「みんなで創る古民家の宿プロジェクト」企画・運営メンバー募集【後編】

八峰町で活動する6人から聞く町の魅力

八峰町は秋田県の北部に位置する自然豊かな町です。
町を縦断する国道101号を青森県に向かって北上すると、左手に複雑な海岸線を描く日本海、右手には白神山地に連なる山並みがあり、雄大な景色を楽しむことができます。
国道に並行してJR五能線も走っており、「海」と「山」と「五能線」の風光明媚な光景は、観光ポスターに使われるほどの美しさです。

海岸線に沿って走る国道101号

八峰町の山間部に、茅葺き屋根の民家が残る「手這坂(てはいざか)」という集落があります。
江戸時代の紀行家・菅江真澄が「まるで桃源郷のようだ」と感動するほど、素晴らしい景観で有名な集落でしたが、2000年に無人になってからは一軒また一軒と茅葺き民家が倒壊し、少しずつ荒廃していきました。
そんな手這坂に、宮城県から移住したのが木村友治さんです。

2012年に移住した木村さんが住む築170年の茅葺き古民家。

木村さんは、手這坂の自然環境・暮らし・文化を守り次世代へ繋げていくため、2017年に「NPO法人ミチのクニ手這坂」を立ち上げました。木村さんが住んでいる古民家をゲストハウスに改造し、茅葺き体験や農業体験をはじめとする様々なイベントを開催していく予定です。

記事前編『【求人】茅葺き古民家の集落で、里山体験&宿泊イベントを行い交流の場を創る』では、木村さんの活動を共に進めていく人材を募集しています。詳細はこちら!!
https://turns.jp/24142

後編では、八峰町を元気にする様々な活動をしている人たちをご紹介します。


インタビューの会場となったのは、海を見晴らす高台に建つ宿泊施設「CRANDS(クランズ)」。

「CRANDS」の由来は「蔵人(くらんど)+友人(フレンズ)」。宿泊客は地元の酒蔵・山本合名会社のオリジナル日本酒を味わうことができます。

CRANDSは、クラウドファンディングを活用して作られた一棟貸し切りの宿泊&レンタルスペースです。

中に入ると、「薪ストーブやハンモックのある土間リビング」「ツリーハウスをイメージした北欧風の寝室」「露天風呂気分が味わえる見晴らしのいい薪風呂」「BBQが楽しめるウッドデッキ」など、随所に遊び心満載な仕掛けがあり、大人も子供もワクワクしてしまう空間です。

集まったのは、木村さんをはじめ、八峰町での暮らしを楽しんでいる6人の方々。八峰町の魅力について、これからの八峰町について、本音で語っていただきました。

 

Uターンのきっかけは「自然の中で子育てしたい。」という想い

CRANDSを作り、運営している鈴木了さんは八峰町出身。
大阪の大学を出たあと大手住宅メーカーに勤め、25歳で結婚しました。

「訪れた人に町を気に入ってもらうきっかけとして、面白く、ワクワクするような場所を作りました」と話す鈴木さん。

「就職後は東京や千葉といった都会で暮らしていましたが、結婚して子どもを授かり、『自然のある田舎で子どもを育てたい』という気持ちが強くなりました」

27歳の時、お子さんの誕生を機に思い切って退職。八峰町にUターンして「地域おこし協力隊」の職に就き、移住促進や空き家のリノベーション活用に取り組みました。「地域おこし協力隊」の任期終了後は、二級建築士の資格を活かして「cochi(コチ)デザイン事務所」を立ち上げました。

そして自らリノベーションを手がけ、「大人の秘密基地」をコンセプトに作ったのがCRANDSです。

「友人たちに協力してもらって壁を塗るなど、できる部分は極力自分たちで作り上げました。3ヶ月のリノベーション作業で5kgダイエットできて一石二鳥です(笑)。」

今は、空き家リノベーションや移住サポート、CRANDSの運営を行う傍ら、ワークショップの講師をしています。

「床を張ったり壁を塗ったりするリノベーションのワークショップや、地元の秋田杉を使った木工品ワークショップを開催しています。そういう作業ってちょっとワクワクしますよね。親子で参加して触れ合いの時間にしたり、娯楽の1つとして参加したり、いろんな人が楽しんでくださっています」

地元の秋田杉を使うことで、参加した人たちに山のことを考えてもらうきっかけを作りたい、と鈴木さん。

以前は林業が盛んだった八峰町ですが、人の手をかけなくなって山が少しずつ荒れていき、良質な水が畑や海に行かなくなったことが農業や漁業にも影響を与えているのだそうです。

定期的に間伐を行い、管理していくことで山の環境の改善をしていきたい。そして、地元の人たちにもっと山について関心を持ってもらいたい。

そんな想いを持って鈴木さんと共に山の環境改善に取り組んでいるのが、製材所「木肌のぬくもり社」専務・須藤和彦さんです。

 

間伐材を使ったDIYプロジェクト

須藤さんは、生まれも育ちも八峰町という生粋の八峰町人で、以前は大工をしていました。25歳の頃までは、八峰町は「田舎で何もない、面白くない町」だと思っていたそうです。

3児の父である須藤さん。

しかし、結婚し、子どもが生まれてから漠然と「このままでは子どもに何も残せない」と思うようになりました。

製材所を営んでいた奥さんの父親が体調を崩した時、一度は会社を畳もうとした須藤さんでしたが、一念発起して奥さんと一緒に継ぐことを決意。

須藤さん夫婦が継いだ製材所。杉の香りがあふれています。

「会社を継いだのを期に、何か町の将来のために残せることをしよう、と考えました」

須藤さんと鈴木さんはDIYユニット「Kaag project(カーグプロジェクト)」を組み、積極的に間伐材を活用する取り組みを始めました。地元の杉材を使ってDIYの楽しさを伝えるワークショップを行い、楽しみつつ地元の山に興味を持ってもらえるよう工夫をしています。

また、須藤さんの奥さんは町の工芸品である「透かし彫り」の職人でもあります。製材所の一角に透かし彫りの工房があります。

透かし彫りの工房。ここで繊細な作品が生み出されています。

「透かし彫りの技術を持っている職人さんは、日本全国で5人しかいないそうです。とても貴重な技術なので、150年以上絶やさず伝承して伝統工芸にしたいです」

仕事では山との関わりが大きいのですが、プライベートでは大の釣り好きである須藤さん。
「魚釣りが思う存分楽しめて、自然いっぱいの八峰町が今は大好きです」と、日焼けした顔に満面の笑みを浮かべて語ってくれました。

 

八峰町だからできる人間らしい生活

町の山間部で農業を営んでいる米森朋子さんは、Uターンしてから八峰町の素晴らしさを再確認したと言います。

2012年、木村さんの移住と同じころにUターンした米森さん。

八峰町生まれ・八峰町育ちの米森さんは、高校卒業後に東京に出て、貿易関係の会社でOLとして働きました。

しかし、30歳の時に家庭の事情により、急遽Uターンすることに。はじめは環境の変化に、しばらく心の整理がつかなかったそう。それでも、八峰町での日々の生活の中で、代々受け継がれてきた田畑をこの先も守り、活かしていきたいという想いが募り、農業・祖父が営んでいた養蜂を継承しました。

さらに、「八峰町白神ガイドの会」に所属し、「自然環境の素晴らしさや大切さを多くの方に知ってもらいたい」という想いのもと白神山地のガイドとしても活動中。

「先輩方は、自分の親世代以上の方々が多く、山のことだけでなく、町のこと、人生のこと、色々と教えていただいて感謝しています。私たち若い世代が先輩方の意思を継ぎ、一人前のガイドとして活躍することで恩返ししたいです」

仕事で自然に関わるようになって、八峰町は白神山地に守られている、自然は生活に無くてはならないものだと感じている米森さん。

「自然に囲まれた人間らしい生活は、お金をかけても得られない貴重なもの。八峰町は狭い町だけど、ものすごくいいところだと思います」

 

寂れてしまった海水浴場に賑わいを

川村太志さんも、Uターンしてから町を好きになった1人です。
東京で13年間自由気ままなフリーター生活を楽しんでいましたが、実家の父親が亡くなり母親が1人で暮らすようになって「帰る潮時かな」と感じて帰郷しました。

東京ではオシャレなバーなどで働いていた川村さん。

今は実家の農業を継いで、お米や生薬を作っています。

帰郷して気になったのは、海水浴場が寂しくなってしまったことでした。子供の頃、夏休みになると毎日のように遊びに行っていた海には、海の家があって海水浴客で賑わっていました。

そこで川村さんは、2016年、大工の友人と一緒に「海の家復活プロジェクト」を立ち上げ、岩館下浜海岸に海の家を復活させる計画を立てました。

川村さんが友人と作った海の家。白を基調に、布を張った南国風の屋根、ハンモックを設置。リゾート感たっぷりのオシャレな東屋になりました。

八峰町では昔から、海水浴シーズンの初めに海の家を建て、シーズン終わりに取り壊します。そのままにしておくと冬の積雪で痛んでしまうので、夏季限定の海の家です。大工の友人の家に以前使っていた資材が残っていたため、それを活用しました。

海の家復活から3年経った今、海水浴場には少しずつですが賑わいが戻りつつあります。川村さんは、海の家を建てるだけでなく、アサリ狩りなどのイベントを開催することで賑わい創出の工夫をしています。

「町に住んでいた時は『出て行きたい』と思っていました。でも、東京から戻ってきてからは、ずっと住むところだと思っているので、いいところを見つけて少しずつ町が好きになりました。刺激は少ないけれど、自然がたくさんあっていいところもたくさんあります」

「海で遊べる町」として、人が八峰町を訪れるきっかけを作りたいと、穏やかな笑顔を見せてくれました。

 

地域の魅力を伝えていきたい

八峰町観光協会で働く板谷大樹さんは、山形県出身です。
地元を出て秋田県横手市の旅行会社に勤めていましたが、八峰町出身の友人がUターンするのを機に、一緒に八峰町に移住しました。

山形県の内陸部で生まれ育った板谷さんにとって、八峰町は初めて住む「海のある町」

移住して、町の人が意外と地元の魅力に気づいていないと感じたそうです。

「目の前に世界遺産である白神山地があり、街なかからでも1時間で行けるというのはものすごいことなのに、住んでいる人にとっては当たり前のことだからすごいと思っていないんです。でも、白神山地は町の人たちにとって大きな癒しであり、冒険心をくすぐる存在です。そういう地域の魅力を、町の人にも外の人にもどんどん伝えていけたらと思っています」

「自分は人見知りなんです」と言う板谷さん。

でも、町の魅力を発信し、活気を取り戻す様々な活動をしていくうちに、仕事だけでは出会えないたくさんの仲間と出会い、交流が生まれました。

八峰町は「人見知りでも仲間のできるまち」だと思います、と自身の経験から話してくれました。

宮城県から単身移住してきた木村さん。

2012年に木村さんが手這坂に移住して来たとき、無人集落に単身移住した事実とワイルドな風貌から、「マフィアがきた!」という噂が一時期町を賑わせたそうです。みんな木村さんに興味津々でした。

生薬について学ぶバスツアーで木村さんと知り合った川村さんは、手這坂に住み始めたと聞いて「えっ!人が住めるの?」と驚いたと言います。さまざまな波紋を呼んだ木村さんの移住でしたが、その頃から町は静かに動き始めました。

 

「住んでいる人が楽しい町」が魅力のある町

鈴木さんと須藤さんが進めている、間伐材を活用したDIYを楽しむ「Kaag project」。

須藤さんは、まちづくり団体「HAPPO TURN(ハッポーターン)」の代表でもあり、地域の建物のリノベーションを積極的に行っています。木村さんと鈴木さんもHAPPO TURNのメンバーです。川村さんは友人と一緒に海の家を復活させました。

木村さんは手這坂の集落保存のために「NPO法人ミチのクニ手這坂」を立ち上げ、川村さんもNPOのメンバーとして参加しています。

「全員が一緒にひとつのことをやるのではなく、それぞれが得意分野や持ち味を活かして進めていることに対して、協力できる部分で力を合わせていくような感じです。この形が理想なんじゃないかと思います」

「何より大事なのは、住んでいる自分たちが心から楽しんでいること」と、板谷さんは言います。
町のことについて話し合う皆さんは本当に楽しそうで、そして真剣です。

何かのきっかけで町を訪れた人が町を好きになってくれて、第一の故郷とまでいかなくても第二、第三の故郷として八峰町のファンになってくれたら嬉しい、と話す6人。

八峰町が有する大自然は、それだけで魅力的な資源です。
必要な部分に人の手をかけて、その魅力が失われないように守っていくこと。
そして、八峰町を訪れた人が楽しんでくれるように、町の魅力を最大限に活かしていくこと。

そのためのアイデアは、まちづくりに関わる人が増えれば増えるほど多彩になり、さらに大きな魅力に発展していくことでしょう。

八峰町で様々な取り組みが行われている今、あなたの知識や経験、そして頭と体を新たなまちづくりのパワーとして活かしてみませんか?

※記事前編『【求人】茅葺き古民家の集落で、里山体験&宿泊イベントを行い交流の場を創る』はこちら!
https://turns.jp/24142

写真:コンドウ ダイスケ 文:島田 真紀子


東京で事前相談会も開催予定です!
詳細は決まり次第、更新いたします。

第1回 平成30年11月○日(○)○:○~○:○
第2回 平成30年12月○日(○)○:○~○:○
会場 東京交通会館○階 第○会議室

(注)現在、調整中です。

                   

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