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アプリの世界から登場した異色の武将隊!
姉妹で取り組む地域活性化

“2.5次元”の武将隊がきっかけで関市に移住

突然ですが、みなさんは“2.5次元”という言葉を聞いたことがありますか?
2.5次元とは、漫画・アニメ・ゲーム(2次元)を原作にした舞台やミュージカル(3次元)。つまり、「2次元と3次元の間」に位置する演劇です。

この新しいカルチャーを地域の発展に結びつけていく、一風変わった取り組みをしている団体が「NPO法人劇刀桜絵巻(げきとうさくらえまき)」。歴史や伝統を題材にした創作表現活動を通じ、多くの人に地域文化へ興味を持ってもらうことを目的に活動しています。

その活動の中でも、岐阜県関市観光課との連携事業として始まったのが「SEKI武将隊KUMOAGEHA」。関市が2016年にリリースした謎解き観光アプリ「KUMOAGEHA」をもとに、アプリ内に登場するきらびやかなキャラクターたちを“2.5次元化”した武将隊です。市内外の観光イベントやお祭りに出陣してショーを繰り広げるなど、関市の魅力をPRしています。

「漫画・アニメ・ゲーム好きの若者たちの間で流行している“2.5次元”を取り入れるというのは、行政としてかなり先進的だと思います」
そう語ってくれたのは、劇刀桜絵巻の代表である鶴見紗帆里さんと鶴見祐希衣さん姉妹。2人は愛知県出身で、武将隊の活動のために2017年秋、関市へと移住してきました。

移住の決め手については、「毎回通うなら、もう住んでしまおうと思って。関市は生活施設が充実していて、高速道路を使えば名古屋まで1時間ほど。移住するにあたって、特に不安はありませんでした」と紗帆里さん。
「それと、関市で活動するからには地域のことをもっと知りたいと思ったのも移住のきっかけです。イベント会場でも、お客様に『おいしいご飯のお店を教えて!』なんてよく聞かれるんです」


▲2019年7月のオーディションを経て活動を始めた新メンバーたち。

 

懐の深いオープンな地域性が活動を後押し

裏方として武将隊のメンバーをサポートする紗帆里さんと祐希衣さん。衣装デザイン、台本づくり、音響編集など、一からプロデュースをしています。

現在は、オーディションで選出された新メンバー5人が武将隊として活躍中。若い設定のキャラクターを演じられるよう、メンバーは10代・20代が中心。そのうち2人は中学生です。「地域に貢献したい。でも何から始めれば…」と漠然とした想いを抱えていたメンバーにも、活動を通してステージで想いを形にする機会をつくっています。

「オーディション開催のチラシを配布していたときは、市内のお店にたくさん協力していただきました」
SNSでチラシの設置場所を募集したところ、10店舗ほどが声をかけてくれたそう。飲食店をはじめ、刃物店、美容院、眼鏡店など…「関市を盛り上げたい」「同じ関市で活動する仲間を応援したい」と店頭にチラシを置いて配布してくれました。

「関市は昔からの伝統が根付きながらも、新しいものを受け入れやすい寛容な風土がある気がします」と祐希衣さん。
“2.5次元の武将隊”というポップカルチャーを「面白いね!」とすんなり受け入れてくれる。若いメンバーが頑張っている姿を、親のような目線で応援してくれる。そんな、活動しやすい環境に驚いたと言います。

“刃物のまち”として有名な関市。関鍛冶の技を今に伝える施設「関鍛冶伝承館」で武将隊の定期公演をしていると、刀工や外装技能士といった日本刀の職人も気さくに声をかけてくれるそう。
「最初は、本物の日本刀に関わる人たちが、木でできた舞台刀を使ったパフォーマンスショーを受け入れてくれるのかという心配がありました。でも実際は、向こうから話しかけてくれるし応援してくれる。とてもありがたいです」

メンバーたちはステージで披露する殺陣の練習にも取り組みますが、“刃物のまち”で活動するからこそ、刀の作法も大切にしています。
「舞台刀は軽いけれど、本物のような重さがあるかのごとく振る舞わなければなりません。刀の持ち方や置き方などをしっかり学びます。関市で認めてもらうために、見た目のかっこよさだけではなく基礎からこだわっておきたいです」

市内で武将隊の知名度は上がってきましたが、今後は市外でも知名度を上げていくのが目指すところ。セントレア(中部国際空港)でのイベントに出演を果たすなど、各地で活動の幅を広げています。


▲代表の鶴見紗帆里さん(左)と鶴見祐希衣さん(右)。コスプレイベントの主催なども行っている。

 

関市は、新しいことを始めるのにぴったりな場所

関市では、企業・法人同士の交流も盛ん。劇刀桜絵巻は法人会組織にも入会していて、そこで沢山の人とのつながりが生まれました。
「みなさん優しく、困ったときには頼りにさせていただいています」
業種が違っても、「知らない」と切り捨てるのではなく「あの人に聞いてみるといいよ」と教えてくれます。

そんな“法人の先輩”に紹介されたのが、関市ビジネスサポートセンター「Seki-Biz(セキビズ)」の存在。関市周辺の企業・法人の事業支援をしている拠点です。「無料で相談にのってもらえる」と聞いて訪れると、親身にサポートをしてくれました。

「メンバーが足りない!どうやって募集したら良いだろう…」と相談したところ、「メンバー募集を宣伝しつつ、宣伝費用・活動費用の支援も同時に募集できるクラウドファンディングはどうか?」と勧められたそう。結果、見事に目標支援額を達成しました。

また、メンバーの練習を指導してくれるダンスの講師も、セキビズの紹介で見つけました。
「東京から地元・美濃加茂市に戻ってきたという人ですが、“2.5次元舞台”の振り付けをしたこともあるそうで。まさかこんな素敵な出会いがあるとは…」と話す2人。

新しいことを始めるのに協力的な環境が揃っている関市。紗帆里さんと祐希衣さんの周囲では、企業・法人だけでなく市民活動も活発だと言います。
市民が主催している、関善光寺の「boozy brunch market」。それから、子育て支援の団体や、地域のボランティアなど。市内で活動している仲間が沢山いて、相談できる場所があるからこそ、積極的な活動ができるのかもしれません。

現在、「SEKI武将隊KUMOAGEHA」は新メンバーでの稽古に励む日々。まだまだ精度を上げている段階で、ショーにはダンスを反映できていませんが、2020年4月の「関まつり」にはダンスを披露する目標。
また、「今は事務所がなく、衣装や小道具も自宅に置いている状態。いつかは、関市内でしっかりした事務所を構えられるようになりたいですね」と劇刀桜絵巻しての未来を描いています。

 


鶴見紗帆里さん・鶴見祐希衣さんに質問!

Q.活動を始めて、関市での反応は?
現場で応援してくれるのはもちろん、SNSで活動を知ってくれる人も多いです。ネットでもリアルでも、好意的にコミュニケーションをとってくれます。

Q.関市のよいところは?
今住んでいる場所は、スーパーやコンビニ、病院などが徒歩圏内にあって便利。観光スポットも市内にあり、近場で気軽に観光できます。

Q.休みの日には何をしていますか?
家でゆっくりすることが多いですが、お祭りやイベントがあると2人で出かけることも。桜を見に行ったり、関善光寺のマーケットに行ったり。


【プロフィール】鶴見紗帆里さん・鶴見祐希衣さん

愛知県出身。関市観光アプリから派生した「SEKI武将隊KUMOAGEHA」を2016年に結成。その地域活性化活動が認められ、2018年に「劇刀桜絵巻」としてNPO法人化。姉妹ともに、一般企業に勤めながら活動を続けている。

 

 

写真/長尾理恵
文/齊藤美幸(広瀬企画)