山形県南東部に位置し、古くから城下町・ 宿場町・温泉町で栄えた上山市。近年は芸術活動やものづくりが仕事の移住者やギャラリーも増え、芸術祭の会場になるなどアートな風も感じられ注目されています。
そんな上山市を舞台に、去る8月3日から4日、「#かみのやまローカルインターン」が開催されました。
大学生を中心に、自ら写真を撮り様々な取材体験やワークショップを行いながら現地を巡り、その魅力を発掘することで今後の自分たちのライフスタイルのヒントを掴もうというこのプログラム。
参加した若者たちの生き生きとしたレポートを、3回にわけて紹介します。
東京に住み続けてきたからこそ気づけた魅力
生まれてから東京以外で暮らしたことがなく、祖父母が暮らすのも東京で、地方をあまり感じたことがない私。自分が暮らしている町の魅力しか見てこなかった。だからこそ、気づけた魅力が多くあった。
上山城
東京から車で約4時間(新幹線利用の場合約2時間半)かけて着いた山形県上山市。
見上げるとそこには天守閣のあるお城が。県内で唯一天守閣を持つ上山城だ。上山城は1535年に建てられ、1692年に幕命により取り壊された。現在の上山城は1982年に郷土歴史資料館として290年ぶりに再建されたもので、お城には展望台があり、蔵王連峰や上山市を眺めることができる。お城を生で見たことがなかった私は、再建されたものでも少なからず感動した。
お城から下っていくと城下町、宿場町があり、レトロな雰囲気を味わえた。現存する上山藩の四軒並びの武家屋敷は、二軒は今も子孫が居住する私邸のため外観と庭を見るだけだが、三輪家、旧曽我家の二軒は、一般公開され内部まで見ることができる。
武家屋敷
またここは温泉も有名で、別名「鶴脛(つるはぎ)の湯」と呼ばれる。昔、ある僧が湯に1羽の鶴が脛を浸し、傷が癒えて飛び去る姿を見たのが始まりで、かみのやま温泉の発祥とされる。一番古いもので380年以上の歴史があり、市内には7カ所の公衆浴場と5カ所の足湯がある。私が浸かったのは旅館の温泉のみだったが、湯温が高めでとても気持ちよかった。
記念碑 鶴
大衆浴場外観
近年では新たな試みとしてワイン造りに力を入れている。「日本ワインぶどうの父」と呼ばれる岩の原葡萄園の創始者・川上善兵衛氏と初代上山市長・高橋熊次郎氏に交流があったことから、ぶどうの苗木を譲り受け育てるようになった。蔵王山麓はワイン造りの環境(テロワール)に恵まれているため現在では、老舗の「タケダワイナリー」と2013年からの「ウッディーファーム&ワイナリー」のふたつのワイナリーが、世界へと発信していこうとしている。市内ではワインバルが催され、条例で、乾杯はワインでとなっているほどの盛り上がりを見せている。
(文・写真 伊藤龍一 成蹊大学 1年)
かみのやま「“居”食住」
「田舎に住むのは不便だろう」と都会に住む多くの人は思っているでしょう。しかし、交通手段、インターネットが発達した今、私たちが思っているほどの不便さやデメリットはあるのでしょうか。
今はインターネットなどで簡単に衣服は買えるため、衣服に困ることはないでしょう。今の生活で大切なことは「衣」ではなく「居」、つまり居心地の良さ・住みやすさではないかと思います。この観点から上山市を紹介したいと思います!
「居」 人口3万人ほどの小さなまちですが、皆とても仲が良いのです! 地域の方とお店の方がとても仲よさそうに談笑していたり、お店の方も「これも作ったから食べなさい」とジャガイモの煮つけをサービスしてくれたりと、お互い家族のような、都会では感じえない温かみを感じました。
「それはそこにずっと住んでいる人同士だからじゃないの?」という疑問もあるかもしれませんが、今回、学生のみの取材も快く受けてくれ、地元観光地や祭りのイラスト入りのハガキをくれたりと、排他的な感じは一切なく、どこのお店もとても居心地の良い空間でした。
「食」 次に食べ物について。とにかく何を食べてもおいしい! そして定食の値段も安い! 新鮮なおいしい食べ物を手ごろな価格で食べられるのも田舎の良さのひとつでしょう。また上山でとれたぶどうや洋ナシで作られたワインも楽しめます。
「住」 そして住まい。これまた驚きなのですが、2DKの家が5~6万で借りられるのだそうです。都心付近ではワンルームで月8万以上もざらであることを考えるとすごいですよね! となりの山形市までは電車で15分ほど。普段は上山の自然に囲まれながらゆったりと暮らし、休日は都会で遊ぶこともできる。羨ましいですね!
以上「”居”食住」の観点からみてみましたが、考えれば考えるほどいいこと尽くめではないでしょうか。上山はたくさんの魅力のある住みよい町だと感じました。ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。
(写真・文 細井 将伍 成蹊大学)
自然に囲まれた土地、上山市でこだわりのワインを
緑豊かな山々に囲まれ、自然に恵まれたこの土地に静かにたたずむワイナリーがある。2013年開園の「ウッディーファーム&ワイナリー」。長い日照時間と昼夜の寒暖差が生み出す上山のテロワールを活かして9種類のぶどうを栽培、醸造・瓶詰めを行うドメーヌワインが自慢の実力あるワイナリーだ。
実はワインに関する歴史は長く、ワイン用ぶどうの栽培は祖父の代に始まっている。長年の試行錯誤によって作り出されたワイン用ぶどうから作られたワインは、さっぱりした日本産ワインの印象を覆すような力強い滋味あふれる味わいと、丸みのある香りがマッチしており、こんなワインが山形にあったのかと驚かされるだろう。
またここでは、珍しいラ・フランスのワインも製造している。古くからサクランボ、りんご、すももなど多くの果物を丁寧に大切に作ってきた傍ら、ワインの研究に着手してきたウッディーファーム&ワイナリーだからこそ作り出すことのできたワインといえるだろう。
ワイナリーのショップに立ち寄ると、ワインだけでなく自社畑で生産された果物で作ったジャムやドライフルーツも販売されている。私もドライフルーツを試食させていただいたが、食感の良さと口いっぱいに広がるフレッシュな香りに驚かされた。ドライフルーツが苦手な方でもぜひ一度チャレンジしてもらいたい味だった。おそらくワインのお供に買っていく方も多いのだろう。
もちろんワインの試飲もできるが、ドライバ-や未成年の人のために濃厚な味わいを楽しめるジュースも用意されている。ワイン以外の目的でも楽しむことのできる、ぜひとも広く知ってもらいたいワイナリーだった。
お話を伺った企画営業部長の木村花鈴さんによると、地球温暖化の影響で、日本でもっともワインで有名な山梨県よりも、ここはテロワールが整いつつあるらしい。山形県上山市が日本を代表するワイン生産地と呼ばれる日はそう遠い話ではないのかもしれない。
(写真・文 垰田晃輝 成蹊大学1年生)
後編に続く
vol.2 https://www.turns.jp/read/17496
vol.3 https://www.turns.jp/read/17749