「秩父で農との関わりかたを探す旅」
現地体験ツアー体験レポート

東京から特急電車で約80分。自然や農に触れながら暮らしている人たちがいる秩父地域をめぐりながら、農との関わりかたを探すツアーが10月下旬に開催されました。

当日はポカポカ陽気の秋晴れで、まさにツアー日和。二拠点居住や週末移住できる場所を探している人、第二の人生を模索している人、土や畑に触れたい人、秩父地域の人たちと知り合いたい人、”農ある暮らし” に興味のある人など、さまざまな目的の方々が今回のツアーに参加していました。

\当日のスケジュール/

10:00 西武秩父駅 集合
秩父の自然の中を散策
11:30 「KEiNA」訪問
KEiNAのフィールドを堪能しながら
地場産の有機野菜をつかったオリジナルランチ
15:00 「ENgaWA」訪問
農ある循環を体験しながらの農体験
17:30 横瀬駅 解散

 

秩父の自然や農産物を満喫する

バスに乗ってまず訪れたのは、秩父農産物直売所。地元で採れた野菜や果物が並んでおり、地元の人たちも買いに訪れていました。この日は柿がたくさん売られていて、秩父名物のしゃくし菜も販売されていました。

地元の農作物や特産品が並ぶ店内

その後、イチョウ並木がきれいな秩父ミューズパークで少しの間、秋を満喫。秩父ミューズパークは野外ステージ、大庭園などの芸術・文化施設、スポーツ施設があり、地元の人たちも訪れる自然豊かな場所です。この日もたくさんの親子連れやカップルたちで賑わっていました。

紅葉も楽しめる地域住民の憩いの場

しばらくイチョウ並木を歩いていくと、MAPLE BASE(メープルベース)に到着しました。MAPLE BASEは、秩父の森で採取されている秩父産メープルシロップを身近に味わえるお店です。秩父で採れたカエデの樹液を煮詰めて作った貴重な商品が並んでおり、商品を売ったお金を森の整備などに活用しています。人気商品のパンケーキを味わいたかったですが、今回は残念ながら時間の関係で叶いませんでした。ぜひ機会があれば、食べてみてください。

紅葉シーズンということもあり大勢の人で賑わっていました

テイクアウトできるドリンクも販売しています

 

秩父の自然を感じ、自然の恵みを味わう

続いて向かった先は、2022年の春にオープンしたばかりの『KEiNA CHICHIBU』。こちらで、お待ちかねのランチをいただきました。

オーナーのご両親が育てている新鮮な有機野菜が堪能できるカフェ『yotte KEiNA(ヨッテケイナ)』と、農泊体験もできる1日1組限定のプライベートキャンプ場『nete KEiNA(ネテケイナ)』からなる施設は、秩父の自然を堪能できる場所です。

ご家族総出でお出迎えしてくださいました!

オーナーである今山さんは、コロナ禍をきっかけに地元・秩父の良さを改めて実感し、二拠点生活をしたいと週末だけ秩父に通うスタイルで『KEiNA』をオープン。ちなみに屋号の『KEiNA』は、秩父地域の方言で『〜してけぃな(=〇〇していって)』が由来になっているそう。オープンして1年経っていませんが、近隣の方や都内から訪ねてくる人も多く、人気のスポットになっています。

また、”秩父のおいしいものを秩父の自然に囲まれて食べられる” 宿泊型農業体験施設も兼ねており、負の遺産と言われてしまう耕作放棄地(農地)の新たな活用方法のひとつとして、地域の魅力を価値づけていこうと取り組まれています。『秩父の自然により近く、自然を食べる』をコンセプトに、敷地内の農場で収穫した野菜やハーブを使ったBBQ体験など、農に触れるプログラムやイベントも企画していく予定とのこと。今後が楽しみです。

そんなKEiNA自慢の無農薬野菜たっぷりの自家製ランチを食べながら、実際に移住してきた先輩方のお話も伺いました。

安心安全な有機野菜をたっぷり使った贅沢なランチ

 

コロナ禍をきっかけに夫婦でUターン / 宮下さん夫妻

「秩父市田村にUターンし、現在は横瀬町の地域おこし協力隊として活動しています。東京から秩父、地域を狭めてみたら、逆に世界が広がりました。」

「緊急事態宣言のとき東京に住んでいて、秩父にしばらく帰れない日々が続き、自然の大切さをあらためて感じました。そのときに、自分にとっては季節の移ろいを自然の中で感じることが暮らしに必要だということに気づいたのも、Uターンのきっかけです。」

 

東京での仕事を続けたまま移住できるのが魅力 / 秩父市地域おこし協力隊 松本さん

秩父の魅力を伝え、都内の人と地域の人をつなげたいと、秩父市の地域おこし協力隊に応募したという松本さん。

「秩父からは都内にも通えるので、仕事はそのまま移住できるのがいいところです。移住に現実的な地域だと思います。実際、昨年度も70組くらいの人が移住してきています。二拠点生活にも便利で、自然の中で暮らしながら、時々都内に行くということも可能です。」

 

自分が関わることでまちが変わっていくのが見える地域 /  malme design 吉田さん

秩父に移住して起業した『malme design』の吉田さん。現在は三分の一が東京、三分の二が秩父の仕事を受けているそう。

「秩父地域はチェーン店が少なくて、個人店が多いのが特徴です。店の数も限られているからこそ、一人一人に影響力があるというか。移住した当初はインテリアショップで働いていたんですが、そこからいろいろな人と知り合い、元々やっていたグラフィックデザインを頼まれることも増えたことをきっかけに独立しました。自分が関わった仕事が、まちを変えていくのを実感できるのも魅力な地域です。」

 

先輩移住者の話を聞いた後は、今山さんのご両親アテンドのもと畑を案内してもらいました。サツマイモの収穫体験をさせていただいたり、秩父原産の「大滝いんげん」を収穫したり。収穫した野菜はお土産としていただきました。

農薬を使っていないので虫除け対策が必須

今山さんのお母さん自ら、大きなサツマイモを掘ってくださいました!

秩父原産の大滝いんげん

たくさんの野菜をお土産にいただき、KEiNAで秩父の自然を満喫させていただいた後は、別れを惜しみつつ、次の場所へ出発します。

 

町の農産物を無駄なく循環させる仕組みづくり

バスが到着したのは、秩父市のお隣りにある横瀬町の畑。ここでは、蕎麦刈り体験をさせていただきました。それぞれに鎌を持ち、蕎麦を刈り取り、刈った蕎麦を束にまとめる…。簡単なようで、なかなかの大仕事です。日が暮れる前にと、現地の人も参加者も黙々と作業に取り組みました。

黙々と蕎麦を刈っています

刈った蕎麦をはざかけして、干していきます

一仕事を終えた一向は、畑からすぐの場所にあるチャレンジキッチン『ENgaWA』へ。

「よこらぼ」などさまざまなプロジェクトを仕掛けながら “日本一チャレンジする町” をスローガンに掲げ、盛り上がりをみせている横瀬町。『ENgaWA』は、そんなまちを盛り上げる新たな拠点のひとつです。農業に興味を持つ町外の人や都心部から移住して農やまちづくりに関わる移住者、地域おこし協力隊などさまざまなメンバーが関わっています。

横瀬町にいる農家さんがこの先も作物を作り続けていける仕組みにしたいと、廃棄される予定だった農産物を『ENgaWA』でカフェメニューとして提供したり、加工品として開発するなど、まちにある資源を循環させて継続していける取り組みを進めているそう。

「横瀬」Tシャツをきて出迎えてくれた横瀬町役場の田端さん

「縁側(えんがわ)のように、いろんな人がまぜこぜになり、チャレンジする人を応援して、農業と食が循環する輪をつくりたいです。農業が大事なので、地元の農産物を極力使い、農家の人たちが来年も続けたくなる金額で仕入れ、販売したいと考えています。多少値段が高くても、安心安全の商品開発ができることで、長期的なまちづくりを目指しています。」(横瀬町役場 田端さん)

そんな「農」と「食」を繋げていくプロジェクトの拠点である『ENgaWA』。まだまだやりたいことがあって人手が欲しいとのお話もあったので、興味がある方は思い切って移住してみるのも手かもしれません。

ツアー参加者のために特別に作ってくれた、そば団子くるみ味噌ダレ(秩父の名産)


感想まとめ

今回ツアーに参加し、私も将来都会の仕事を続けながら自然のある地域で二拠点生活をするのか、自分らしい農ある暮らしの関わりかたを探してみたいと思えるきっかけになりました。

地方に移住することに躊躇ある人も、ここ秩父地域では二拠点居住で東京と地方を行き来することも可能です。働き方も、暮らし方も、選択肢は自分次第で広げられるからこそ、自分にとって何が大切なのか、自然の中で、土に触れながら、ゆっくりと改めて考えてみるのもいいかもしれませんね。

文・撮影:老伽真由美

                   

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