まだ自分の中にない価値観に触れることが、移住の第一歩。

〜「ニイガタビトに出会う旅」ツアーレポートvol.1〜

『地方移住が気になるけど、移住後のイメージはまだ持っていない』、そんなあなた。今のあなたに必要なのは、地方移住を選択した人たちの「価値観」に触れることです。

どんな環境で、どんなことを考えながら、どんな時間の中で暮らしているのか。それらを体感するには現地を訪ねるしかありません。

新潟県では「ニイガタビトに出会う旅」と題して、現地体験ツアーを実施しました。今回のツアーで訪れたのは新潟県県央・下越エリア。新潟県三条市・燕市・村上市・新潟市にU・Iターンした『ニイガタビト』の活動拠点を訪ねました。

この記事では当日の様子をレポートしながら、ツアーの中で訪ねたゲストや参加者の質問・疑問を紹介します!

※こちらの記事は2021年11月27日(土)〜28日(日)に実施されたツアーのレポートです。
※撮影時のみ、マスクを外している写真があります。

 

出会いが地域に居続ける理由になる

旅のスタート地点はものづくりのまち、燕三条エリアです。

参加者が最初に訪れたのは、三条スパイス研究所。9月にオンラインで開催された『#わたしのにいがたじかん Talk cafe』に登壇された田中美央さんが案内をしてくれました。

田中美央さん
1989年、新潟県新潟市生まれ。新卒で(株)JTB 関東へ入社し旅行企画・販売を担当。その後、国際NGO PEACE BOATで世界一周の旅へ。帰国後、広告会社で働くも、もっと地域に入り込んだ仕事をしてみたいと思い、2016年に三条市(下田)の地域おこし協力隊として着任。雪国でウコンを栽培する山崎一一(かずいち)さんに出会う。2021年、友人と合同会社一一を設立し「人生は長く、楽しく」をテーマにウコン栽培と商品企画・販売を行う。

※オンラインイベントのレポート記事はこちら
https://niigatakurashi.com/54408/

 

田中さん「私達が栽培を引き継いだ山崎一一(かずいち)さんのウコンは、この三条スパイス研究所でも使われています。地域おこし協力隊として三条市に着任し、その活動の中で出会った方が、雪国では難しいとされるウコン栽培をしている山崎さんでした。山崎さんの人生や価値観を知っていくうちに、このウコンを絶やしてしまうのはあまりに寂しいと思って、引き継がせてほしいと山崎さんに話したのが最初でした」

田中さんと同じく地域おこし協力隊として隣の燕市で活動をしている芦川紘子さん(写真中央)と、同じく伝統産業である燕鎚起銅器(ついきどうき)を製造する企業で働く白鳥みのりさん(写真右)も同席して交流を行いました。

芦川さん「燕市の地域おこし協力隊として2020年から空き家バンクを推進する仕事をしています。地方とはいっても必要なものは揃いますし、家も道も広くて住みやすいですね」

地域への入り口として地域おこし協力隊を勧めたいという芦川さん。移住が既に決まっているなら、その移住先の自治体で募集がないかチェックしてみるのも良いと話します。

白鳥さん「私は地元が新潟なのですが、学生時代は秋田にいて、横手市でゲストハウスのスタッフをやっていました。卒業後は上京して会社員をしていたのですが、やはり地元に戻りたいなと。その時、頭に浮かんだのが学生時代に燕三条 工場の祭典で訪ねた玉川堂でした」

現在は築75年の家を購入して友人と一緒に暮らしている白鳥さん。新潟に居たいと思えるのは「それぞれのフィールドで前向きに頑張っている人達に、ちょうど良くスポットライトが当たるのが心地よい」からだそうです。

移住者同士の繋がりも広く、安心してコミュニティに飛び込んでいけそうですね。

 

ものづくりの歴史を体験できる三条鍛治道場

続いて、田中さんに案内していただいたのは、三条スパイス研究所から徒歩3分ほどの場所にある三条鍛治道場です。

田中さん「ここには三条市のものづくりの歴史資料が展示されているだけではなく、ものづくりの常設講座があるので、観光客の方だけではなく、学校の総合学習にも使われている拠点になっています」

この場所では五寸釘を地元の鍛治職人の方と一緒にペーパーナイフにしていくというものづくり体験を行いました。

 

新しい文化と融合して居場所ができる

小休憩に立ち寄ったのはSAKUNOYA cafeという古民家を改装した一棟貸しの宿KAJIのカフェスペースとしてオープンした「あんみつ屋」です。

田中さん「北三条駅の周辺エリアには、こういった古民家を改修した宿やカフェ、飲み屋街などがあって移住者の方も多く住んでいますよ」

移住者や前向きに町と向き合う住人達によって作られる個性溢れる空間。それらを巡ることができるのが燕三条エリアの魅力です。

【三条スパイス研究所】
〒955-0072 新潟県三条市元町11−63
TEL:0256-47-0086
MAIL:contact@spicelabo.net

 

【三条鍛治道場】
〒955-0072 新潟県三条市元町11-53
TEL: 0256-34-8080
FAX:0256-34-8081
アクセス:JR北三条駅から徒歩3分/JR上越新幹線燕三条駅から車で10分/北陸自動車道三条・燕ICから車で10分

 

【SAKUNOYA cafe】
〒955-0072 新潟県三条市元町12-6 craftsmen’s Inn KAJI内
TEL:0256-46-8872
営業時間:カフェ10時~16時、宿泊 IN 15時、OUT 10時
定休日:火・水曜(カフェ)、12月28日(火)~2022年1月5日(水)
席数:12席
駐車場:なし

 

マタギ文化の出会いから伝統工芸の道へ

次に向かうのは村上牛や名勝「笹川流れ」で有名な村上市。昔ながらの町家が並ぶ独特の風景と食文化に触れます。

宿泊先で合流したのは大滝ジュンコさん。マタギの里と呼ばれている村上市山熊田集落で暮らし、日本最古の布と言われている伝統工芸『羽越しな布』を継承した移住者です。

大滝ジュンコさん
埼玉県出身。東北芸術工科大で金属工芸・実験芸術を専攻した後、山形市を拠点に現代芸術家として活動。全国各地のアートプロジェクトに携わる中、2014年に訪れた村上市山熊田集落の人々の暮らしに衝撃を受け、地域おこし協力隊に着任・移住。協力隊退任後、「羽越しな布」の継承に取り組む。

大滝さん「友人の誘いを受けて、山熊田集落のマタギの方々との『飲み会』に誘われたのが移住のきっかけでした。この集落で暮らす人たちの『生きる強さ』と『生き方』に惹かれたんです。その日どう生きるか決める基準に『山』があって、自分もこういった暮らしがしたいと思いました」

集落でマタギとして生きる人たちの価値観に触れ、それを自分の中に取り込んでいきたい。それが移住を決めた気持ちの根底にあったといいます。

大滝さん「山の暮らしを残していきたいという気持ちで移住をした私が出会ったのが、羽越しな布でした。木の皮の裏側から繊維をとって糸にして織り上げるのですが、集落には3人しか織り手がいません。しかも、みんな80代前後。だから残せるうちに技術を習得しようと決めたんです」

移住して7年目、まだまだ学び多い里山の暮らしを送る大滝さん。マタギの里に移住した大滝さんが惹かれたのは、そこで暮らす人の生きる価値観。同じように、山で生きる力に魅了された人たちとの繋がりが広がろうとしています。

 

【羽越しな布】
新潟県村上市、山形県鶴岡市との県境の山里において、シナノキ、オオバボダイジュ等の樹皮から採れる繊維で糸を作り、布状に織り上げたもので、ざっくりとした手触りと落ち着きのある風合いが特徴です。古くから地域住民の暮らしの中に育まれてきました。-新潟県HPより引用

 

やりたいことを口にすることが大切

村上市は全国的にも珍しい城下町の町並みが今なお残る地域。城跡・武家屋敷・町屋・寺町が生み出す景色は観光客を惹きつけるだけではなく、そこに住む人々の誇りにもなっています。

2日目にこの村上市を案内してくれるのは、田中さんと同じくオンラインイベントのゲストとして登壇した高橋典子さんです。

高橋典子さん
1985年生まれ。新潟県村上市出身・在住。新潟市の高校、千葉県の大学を卒業後、東京都内の広告代理店に就職。2010年にUターンし、地元企業の株式会社きっかわで企画・広報として勤務。2018年、観光地化する村上市の”普段の良さを知ってほしい!”という想いから、かつては食堂だった空き家をリノベーションし、素泊まりの宿『よはくや』をオープン。

高橋さん「この町並み、面白いですよね。よく見ると隣の家同士がぴったりくっついてます。同じ柱を使ったり、屋根が繋がっていたりするんです。これが、商人が暮らす町屋の特徴です。」

高橋さんは、この城下町跡の町並みに惹かれ「この場所を知ってもらえるような拠点をつくりたい」という想いを持つようになりました。2年かけて探し、ようやく見つけたのが現在「よはくや」として運営している物件です。

高橋さん「Uターンして村上市だからこそできる仕事に就きたいと思ったんです。そこで出会ったのが『きっかわ』でした。今、『よはくや』として運営している町屋も地元企業で働いていた時の繋がりの中で見つけることができたんです。時々、空き家になった町屋を活用して、移住者の方が購入して工房にしたり、喫茶店にしたりもしていますよ。商売の町だからか、そういった方も受け入れられやすい土地柄だと思います」

「この町の魅力を知ってもらうために、ゲストハウスを始めたい」というような「想い」を口にすることで、新しいことにチャレンジする機会を手にすることができるのは、ニイガタビトに共通する体験のようです。

村上市の城下町は観光地としても人気のスポットで、町屋に入るとまるでタイムスリップしたかのような体験ができます。文化財に指定されてもなお、その場所での営みは続いており、村上市が辿ってきた長い歴史を感じることが出来るでしょう。

毎年7月6日・7日には国の重要無形民俗文化財に指定されている「村上大祭」が行われ活気に溢れます。新潟の歴史や文化を感じたいと思ったら、村上市を訪ねてみてはいかがでしょうか。

【株式会社きっかわ】
〒958-0842 新潟県村上市大町1-20
TEL:0254-53-2213

 

【株式会社九重園】
〒958-0848 新潟県村上市小国町3番16号
TEL:0254-52-2036
FAX:0254-52-6941
MAIL:info@kokonoen.com

 

【益甚酒店】
〒958-0842 新潟県村上市大町1−19
TEL:0254-53-2432

 

【よはくや(guest house yohakuya)】
〒958-0845 新潟県村上市細工町4−23
TEL:0254-75-5489
MAIL:yadoyohakuya@gmail.com

 

人の交流拠点を新潟につくりたい

ニイガタビトに出会う体験ツアー、最後の目的地は新潟市。
沼垂(ぬったり)地域は市場として使われていた長屋を改装して昭和時代の風景を残しながら、新たな商店街として2010年にオープンしました。

沼垂市場通りと呼ばれていたこの辺りが沼垂テラス商店街と名付けられる頃には、30店舗近い個性豊かなお店が出店する新たな人の交流拠点として多くの人に愛されています。

「なり」は築100年余りの古民家を「改修したと分からないように、今までの名残を残しながら」リノベーションしたゲストハウスです。

運営をするのは高江理絵さん(写真右)。上京しようと思ったタイミングで、長野のゲストハウス作りに誘われ長野県下諏訪町に滞在し、改装・運営の経験をさせてもらったそうです。その時の経験がきっかけとなり「自分も故郷でゲストハウスをしたい」という想いを形づくりました。

高江さん「ないなら自分で作れば良いという考えに価値観が変わっていきました。沼垂テラス商店街をはじめ、新潟の新しい魅力を知ってもらえる拠点になってもらいたいと思っています」

同じ沼垂テラス商店街でパーソナルスタイリングサロンSUNNYを運営する田村梓さんは山形県出身。大学進学をきっかけに新潟県内に住み、新潟市役所で務めたのち、フリーランスとして独立しました。

田村さん「東京では当たり前にあるようなことでも、新潟で実践をしている人が少ない分野はたくさんあると思います。得意なこと、好きなことを活かすことでスポットライトが当たりやすくなるのは、この地域の特徴ではないでしょうか」

沼垂テラス商店街に店を構えるのは、どこも個性に溢れた個人店。観光客が多く訪れる場所ですが、コロナ禍以降は地元住民向けのイベントや広報に力を入れ、助け合いながら営業を続けています。

高江さん「『なり』には自然の成り行きという意味がこめられています。その時々の状況によって、場所としての機能も変化しようとしています。このコロナ禍も新しいことへ向かうための準備をする期間として捉えて、新しい新潟の魅力を発信していきたいです」

なければつくる。あるものを活かす。
ないものを探すのではなく、自分なら何をこの地域につくるだろう、どういう風に活かせるだろうと考えてみると拓けてくる価値観があるかもしれません。

新潟市での生活は首都圏と大きくは変わりません。しかし余白がある分、自分自身が何かを生み出す側にまわりやすいという特徴もあります。起業や移住の支援体制も集中しているので、地方都市で暮らしながら周辺市町村へと再移住する二段階移住を検討しても良いでしょう。

参加者は沼垂テラス商店街と錦鯉のパッケージでグッドデザイン賞を受賞した今代司酒造の酒蔵見学へと足を運び、町との距離感を縮めていました。

【ゲストハウス『なり』】
〒950-0075 新潟県新潟市中央区沼垂東2-11-31
TEL:025-369-4126

 

【SUNNY personal style】
〒950-0075 新潟県新潟市中央区沼垂東3丁目5
TEL:090-2240-5655
MAI:tamura@a-sunny.info
営業日:月、水、木、金、第2・4土曜日
定休日:火、日、祝
営業時間:10:00~16:00

 

【沼垂テラス商店街】
新潟県新潟市中央区沼垂東3-5

 

【今代司酒造】
〒950-0074 新潟県新潟市中央区鏡が岡1番1号
TEL:025-245-3231
FAX:025-245-3233
営業日:年中無休(年末年始除く)/AM 9:00~PM 5:00

 

価値観と出会い、自分の中に取り入れよう

観光以上、移住未満をコンセプトに、ニイガタビトの『価値観』に触れながら暮らしを体験する体験ツアー。人や場所、地域との出会いによって得られた情報量はガイドブックやインターネットを読み漁るよりも圧倒的に多く、これからのライフスタイルを考える材料になったのではないでしょうか。

新しい価値観を取り込むことで、人も地域も次のステップへと進むことができるようになります。今の環境を変えたいと思ったら、是非とも現地へと足を運んでみてくださいね。新潟でお待ちしています。

 

【体験ツアー参加者の質問・感想】

2日間の体験ツアーの中でおよそ80件以上の質問や感想が集まりました。その中の一部を抜粋して、お伝えします。自分と同じ悩みを抱えている参加者もきっといるはず。今後の移住相談や移住セミナーに参加する機会があった時には、是非ご自身の状況と照らし合わせながら、より具体的に質問するための参考にしてくださいね。

 

<移住に関する質問>
・ゲストハウスの運営について、宿泊のみで成り立っているのでしょうか。副業や他の収入源もあるのでしょうか。
・新潟で食べたものがどれも美味しく、新潟に移住してから美味しくて驚いた食べ物やお土産を知りたいです。
・自分のやりたいと思った仕事と結婚、出産などはどのようにバランスを取りましたか?お一人でも同じようにチャレンジしようと思いましたか?
・新しく自分で仕事を始めた時、PRはどうしてますか?
・何か物事を始めたいと思ってから、それがスタートするまでにどのくらいの期間がかかりましたか?
・伝統や昔ながらの風習と新しい若い文化が共存するには何が大切だと思いますか?
・若い人達のコミュニティやつながりはありますか?
・なぜ、その地域を選んだのか。選んで良かったと思えることは何かエピソードが知りたいです。

<ニイガタビトに出会った感想>
・寒い地域の人は排他的だと思っていましたが、多くの移住者が活躍していることにびっくりしました。
・移住後の収入の軸、生き甲斐、ぬるんとした気持ちでは難しいことだと感じました。
・「本当にやりたいこと、やるべきと思うことであれば誰かが手伝ってくれる」という言葉が印象的でした。
・女性が身の丈にあった力を抜いた感じで起業しているのが新鮮でした。
・観光だけでは気がつけなかったことを知ることができて良かったです!また訪れたいと思います!
・現地の方を含め、歴史の深い文化に触れられた点がとても良かったです。街中のふとした特徴を詳しく説明してくださり、とても充実した時間を過ごせました。
・人と人とのつながりを大切にして勇気を持って踏み出した人達はすごいです。人脈って大切ですね。
・ニイガタビトの女性たち、大変なこともあると思いますが仕事や暮らしの日々を楽しそうに話していて新たな刺激を受けました。視野が広がってよかったです。
・何か特技がないと事業を起こせないと思っていましたが、やる気と努力でできるチャンスがあることが分かりました。

 

【今回訪れた自治体の移住サイト】

ツアーで訪れた地域では、それぞれの自治体独自の支援策もあります。移住を検討する際の参考としてください。

三条市 https://sanjo-city.note.jp/

 

燕市 https://www.city.tsubame.niigata.jp/soshiki/kikaku_zaisei/2/10/index.html

 

村上市 https://www.city.murakami.lg.jp/life/1/12/195/

 

新潟市 https://iju.niigata.jp/

 

 

新潟県全体のお話を聞きたいという方は、にいがた暮らし・しごと支援センターにお問い合わせください。にいがたの「暮らし」と「しごと」全般に関する情報を提供します。

にいがた暮らし・しごと支援センター https://niigatakurashi.com/soudan/

                   

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