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白山が育んだ清流長良川の恵みを学ぶ
郡上藩江戸蔵屋敷 vol.4 レポート

3月のキックオフイベントを皮切りに、連続で開催中の「郡上藩江戸蔵屋敷」。12月2日(土)に、年内最後となるイベント「郡上藩江戸屋敷vol.4」が上野いいオフィスにて行われました。

今回のテーマは「白山が育んだ清流長良川の恵みを学ぶワークショップ」。郡上にはいたるところに水路があり、「水と踊りの町」と呼ばれるほど、古くから水資源と生活の中にありました。その水源は、豊かな川。

川に関わる活動をされている2人をゲストに向かえ、郡上の人たちが守り続けてきた、川と共にある郡上の暮らしについて理解を深めていきました。

 

冒頭に、参加者の方全員から「川と私」について一言頂戴しました。人によっては近づきがたいもの、子供の頃に慣れ親しんだ場所…育った環境により様々。

読者のみなさんは、川と自分の関係性について考えたことはありますか?自分にとって川はどんな存在なのか、そんなことを頭の片隅に入れながら読み進めていただければ幸いです。

 

長良川が清流であり続ける理由


まず、一人目のゲスト、三島真さんからお話をかがいました。

三島さんは岐阜県郡上八幡で生まれ、小学四年生まで郡上で過ごしました。一度は郡上を離れましたが、30代を向かえた頃にUターン。そこで久方ぶりに戻ってきたら、昔からの友人たちはみな町から出ていってしまい、まるで別世界だと感じたそう。けれど、郡上の自然や豊かな川は、変わらない姿のままそこにありました。

郡上の自然の豊かさを改めて感じた三島さんは、現在移住事業やグリーン・ツーリズムなどの領域で幅広く活躍されています。今回のテーマでもある長良川は、郡上に流れる一級河川ですが、流域には約80万人もの人口があります。同じく一級河川の四万十川には、およそ10万人。比較するとその数の多さが分かると思います。

 

たくさんの人が住んでいるのに、なぜ長良川は綺麗なままでいられるのでしょうか。上流域にある郡上の暮らしの中に、そのヒントがありました。

 

郡上にはいたるところに水路があるのですが、そこにある「水舟」という仕組みを紹介してくれました。

水船は2〜3層に分かれた水槽で、上から水を引き入れ、段々と下に流れる構造です。一番上にある層の水は、飲用・食材を洗うために使われ、次に2層目に流れた水が、食器などの洗浄に使われます。そこで出た食べ物の残りカスなどが、最下層で飼われている鯉や金魚の餌になり、綺麗になった水が川に流れていく、という仕組みです。ここに、川を汚さないための配慮が現れています。

大事なことは川が教えてくれた

郡上には、今も昔も変わらぬ子供達の遊びがあるようです。
それは、橋の上から川に飛び込むというもの。三島さんがスクリーンでその様子を見せてくれました。楽しそうにジャンプする様子が写っていましたが、実際はものすごく高く感じるそう。三島さん自身も子供の頃かなり怖い思いをして飛び込んだ思い出があります。

ジャンプする地元の子供達もすごいですが、やめさせない大人もすごい。と三島さんは話します。一見やんちゃな遊びですが、こうした遊びを通じて、挑戦しようとする気持ちや、恐怖に打ち勝つ勇気、仲間を思いやることなど、人として大事なことを学ぶきっかけになっているのです。

大人たち自身も川遊びをしてきたという共通体験があるから、そして大事なことは川から教わったという気持ちがあるからだと、教えてくれました。子供の頃から川に馴れ親しんできた人たちが暮らしていることも、郡上に美しい川が残される秘訣なのかもしれません。

 

遊びがつながる、次世代の長良川

2人目のゲストは、アウトドアスポーツ体験事業「EARTH SHIP」代表の水口晶さん。京都出身の水口さんは、ある本がきっかけで川めぐりを始め、大学生の頃にカヌーで川下りをすべく、長良川を訪れました。それが後々の水口さんの人生を大きく変える源流に当たる出来事になります。

水口さんは、なんとその時カヌーから転落。長良川で溺れて死にかけそうになりながらも、なんとか這い上がりました。寒さに震えながら、ずぶ濡れでヒッチハイクをしているところを拾ってくれたのが、後々店長を勤めることになるアウトドアショップの店長でした。
その日の宿泊先として紹介してくれた先が、実は三島さんの家だったのです。こうした縁が繋がって、やがて水口さんは単身で郡上へI ターンすることに。そして1997年には、長良川をフィールドに活動する「EARTH SHIP」を立ち上げます。なんだか、長良川に引き寄せられたようですね。

「EARTH SHIP」は、長良川でのラフティングをはじめ、トレッキングやカヤックなどアウトドア体験を提供する事業です。
理念に掲げるのは、“人と自然の再生”。人の再生とは、自然の中にある心地良さや楽しさなと感じてもらい、リフレシュしてもらうこと。そして、 自然の再生とは、収益の一部で川の清掃活動や森の間伐の促進を行うといった取り組みのこと。また、アクティビティの参加者が、自然の中で感じた楽しみを日常に持ち帰り、環境への想いや意識を高め、小さな行動を起こすきっかけになる。そんな流れを生み出すことも取り組みの一つです。

それは決して押し付けがましいことではなく、純粋な楽しさから生まれる流れです。自然の中でただ単純に心地よく遊ぶことが、自ずと自然の再生にも繋がっていく、そんな事業モデルで20年続けてきました。


ラフティングに参加する方の多くは、若い女性たち。
ここで楽しい時間を過ごし、長良川が好きな人たちが増えていくことは、これからの長良川にとって明るい話ではないでしょうか。

「まだ妄想ですが…」と、水口さんがこれから実現して行きたい夢について語ってくれました。
それは、“川を再生するために、森を再生する“というビジョンのもと、閉鎖されたスキー場やゴルフ場を、森に戻す活動をライフワークにすること。同時に森をキャンプ場としても使いながら、食料も自給できるエコビレッジ化したい、ということ。
「100年後の長良川・木曽川でまだ子供達が楽しそうに遊んでいたら、この事業は成功なんです。」
その一言が響きました。

目指すべき未来の姿が詰まっている、そう感じます。

川が育んだ美味しい恵み

一区切りついたところで、長良川の恵みを舌で感じる試食タイム。ご用意したのは、和良鮎(わらあゆ)の一夜干し、郡上の天然水で炊き上げた「第3回郡上おいしい米コンテスト」最優秀賞の白米、郡上発プロジェクトで誕生した「SLOW COFFEE」の水出しコーヒー。

結構多めにあったのですが、あっという間になくなりました。どれも美味しく、おかわりをする方も。また、物販コーナーでは郡上産のお米なども販売しました。



豊かな川のある暮らしを

郡上の人たちは、川の水のことを「中水」と呼んでいるそうです。対して、「上水」は殺菌された無機質な水、「下水」は汚水のこと。

「中水」は魚の有機物がたくさん含まれた、いわば命の水。餌が豊富で魚がよく育ちます。そうした川の色は、エメラルドグリーンをしているそう。川が育んだ美味しい川魚、それを求める釣り人や、川下りを楽しむ人たち。自然の生き物も人も集う長良川もまた、エメラルドグリーンな色をした川なのです。

 

終わりに、参加者からは「川の素晴らしさを改めて思い出した」 という感想がありました。長良川をはじめ、郡上の川についての話を通して、「私と川」の距離も少し縮まる、そんな時間になったと思います。
そして、とびきり豊かな郡上の川に触れてみたいと、そう感じた人は私だけではないはずです。

EARTH SHIPのボートの上で記念撮影

(文:伊藤春華 写真:川島勇輝・伊藤春華)

\当日の様子をムービーでもご紹介しています/

(映像:川島勇輝)