“暮らし”から考えるBESSならではの移住「クラシガエ」とは? 開催レポート

「どこに移住するか」ではなく、「どんな暮らしを実現したいか」

暮らしをとことん「楽しむ」文化を広げる住宅ブランド「BESS」と「TURNS」のオンラインイベントが8月1日に開催された。テーマは、BESSの提唱する移住スタイル「クラシガエ」。

「クラシガエ」とは、「どこかに行けば何かが変わる」という漠然とした無目的な移住ではなく、「暮らしを変えるために何を求めるか」を自身のモノサシで考え、その獲得のために住む場所を変える、 積極的な行動を意味する造語。当日は、BESS本部梺開発の若林桂さんをゲストに迎え、実際にクラシガエを実践した家族とのオンライントークも交えながら、暮らしを変えることの本質と理想の暮らしを楽しさについて掘り下げていった。


ゲストの若林桂さんと、インタビュアーの堀口正裕(株式会社会社第一プログレス常務取締役)

BESSが手がける家は、5シリーズ。それぞれにスタイルと個性があり、暮らす人との相性もさまざま。全国 40 か所に単独展示場「LOGWAY」を展開し、非日常を日常に取り入れた暮らしを体感する場を提供している。今回の会場となった東京・代官山の「BESS  MAGMA」は、LOGWAYの旗艦店となるスペースだ。


会場となった東京・代官山の「BESS MAGMA」。BESSの暮らしの未来表現を目指したBESS MAGMA特別モデルが4棟。センタードームと合わせると5棟の建物空間を体感できる

ゲストの若林さんは、BESSでの暮らし実現をサポートする「ホームナビゲーター」を経て、現在はBESS本部梺開発のチーフ。BESSの家だけが集まる「梺ぐらし用地」の開発を行い、BESSの家での暮らしを楽しめる用地サポートを行っている。自身も12年前からBESSのカントリーログに住んでおり、地縁・血縁のない場所で海のある暮らしを満喫中だ。


BESS本部梺開発チーフの若林さん

「私は東京生まれの神奈川育ち。自分にいわゆる”田舎”がないことを、子どもの頃から残念に思っていました。自分が住まいをつくるなら、”田舎”と呼べる場所がほしいなと」。そんな夢を実現させた若林さんが実感したのは、生まれてから死ぬまでの時間をどう使うか、どのように豊かにするか、ということ。「自分がやりたいこと、好きなことを妥協せずに、なんとか理想に近づけるように頑張る。そんな体験ができると、のちに振り返ったときに”いい人生だった”と思えるんじゃないかと」。
 

場所ではなく、目的から考える移住、「クラシガエ」

今の時代は、各種の技術が進歩し、利便性が向上して解決できた課題もたくさんある。その一方で、スピードや合理性が優先されるあまり、「自分らしさ」「こだわり」などが摩耗しているのではないか…。そんなもやもやを抱えた人に向けて、BESSでは毎月、「クラシガエオンライン」というイベントを開催。クラシガエを実現したユーザーを招いて、自身の体験談を語ってもらうのだという。

およそ一般的なハウスメーカーとは異なるスタンスを持つBESS。生まれたのは1986年のこと。「衣・食」に続き「住」も感性(好き・嫌い)で選ぶ時代が到来すると考え、「”住む”より”楽しむ”」をブランドスローガンとして掲げている。「家は資産という考え方がありますが、私たちは”家は使ってなんぼ”、”家は道具”としてとらえています。家は暮らしを楽しむための道具なんじゃないかということです」(若林さん)。


BESSのスタンスを表現したMAP。何を重視するか、明記されている

経済活動は合理的に。でも人の暮らしまでそんなフィールドで行わなくてもいいのではないか。感性を大事にして、おおらかに自分らしく自然体で生きていくことを大事にしたい。そんな考え方に賛同する人がBESSユーザーになっていくのだという。

BESSユーザーの多くは、自然に感謝して、自然に生かされながら地に足をつけたおおらかな暮らしを実践している。その生き方をBESSでは「梺ぐらし」と名づけている。そうしたユーザーは全国に約1600組おり、「LOGWAYコーチャー」として活動中。BESSの住宅を検討している人の相談に乗っている。

「梺ぐらし」のコンセプトは2017年から発信している。

「クラシガエというのは、こうしたBESSの取り組みの延長上にある移住のコンセプトです」と若林さん。発信を始めたのは2020年。コロナ禍の影響もあり、郊外への住み替え、移住が話題になり始めたのも契機となった。

ひとくちに「移住」といっても、さまざまなイメージがある。BESSでは「暮らし方(これから先の未来)をあらためて考えること」と定義づけた。考える順番は、まず、「何が好きかということ」「何が大事だと思っているか」という感性・価値観について。その次に、「何がしたいか」「どんな暮らしをしたいか」という目的や暮らしについて。そこまで踏まえたうえで、そうした目的を実現できる場所、環境はどこだろうと考える。

「場所(どこ)の前に、これから実現したい暮らしを大事にしています。場所はあくまでも手段。目的から考える移住。それが私たちの考えるクラシガエです」(若林さん)
 

クラシガエは、自分たちの人生を見直すいい機会

それぞれの感性や価値観を最優先するクラシガエ。正解は人それぞれに異なる。「移住というこれまで経験したことのないことをするわけですから、いろんなことで迷うのは当たり前。だからこそ、”自分で選ぶこと”が大切。1回しかない人生ですから。人生は選択の連続。でも他人に判断を委ねず、自分自身で選ぶことで後悔はしなくなるはずです」(若林さん)

クラシガエを成功させるための秘訣、コツはあるのだろうか。若林さんは「近隣とうまくやるには、挨拶をちゃんとするとか、お付き合いを大事にするとか、そういう基本的なことが大切」と説く。「地域に受け入れられないんじゃないかという不安を抱く人も多いですね。でも、そういうことを心配するひとはたいていうまくやれます。心配する人はその時点で地域に対する配慮、リスペクトがあるということですから」。

BESSでは、全国に「梺ぐらし」の用地を用意している。8月1日現在で、分譲中6か所、開発予定6か所あるという。用地として想定しているのは、田園地帯と住宅地との境目となるエリア。簡単には開発されない市街化調整区域が目前に広がる環境であれば、末永く変わらない景色の中で暮らすことができるからだ。


「梺ぐらし」用地の一例。田園地帯と住宅地の境目に、数棟のBESSの住宅が計画されている

コロナ禍の影響によりリモートワークが促進され、勤務地への通勤時間は重要な要素ではなくなった。環境に恵まれた郊外に住むという選択肢が急浮上してきている。

今回、オンライントークに参加したユーザーのHさんご夫妻もクラシガエを実践した人たちだ。ご主人は東京生まれの札幌育ち。5年前に都内でマンションを購入し、奥様と2人のお子さんとともに都心での生活を営んでいた。「アウトドアが好きで、自然への憧れがずっとあったんです。休みになるとキャンプにもよく行っていました。BESSを知ったのも、アウトドア雑誌です。コロナ禍の前からリモートワークに切り替わるという見通しもあったので、人生を見直すいい機会かなと思いました」とご主人。

奥様は東京生まれの下町育ち。やはり”田舎”への憧れがあったという。「あと、子どもたちは都心のマンモス校ではなく、環境のいいところで育てたいという気持ちもありました。下の子が小学校に上がるタイミングで引っ越してきました」と話す。


Hさん一家は、30代のご夫妻と小学生の息子さんが2人の4人家族。教育環境や暮らしの変化を求め、2020年に神奈川県秦野市に移住した

引っ越し前に住んでいたマンションは規模が大きく、ママ友のコミュニティもあったので、後ろ髪引かれる思いもあったという奥様。「でも、こちらでの生活を始めてみて、”前の暮らしはちょっと情報が多すぎたかも”と感じます。自分たちのペースで子どもたちと向かい合いたいのに、つい、よそのお宅と比べてしまったり…。惑わされてしまうことも多かったかもしれません。いまはおおらかに日々を暮らせています。自分の中の物差しをきちんと持てているような気がします」

ご主人がお休みをとれる週末は、どこにも出かけない。ほぼ家の半径50mほどで過ごすという。「ご近所の農家さんに借りている畑に行ったり、家でDIYしたり。子どもたちは目の前にある小学校の校庭で遊んでいますね。家の周りに楽しいことがいくらでもあるんです」。


Hさん宅の室内。土間も一体となったワンルームLDKは、DIYの工具やキャンプグッズ、薪ストーブなど、好きなものでいっぱいだ


ご近所づきあいも自然に始まった。犬も飼い始めた。暮らしは大きく変わった

都心で暮らしていたときは、細かく予定を立てて、毎日のスケジュールを組んでいたというご主人。「時間を細切れにして、そこでやることを決めていましたが、いまはそのときの気分しだい。”目的がない時間”を満喫しています」と笑う。

三浦半島に住んでいる若林さんも「思い立ったときに遊べるというのは、本当に心が解放されますね。親にとっても子どもにとってもストレスが少なくなるように思います」と語る。
 

生まれも育ちも選べないけれど、”生き方”は決められる

自分たちの夢をかなえたHさんご夫妻。クラシガエに踏み切れたのはなぜだろうか。

「まず、自分の憧れや夢をあきらめないで、もう一度、向き合うこと。そして、実現するための優先順位を見直して、自分は何を優先したいのか、整理しました。そのうえで家族とじっくり話し合って、思いをすり合わせていきました。もうひとつ大事なのは、現地に足を運ぶこと。何度も視察して、その環境を体験して、移住後の楽しさを確信することです。この2点ができれば、アクションに踏み出せると思います」(ご主人)

「これまで、住む場所を決めるときは、駅から何分とかスーパーまで何kmとか、そういうことばかり気にしていました。でもそれは、不動産屋さんの評価の基準でしかないんですよね。自分の価値観を評価の基準にすれば、視野に入っていなかったいい土地がいっぱいあるんだなということに気づきました」(奥様)

自分がやりたいことを真ん中に据えて人生設計をしてみれば、自然と優先順位が選択できる。「そうすることで、”妥協”ではなくて”選択”ができるようになるんですよね。直感で選んで行動に移す、ということは大人になるとなかなかできなくなります。でも、大人なら直感で選んだものを”正解”にしていくことができるはずです。Hさんご夫妻もまだゴールではなくて、これから”正解”にしていく道中なのでしょう。そのプロセスを楽しんでいるということなんでしょうね」(若林さん)。

うなずいた奥様の言葉が印象的だった。「生まれも育ちも自分では決められません。でも、”生き方”は自分で決められます。これからは、自分の生き方をあらためて選んでいきたい」。

人の人生を左右するクラシガエ。大きな転機に直面した今だからこそ、大切な考え方なのかもしれない。これからの時代を生き抜くヒントを提示するイベントとなった。

 

文・渡辺圭彦

                   

人気記事

新着記事