神奈川県西部に位置する「西湘・足柄(せいしょう・あしがら)エリア」。小田原市、南足柄市、中井町、大井町、松田町、山北町、開成町、箱根町、真鶴町、湯河原町の2市8町から成るこの地域は、東京へのアクセスの良さと豊かな自然に恵まれています。親子で楽しめる公園や子育て支援施設が充実しており、都会で働きながら、のびのびとした環境で子育てをしたいという理想を実現できる場所です。
神奈川県は、そんな西湘・足柄エリアの暮らしを伝える移住検討者向けのツアー「子育てスポットを巡る1泊2日のたび〜おやこで移住体験ツアー〜」を企画。11月9日(土)〜10日(日)にかけて開催された第1弾は、足柄エリアの各地を訪れました。子育て支援施設の見学、先輩移住者との交流、地域の豊かな食文化体験など、この土地での暮らしを深く知ることができる多彩なプログラムが組まれた2日間にTURNSが密着。参加者ご家族と一緒に魅力あふれる暮らしを体験してきました。
東京から3組、神奈川県内から3組のご家族が参加。これからの2日間で、どのような出会いや体験が待っているのでしょうか。
1日目 開成町・山北町・松田町を巡る
午前10時、小田急小田原線の新松田駅に集合した6組20名のご家族を乗せて、バスツアーがスタート。最初の目的地である開成町へ向かいました。
人口約1万9,000人の開成町は、東日本で最も面積が小さい町です。このまちの魅力は、「田舎モダン」という言葉に集約されます。小田急小田原線を利用すれば新宿まで直通約80分でアクセスでき、都内への通勤・通学にとても便利です。都会の喧騒から程よい距離を保ちながら豊かな自然に囲まれた便利な田舎暮らしが実現できる、理想的なライフスタイルがここにはあります。
子どもと楽しく遊べて、子育ての悩みも相談できる「あじさいっこ」
はじめに訪れたのは、開成町駅前にある子育て支援センター「あじさいっこ」。妊娠期から就学前までのお子さんを持つ保護者と子どもたちが、いつでも気軽に立ち寄れる場所です。広々としたキッズスペースには、おもちゃや絵本、赤ちゃん用のコーナーがあり、子どもと一緒に遊んだり、親同士や子育て支援員とおしゃべりしたりして自由に過ごすことができます。
授乳室や個別相談ができる相談室も併設。
「あじさいっこ」には子育て相談専任のスタッフが常駐し、発達に関する相談や家事のアドバイスなど、各家庭に合わせたサポートを行っています。ここで、施設長の本川詩子さんから子育て中の参加者に向けてご挨拶がありました。
「親子それぞれに個性があり、得意なことや苦手なことがあります。私たちはその違いを尊重して、その方の困難が少しでも楽になるようなアイデアや工夫を提供しています。必要に応じて専門機関への橋渡しも行います。
赤ちゃんのころから相談を通して不安を解消することで、後々の育児が楽になることもあります。お子さんが元気に、たくましく成長していけるようサポートいたしますので、困ったときには一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
共働きの方が増えている今、子育てに余裕を持つことは簡単ではありませんが、少しでも楽しんで取り組んでいただけるようサポートしていきたいです」
施設長の本川詩子さんと子育て支援員の矢野 茜さん。
「あじさいっこ」は無料で利用でき、町外からも多くの親子が訪れます。この日も子どもたちの笑顔があふれる、活気ある空間となっていました。
古民家で開成町の「農」の恵みを堪能
住宅や店舗が立ち並ぶ開成町駅前の街並みを離れると、視界は田園風景へと一変。その中に佇むのが、築約300年の歴史を持つ古民家「あしがり郷 瀬戸屋敷」です。ここで、昼食をいただきます。
江戸時代にこの地の名主を代々つとめた瀬戸家の邸宅として構えられたこの屋敷は、開成町の指定重要文化遺産として大切に保存されています。屋敷内には現役で使える大きなかまどが残されており、今回は参加者全員で、そのかまどを使った昔ながらのごはん炊きに挑戦します。
スタッフのヒデさんが、かまどでご飯を炊く準備をしてくれていました。
いつもここでご飯を炊いているスタッフのヒデさんから、炊き方の方法や火吹きのコツについて丁寧な説明を受けた後、いよいよ実践へ。子どもたちは火吹き棒を手に、炎が揺れるかまどの中に恐る恐る空気を送り込んでいきます。
ご飯が炊き上がるまでの間、副館長の川口勇作さんが興味深いお話をしてくれました。
「この地域には丹沢や箱根の山々を水源とする伏流水が豊富に湧き出ていて、地下水として貯えられています。その水はとても軟らかく新鮮で、そのまま飲むことができます。今日みなさんに召し上がっていただくご飯は、その地下水と開成町産のブランド米『はるみ』を使って炊き上げます。きっと美味しく仕上がるはずです。『はるみ』は日本穀物検定協会の食味検査で最高評価の特Aを受賞したこともあるんですよ」
副館長の川口さん。
やがて湯気が立ち昇り、香ばしいご飯の香りが部屋いっぱいに広がります。大きな羽釜の蓋を開けると、炊きあがったご飯の香りと艶やかさに、参加者たちから「わぁ」という感嘆の声が上がりました。
口に入れると、ふっくらともちもちとした食感で噛むほどに甘みが広がります。ご飯のお供は、開成町で栽培されている里芋「開成弥一芋(かいせいやいちいも)」の煮物、バターナッツかぼちゃのカレー風味、冬瓜とニンジンのきんぴら、野菜とキノコのお味噌汁。旨みたっぷりの「農」の味覚に、みなさんお箸が止まりません。自然と表情がほころぶ参加者の様子からも、その美味しさが伝わってきます。
お茶碗を手に、何度もおかわりしに行く我が子の姿に目を細める大人たち。懐かしい田舎の生活風景を思い起こさせる、心温まるひとときとなりました。
敷地内には昔ながらの水車や土蔵、井戸が残されており、竹馬や輪投げなどの懐かしい遊び道具が並ぶ昔遊び場ゾーンも。発酵をテーマにしたカフェ「Cafe hacco(カフェハッコ)」や 開成町の旬野菜やソフトクリーム等を販売する直売所「atelier hacco(アトリエハッコ)」もあり、食後はそれぞれがゆったりとした時間を楽しみました。
美味しい水と人の温かさに魅せられて。
カフェを営む先輩移住者が語る山北町での暮らし
午後は山北町へ移動。人口約9,300人の山北町は神奈川県で3番目に広い面積を持ち、その約9割が森林という緑深い町です。丹沢の山々に囲まれた町には清らかな渓流が流れ、空気の澄んだ爽やかな風が通り抜けていきます。山間にある丹沢湖の水は神奈川県内各地に供給されており、「かながわの水がめ」とも呼ばれています。
この地で訪れたのは、山北駅から程近くの玉上さん夫妻が営むカフェ「haz(ハズ)」です。旬の地元野菜をたっぷり使ったカレーが看板メニュー。店内はソファ席や個室を備え、お子さま連れでも利用しやすい空間となっています。音楽ライブなども開催され、地域の新たな交流の場として親しまれています。
アットホームな雰囲気の店内でくつろぐ参加者を前に、玉上さんが自身の移住体験談を語ってくださいました。
鎌倉市出身の玉上さんは、2019年に山北町に移住してきました。山北町との出会いは30歳の頃。横浜の地域おこしプロジェクトに関わった際、「横浜の水はどこから来ているのか?」という話題がきっかけで神奈川県の水源について深く興味を持つようになり、丹沢湖の存在を知りました。
丹沢湖から届けられる水を飲んでみると、不思議なほど玉上さんの体に馴染んだそうです。それを機に、同じ水源を持つ各地域の水を飲み比べてみることに。中でも山北町の水の美味しさは格別で、すっかり心を奪われてしまったのだとか。そして、「いつか山北町で暮らしたい」という夢を抱くようになりました。
玉上葉月さん。
しかし、山北町への移住は簡単には叶いませんでした。
「当時、山北町には空き物件がなく、不動産屋から『地域の人とつながりをつくれば紹介してもらえるかもしれない』とアドバイスをいただきました。そこで、まずは近隣の南足柄市に住み、その後、松田町に移り、少しずつ地元の方々との関係を築いていったんです。そして、ようやく『いい物件が空いたよ』と声をかけてもらい、念願の山北暮らしが実現しました」
カフェを開業する際も、山北駅前商店街の朝市に出店し、顔を覚えてもらう努力をしたという玉上さん。しばらくすると、「物件が空いたからどうか」と誘いを受け、即決で現在の場所にお店を構えたといいます。
「駅前はもともと商店で栄えていた場所なので、この辺りの住民は地域外から来た人にも寛容で、フレンドリーな雰囲気があります。『もっと移住者が増えて子どもたちの声で賑やかになってほしい』とか、ここで音楽ライブをする時も『もっと音を出していいよ』という声が聞かれるほど。都会では考えにくいことですが、ここではむしろ、地域に活気が増すことを喜ぶ方が多いです」
日常の買い物は近隣の開成町や南足柄市で済ませ、デパートで売っているようなものが欲しい時は、御殿場のアウトレットモールへ足を伸ばすこともあるそうです。
「ちょっとした買い物でも車が必要ですし、山間部にはスーパーもありません。都会ではすぐに病院も買い物にも行ける便利さがありますが、ここではそうはいきません。だから、『憧れのスローライフ』とはちょっと違いますね(笑)」と、デメリットも包み隠さず教えてくれました。
それでも、「私は本当にこの町が大好き。『山北愛』という言葉があるほど、人がとても温かいです。『人』も重視して移住先を選びたかった私にとって、山北は本当に居心地の良い場所。それに、町民になれば500円以下で温泉を利用できるんですよ」と、最後にそう熱く語ってくれた玉上さん。
参加者からの質問タイムも設けられ、和やかな雰囲気の中で有意義な時間を過ごしました。
地域の憩いの場「山北町健康福祉センター」「山北鉄道公園」
次に訪れたのは「山北町健康福祉センター」です。館内には、子どもたちが安全に遊べて保護者同士の交流や情報交換ができる子育て支援センターや、カラオケルームとして利用できる録音室、大勢で体を動かせる多目的室など、幅広い世代が楽しめるさまざまな施設があります。さらに、最上階には町営温泉の「さくらの湯」があり、地域の人々にとって憩いの場となっている様子がうかがえました。
子育て支援センター。
「さくらの湯」では室内温水プールも利用できます。
続いて、子どもたちがとても楽しみにしていた「山北鉄道公園」へ。ここには、かつて丹沢の急勾配を力強く走り抜けた「最強の蒸気機関車」の異名を持つD52型蒸気機関車が保存されています。真っ黒な車体と巨大な車輪を持つその迫力ある姿に、子どもたちは目を輝かせていました。現在では、月に一度行われる整備運行日に動く姿を見ることができるそうです。
秘境の味覚と移住体験談に興味津々
1日目の締めくくりは、松田町の山間部に位置する寄(やどりき)地区で過ごしました。ここには手つかずの自然とのどかな里山の風景が広がっています。夕暮れ時に訪れた寄は、まさに「秘境」という言葉がふさわしい静けさに包まれていました。
かつてこの集落の村長邸だった築100年超の古民家「寄七つ星古民家 やえか」で、地域で飲食業を営む人たちが腕を振るった夕食を楽しみました。猪汁や地元米のおむすび、米粉のパウンドケーキなど、地元の食材をふんだんに使用した料理はまさに里山の恵みの集大成。手の込んだ一品一品に参加者一同は舌鼓を打ちました。
夕食後は移住者3名との交流会。きっかけも道のりも異なる三者三様の移住ストーリーに耳を傾けました。
「寄七つ星古民家 やえか」を運営する御簾納(みすの)聖子さんは、8年ほど前に寄に移住してきました。東京で映像やデザインの仕事をしていた御簾納さんが寄と出会ったのは、趣味で始めた狩猟がきっかけでした。
「狩猟が目的で何度か通ううちに、この土地の魅力に取り憑かれてしまいました」と御簾納さん。単身での移住でしたが、その後、こちらの地域の方と結婚。現在4歳になる息子さんがいます。
御簾納さんは寄の子育て環境に太鼓判を押します。
「幼稚園は全園児6人に対して先生が4人。警備員やバスの運転手さんもいて、まるでマンツーマン保育のような手厚さです。子どもたちは川遊びや山歩きなど自然の中での学習体験を通じて、のびのびと育っています」
また、少人数教育のメリットについて、「寄の子どもたちは、自分の意見をしっかり言える子に育つと言われています。少人数だからこそ、全員が授業で発言する機会があり、自然と自己表現力が身につくんです」と語ります。
御簾納さんは「寄七つ星古民家 やえか」の他にも、関東で最大級の「寄七つ星ドッグラン」を運営しています。広大な敷地に6つのドッグランやドッグプール、カフェなどを備え、都会からも多くの愛犬家が訪れる人気スポットとなっています。
さらに、地元猟友会のメンバーとして農林業被害の軽減や環境保全にも貢献。狩猟で得たシカやイノシシを活用したジビエ料理の提供など、地域資源の有効活用にも意欲的に取り組んでいます。
御簾納聖子さんと息子さん。
次にお話を伺ったのは、ちまき屋「山笑ふ」を営む伊藤友美さん。店舗は持たず、道の駅や地域のイベント、登山者やヒルクライマーが立ち寄る山頂の売店などで販売しています。この日の夕食では、手作りの猪汁に合わせた特製おむすびを用意してくださいました。
伊藤さんは2021年に夫と当時高校2年生・中学3年生だったお子さん2人とともに寄へ引っ越してきました。それまでは大磯の海辺で暮らしていましたが、家族での休日の過ごし方は登山やキャンプ、釣りなど、いつも山が舞台だったそう。いつかヒルクライマーやハイカーが集まれる山小屋のような場所をつくりたいと考えていたところ、寄に出会いました。
「縁もゆかりもない土地だったため、初めは永住するつもりではなく、まずは一度住んでみようと賃貸で暮らし始めました。でも、家を探している時に地元の方が親切に話しかけてくださったり、引っ越してからも温かく迎えていただいて。寄での暮らしがすっかり心地よくなりました」
伊藤友美さん。
子育て環境や日常生活の利便性について伺うと、終電が早いため、部活帰りの子どもたちを車で送迎する必要があるなど、多少不便な面もあったといいます。ただ、そのような環境の中でも、子どもたちは生き生きと生活を楽しんでいるようです。
「吹奏楽部の子どもたちが川の中に椅子を置いて楽器を演奏したり、自分たちなりの楽しみ方を見つけてくれました。買い物は車で10〜15分ほどでコンビニやスーパーに行けるので、そこまで不便とは感じていません。夜の山道は毎晩のように鹿に出会いますが、道に飛び出してくることもありませんし、むしろ可愛らしい存在ですよ」と、微笑ましいエピソードを語ってくれました。
最後にお話を聞かせてくれたのは、13年前に横浜からご両親とともに移住してきたリョウタさん。特殊伐採のアシスタントやダム建設前の地質調査、移住者向けのイベントの開催など、多彩な仕事をこなしています。
寄の仕事事情について伺うと、農業が中心で履歴書を持って面接に行くような一般的な求人は多くないとのこと。しかし、リョウタさんのようにフリーランスとして働くには快適な環境だといいます。
「インフラも整備されているので、在宅ワークも十分可能。都会の仕事をそのまま持ってくることもできると思います」と、リモートワーカー等にもおすすめの移住地であることを紹介。さらに、13年間の生活を通して感じた寄の魅力や地域の人の特徴についても教えてくれました。
「都会から隔絶された静かな環境が、僕にはとても心地よく感じられます。田舎暮らしというと過度な干渉を気にされる方も多いと思いますが、ここはそういった心配はありません。代わりに、やる気のある人を温かく迎え入れてくれる、そんな懐の深さがあります」
リョウタさん。
それぞれの視点から語られる寄での暮らしのエピソードに、時間を忘れて聞き入る参加者たち。気がつけば辺りはすっかり闇に包まれ、夜空には無数の星が輝いていました。
2日目 大井町・南足柄市・中井町を巡る
朝9時、ホテルを出発した一行は大井町へ。西側に広々とした平地が、東側に緑豊かな丘陵地帯が広がる大井町では、いたるところで富士山の雄大な姿を望むことができます。丘陵地帯では昔ながらの里山の風景が残り、年間を通じて野菜やミカンをはじめとするさまざまな農作物が栽培されています。
あいにく、この日は朝から厚い雲に覆われた空模様で、富士山の麗しい姿を見ることができず…。
みかんの産地でアイス作り体験
2日目の最初に訪れたのは「四季の里」。地域の方々や都市住民が豊かな自然の中で農業やものづくりを体験できる施設です。併設の直売所では、地元の農家から出荷された豊富な新鮮野菜や果物、加工品などが並び、地産地消の暮らしを垣間見ることができます。
ここでは、一般社団法人 神奈川大井の里体験観光協会による体験プログラム、特産品のみかんを使ったアイス作りに挑戦します。施設のスタッフの指導を受けながら、アイスの材料(粒状にほぐしたみかん、牛乳、砂糖、生クリーム)を小さな容器に入れてシェイクし、それを氷と塩を加えた大きな容器にセットします。親子で協力しながら約20分間転がすと、手作りアイスの完成です。
できあがったアイスは、みかんの爽やかな酸味と自然な甘みが絶妙なバランスで調和した絶品。参加者からは、「これなら子どもと一緒につくれそう」「食育にもなりますね」といった声が聞かれました。
子どもたちの笑顔があふれる場所「にこっと」
「金太郎のふる里」として知られる南足柄市。東側に伊豆箱根鉄道大雄山(だいゆうざん)線が走り、その沿線には閑静な住宅街が広がっています。令和3年に県道731号線、通称「はこね金太郎ライン」が開通したことで、南足柄市から箱根へのアクセスが格段と向上しました。
伊豆箱根鉄道大雄山線の大雄山駅。駅前に設置された金太郎のブロンズ像が訪れる人を出迎えます。
大雄山駅前のショッピングモール「ヴェルミ2」内にある子育て支援拠点施設「にこっと」を見学しました。2022年にオープンしたこの施設には、妊娠・出産・子育てに関する行政手続きや育児相談、児童福祉サービスなど、さまざまな子育て支援機能が集約されています。小さなお子さまが遊具で遊べるプレイルームや子育て支援を目的としたイベントを開催するフリースペースも併設。買い物のついでに気軽に立ち寄れる、忙しいパパ・ママにとって心強い存在です。
市産材のスギやヒノキを使用した、温もりのある空間が広がっています。
開放的なプレイルームには、大型遊具や知育玩具が充実しています。特に人気のすべり台付き遊具では、子どもたちの歓声が絶えません。そんな中で市職員から利用方法や支援内容、定期的に開催される育児講座などについて詳しい説明があり、南足柄市の子育て世代に寄り添った手厚いサポート体制を知ることができました。
南足柄市こども支援課の吉澤さんから説明を受ける参加者。
移住者家族を囲んでランチタイム。南足柄市の暮らしを深堀り
「道の駅足柄・金太郎のふるさと」に移動し、昼食とともに南足柄市で暮らす先輩移住者を囲んだ交流会を開催。
地元ブランドの足柄牛や新鮮な地場食材を使ったお弁当を味わいながら、自由歓談の場に。お互いの現在の生活環境や移住後の暮らしの変化、子どもたちの保育園や学校生活など、さまざまな話題に花を咲かせていました。
4年前に横浜から移住してきた斎藤さんは、コロナ禍でのリモートワーク導入とお子さんの小学校入学のタイミングが重なり、住まいを見直すことに。当初は横浜市内で物件を探していましたが、希望に合う広さと予算の物件が見つからず難航。エリアを広げて、新幹線のアクセスの良さも考慮しつつのんびりと暮らせる場所を探していたところ、南足柄市の景色の良い土地に出会ったそうです。
「知り合いは全くいませんでしたが、むしろそれが新鮮で意外と楽しんでいます」と斎藤さん。
斎藤さん。
横浜市で暮らしていた島崎さん一家は、現在4歳になる3人目のお子さんの誕生を機に、より広い住まいを求めて移住を検討し始めました。夫の衛さんは建築士で、東京や横浜での仕事を継続する必要があったため、仕事場へのアクセスが可能なエリアを希望していました。茅ヶ崎市や鎌倉市、小田原市なども候補に挙がり、実際に見て回ったそうです。
そんな中、2021年に訪れた小田原市の移住相談窓口で得た情報が、南足柄市との出会いにつながりました。
「現地を訪れてみると、妻と長女が大雄山の景色に一目惚れ。それが南足柄を選ぶ決め手になりました」と衛さん。
現在、衛さんは南足柄市と東京を行き来しながら建築の仕事を継続。都会での仕事と豊かな自然に囲まれた暮らしを両立し、理想的なワークライフバランスを実現しています。
島崎さん。
3歳の双子のお子さんと暮らす越前さんは、移住して6年目を迎えます。
「結婚を機に、まずは小田原で暮らし始めましたが、その後、マイホームの購入を考え始めました。南足柄は小田原と比べて住宅価格が手頃で、立地環境や生活利便性の面でも自分たちの希望に合う塚原地区に引っ越してきました」と越前さん。
現在は「半農半X」のライフスタイルを実践し、小田原市での仕事と南足柄市での農業を半々で営んでいます。
越前さん。
同じ年頃のお子さんをもつ先輩移住者たちとの対話は、多くの有益な情報や実践的なアドバイスを得る貴重な機会となったはずです。
大空の下で子どもたちの笑顔が止まらない!「中井中央公園」
南足柄市の移住者ご家族に見送られながら道の駅を後にし、東名高速道路に乗って中井町へ。中井町は人口約9,000人。都心からおよそ60㎞の距離にあり、秦野中井インターチェンジから高速を利用すれば約1時間で訪れることができます。
「ちょうどいい ちょっといい 里都まち♡なかい」という愛らしいキャッチコピーが、まちの魅力を伝えています。
いよいよ最終目的地の「中井中央公園」に到着。面積約12,000m²、全長101メートルのローラー滑り台がシンボルの広大な公園は、単なる遊び場としてだけでなく、防災拠点としても整備されています。また、丘の上にある展望広場「ハートの丘」は、春と秋に富士山に沈む夕日が重なる「ダイヤモンド富士」を眺めることができる絶景ポイントとしても知られています。
巨大なローラー滑り台が見えるやいなや、一目散に走り出す子どもたち。たくさんの遊具で遊び放題の「遊びの広場」は、親子連れでいっぱいでした。
公園内の随所にベンチが配され、小さな子どもからお年寄りまでゆっくりと過ごすことができます。家族の憩いの場としても、災害時の避難場所としても、住民の暮らしを支える重要な場所になっています。
移住体験ツアーの振り返り
ツアーの締めくくりは、中井中央公園内にある「なかい里都まちCAFE」をお借りして、参加者それぞれが2日間の移住体験ツアーを振り返りました。
「現在、都内のマンションに住んでいます。子どもがバタバタと元気に走り回るたびに『静かにしなさい』と注意しなければならないのが気がかりで、もっとのびのびと遊べる生活環境を探そうと思い、このツアーに参加しました。今回訪れた西湘・足柄地エリアは、どの地域も子育て支援施設や遊び場が充実していて、雨の日でも子どもと一緒に楽しく過ごせそうです。東京では有料の施設やサービスが無料で提供されていることも大きな魅力だと感じました」(4歳の息子さんと参加したYさん)
「先輩移住者の方々から住まいのことや学校の様子など、インターネットの情報だけでは得られない生きた情報を直接伺えました。良いところだけでなく検討すべき課題も見え、移住計画を具体化する上で貴重な材料を得ることができました」(5歳の娘さんと参加したKさん)
「地域の方々のウェルカムな雰囲気が印象的で、ますます興味が湧きました。今後も積極的に情報収集を続け、機会があればまた訪れてみたいと思います」(2歳の息子さん・1歳の娘さんと参加したKさん)
「子どもたちをのびのびと育てられる環境に魅力を感じる一方、車が必須な場所での生活は難しいかな…と思ったり。この2日間を通して、移住に際して何を重視すべきかが明確になり、私たち家族に合った地域像が見えてきました」(6歳の息子さん・2歳の娘さんと参加したSさん)
といった声が聞かれ、西湘・足柄エリアで暮らす実感を掴めた様子。次のステップに進むための具体的なヒントも得られたようです。
夕暮れが迫る16時半過ぎ、2日間のツアーは全てのプログラムを終えました。子どもたちの健やかな成長を願い、移住を夢見る家族それぞれの思いを乗せて、バスは解散場所の新松田駅へと向かいます。参加者のみなさんは車窓に映るのどかな風景を眺めながら、自身と我が子の「これから」を思い描いていたことでしょう。
西湘・足柄エリアへの移住をお考えの方へ
本記事を通じて、西湘・足柄エリアでの暮らしに興味を持たれた方は、「西湘足柄移住コンシェルジュ」までお気軽にお問い合わせください。それぞれの地域の特色や、移住・子育て支援制度について、詳しい情報を得ることができます。
また、今回訪れた市町以外にも西湘・足柄エリアには魅力的な地域がたくさんあります。是非実際に足を運んで、ご自身にぴったりの暮らしの舞台を見つけてください。
西湘足柄移住コンシェルジュ
https://www.pref.kanagawa.jp/osirase/0602/seishoashigara-ijyu/
撮影:渡部 聡