Uターンして起業したら、キャリアが大きく羽ばたいた!

東京→海外→東京→愛知で子育てしながら自己実現

リモートワークが進み、より安心できる住環境への移住や、自由な働き方を意識する人が増えています。「自分の地元なら、どんな暮らしができるんだろう」と気になりませんか? そこで、Uターンをきっかけに起業し、子育てとやりがいある仕事の両立を叶えた杉浦加菜子さんにお話を伺いました。

 

じょさんしonline 杉浦加菜子さん

1985年生まれ。愛知県出身。名古屋大学で看護と助産を学び、東京の産婦人科に勤務。第1子を出産・子育て中に夫の転勤によりオランダへ。オランダ滞在中に第2子を出産。再度夫の転勤で東京へ。さらなる転勤で愛知へUターンし、それを機に起業。妊娠・出産・育児の不安をすぐに相談・解決できるサービス「じょさんしonline」を運営し、全国のメディアからも注目を集める。休日は2人の子どもと自然を感じる場所へ出かけることが楽しみ。

 

仕事も暮らしも充実させるなら
Uターンは大きなメリット

——愛知にUターンするまでは、東京や海外を行ったり来たりだったんですね。

そうなんです。名古屋の大学を卒業後、大学の恩師に紹介してもらった東京の産婦人科に助産師として就職しました。3年ほど勤めた後、愛知で働いていた夫と結婚して、実は少しの間愛知に戻ってきたんです。その後夫の転勤で、また東京に戻って……と何度も行き来して、常に引っ越しをしている状態でしたね(笑)。海外(オランダ)への赴任もあったので、長女をつれて、現地での生活を3年間経験。その間に次女をオランダで出産しました。

——それが起業を考えるきっかけに?

はい。私は幼い頃、父の仕事の都合でアメリカに住んでいたことがあったので、海外に住むことへの不安はなかったのですが、それでも、長女の子育てや第2子を妊娠・出産した際に、やはり言葉の壁や文化の違いなど、不安や違和感を覚えることがありました。海外の病院で、ちょっとした相談をしたいと思ったときに、どうやって表現したらいいんだろう……とか。3年のオランダ滞在を経て東京に戻ってからは、2年ほど子育てに専念しました。その間にも「助産師という職業を生かして、私が誰かの育児の助けになれないかな……」と。それで、いつでも・どこでもつながれるオンライン環境を使った起業を考えるようになったんです。

——でも東京では起業しなかったんですか?

東京では家事と育児だけで精一杯で。でも夫の愛知への転勤が決まり、お互いの実家の近くに住まいを構えることになりました。お互いの両親が健在なためサポートが受けられるし、「自分の時間がつくれる! 起業するなら今しかない」と、地元愛知での起業を決意したんです。

 

起業を目指す人にとって
愛知は可能性を感じる場所

——起業してみて愛知と東京の違いは感じますか?

オンラインでの仕事なので、場所を選ばずにできる働き方ではありますし、私も絶対に愛知で起業したい!と思っていたわけではないんです(笑)。やはり東京に比べると、愛知は起業セミナーや起業家同士の交流の場がまだまだ少ないなと感じます。でも逆手に取れば、愛知はこれから起業する人にとって、可能性のある場所だと感じています!

——メリットはどんなところでしょう。

愛知で「女性起業家」というと珍しい分、印象に残りやすいですし、トップランナーとして開拓していけるのではないかなと思います。積極的に起業家同士や他企業・行政とのネットワークをつなげていけば、ダイレクトに有益な情報を得られるときもあるので、頑張り甲斐のある地域ですね。
それと、歴史ある企業が多いことも関係しているのか、多様性の部分では考え方や受け入れに対して新鮮さがあるように感じます。「東京で仕事をしていた」「海外に住んでいた」と話をするとまだまだ驚かれることが多く、愛知においてはそれもまた自分の強みにできているのかもしれません。

 

経済的負担と通勤ストレスが減。
土地勘と友人の存在でも心に余裕が

——ワークライフバランスはどうですか?

起業に限らず、会社勤めの夫や友人などから、街中が東京に比べて混雑していないことや通勤時間が短いことでも愛知はストレスが少ないとよく聞きます。その分ゆっくりする時間が取れるので心の余裕もできるし、時間的にも精神的にもバランスが取りやすいですね。最近は愛知でもテレワークの導入が進んでいると聞いていますし、うちの夫も週2〜3日はテレワークなので子育てが分担でき、そのあたりも仕事と暮らしの質の向上につながっていると思います。


杉浦さんは常に自宅でお仕事。この日は国内や海外4カ国のスタッフとオンラインミーティング

——他にも、愛知での暮らしの率直な感想を教えてください。

嬉しいなと思うのは、やはり東京に比べて住宅コストや物価が少し安いことですね。東京にいた頃より、経済的にも余裕が持てているなと実感しています。不便に思うことは本当に少ないですが、名古屋の中心部以外の町では駅ナカのお店が少ないことでしょうか。東京だと、いろんな駅ナカにお店が多いので、愛知にももっと増えればいいな……。今は、商業施設が充実している名古屋駅か、ネットで買い物を楽しんでいます。

——子育ての面では?

地元への移住とあって、土地勘があるということは大きく、家探しや幼稚園探しなどの準備はしやすかったです。愛知には民間の総合病院も充実している印象で、娘のアレルギーに対応してくれる病院もスムーズに見つかりました。あとは、昔からの友人の情報提供、いわゆるクチコミも頼りにしています(笑)。

愛知は車社会なので、郊外の大きな商業施設が多いことと、駐車場が広いのはとても便利! 東京で子どもの物を買うときは、電動自転車で子どもを連れながら、買う物に合わせてあちこちお店を移動したり、荷物を運んだりするのが大変だったんです。

 

豊かな自然も身近にあり
育児と仕事のリフレッシュに

プライベートでは2人の子どもと公園に行くことが多いのですが、愛知は多くの自然が身近にあるのも魅力的です。自宅から車で行きやすい大府には、新鮮な野菜や魚介が並ぶ産直市場や、広々とした公園があって、かなり重宝(笑)。豊田の方には森や渓流、知多半島の美浜の方へ行けば海もある。学生の頃からよく行っていた西尾のカフェは、景色も良くて心が落ち着くのでお気に入りですね。


広々とした公園で2人の娘さんとの和やかなひととき

そういえばUターンして一番感じたのは、愛知の空は広いこと! それだけで気持ちがよくて。普段仕事ではパソコンとにらめっこしているので、パッと広い空が見られることってリフレッシュにつながるんです。

 

地元に戻ることは
女性にとってチャンスだと思う

——Uターンを考えている女性にアドバイスをお願いします。

シンプルに伝えるなら、「地元に戻ってきて働くというのは、メリットが多い!」ということ。家族や友人の支えがあるのは、想像しているよりもずっと心強いです。それにベビーシッター代が東京より安いと思います! ママさんだけに限らず、これからママになりうる女性にとっても、安心できる環境というのは、時間的にも精神的にも余裕ができるので、考え方も柔軟になりやすいと実感しています。

——愛知で自由な働き方や、やりがいある仕事を実現するには?

愛知は起業に対する補助金もそろっていて、たとえば従業員の人件費なども補助金の対象になると聞きました。こういった情報を逃さないようにこまめに情報収集することをおすすめしたいです。愛知は世界的にも大きな企業が多く本社を置いているので、そういったところと手を組むチャンスも、東京に負けず劣らず開かれているはず。私自身も、そういった大企業の方に「妊娠・出産・育児の制度」や「女性の働き方」「男性の育休」についてもっと考えてもらいたい、という思いを抱くようになりました。そして、今のサービスを福利厚生に組み込んでもらうことを目標にして頑張っています! アンテナを張って “愛知にいるからこそできること” を積極的にやっていけるといいと思います。

 

愛知県の暮らしと仕事の注目ポイント

◆ 働く女性が使える時間が多い
愛知は、有職女性の1日あたりの趣味・娯楽時間(平均)が全国2位。男性は4位。仕事と子育ての両立やシェアが目指せます。

出典:総務省統計局「平成28年社会生活基本調査結果」

待機児童数が少ない
愛知の保育所等待機児童数は、東京の約1/14。働きながら子どもを育てやすい環境です。

出典:厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ」(2019年4月)

◆ 産業集積日本No.1
愛知は、モノづくり産業を中心とした世界有数の産業集積地。優良企業が多く集まっているため、個人ビジネスも展開しやすい土壌があります。

出典:経済産業省「平成30年工業統計調査」

◆ 住宅も家賃も物価も安い
住宅地の平均地価は東京の3割以下。家賃は東京の6割以下。物価水準も全国平均より低いのがポイント。

出典:国土交通省「令和元年都道府県地価調査」、総務省統計局「小売物価統計調査(構造編)結果」(2018年)

◆ 野菜もお肉も魚介類もゆたか
愛知の農業産出額は全国7位。野菜や畜産部門は全国上位、水産物ではあさり類の漁獲量が日本一。バランスよい食生活が楽しめます。

出典:農林水産省「平成29年生産農業所得統計」、「平成30年漁業・養殖業生産統計」(第1報)

◆ 起業に関する補助金が充実
愛知県では、県内で起業する方に対して補助金などの支援制度を用意しています。(今年度は募集終了)
あいちスタートアップ創業支援事業費補助金について、詳しくはこちら

 

※すべて「愛知に住みたくなるBOOK 2019年度版」(発行/愛知県)より

 

取材・文/佐藤奈央  構成/竹内葉子  撮影/ウラタタカヒデ

                   

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