女性、そして移住者が活躍できる地域企業
オンラインイベント「おおいたで見つける自分らしい暮らし方」 2023年1月14日(土)開催

移住するにあたって大きなネックとなる仕事。
さらに、女性の働く環境は、地域によって差があります。大分県では、女性の活躍推進や意識改革のための啓発活動に取り組んでいます。2023年1月14日に開催されるオンラインイベント「おおいたで見つける自分らしい暮らし方」では、「女性の活躍できる企業」にスポットを当て、ゲストとして大分県内の2つの企業にお話を伺います。
ここではイベント前に、新しい働き方と環境の整備についてプレインタビューを行いました。

 

社員の7割が女性。日々女性の働きやすさを追求
株式会社 西野物産

総務部 総務課 係長
綿内隆志(わたうちたかし)さん

大分県中津市の『西野物産』は、1913年創業の企業。カップ麺やインスタントラーメンなどに入っている「かやく」と呼ばれる乾燥具材や粉末スープ、揚げ玉やワンタンなどの揚げ物の製造、加工を行う。「顧客第一主義」、「顧客に信頼・満足される企業」を経営理念に掲げ、原料の受け入れから出荷までの各工程で様々な検査や厳しい衛生管理を行い、顧客や消費者に安全・安心で美味しい食品を届けている。
そんな企業を支えているのは、地元の女性たち。現在のように「女性が働きやすい環境づくり」や「子育てしやすい企業」などが叫ばれるずっと以前から、『西野物産』の製造現場では女性が活躍している。

女性なしでは成り立たない
製造現場で働くのはほとんどが女性で、社員の7割が女性。そんな企業の女性の働き方について、人事なども担当する総務課の綿内隆志さんに話を伺った。

Q_女性の働きやすさについて、いつから意識的に取り組んでいるんですか?

A_綿内さん 最近になって意識的に取り組んでいるのではなく、弊社では昔から女性がメインで働いてくれています。カップラーメンなどに使われる「かやく」をメインで製造していますが、工場で作業しているのはほとんどが女性なんですよ。会社全体でいうと、7割ほどが女性です。昔から、地元の女性が活躍していた歴史が今でも続いているといいますか。その当時から女性で成り立っている会社で、今でも女性なしでは成り立たない会社です。

Q_女性の従業員は、みなさん正社員として働かれているのですか?

A_綿内さん 正社員です。定年後に嘱託社員として契約して、70歳を超えて働き続けてくださっている女性もいらっしゃいます。

Q_70歳以上の方も現役で働き続けていらっしゃるんですね。長く働かれる方が多いのですか?

A_綿内さん 勤続30年、40年と長く働いている方もいます。定年を過ぎてもほとんどの方が嘱託社員として残ってくれています。

子育て中の突発的な休みも取りやすい

撮影にご協力くださったのは、入社3年目と10年目の女性。「私は高卒入社なのでハタチです」とはつらつと答えてくれた方と、「産休も育休もガッツリ取らせていただきました」という中堅の方、さらに3人の子どものパパだという綿内さんを加えた撮影中には、会話が途切れることがなかった。

現在「絶賛子育て中」という女性は、入社した時は未婚。子育て中の働きやすさなどは意識せず「事務職を探して入社した」というが、その後、結婚、出産と経験していく中で、昔から女性が多く働く企業での働きやすさを実感するようになったという。「保育園から突然の呼び出しがあっても、帰りやすいんです。楽に働けているので、もう10年も経っていました」。周囲のフォローの手厚さにも助けられているそうだ。

Q_お休みなどの待遇面など、子育て中の女性も働きやすい環境になっているのでしょうか?

A_綿内さん 休暇はしっかり取れるようになっていると思います。昔から女性が多かったので、制度面も整えてきました。お子さんがいらっしゃる方も多いので、お子さんの学校行事やイベントでも特に弊害なくお休みが取れていると思います。女性が多いだけに「子どもの体調が悪いので休みたい」という、急な休暇願いもよくあるのですが、そういった時にも「大丈夫ですよ」と、すぐに対応できる体制にはなっています。お休みが取りづらいと思う方はいらっしゃらないと思いますね。休みの融通がききやすいので、仕事と育児の両立はしやすいのではないでしょうか。毎年数名の方が産休・育休を取っています。

Q_「企業主導型保育園」にも携わっているそうですね。

A_綿内さん 2年ほど前から、「企業主導型保育園」を設置しました。運営は中津市内の学校法人にお任せしており、共同利用企業や地元の方も利用しています。当社からは現在2名の従業員がお子さんを預けています。

女性の強みを活かせる職場

細かい作業や同じ作業が続く製造現場は、実は女性に向いているという。綿内さんも「現場の方々を尊敬します」と語る、仕事とは。

Q_製造というお仕事のジャンルが、女性に合っているのでしょうか。

A_綿内さん やはり、細かい作業やずっと同じ作業を集中してできるというのは、女性の強みだと思っています。ひとくちに「かやく」といっても工程はたくさんあって、原料を機械に入れたり、流れてきた製品を目視したり手で触ったりという製品のチェックもあります。ローテーションでシフトを組んでいるのですが、忙しい時期には私も応援として現場に入ることもあるんですね。でも、やっぱり難しい。とても大変な作業なんです。それを「ずっと毎日続けられる」というのは、やはりすごいなと思います。製造の現場に関わる方達は尊敬します。

Q_中津市との関わりなど、地域への影響などは考えていらっしゃいますか?

A_綿内さん 女性だけに限ったことでなく、地元の方々に安心して働いていただける企業であり続けたいと思っています。

 


企業の持続的成長には女性の活躍が必要不可欠
雇用、定着の促進に取り組む
旭タカロン株式会社

代表取締役専務
岩本慎一(いわもとしんいち)さん 

大分県北部にある宇佐市。「宇佐平野」と呼ばれる県内有数の穀倉地域で、 米だけでなく小麦などの栽培も盛んだ。そんな宇佐市で 1990 年に創業した 『旭タカロン』。主に自動車用内装材(遮音材、吸音材、緩 衝材)として使われる多種目なフェルト関連製品を製造、販売している。 フェルトの原料にリサイクル衣料を使うなど SDGs も推進。女性が働きやすい環境整備や女性社員の入社や定着の促 進にも積極的に取り組んでいる。

時短型正社員制度を創設。子育て中の女性も働きやすい

訪問したのは、コートや洋服などリサイクル衣料を分別したり、ボタンやファスナーなどを取り除く作業をする工場。こちらでは、高校卒業後に新卒で入社した10代から、ベテランさんまで幅広い世代の女性が働いている。笑顔で岩本さんに話しかけていたのは、時短勤務1号となった女性。今年できたばかりの新制度を使い、パートタイマーから時短勤務の正社員になった。「岩本さんは、ここに来ると『最近どう?』と声をかけてくれて、話もよく聞いてくれるんです」と、社内の風通しの良さを語ってくれた。「友達に職場のことを話すと、『空きが出たら教えて!』って言われるんですよ」と、岩本さんにも報告。「そういう言葉を言ってもらえると、この制度を作った甲斐があるね」と、岩本専務も目を細めた。

Q_女性の働きやすさに取り組まれたきっかけは?

A_岩本さん 昭和時代のイメージだと、製造業は男性中心で働いてるイメージがあるじゃないですか。でも、当社に限らず大分県が推進しているあるべき姿として、女性や外国人も含めた、ダイバーシティ経営の考え方が重要だと思っていました。男性の仕事と思われていたことでも、女性ができる部分も多いんですよね。男性と女性が融合しながら働く環境作りを目指したい、と思ったことがきっかけです。
それと、男性中心の製造業だと、考え方や未来へ向けた発想が乏しくなる傾向もありました。バイアスを外し、女性ならではの生活者視点の考え方を取り入れることは重要なんですよね。

Q_女性が働きやすい職場づくりのため、どんな制度を作っていますか?

A_岩本さん 大分県が「女性が活躍できる環境作り」を強化しているのに合わせて、当社としても様々な制度設計をしています。やっぱり、子育てと仕事の両立って結構大変なんですよね。「病気したらどうするの?」という不安にもできる限り柔軟に対応したいと考えていました。今年(2022年)、「時短型正社員制度」を創設したのもそういった背景があります。
1日の時間サイクルをうまく活用しながら、仕事でもパフォーマンスを発揮してもらいたい。女性が働くスタイルも変わってきています。それに柔軟に対応することが、結果として残念な退職などのケースを減らすことにつながると思っています。実際、シングルマザーの方も働いていますよ。

Q_時短型は、2年間や「子どもが小学校に上がるまで」といったように期間限定ですか?

A_岩本さん いいえ、永続的です。これまでの例では、パートタイムやアルバイトだった方々が時短型正社員になりました。やはり正社員は社会保険などもあるし、安心して働いてもらえるのかなと思っているんです。今後は正社員でも時短型を選んで入社することも可能です。
まだ対応できる部署は少ないのですが、現在生産管理担当の社員の中には、リモートワークをしている人もいるんですよ。

入社のために移住する新卒学生も

Q_実際のところ、女性社員は増えているんですか?

A_岩本さん 増えてますね。辞める人も出ていませんし、いいムード、新しい風が生まれていて、手応えは感じています。 当社は今、BtoB のビジネスモデルですが、未来へ向けて事業領域拡大を目指しており、中長期経営計画の中で、BtoC のマーケットにもフェルトという防音部品の広がりを模索し ているんです。例えば、「お家にこんな防音材があると役立つよね」といった、生活者(マーケットイン)視点が必要です。
「じゃあ、その仕事は誰が やる?」となった時に、ちょうど来春、京都の大学を卒業する女性が人財とし てマッチングしたのです。
まさか移住して大分県の中小企業に就職する人がい るとは想像していませんでした(笑)。話を聞くと、移住後の就職相談機関の「おおいた産業人財センター」で、「大分県の北部の製造業で、『旭タカロン』っていう、面白い会社 があるよ」と紹介されたということです。
『旭タカロン』は、ジョブ型雇用を実践。職務に適したスキルや経験を持っている 人だけでなく、「何をしたいか」という志望動機や意思にもしっかり耳を傾け た上で、会社や仕事とのマッチングを図っている。学生が企業を選ぶ時代。「働きがい」と「働きやすさ」を両輪でまわしていく視点はやはり大切です。

Q_「地方で働きたい」と思われて、移住を視野に入れた就職活動をしていた方だったのですか?

A_岩本さん 当社はジョブ型雇用に取り組んでいて、採用の際はまずやりたいことを聞き、その活躍のフィールドと、「中長期の成長にもトライできる部分があるよ」という説明をします。今回はマーケティング(事業開発)の仕事をしてもらう人財と、彼女がしたいことがマッチしていたことが、決め手になりました。彼女も「新しいフェルトの魅力を情報発信して、世の中の役に立ちたい」という明確な志望動機があったので、願ったり叶ったりの採用になりました。

Q_今後の採用予定は?

A_岩本さん ひとつこだわってるのは、景気が悪くなったり業績が傾いても定期的に採用は続けたい、ということ。これまでは途中で採用をしていない年があり、年齢構成が少し歪なんです。いろんな世代をミックスした社員構成で、いろんなアイデアが有機的に生まれるような、そんな企業を目指していきたいなと思っています。

地域の生活サイクルに合わせた働き方も推進

県内有数の穀倉地域としても知られる宇佐市。実家が農家という社員も多く、女性の働きやすさだけでなく、地域の生活サイクルに合わせた働き方についても、柔軟に対応している。

Q_副業なども可能なのですか?

A_岩本さん 基本的には可能です。実際、宇佐市ではお米農家との兼業も多い。田植えな どのシーズンには年次有給休暇を取って実家の農作業を手伝うなど、農業と当 社の仕事を両立させている社員も多いですよ。「困ったときはお互い様」とい う精神が、職場の中でも広がっている気がしますね。やはり、「家族あっての 会社」だと思うんです。地方独自のサイクルに合わせて、農作業などもできる 限り応援したいと思っています。

Q_宇佐市や大分県にとってどんな企業でありたいと思っていらっしゃいますか?

A_岩本さん やはりコロナを乗り越え「地方創生」「地域貢献」に寄与したいですね。
大分県では、自動車関連企業の約 70%が日田・宇佐・中津・豊後高田市に集中しています。自動車の部品メーカーとして大分県北部や宇佐市を中心に仕事 をさせてもらっている当社としても、微力ながら何らかのかたちでお役にたちたいと考えています。具体的には、やはり雇用ですね。人口減少、高齢化が進む中でも安定採用を通じ、事業領域を拡大。一定の利益を生み出し法人税を収め社員のベースアップも同時に行う「正のスパイラル」を目指したい。又冒頭紹介のあった当社の事業ドメインにもなるのですが年間約400トンに及ぶ不要となった作業着や衣類を回収しそれを綿(反毛)に戻しフェルトにおきかえらせるといった環境に優しい循環型ビジネスに取り組んでいます。カーボン ニュートラルの時代ですから、できる限り二酸化炭素や産業廃棄物を出さないようSDGs の部分でも引き続き貢献していきたいと思っています。

移住経験者が語る、宇佐市の住みやすさ

実は、岩本専務ご自身が異業種から製造業に転職で、『旭タカロン』入社のために東京から移住したという。

Q_宇佐市や大分県の住み心地はどうですか?

A_岩本さん 一番の魅力は住みやすさですよ。間取りが広くて、家賃が安い。通勤時間も車で10分くらい。東京の時は、1時間半ぐらいかけて通っていましたからね。渋滞がないのもいいですね。渋滞のストレスがないので、ゴルフもよく行きます。あとはやっぱり温泉。天然温泉に300円ぐらいで入れますから。大分の人は当たり前に思っているかもれませんが、我々のように首都圏から来ると新鮮なんです。手つかずの日本のよさが残っている。深堀すれば深掘りするほど、大分県ってほんとに魅力が満載です。

文・河野恵 写真・藤本幸一郎

 

オンラインイベントでは、今回の登場いただいたお二人に各社で実際に働いている方の動画も交えてお話、紹介いただきます。

他にも、大分県中津市でアートディレクター兼グラフィックデザイナーとして活躍する福田まやさん、地域おこし協力隊として活躍されている尾上直樹さんといった先輩移住者の方をゲストに迎えてのトークセッションや、地域の魅力をたっぷりお届けする動画、移住支援制度や就職をサポートする「おおいた産業人財センター」の紹介もあります。

今以上に自己実現できる生活、そして仕事の場を探している人は是非、ご覧ください。

 

                   
おおいたで見つける自分らしい暮らし方
開催日 2023年1月14日(土)
時間10:00〜12:00
会場オンライン開催
参加費無料
受付終了
※TURNSでは紹介のみ行っています。お問い合わせ・ご連絡はイベント主催者さまへお願いします。

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