現在、群馬県片品村で全国二例目となる「地域フォレスター」の募集を行っています。地域フォレスターとは、いわば森林整備にまつわるコーディネーター。地域おこし協力隊の仕組みを使い、3年間の任期でノウハウの習得に努めます。今回の募集について、片品村の梅澤志洋村長や林政アドバイザー・小森胤樹さんに意気ごみを聞きました。
地域フォレスターの育成計画が着々と進行中
東京から関越自動車道を利用して約2時間半、自然あふれる群馬県片品村は四季折々の風景が広がります。森林面積が村全体の9割を占めており、北東部には「日光白根山」、南西部には「武尊山」などの名峰がそびえています。また、群馬、福島、栃木、新潟の4県にまたがる「尾瀬国立公園」の“玄関口”としても有名。雪解けとともに咲くミズバショウが見事で、開花シーズンは多くの観光客でにぎわいます。
日光白銀山
そんな自然豊かな片品村で、新たな試みがスタートしました。令和6年12月より、「地域フォレスター」の募集がはじまったのです。「地域フォレスター」とは特定の市町村に定住して、その地域の森林整備や林業の活性化などを担う人材のこと。土地土地の植生や土壌などをふまえた長期的なビジョンをもち、森林を総合的にマネジメントします。
地域フォレスターの募集は、高知県本山町に次いで全国で二例目です。村から募集事業を受託しているフォレスターズ合同会社の代表社員・小森胤樹さんは「現在、全国各地に地域フォレスターを配置するプロジェクトが進んでいます」と話します。
森林整備の担い手となって、課題解決に取り組む
今回の募集の背景には、村が抱えている地域課題があります。その経緯について、片品村の梅澤志洋村長は次のように話します。
「これまで、観光資源として『森林』を活用してきた片品村ですが、整備に関しては充分とはいえない状況です。森林が身近にあるからこそ、問題が顕在化してこなかったともいえるでしょう。木材の需要の減少や林業事業者の人材不足など、さまざまな課題が複雑に絡みあい、森林整備の遅れにつながっています。しかし、目下の悩みは所有者があいまいな森林が多いことです」
梅澤志洋村長
片品村に限らず、所有者が不明であったり、ほかの土地との境界線が不明であったりする森林は少なくありません。こうした森林は適切な管理が行われず、樹木の生長不良や倒木などを引き起こします。また、森林が過密になると日光が遮られしまい、地表の近くで生育する植物が減少。土壌がむき出しになると地すべりを招く恐れもあるのです。
「森林の管理と空き家の管理はよく似ている」。そう話すのは、片品村役場 農林建設課の魚田昌伸さん。森林整備の一環として、森林の境界線や所有者の特定を進めています。
「空き家も放置したままだと、どんどん荒廃していきますよね。森林も同じで、定期的に手入れをする必要があるんです。空き家の老朽化は一目見てわかりますが、森林ともなるとそうはいきません。素人には森林が抱えている問題や異常を見極められない。それに地域ごとに植生が異なるので、よその地域の対策がそのまま応用できるとも限りません。根本から見直していくためには、やはり小森さんのような林政アドバイザーや地域フォレスターの力が頼りになります」
外部の人間だからこそ、村の魅力が見えてくる
2024年、村内にあるスキー場跡地が木質バイオマス発電所として活用されることが決定。発電の原料になる木質チップは、片品村の農建課・総務課と連携のうえ、村内で調達した木材資源が使われる予定です。梅澤村長は、このプロジェクトが地域フォレスターの活動にも好影響をもたらすと期待を寄せています。
「木質バイオマス発電所の新設は、外部の民間企業によるプロジェクトです。地域フォレスターの募集にも当てはまりますが、村では現在、新しい風を吹き込むべくさまざまなプロジェクトが進行中です。外部の視点を通じて、地域住民では見落としがちな村の魅力を発掘していただきたいですね。実際のところ、村に移住して林業に就いた方もいらっしゃいますし、いまは機運が高まっている時期だといえるでしょう。今回の募集をきっかけに、ぜひ、村の活性化に力を貸していただきたいです」
高知県本山町ではすでに2期目の地域フォレスター募集を開始
片品村に先立って2023年から地域フォレスターを採用した高知県本山町。建設業に従事していた茨城県出身の石川さんはコロナをきっかけに林業を志すようにり、未来の林業のあり方を見据えた本山町の計画やビジョンに感銘を受けて応募を決意したそうです。
着任一年目は、勉強会や高知県林業大学校での授業に参加し、技術講習や必要な免許を取得したりと積極的に学びを深め、2年目の現在は「生物多様性」や「林業の安全」をテーマに、林業の安全を確保するための仕組み作りに奮闘中。石川さんの活動が定着したことを受け、本山町ではフォレスターの第2期生を募集中です。
チェーンソーの指導者研修にも参加する本山町の地域フォレスター 、石川さん
任期終了後も、林業で生きていくためのバックアップが続く
前出の小森さんは地域フォレスターの育成にも取り組んでいるほか、募集事業に先んじて「林政アドバイザー」という立場で、片品村の林務行政もサポートしています。
「地域フォレスターは地域おこし協力隊の枠組みで、市町村に在籍します。3年間の任期中に実務や研修を通じて林業にまつわる知識を習得していただきます。
令和7年度、片品村では、『片品村森林づくり構想(仮称)』を作る予定です。片品村の森林が50年、100年後どんな姿であれば、木材生産だけでない多様な価値をもたらす森林となっているのか。令和6年度は、そのビジョンづくりと準備に充てています。
地域フォレスターとして来ていただく方には、こうした構想作りからかかわってもらい、実行管理をしていただく予定です。
また、林業だけに専念するのではなく、地域住民や林業関係者とのネットワークづくりも重要な活動のひとつ。地域フォレスターは、森林にまつわるコーディネーターとなって村と関わることになるでしょう。とはいえ、任期中になんでもこなせるスーパーマンになることは難しいので、各地の地域フォレスター同士で支え合う仕組みも整えています」
小森さんがいうように、自分の居場所をつくり、林業で自立することは容易ではありません。
「任期満了後は村と直接業務を受託していただくか、もしくはフォレスターズの社員として村に出向していただく流れになると考えています。任期中は我々が責任をもって育成にあたりますし、4年目以降もノウハウを出し惜しみせず提供するつもりです。私たちが全力で活動を後押しするので、安心して新しい世界に飛びこんでください」
地域フォレスターとして村の一員になれるよう、任期を全うしたあとも、バックアップが続くことがこの制度の特徴。
「林業に関わる仕事がしたいが、将来継続できるかが不安」。そんな方にとって、地域フォレスターは、新しいスタートへの第一歩になっていくはずです。
募集関連リンク
文・名嘉山直哉
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都道府県+市町村 群馬県片品村 募集状況 募集中 勤務地 勤務地 片品村役場(群馬県利根郡片品村大字鎌田3967-3)及び村内の森林等 募集職種 地域フォレスター
募集人員 1名
雇用形態 ①雇用形態:地域おこし協力隊として片品村長が委嘱します。
〔片品村役場 農林建設課所属会計年度任用職員(非常勤の地方公務員)〕
② 雇用期間:令和7年4月1日から令和8年3月31日まで
※ 年度ごとに更新し、委嘱の日から最長3年まで延長することができるものとします。
※ 協力隊員としてふさわしくないと判断した場合は、雇用期間中であっても委嘱を取り消すことができるものとします。給与 報酬(月額)200,000円
※その他、賞与、退職手当等は支給しません(この月額から、社会保険料等の本人負担分が控除されます)
福利厚生 ・社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険)に加入します。
・住居は、協力隊期間中に限り、村が用意し、無償貸与します。また、上記以外の住居に居住される場合、家賃等は隊員負担となります。
※ 水道料(基本料金を除く)光熱費については、隊員負担となります。また、応募・着任する際に必要な費用支給されません。
・勤務期間中、業務に必要な事務用品等は村が無償貸与します。
・その他業務活動に必要な経費については、予算の範囲内において村が用意します。
※地域等での生活や通勤の移動手段として自家用車は必要不可欠です。自家用車等の持ち込みをお願いします。
仕事内容 〇 業務概要
令和7年度から従来の森林整備計画を見直し、村独自の新たな森林・林業ビジョンを策定することになりました。片品村の森林所有者や林業事業者、そして各産業の方らが参画して、本村の森林づくりに関する施策や関連する取り組みを計画的・総合的に実施し、森林による地域づくりを推進していくものです。協力隊任期中は、地域に密着して森林の状態を観察して森林所有者や林業事業体へアドバイスをする地域フォレスターを目指していただきます。そして任期終了後は、片品村の森林・林業ビジョンが計画どおり実行できるように支援していただきます。
〇 林業振興に関する活動
・森林林業の基本的な知識の取得(森林林業に関する講義の受講等)
・林業に必要な各種資格の取得(チェンソーや林業機械の操縦に必要な免許の取得や安全講習の受講等)
・森林組合等の現場での林業技術の取得(地拵・植栽・下刈・枝打・除間伐・作業道づくりなどの実施)
・有害鳥獣害対策の実施(森林被害木調査、有害鳥獣の駆除、猟友会活動への参加など)
・森林環境教育や木育活動の実施(国・県・村などが主催するイベントの運営・支援)
・地域住民との連携活動(森林所有者や林業関係者との連携等)
・本村の林業施策の企画立案の支援(森林づくり構想への参加等)
・インターネット・SNSを積極的に活用した林業や本村の情報発信
・その他林業振興に必要な業務に関すること
〇地域振興に関する活動
・地域おこし協力隊に関する会議・研修・報告会等への参加
・任期終了後の定住・起業・事業承継のための基盤づくり
・協力隊同士の連携や協働
・その他村が必要となる業務や活動に関すること勤務時間 ①勤務日数:原則月20日勤務(週5日以内、土日祝日勤務となる場合あり)
②勤務時間:原則1日7時間30分(1時間休憩含む)とし、基本的には午前8時30分から午後5時まで。ただし、業務に応じて勤務時間が異なる場合があります。
※ 所定の月の労働日数及び労働時間を下回った場合は、その分の報酬は減額となります。応募資格 ①年齢20歳以上50歳までの方(申込時の年齢)
②心身ともに健康で、誠実に職務を行うことができる方
③応募時点で3大都市圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、三重県、京都府、大阪府、兵庫県及び奈良県の区域の全部)、3大都市圏以外の政令指定都市または地方都市(過疎、山村、離島、半島などの地域に該当していない市町村)に居住している方、もしくは、本村以外で地域おこし協力隊員として2年以上活動し、かつ、解任から1年以上経過していない方で、委嘱後、片品村に住民票を異動して居住できる方
④地域の特性や風習を尊重し、地域住民と積極的にコミュニケーションが図られる方
⑤任務に積極的かつ誠実に従事し、業務に対し意欲的に取り組むことのできる方
⑥普通自動車運転免許を有しており(AT限定不可)、自家用車をすでに保有している方
⑦一般的なパソコン操作(ワード、エクセル、パワーポイント等)及びインターネット、SNS等の知識を有し活用できる方
⑧地方公務員法第16条に規定する欠格条項に該当しない方
⑨協力隊任期後、自立して定住する意思募集期間 令和6年12月27日(金)~令和7年2月7日(金)必着(郵送又は持参) 選考プロセス ○ 応募書類
・履歴書 市販のものに写真貼付 履歴書に必ずメールアドレスをご記載ください
・レポート 「①当村協力隊に応募した理由②任期終了後の目標・目指すゴール」の2点について、レポートを作成してください(様式・文字数不問)
・運転免許証等ご本人確認がとれるもの(コピー)
・住民票の抄本(写し)
を下記窓口までご郵送ください。
〒378-0498
群馬県利根郡片品村大字鎌田3967番地3
片品村役場 むらづくり観光課
「地域フォレスター」係
○選考
①第1次選考(書類選考)
選考結果は、順次、応募者全員に対し、履歴書に記載のメールアドレスに通知するとともに、履歴書に記載の住所に文書を送付します。
②第2次選考(面接)
第1次選考合格者を対象に、面接による選考試験を予定しています。詳細については、第1次選考結果通知の際にお知らせします。なお、第2次選考に要する交通費等は個人負担とします。
※第3次選考(面接)を実施する場合があります。
採用問い合わせ先 片品村役場 むらづくり観光課
電話 0278-58-2112
E-mail kanko@vill.katashina.gunma.jp