つの水を飲み比べ自分の回答を用紙に記入。記入が終えたら各テーブルで話し合ってチームとしてひとつの回答を発表。正解したチームには水の学校ステッカーを贈呈。皆さんソムリエのようにじっくりと味わっていました。残念ながらチーム戦での正解はありませんでしたが、個人戦では複数の参加者が正解。水の学校ステッカーが正解者に贈られました。

クイズでリラックスした後はお待ちかね、郡上の特産品の試飲・試食タイム。「郡上産クラフトドリンク四種を味わう」ということで、郡上八幡麦酒のこぼこぼ、辰巳蒸留所のアブサン、スローコーヒーの水出しコーヒー、田中茶舗のほうじ茶がふるまわれました。食べ物は同じく郡上産の、猪鹿ジャーキー、どぶろくケーキ、イトシロドライフルーツが用意され、お酒も入ったことで会場は和気藹々な雰囲気になってきました。

徐々にテンションも上がってきたところでStep3は前出の井上さん、猪股さんに、空き家対策プロジェクト チームまちやの一員でとしてまちづくりに携わる山崎寛功(やまざきひろのり)さん、2007年に東京から郡上市にUターンしグラフィックデザイナー・写真家として活躍する堀 義人(ほりよしと)さんも加わり、郡上八幡に魅せられ辿り着いた4人が郡上八幡のどこに惚れ込んでいるか座談会。

山崎さんはこれまで埼玉、横浜、東京と関東圏で暮らしてきましたが、大学在学中に旅行やヒッチハイクで全国を回るなかで地方の力を感じ、就職は関東を離れ地方で頑張りたいと3年前に郡上八幡に移住しました。「空き家の改修や活用方法を考え、空き家という観点からまちづくりに関わってきました。自分が携わった空き家に店が入りその店を自分も利用する、自分の仕事の結果が自分の日々の生活のリズムにも入って来る。そんな体験をしながらの日々の生活が楽しい」とのこと。

堀さんは郡上八幡の隣の郡上大和生まれ。Uターンのきっかけは、海外を含めそれまで訪れたどこよりも郡上八幡がかっこいいと思えたから。「素晴らしい景色も見たし、大自然も見たし、人の営みも見た。カメラを持っていろんなところを撮ってきたけれど、郡上八幡に戻った時、訪れたどの町、どの村よりも郡上八幡が一番かっこいいと思えた。文化や歴史、人の所作・仕草、あらゆるところをそう思うし、きっと明日また気づくこともある。世界一かっこいいこの町を世界に発信していきたい」

井上さんは2010年に香川から移住。「好きな音楽家が郡上に住んでいたのが最大のきっかけですが、来てみると郡上には作業歌、祝い唄、わらべ歌、踊り歌と何百曲という民謡があるんです。歌というメディアがこの土地にあることに気付いて嬉しくなった。今はとにかく全部受け継ごうとお年寄りから全て習って自分で覚え、若い世代や子供たちに伝えていく活動をしています」

最後は参加者と一緒にディスカッション。全員に赤と青の紙が配られ、発言に対して「なるほど」と思えば青い紙を、疑問点があれば赤い紙を挙げて意思表示。質問や反論を言いたい場合には「そうは言うけれども」の郡上弁「そやけんど」を枕詞につけて発言。ぶつけられた「そやけんど」対して、またそれに対する「そやけんど」が参加者同士からもあがり活発に意見・情報交換。定員を大きく上回った会場は最終回にふさわしく大いに盛り上りました。

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「郡上のタカラを東京へ」をコンセプトに5回にわたって連続開催されてきた「郡上藩江戸蔵屋敷」。ワークショップや現地ツアー、フィールドワークを通じ交流し合い、関係し合い、その歴史や自然、多様な文化や暮らしぶりを直に体験することで新たな価値観を創り出してきました。

そして大好評につき「郡上藩江戸蔵屋敷」は次年度の開催が決定しました。今後も様々な角度から郡上の魅力を紹介し、郡上と都会を結ぶ様々な体験イベントが企画されています。第1回目は6月開催予定。この機会にぜひ参加して郡上の魅力を体験してみてください。

写真:矢野航 文:鹿島文俊

                   

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