西粟倉村には、自分らしく生きる力を育む学習環境が豊かにあります。その中でも「Nest」は、子どもたちがさまざまな経験を積みながら個性を育む、学びの機会を創造しているチーム。やりたいことを叶え、「生きるを楽しむ」人として成長する、そんな未来の実現に向けたNestのみなさんの取り組みについてお話を伺いました。
★西粟倉の教育移住について、4月20日発売のTURNS vol.52「地域ルポ」で特集しています。ぜひ本誌でもご覧ください!
一般社団法人Nest
西粟倉で学ぶ環境を学校教育・社会教育の垣根を越えて作っていくチームとして、2020年4月に設立。教育コーディネーターや学びのプロデュースなど多岐に渡り、子どもはもちろん、保護者や地域住民の伴走を行なう。
「Nest」のメンバー、(右から)奈良県出身の今井晴菜さん、埼玉県出身の福岡要さん、宮城県出身の青木采里奈さんが、西粟倉の魅力と学びの場について教えてくれた
子どもたちの未来のため、地域を継続的に学べる体制を
福岡:「Nest」設立のきっかけは、2017年に役場の地方創生推進班が運営スタートした「あわくらみらいアカデミー」です。西粟倉村には高校がないので、多くの子どもたちが15歳の春に中学卒業を機に村を出てしまいます。そのときまでに、自分らしく胸を張って生きていける力を身につけてほしいと願って生まれたプロジェクトですが、役場の方だけでは継続的な活動が難しかったため、学びの環境づくりを担う組織として「一般社団法人Nest」が誕生したんです。
今井:「あわくらみらいアカデミー」では、子どもたちの「やってみたい!」気持ちにしっかり耳を傾けて、実際にやってみて「できた!」という経験を積んでいけるようサポートしています。そして「あわくらみらいアカデミー」と同じくらい大切な業務に「教育コーディネーター」として公教育に携わる活動があります。幼稚園・小・中学校に入って、地域の学習資源を子どもたちにつなげるために、主に地域学習や総合学習のプロデュースをしています。それ以外にも、教育移住の窓口として西粟倉の魅力の発信や受け入れの対応、大学生や社会人向けのプログラム「さとのば大学」、拠点業務として『あわくら会館』の準備室を使いながら子どもたちが遊んだり学んだりできるようサポートするなど、業務内容は多岐にわたっています。
コミュニケーションを大切に、伴走者として学びをサポート
編集部:昨今のコロナ禍でご苦労もあるかと思いますが……。
福岡:正直、いろんなイベントや活動が中止になり大変でしたが、活動制限が強いられる中でもできることをいろいろと工夫しています。今年度から学校でタブレットが導入されたこともあって、インターネットを活用した取り組みにも挑戦してみました。けれど、本来私たちは子どもたちと直接コミュニケーションをとることを大切にしているので、キャンプや釣りなど、比較的制限の少ない屋外での活動を積極的に取り入れてきました。
今井:そうですね。自然豊かな西粟倉村のせっかくの環境を活かす意味でも、なんとか工夫して、子どもたちの居場所を作ってきました。
青木:私は最近Nestメンバーに加わったのですが、西粟倉の子どもたちはおとなしい反面、大人たちとの交流にまったく壁を作らないことに面白さを感じています。みんながまるで家族のようで。信頼関係ができているからこそ、子どもたちは主体性を持って物事に取り組んでいけるんですよね。
福岡:関係がフラットで、大人から一方的に教えるのではなく、子どもたち自身が何をやりたいか気づけたり、それに向かって一緒に考え歩んでいける伴走者として子どもたちのそばにいられたらいいなと思っているんです。
青木:大人が楽しんでいる姿を見て、子どもたちも一緒にワクワクしてほしいですね。
今井:子どもたちには、さまざまな「本物」に触れてもらいたいと思います。西粟倉には自然はもちろん、さまざまな職業のプロフェッショナルも集まっています。その人たちの言葉や想いを直接感じてもらえるように、学校と地域の境をなくしていくことも私たちの役割ですね。
福岡:そうですね。それから、“失敗できる権利”も重要だと思うんです。たとえば、「火起こしをやりたい」と言ったときに、ネットで検索すれば正解はすぐに出てきます。しかし、本来その答えは、人類が歴史の中で試行錯誤して身につけたもの。試したり失敗したりといった経験が自由にできる環境も用意したいと思っています。
今井:村がコンパクトだからこその良さがあって、道を歩けば挨拶が飛び交い、コミュニケーションも密な中で、子どもたちを村全体で育んでいるという実感も子育て世代にとっては、安心につながるのではないでしょうか。子育ては大変だけど、子どもたちの可能性は広げてあげたいし、幸せになってほしいと親は願っているはず。子どもたちが自分で選んで自分の足で歩んでいくことについてみんなで考え、自分のペースで叶えていくことができるのも西粟倉の魅力ですね。
村ぐるみで「生きるを楽しむ」西粟倉への教育移住
福岡:西粟倉にはさまざまな学習に関わる団体があります。いずれの団体も2018年に村全体で考えた「生きるを楽しむ」というスローガンを土台に、アプローチの方法は違えど、最終的に「生きるを楽しむことができる人」を育んでいくことを共通の柱に活動しています。先ほど話に出ましたが、「やりたいこと」に挑み、学ぶ楽しさを知り、「できた!」の経験を重ねる。活動の中では、なるべく大人である自分たちが楽しむことも大切にしています。そんな大人たちの背中を見て、次の世代の子どもたちが育まれていく。そしてまた次へと循環していく。これが西粟倉の目指すところなんです。
今井:地域の方々が口をそろえて言うのが、「子どもたちは地域の宝である」ということ。建前や標語じゃなく、心から地域の人がそう思っているんです。そんな中で、社会教育だけでなく公教育にも関わり、相互作用しながら循環させることができるのも「Nest」の特色のひとつです。
福岡:ただ、教育移住について誤解があってはならないのが、西粟倉に教育移住すれば何でもしてもらえると思われることかもしれません。課題はまだまだまだたくさんあります。
今井:「ここに来ればサービスが受けられる」といった受け身の心構えではなく、村のメンバーとしてみんなで一緒に考えていくという心構えで来てもらえたらと思っています。それが、自分の願いを叶えると同時にまわりのみんなも豊かにするポイントだと思うんです。「西粟倉の家族になりませんか?」という気持ちで、お待ちしています。
(文:井上友子 写真:植田敬太郎)
〜こんな活動をしています〜
「やってみん」は「やってみなよ!」という意味。学ぶことを楽しみながら「やってみたい! 」を叶えるための活動は、「あわくらみらいアカデミー」や「学びのプロデュース」など多種多様。子どもたちが自分たちでつくりあげるカフェ「やってみんCAFE」や自分のやりたいことを人にも教える「やってみんLEADER」など、子どもたちの「ワクワク」を大切に、「らしさ・まなび・みらい」をひらく活動には今後も注目。
○あわくらみらいアカデミー
○やってみんCAFE
○やってみんLEADER
○学びのプロデュース
○教育移住窓口
移住に際しての教育に関するご相談などは、「西粟倉教育移住窓口HP」まで。
西粟倉教育移住先行体験動画では、西粟倉での教育の様子をお見せしています!