移住したくなる旅へ、|特集1
哲学者ニーチェは「人生を最高に旅せよ」といった。
ターンズは、旅は移住の試着だと思う。
どんな人生を送りたいか、それを試せる機会が旅であり、そんな旅をするには少しコツがいる。
さあ、日本中を旅してみよう。誰かが手を振って迎えてくれるはず。
移住を最高に旅せよ。
文:アサイアサミ(ココホレジャパン) 写真:藤代冥砂
旅の終わりは移住のはじまり1
地球上であれば、どこでもいいと思っている。
沖縄県石垣島 「辺銀食堂」
辺銀暁峰さん、愛理さん
あたらしい自分を発見できるのが楽しくて」と、移動を続けた辺銀夫婦がたどり着いたのは、食材豊かで人のあたたかい南の島。好きでつくった「石垣島ラー油」がヒットして、あっという間に20年という月日がたった。地域に馴染み、だけど自由。もし、僕らの住処が「地球」なんだとしたら、そもそも「移住」の定義ってなんだろう。そんなことを考えてしまうくらい軽やかで自然体。「いま」を生きる場所として石垣島を選んだ、辺銀夫婦の物語。
文:セソコマサユキ 写真:藤代冥砂 編集:アサイアサミ(ココホレジャパン)
旅の終わりは移住のはじまり2
たまには海をぼんやり見る時間を
神奈川県葉山町「港の灯り」
恵武志さん、実樹さん
旅行に出かけると、あそこに行って、ここもまわって…と、せっかく忙しい日常から離れたはずなのに、旅先でも疲れてしまうことが多い。ただただ、ゆったり、のんびりと、家族や友達と過ごしたい。そんなときにぴったりな場所が、葉山町にある。「港の灯り」は、初めて来たのに、なつかしさを感じる宿。荷物を置いて、少し昼寝をしたら、海を散歩しよう。
文・編集:古瀬絵里 写真:小緑慎一郎
TURNS TOURISM ターンズツーリズム
雪遊び?&移動手段?
暮らすモードで旅しよう
今年は滞在型旅行にでかけよう。心がけることはただひとつ「日常のように過ごす」。地元民に混じってスーパーで買い物をしたり、目的なくまちを歩いたり。するとまるで昔からそこに住んでいたかのように本来のまちの姿を味わえるのだ。そして自分の心もほぐれていく。日本各地でそんな旅のしかた、すすめます。
文・編集:アサイアサミ(ココホレジャパン) 写真:小緑慎一郎
雪が暮らしを楽しくしていた!
働く場所がある別天地。
北海道上川町
都道府県魅力度ランキング』で10年連続1位の北海道。憧れのリゾートで
暮らすことを前提に旅をしてみると、極寒で極上の斜め上な暮らしが待っていた。
寒いのが苦手なのに冬の上川町へ。マイナス10度の世界は初体験だ。おそるおそる外に出てみると「寒くない」、空気が澄んで気持ち良い。ここは自然とともに生きることが前提なので、住宅は寒冷地仕様で室内は暖かく生活のQOLが高い。そして圧倒的な自然がすぐそこに。大雪山の景色だけ見ると妖精しか住んでいないのではないかと思うほどの別天地。
「確かにこのまちに足りないのは人なんです」というのは上川町役場のキーマン。そこで上川町は関係人口を生む“わざわざ訪れたくなる場所”をつくり、雇用も創出。それがカミカワークプロジェクト。「こんな場所で働けたら最高」「はい、働けます」、そんな上川町を旅します。
町の一人ひとりが“名物”。
地元の人たちの日常にお邪魔します。
静岡県南伊豆町
伊豆半島の端っこにある南伊豆町。「南伊豆くらし図鑑」を通して、
まちで暮らすひとたちの日常のひとこまを体験してみよう。
文・編集:古瀬絵里 写真:七咲友梨
観光では味わえない、そのまちの営みに触れてみたい。そんな旅を提案するのが、「南伊豆くらし図鑑」だ。このサイトでは、まちで暮らす人たちの日常を体験できるツアーを紹介している。たとえば、森のなかで薪割りをしたり、家庭菜園で育てた果物でジャムをつくったり、漁師さんと伊勢海老漁に出たり…。
「もともとは地元の人たちの悩みからはじまりました。薪割りをしたいけど手を痛めてしまった人や、もっと漁師の魅力を伝えたい人など、そうした相談を体験ツアーにしています」と話すのは、「南伊豆くらし図鑑」を運営する伊集院一徹さん。
体験を通してまちの人たちと関係性ができ、また「誰かに会いにいく旅」に発展しているそうだ。
蔵と路地の残るまちにあたらしい地図を重ねる旅
長野県須坂市
明治~昭和初期の豊かな時代の気配が残る「蔵のまち」須坂。
アイデアとリノベであたらしい地図をかさねはじめたひとたちを訪ねる旅へ。
文・編集:高橋マキ 写真:宮崎純一
フォトグラファーの宮崎純一さんから「東京から長野に移住しましたと便りが届いたのをきっかけに、はじめて訪れたまち、須坂。かつて製糸業で栄えたこのまちには、今も街道沿いにしっくい壁の蔵が立ち並び、明治{昭和初期の豊かな時代の気配が残る。
最初に案内してもらったのは、いきなり(!)街道をそれた「浮世小路」。その名からも想像できるように、かつて花街だったエリア。今は静まり返った料亭や銭湯の跡が少しさみしさを漂わせる浮世小路を、さらに奥へ入り込む。ここは地図にない砂利道の路地。
「この路地を偶然見つけたときに、パーツと未来像が描けた気がしたんです。それで、両脇の空き家4軒の持ち主にそれぞれ直接交渉し、全部託してもらいました」というのは、「KINU」の高島浩さん。路地のインフラを自費で整え、まず一軒目を自身の店舗にしたのが1年前。その後まもなくフォトグラファーの宮崎純一さん·刺繍絵作家の宮崎友里さん夫妻が隣に写真館とアトリエを構えることに。2軒のDIY工事を手伝った友人たちが発信源となり、市内に、東京にと、路地のウワサはゆるやかに広まりつつある。
「週末ごとに誰かを案内しているよね」と楽しそうに笑う宮崎さん、高島さんたちと一緒に、須坂のまちを歩いてみよう。
少し不便がちょうどいい
穏やかな海と暮らすまち
京都府 与謝郡伊根町
観光客でにぎわう古都・京都とは異なる、ローカルな魅力が注目されている「海の京都」。
海からゼロセンチの暮らしぶりを訪ねて、伊根町へ。
文・編集:高橋マキ 写真:桑島薫
まちの景色を変えるカフェ
伊根町にステキなB&Bができたらしい。そんなうわさが聞こえてきた。だから、こんど伊根に来るときはここに泊まるのだと決めていた。サイクリングツアーで快晴の伊根浦を一周したあと、「CAFE&BB guri」にチェックイン。
「ぐりとは、漁礁という意味で、海のなかの漁礁に集まる魚のように、旅人も地元のひとも気軽に集まる場所をめざしました」というオーナーの當間一弘さん。妻の千明さんはカフェのキッチンで奮闘中。一弘さんが、ふたりの子どもを両脇に抱えながらお出迎えしてくださった。広い伊根町のなかでもこのあたりは空き家の出ない一等地。東京ではたらいていた一弘さんと千明さんが移住希望してからの物件探しは、しばらく難航したらしい。
「でも、今の物件とやっと出会えて住む家も見つかって。それから1年ほどは、向井酒造ではたらかせてもらいながら開店準備をしました」。
じゃあこれから一緒に、その「向井酒造」の杜氏・向井久仁子さんに、会いに行きましょうか。
人も自然もおおらかな土佐の、
海と生きる暮らしに触れる。
高知県土佐市宇佐町
全国津々浦々、漁師町と呼ばれるまちはたくさんある。海がそばにあるからこそ、ここで生きる。そんなひとの営みの原点を知る旅へ。
文・編集:ハタノエリ 写真:国貞誠
鮮やかな青の「仁淀ブルー」で知られる仁淀川の、河口近くにある土佐市宇佐町。この地には太平洋が、明るい陽気と海の幸をたっぷりもたらし、魚屋、鰹節屋といった海にかかわる商いがいまも息づく漁師町だ。土佐の漁法といえば伝統の一本釣り。この姿勢に、海や魚への愛情、地域のひとたちの生きざまがあらわれているように思う。
海の幸を味わうのはもちろん、海がある地域ならではの商いを知り、そのなりわいで生きるひとと触れあう旅。東京都から宇佐町に移住し、そんなニッチな“人情旅”を提案しているひとがいると聞いた。それは「ゲストハウス宇楽家」のオーナー、増井翔子さん。まずはこの翔子さんを訪ねることから、宇佐の旅ははじまった。
移住したくなる旅のガイドブック「d design travel」
d design travel編集長
神藤秀人さん
「移住したくなる旅』にオススメのガイドブックが、デザイン感性で47都道府県の各地域を紹介する「d design travel」だ。このシリーズは都道府県の「その土地らしさ」を綴った観光ガイドブック。観光客はもちろん地元民も知らない、かもしれない地域の魅力を掘り起こす神藤さんにお話を伺った。
こだわり宿とモーニング|特集2
移住したくなる旅をするなら宿は普段の旅行と違う過ごしかたができるところにこだわりたい。
まちの雰囲気を感じられる、ターンズおすすめの宿を紹介。またそんな宿の朝食はおいしいに決まっている。
文・編集:生田早紀(ココホレジャパン) 写真:松本紀子
山を買う2.0|特集3
新しい感性で北海道の山で遊び生きる人々
山を持つことは「資産」、そう考える時代もあったが、いま北海道では、新たな視点で山をとらえ、自分なりの活動を行う人々が現れている。
山をでっかい遊び場ととらえたり、山の恵みから商品を生み出したりと、その活用のアイデアは多彩。
しかも、自分で山を持つという面白さは、こうした活用方法だけにとどまらない。
大自然の営みを、どこか遠いできごとではなく、自分ごととしてとらえる機会ともなり、また巨大なスケールの土地を前にして、これまでにない発想が生まれる可能性も秘めている。
地方はもちろん、大都会に住んでいるみなさんも、ぜひ山を買ってみませんか?
文・編集:來嶋路子 撮影:佐々木青弥