栃木県南部のまち「小山市」と北部のまち「那須塩原市」。両市には東北新幹線の停車駅があるという共通点があります。東京駅から小山駅へは約40分、那須塩原市へは約70分という立地の良さから「ニア東京」な暮らしが出来る地域として住み始める人達が増えています。
ベットタウンとして人口が増え続けている小山市、観光地として知名度のある那須塩原市。どちらにも違った魅力がありますが、地域と自分の相性も大事ですよね。今回は地域を知るための第一歩として「TURNS × tocotoco 小山・那須塩原移住体験ツアー」を開催しました!ツアー参加者の方々が、どのような想いでツアーに参加しているのか。その様子と共にお伝えしたいと思います。
Case1:待機児童に悩み、子育て環境の良い地域を探すために参加した親子
こちらの親子は、出産を機に「待機児童が少ない」と言われている西東京へと生活の拠点を変えました。しかし実際に住んでみると、想像よりも預けられる施設の数が少なく結果的にお子さんは「待機児童」になってしまいます。
「今、子供が4歳であと2年で小学校にあがるんです。それまでには、引っ越ししたいなと思っているのですが暮らすなら、自然が豊かな地域で子育てをしたいなという思いがあって。そんな暮らしが出来る場所を2年かけて探していきたいなと思って参加しました。」Case2:ペットが飼える広い家に住みたいという嫁ターン希望のご夫婦
「調布市に住んでいて転居を考えているのですが小山市が妻の実家ということもあって、ツアーに参加することにしました。」(旦那さま)
「私は小山市出身なので、学生時代は『小山市ってどんなところ?』って聞かれた時、『山もないし海もない。何もないところだよ』っていう紹介していたのですが、大人になってから『スペースに余裕があって、地震も少ない安全な地域だな』ということを思って、これから2人で暮らしていく時の候補地として実家のある小山市を考えていたので参加しました。ペットが飼える家賃の安い家が希望です!笑」(奥さま)Case3:結婚を控え、職場から通える地域を探している女性
「今は横浜に住んでいるんですが、今年の春に結婚を控えているので2人で住む家を探しています。今の職場へ通えるところで良い地域がないかなと思っています。旅行が好きで、地域の人と交流して話を聞くことが楽しいので、今回もいろんな話を聞いて地域のことを知りたいと思ってます。」
みなさん、境遇は様々ですが「ライフステージの変わり目」には暮らす場所、働く場所、ライフスタイルについて考えるのかもしれません。今回のツアーを経て、みなさんはどんなことを思うのか楽しみです。
1日目 小山市の暮らしを知る
世界に認められた自然環境「渡良瀬遊水地」でのヨシ焼き見学からスタートです。
年に一度、この広大な湿地帯の自然環境を更新するために、伸びきったヨシを焼き払うという行事が行われています。河原は人でいっぱい。ツアーガイドさんが小山市の自然環境や生活の様子をお話してくれます。この日は昨夜に降った雨の影響で、火が湿地帯を広がっていく様子は見られませんでした。例年だと、こんな風に炎があがるそうですよ!
ヨシ焼きを見学した後は、健康医療介護総合支援センターへ移動してオリエンテーションです。
小山市の紹介、参加者同士の自己紹介、最後に「地域の魅力を発掘するためのコツ講座」を受けていただきました。地域の居場所や人間関係をはじめとした地域の文脈を「人との交流」を通して知っていただきました。
小山市は「住みやすさ」のための政策や開発が進んでいて、都市と田舎のバランスを取りながら暮らせる地域。住むための支援制度も充実しています。奨学金の免除制度や住宅準備金の補助も。年々、人口が増え続ける小山市内には新設の病院や小学校が増えているということでバスの中から、開発されている小山市の様子を見ていただきながら昼食会場の「道の駅 思川」へ。
おやま和牛のすき焼き、開運うどん、ナマズの天ぷらと小山の食を集めた和牛すき焼き膳を堪能していただきました。しばらくすると、パネルを持った1人の和服姿の男性が…。
なんと、小山市の市長が昼食会場にいらっしゃいました。自ら小山市をPRする市長。本気の熱量が伝わってきます。参加者との交流も進み濃い昼食の時間となりました。
昼食後はそれぞれのコースに分かれて、地域を巡りました。
まずは、小山市の伝統工芸「本場結城紬」を発信する「おやま本場結城紬クラフト館」で「繭クラフト体験」、そのあとに小山市街地を巡るチーム。
途中で合流した古河大輔さんは1月初旬に有楽町で開催したTURNSカフェ小山市・那須塩原市のゲスト。小山市の大学生と共に空き家をリノベーションして場づくりをするプロジェクトを進めています。
その後、須賀神社、おためしの家を巡る2コースに別れました。2018年4月には月3万円で移住体験ができる「おやま暮らしお試しの家」がOPENするそうで、実際に小山市を移住先に検討する人には至れり尽くせりな環境です。
そして3つ目のコースが、駅前にある小山市屋内子どもの運動遊び場「キッズランドおやま」の見学。買い物ができる施設の中に、安心して子供を遊ばせておける施設があると子育て世代にはとても嬉しいですよね。
小山市の中心市街地を見学した後には、「いちごの里」でいちご狩りです。「スカイベリー」という品種が30分間食べ放題!
くたくたになるまで小山市散策を終えて辿り着いたのは「おやまゆうえんハーヴェストウォーク」内にある宿泊施設、思川温泉。ショッピングモールに隣接しています。
2日目は北部のまち那須塩原市へ
2日目は小山市から那須塩原市へと移動します。最初に向かったのは「那須千本松牧場」です。
休日には子供を連れて一日を過ごしたい。東京ドーム178個分の広大な敷地の中にはバター作りが体験できる工房や動物達と触れ合える動物園、温泉やサイクリングロードと観光地・那須塩原らしい環境が整っているスポットです。
その後は黒磯地域へと向かいます。黒磯駅周辺はSHOZO COFFEEをはじめゲストハウスや雑貨店が並ぶ那須塩原のお洒落な通り。その一角にある「Chus(チャウス)」で昼食。「大きな食卓」がコンセプトで、1階がマルシェ、2階がゲストハウスになっています。
大きなテーブルを囲んで食事をした後は、駅前にある市民が集まる「カワッタ家」というコミュニティスペースで地元の方から黒磯周辺のことを伺います。お話をしてくださったのは、黒磯駅前活性化委員会の滝澤さん。今日は幸運にも「パン&スイーツフェス@黒磯駅前」が開催されていました。
「那須塩原市は『俺らがやりたい!』と言ったことを聞いてくれて、後押しをしてくれる。最初は小さい取り組みから始まったことも続けていくと、人がたくさん来てくれるイベントになるんだ。黒磯地域を魅力に感じてもらえて住んでもらえたなら、是非一緒に地域を盛り上げて欲しい。」
熱く地域愛を語ってくださいました。人を巻き込んでくれる地元の人がいるのは心強いですよね。
こんな2日間を過ごした参加者の皆さん。小山市と那須塩原市の暮らしと人と魅力を堪能していただきましたが、どんな感想を抱いてくれたのでしょうか。冒頭で紹介した3組に聞いてみました。
濃い人間関係が好き!ツアーを通して明確になった価値観
「今回参加して、移住地に求める優先順位が変わりました。最初は旦那の通勤時間とか利便性を重視しないといけない。そう思っていたんですけど、地域の人たちと交流してると『私たちって、濃い人間関係が好きなんだな』ということが明確に分かりました。地域を盛り上げようという強い思い、熱量がある人がいる地域に住んで、自分たちの職能を使ってサポートしていけたらいいなと思いました。」
親子でご参加してくださった山田家ご家族。「自然の中で子供を育てたい」という考え方と「濃い人間関係が好き」という価値観の再確認。両方とも地方に揃っている要素ですよね。
一度は諦めた栃木への移住。でも小山市なら…
「実はツアーに参加する前に宇都宮で仕事をしていました。その時に、宇都宮での暮らしも考えたけど、彼女の仕事が東京だからどうしようかと考えて、結局は諦めてしまった。今回、小山市の立地や暮らしを知って、『小山市だったら、彼女も東京での仕事を続けながら一緒に暮らせるのではないかな』と思ったんです。考え方は2人とも変わったので、今後もまた検討していきたいです。」
立地の良さの再認識、働き方の「自由さ」も知ることができた
「生まれ育った小山市の立地の良さ、暮らしやすさというのを再認識した感じです。東京への出やすさとか、余裕のあるスペースとか。那須塩原市は、これまで観光目的には行ったことがあったんですが、移住した人の話を聞いて『こうやって好きな仕事を自由にしている人もいるんだな』ということも感じました。東京で働くということばかり考えていたので、そういう働き方を知ることができて良かったです。」
濃い体験、濃い交流、濃い1日で視点はガラリと変わる
地域を魅力を見つける「暮らすための視点」を持つことで、「見方」は大きく変わります。今回の参加者の皆さんからは「濃い時間を過ごすことが出来た」という感想を多くいただきました。たったの2日間ではありますが、地域で過ごす濃い時間は案外これからの人生を変えてしまうようなキッカケになることもあるんですよね。
「TURNS × tocotoco」地域体験ツアーは、そんな「濃い1日」「濃い交流」を通して参加者の価値観や視点を大きく変えるキッカケを届けていきたいと思います。
写真・文:大塚眞