「館山・地域課題への挑戦!
ワーケーションモニター」 体験レポート

主催:館山市経済観光部雇用商工課

千葉県館山市で2022年10月12日(月)~14日(水)の3日間にわたり開催されたワーケーションモニターのレポートをお届けします。

三方に水平線が広がる海の深い「碧」、広く大きく広がる空の「水色」、煌めく星が浮かぶ夜空の「濃紺」、実り豊かな田畑の「碧」。たくさんの美しい「碧」色に抱かれた千葉県館山市。
今回のワーケーションモニターは、館山の地域の課題解決に挑戦する地元事業者との交流会がメインプログラムとして組み込まれました。モニター参加者は地域とつながりや新たな価値の共創、ビジネスマッチングに関心のある14名。それぞれが熱い想いをもって館山駅に集合。さぁ、ワクワクした気持ちでワーケーションのスタートです!!

館山のコミュニティ拠点!「LivingAnywhere Commons 館山」でオリエンテーション

千葉県館山市へのアクセスは、東京駅やバスタ新宿から高速バスで約2時間。羽田空港や横浜方面からも高速バスが出ていて、アクアラインを使うとあっという間。乗り換えなしでラクラク訪れることができます。
館山駅から北条海岸に続く1本道にはヤシの木や白壁とオレンジ色の屋根の家々が立ち並び、南国気分の風景がお出迎えです。

館山駅から徒歩5分でオリエンテーション会場の「LivingAnywhere Commons 館山」(以下、LAC館山)に到着。ここは、リゾート合宿所(筑波大学のセミナーハウス「ナミカゼ館山」)を整備した施設で地域コミュニティのHUB拠点です。オリエンテーションでは、3日間のスケジュールの説明や運営スタッフの紹介、参加者の自己紹介を行いました。地域おこし協力隊の北村亘さん・荒垣由以子さん、館山市長も来場し、参加者に歓迎の言葉が贈られました。

LAC館山では宿泊棟とコミュニティスペースも見学させていただきました。施設内になんと冷凍イノシシ肉の自動販売機を発見! 家に持ち帰って館山のジビエを楽しむことができるので、お土産におすすめです。

LivingAnywhereCommons 館山
https://livinganywherecommons.com/base/tateyama/
住所:千葉県館山市北条2861
TEL:070-1254-7629

オリエンテーション終了後は、宿泊先の「ホテルファミリーオ館山」に移動して自由時間。ホテルの目の前には海が広がり、晴れの日には美しい夕陽も望めます。お部屋もゆったりとしていて仕事に集中できます。また、ホテルではスポーツバイクのレンタルやシーカヤックなどのアクティビティもあります。仕事の合間に気分転換もできておすすめです。

今春以降には、ロビーとパティオ(中庭)がワーケーションフロアとしてリニューアルし、ワーケーションオフィス(個室)も建設予定。単なるリゾートホテルではなく、ワーケーション拠点として今後さらに人気が高まりそうです!!
※リニューアルオープンに関する最新情報はホテルに直接ご確認ください。

ホテルファミリーオ館山
https://familio-folkloro.com/tateyama/
住所:千葉県館山市大賀81-17
TEL:0470-22-8861

地域課題に挑戦する地域事業者との交流会

館山の地域課題に取り組む3社の地域事業者との交流会。事業者の方々に力を入れて取り組んでいる地域課題や館山の多様な地域資源の活用ついてレクチャーしていただきました。

◉参加事業者①
NPO法人「おせっ会」理事長・富崎館CEO
八代 健正さん
防災拠点構築による地域復興とコミュニティの再生」

2019年の台風15号で被害を受けた館山市布良めら地区。八代健正さんはこの地で防災キャンプ場「富崎館」を経営しながら、台風被害からの復興と住民たちが自らが地域課題の発見・解決に取り組む地域コミュニティづくりを推進しています。

「富崎館は、もともと地域コミュニティのシンボルだったんです」と八代さん。富崎館は明治時代に創業した6代も続く老舗民宿で、漁師町・布良に訪れる釣り客をはじめ、地域の人々が集う場所でした。そんな富崎館も、台風で屋根も壁も吹き飛ぶ大きな被害を受けました。一時は心折れそうになりながらも、娘さんと二人三脚で再建に挑まれたそうです。復旧活動をするなかで、改めて地域を見渡すと、被災による空き家も増え、高齢者率は63%まで上昇(被災前から4%増)。このままでは、布良の文化も人々の思いも次世代に残せない。危機感を抱いた八代さんは、「富崎館を中心に地域をつないでいこう!」と奮起します。この八代さんの熱意で、富崎館は生まれ変わります。

キャンプ場の隣には漁港で獲れた海の幸が楽しめる大衆食堂、さらには直売所が連なります。新鮮な魚と美しい景色、そこで生まれる地域コミュニティ…。地域資源を生かしながら進化する布良地区の未来が楽しみです。


富崎館から望む布良の漁港。お天気に恵まれれば青い海と、夜空に輝く星たちを一望できます。

富崎館
https://www.instagram.com/tomisakikan/
住所:千葉県館山市布良303-1
TEL:080-4081-0724

八代さんおすすめの「カフェ九雲」。台風被害で壊れた家を移住者が再建されたカフェであり、地域のお年寄りや観光客にも人気のコミュニティスペースです。モニター参加者のうち、過去に訪れたことのあるメンバーもいて、「シーフードグリーンカレーが美味しかった」とのこと。布良に訪れたら要チェックです。

珈琲 九雲(cafe Cloud naine)
住所:千葉県館山市布良1267
TEL:090-4910-6206

 

◉参加事業者②
合同会社アルコ代表・元館山市地域おこし協力隊
沖 浩志さん
鳥獣被害対策と連携した地域資源の循環と食の発信」

初日の夕食のメインは「イノシシ肉の赤ワイン煮込み」。「あれ?臭みがないね」「お肉はしっかりしているけど硬くない」「美味しい!」などと、ジビエ料理に興味津々の参加者のみなさん。

イノシシ肉を提供いただいたのが、館山ジビエ加工センターの運営と館山の獣害被害対策、館山ジビエの食の普及に取り組まれている合同会社アルコ代表の沖 浩志さんです。

「スペイン産のイベリコ豚はどんぐりを食べて育つため、ヘルシーな脂質と香りが楽しめます。館山のイノシシが生息する森林にもどんぐりが豊富であり、彼らもどんぐりを食べて育っているため、イベリコ豚に似て脂がほどよくのった上品な味わいが特徴です」(沖さん)。
育つ環境や食べているものによってジビエ肉の香りや肉質、脂質も変わるとは驚きです。

でも、この美味しいイノシシも、農地では厄介者。館山にはイノシシだけでなくシカやキョン、アライグマ、アナグマやハクビシンも生息しています。農地を荒らし、収穫前の農作物への被害は甚大です。

獣害被害を減らすため、沖さんは2021年に館山ジビエ加工センターを設立しました。害獣として捕獲・処分されていた鳥獣の食肉加工や流通の仕組みを整備し、地域の新しい食文化としてジビエ料理を普及させ、「館山ジビエ」のブランド向上に尽力しています。さらに、毛革を使った工芸品や、臓器を肥料にした竹チップコンポストの開発など、食用にはできない部分の「廃棄ゼロ」を目指した取り組みも行っています。

また、都市部在住者が2拠点生活を送りながら狩猟者になるための講座を企画したり、南房総のシェア里山「ヤマナハウス」で狩猟イベントも開催しているそうです。獣害という地域の問題を逆手に取った奇策が、館山ならではの独自性のある観光や文化、持続可能な産業を生み出した好例といえるでしょう。

館山ジビエセンター
https://tateyamagibiercenter.com/
住所:千葉県館山市西長田1163-5
TEL:0470-29-3919

ヤマナハウス
https://yamanahouse.site/
住所:千葉県南房総市山名1395

◉参加事業者③
花しぶきリゾート&カンパニー会長/館山商工会議所副会頭/元館山市観光協会会長
小金 晴男さん
「後継者不足により衰退した定置網漁の継承と観光推進」

2日目の夕食会場は、花しぶきリゾート&カンパニーが運営する「漁港食堂だいぼ」。天気が良ければ館山の海を間近にBBQも楽しめます。同社会長の小金さんに、豪華な海の幸をご用意いただくとともに、食へのこだわりと館山への想いをお話いただきました。

小金さんは、もともと500名ほどが宿泊できる大きなホテルを経営されていましたが、より身近な距離でお客様に喜んでいただくために「自ら船に乗って鮮魚を仕入れよう!」と定置網漁船を購入。新鮮で美味しいものを提供したいという想いで、毎朝漁に出かけては水揚げされた鮮魚を厨房へと届けています。

夕食のメニューの一つ「なめろう」は、魚と味噌・薬味を混ぜた房総半島発祥の郷土料理で、漁船の上で獲ったばかりの魚を材料に作られたと言われています。まさに、鮮度抜群の美味しさを感じることができる一品でした。

ところで、読者のみなさんは館山のプレミアムご当地グルメ「館山炙り海鮮丼」をご存知ですか? 三段重ねの丼ぶり御膳で、炙り海鮮にお刺身、海鮮押し寿司と野菜巻き寿司を堪能できます。市内数店舗で提供していますが、花しぶきリゾートグループの「たてやま旬鮨 海の花」や「たてやま温泉 千里の風」、「百年古民家レストラン 季の音」でも楽しむことができます。どのお店が一番美味しいか、味比べしてみるのも楽しそうですね。

漁師食堂だいぼ
http://hanashibuki.com/daibo/
住所:千葉県館山市伊戸963−1
TEL:0470-29-1221

 

今回のワーケーションモニターでは、地元の事業者と地域ビジネスに関心のある参加者が集まり、情報共有や意見交換をすることで、館山の知られざる魅力や地域づくりのさまざまなアイデアを発見することができました。
そして、事業者とモニター参加者との出会いから、新たなビジネスの話も生まれているようです。このご縁がそれぞれの活動の原動力となり、今後の新規事業へのチャレンジや地域の発展に多くの示唆を与えてくれるはずです。

 

取材・文 阪急交通社 光吉 蘭

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