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地域おこし協力隊が創る「地方のキャリア」
〜群馬県みどり市、地域おこし協力隊 交流研修会〜

仕事、住居、そしてキャリア。
地方への移住を考えた時に、ふと悩むことはありませんか。

地域おこし協力隊制度が自治体に導入された2009年から11年が経ち、地域おこし協力隊の活躍が全国各地で見られるようになってきました。

その中でも群馬県内では「地域特性と個人のキャリア観」を大事にして運用されています。

今回は群馬県が主催する地域おこし協力隊の交流研修会を通して、「群馬県で地域おこし協力隊になること」をレポートいたします。

 


 

地域おこし協力隊の向こう側

令和2年1月30日-31日、群馬県みどり市に栃木県内の地域おこし協力隊も含めた50名が集まりました。彼らは群馬県が主催する「スキルアップ」「交流」を目的とした研修会に参加します。

地域おこし協力隊が過ごす群馬県での「3年間」はとても短い。
着任後に少しずつ地方や地域の特性を理解して、自身の仕事や生活の地盤を整えていく間に過ぎてしまう時間です。

だからこそ、今回の研修会では、隊員同士の横の繋がりをつくることで、スキルアップや情報共有を図ります。

 

講師は隊員OBでもある中田誠志さん。平成23年度から恵那市の地域おこし協力隊として、農村景観保全、活用、都市農村交流を推進。隊員時代に古民家を「コワーキングカフェ」として収益化させ、その後は音楽教室の運営やアドバイザー業を行っています。

「地域の人と一緒に動いて、汗をかきながら、知恵を絞って現実的な事業のアイデアをつくっていく。それが地域で仕事をつくるための第一歩です」

講演の内容は、キャリア以上に悩みの種となる「お金と仕事づくり」の話。
地域の遊休資産を活用して、どのようなプロセスで収益化や事業化を達成したのか、数字と共に検証していきます。

 

「あるもの」を繋げて事業をつくってみる

それを踏まえて、今回、ワークとして実施されたのは「事業づくりのアイデアソン」。地域おこし協力隊の任期後には、次の選択肢を決めなくてはなりません。

「地域おこし協力隊の制度が始まって、全国各地に事例や受け入れの土壌が出来て、情報も一般化され、確かに地域おこし協力隊になるハードルは下がりました。しかし、地方の現実は未だ良い状態という訳ではないです。昔よりも理念や自分への問いをしっかり持った状態で、地域おこし協力隊という選択肢を検討するのが大事なのではないでしょうか」


各班で事業アイデアを計画

地域からの期待と個人の生活やキャリアは、地域おこし協力隊が考え続けている課題の一つでもありますが、群馬県と隊員OB・OGが蓄積してきたノウハウを共有し、隊員をサポートしているのです。


発表にはプレゼン力も必要

活動地域に定住した隊員の3人に1人は「起業」、就業者の4人に1人は行政関係に就くという状況下で、「事業開発能力」や「政策策定能力」は汎用性のあるスキルとなっていくでしょう。

 

群馬県が研修に力を入れている、その理由

交流会では、隊員同士が自身の活動やこれからのことを話します。

その最中、群馬県の地域おこし協力隊の担当をしている清塚道浩さんにもお話を聞きました。


行政職員の枠を越えて、隊員と向き合う

「地域おこし協力隊を経て、その地域に定住してもらいたい。そういう気持ちを持って取り組んでいます。しかし、隊員それぞれのキャリアや生活、上手くいく事やいかない事もある中で、『群馬県で活動をして良かった』と思えるようなサポートをしていきたいと思っています」

清塚さんが担当になって3年目。多様な経験を持った地域おこし協力隊を受け入れてきました。

群馬県内での定住率は、ここ数年で少しずつ上がっています。


2日目には固かった表情も柔らかに

退任後、首都圏に戻ってから活動地域に拠点を構えて二拠点での生活を始めたり、祭りや行事に顔を出すといった「関係性」を残していってくれる隊員も多くいます。地域柄、首都圏から近いという特性が活かされており、一概に定住率だけでは推し量れない、隊員が残したポジティブな地域の変化は、残っているそうです。

退任後にも県内に残れるようにするサポートとして、スキルアップ研修や地域おこし協力隊同士の交流にも力を入れているのではないでしょうか。

 

 


 

一夜明け2日目は、みどり市東町内のフィールドワーク。

ここでは、群馬県の地域おこし協力隊員一人ひとりの個性が見えてきました。

 

みなかみの観光を売り出したい – 群馬県みなかみ町


2日目にはすいとんづくりを体験

「地域の農産品をどうやって海外へ売っていくかを学んでいました。観光資源をどうやって売り出していくかという部分と繋がる部分を見出して、今の仕事をしています」

群馬県みなかみ町で2019年6月から観光協会に着任した田仲由希さん。大学時代に農業の貿易コースを専攻していました。

元々は観光協会で働くことを目的に群馬県内の求人を探しており、就職活動の過程で、地域おこし協力隊を知ったといいます。

「3年間という短い期間の中で、どれだけの人と会えるか。それを目標の一つにしています。なので、こういった機会に自分の活動地域以外の場所で関係性がつくれるのは、ありがたいですね」

 

2日目のフィールドワークでは、市内の観光スポットや美術館を視察し、地域資源や情報発信、商品開発の事例を学びました。

みどり市の文化の拠点 富弘美術館のグッズ

 

卒業後は地域のローカルヒーローに – 群馬県下仁田町

「埼玉の地域おこし協力隊OBと『鬼神戦隊ダムセイバー』として活動しています。埼玉との県境にある下久保ダムが心霊スポットと言われているのですが、迷惑行為が多くて、それを守る方法としてテーマソングを夜の下久保ダムで流しています」


みどり市の草木ダムに登場

下仁田町の第1期地域おこし協力隊を経て、『ダムセイバー』として活躍するのは小池準さん。任期中に発足した「ローカルヒーロープロジェクト」を退任後も続けています。

他にも、総合格闘技の経験を活かして、軽井沢でのパーソナルトレーナーの仕事とNPO法人Gunmma LVcを立ち上げ、地域おこし協力隊のサポート業務やローカルプロジェクトの支援を行っています。


普段は下久保ダムで活動している

「どんなことも仕事になる」と「よろず屋」を開業して、蜂の巣の駆除から映像制作まで、隊員時代の技能や繋がりを活かした事業を続けながら、定住している1人です。

 

多様な背景を持つ地域おこし協力隊が目指す、新しい土地での挑戦

今回の交流研修会の舞台となった群馬県みどり市は「観光」「農業」「林業」「木材産業」という4種類のテーマに10名の隊員が着任しています。


工房では木材加工で商品開発をしている

その中の1人、林業・木材産業を担当している馬場生(せい)さんは、着任後3年目。大学院で電気電子工学を専攻した後、半導体エンジニアとしてキャリアを積みました。

「キャリアを積むほど『ものづくり』から、『指示・管理』の仕事が増えたんです。でも、自分は『ものづくり』がしたいという気持ちが強くて、地域おこし協力隊での挑戦を決めました」

馬場さんは、地域おこし協力隊が利用できる「起業支援金」を活用してレーザー加工機などを購入して工房を立ち上げました。3年目に入ってからは、任期終了後の独立に向けて準備を進めています。

 

地域で出会った食材でパンを作りたい

農業を担当をしており、農家として独立を目指している佐々木龍之介さんは、東日本大震災を機会に地方への関心を高めていったと話します。

「祖父母が被災して、生きていく力をつけたいと思ったんです。仕事を辞め、埼玉の農業生産法人で学んだ後、地域おこし協力隊の制度を活かして新規就農を目指しています」
小麦の生産が盛んという地域特性を活かして「パン」を主軸にした6次産業化を目指しています。

「地域おこし協力隊になったことで、漠然としていた農業への考え方にビジョンを持つことが出来ましたね。地域の食材や資源に出会って、ただ農業をするのではなく、6次産業化を目指すことも見えてきました。地方で新しくつくるキャリアを準備する環境が揃っていると思います」
地域おこし協力隊は、これまでのキャリアと未来へのビジョンを繋げることで最大限の価値を発揮する制度なのではないでしょうか。

 

群馬県みどり市の地域おこし協力隊との向き合い方

馬場さんや佐々木さんの様に、これまでのキャリアや想いを持っている地域おこし協力隊ばかりではありません。着任後に少しずつ地方や地域の特性を理解して、自身の仕事や生活が見えてくる方がほとんどです。

そういった地域おこし協力隊のサポートをするのが、各自治体の担当者の役割。群馬県みどり市で地域おこし協力隊との協働を担当するのは、宮田輝一さんです。

「みどり市の地域おこし協力隊の方には、みどり市に来たからには、自分のやりたいことを見つけていただきたいと思っています」

今回の研修をアテンドする、みどり市の地域おこし協力隊の企画の一つには木製コースターづくりがありました。馬場さんの協力を得ながら、みどり市らしさを他地域の協力隊にも体験してもらう狙いがあったのだそうです。

「みどり市では、隊員個人のキャリアを尊重しながら、組織としても動いています。特に林業は地域おこし協力隊が森林経営計画を出して山道を敷き、木材を出荷していて、全国的に見ても林業・木材産業の連携の実績は進んでいるのではないでしょうか。農業や観光分野を担当している隊員に対しても『稼ぐ』ためのキッカケをつくるために、我々が地域との繋ぎ役になって、隊員の想いを叶えるのがミッションだと思っています」


隊員がデザインした絵を木のコースターに加工

 

群馬県が目指す繋がりの強い協力隊ネットワーク

今回の交流研修会をはじめ、群馬県では地域おこし協力隊の導入とキャリアアップに力を入れています。

市町村ごとに受け入れている地域おこし協力隊は、どうしても視野が内向きになりがちです。そこを群馬県が主体となって地域おこし協力隊同士のネットワークをつくり、サポートをしています。

それに応えるように、群馬県の地域おこし協力隊は地域と自分自身に向き合いながら、新しい土地でのキャリアを育ててます。

4月から始まる新しい年度には、どんな地域おこし協力隊が着任するのでしょうか。そして、次はあなたの番かもしれません。

あなたが地域おこし協力隊になったなら、群馬で何をやりたいですか?

 

▼群馬県内の地域おこし協力隊に関する情報はコチラ

群馬県地域おこし協力隊ポータルサイト 『ツナグンマ』
https://chiikiokoshi-gunma.jp/

 

 

文/大塚眞
写真/金子敦子