農業から地域を元気にしていく。
成功のカギは踏み出す勇気と、地域愛&経済化に
地域資源を活かしたビジネスを活発に展開する「一般財団法人 こゆ地域づくり推進機構」(宮崎県新富町/以下、こゆ財団)と、“これからの地域とのつながり方” を提案するローカルライフマガジン「TURNS」による、地域×企業の可能性を探るオンライントークイベント「地域のミライを考える」第5回が9月27日(月)に開催されました。
今回はスペシャルバージョンとして大桃美代子さんがゲストに登場!「農業」をトークテーマに、大桃さん自身の活動や経験から、身近だからこそ魅力にあふれる「農業」や「食」の可能性についてたっぷりとお話しを伺いました。
【ゲスト】
大桃美代子さん/タレント
タレントとして、ニュースをはじめ、料理、クイズ、バラエティ、情報番組と、幅広い分野で活躍。「阪神・淡路大震災」は大阪滞在中に、「中越地震」は新潟県魚沼市の実家に帰省中に被災し、災害と復興について考えるきっかけに。震災や復興を風化させないことをテーマに情報発信や、復興の為の地域活性化にも携わる。雑穀エキスパート、ジュニア・野菜ソムリエ、おさかなマイスター・アドバイザーの資格を取得するなど食育や農業に関心が高く、地元の新潟にて古代米作りもする。『桃米』として販売中。
地域活性化に取り組む団体を支援するため全国地方新聞と共同通信が設けた『地域再生大賞』選考委員を務め、各地の取組みを視察。様々な地域での取組みを紹介する講演が好評を得ている。そのほか『リアル桃太郎電鉄』、『熊本ワイチャ会議』…など、地域活性イベントも各地で行っている。
【モデレーター】
高橋邦男さん/一般財団法人こゆ地域づくり推進機 執行理事/最高執行責任者
堀口正裕/TURNSプロデューサー
本日のゲストである大桃美代子さんは、新潟県出身。農業や地域おこしに長年携わり、「雑穀エキスパート」、「ジュニア・野菜ソムリエ」、「おさかなマイスター・アドバイザー」といった食に関する資格を持っています。
そんな大桃さんとこゆ財団の高橋さんは、このイベントが初対面。TURNSの堀口からは「ぜひ新富町を大桃さんにも知ってほしい」と高橋さんに話を繋ぎます。高橋さんが自己紹介をかねて、こゆ財団の活動や、宮崎県新富町での様々な取り組みについて紹介していきました。
宮崎県新富町は、人口は約16,500人の温暖な気候に恵まれた「食」と「農」の町。アカウミガメの産卵地もあり、豊かな自然環境がたくさん残っています。そんな環境を生かして、近年様々なチャレンジが行われ、新富町全体が、今、ダイナミックに成長中です。
高橋さん曰く新富町は『世界で一番チャレンジしやすい町』。ローコストローリスクで、さまざまなことにチャレンジできる環境があり、チャレンジが上手くいかなかった場合でも、次のチャレンジを応援するコミュニティがあるのだと、高橋さんは町の魅力を語りました。
(※新富町の概要や、各取り組みの詳細については、第一回レポート、第二回レポートをご覧ください。)
https://turns.jp/47745 (第一回)
https://turns.jp/49020 (第二回)
地域商社 こゆ財団とは?
こゆ財団は、2017年に地域商社として宮崎県新富町の役場、行政によって設立された。「世界一チャレンジしやすい町」をつくるというビジョンを掲げ、「外貨を稼ぐ」、「人を育てる」の2軸で活動。様々な人や団体を繋ぎ、チャレンジのサポートをしている。また、業務の一つとしてふるさと納税の運営も行い、4年間累計で60億円以上の寄附を創出。特筆すべき活動については、ふるさと納税の手数料としての収入を、人材育成に再投資していること。新富町だけでなく東京やオンラインでも人材育成塾を開催しており、受講者の中から、新富町への移住者や新たなビジネスが生まれつつある。
「食」と「農」の取り組み ~『チャレンジは連鎖する!』~
「食」と「農」の取り組みの話題になると、高橋さんは「誰かのチャレンジに刺激を受け、チャレンジする人がいる。それを見て、また他の誰かがチャレンジをする。チャレンジは連鎖する」と言い、新富町におけるチャレンジの連鎖の中から、以下の5つの事例を紹介しました。
1、「みらい畑」~ぬか漬け用のミニ野菜の栽培・インターネット販売~
未経験で移住・就農した石川美里さんの発案により誕生した、新たなビジネス。「腸活ミニ野菜」として売り出した「ぬか漬け用のミニ野菜セット」が、昨年大ヒットしました。
詳細はこちら→https://miraibatake.jp/
2、「こゆ野菜カフェ」~地域の野菜や加工品を気軽に食べていただけるスポットの誕生~
こゆ財団の事業の一環として、人通りの少なかった商店街に、地元の食材を気軽に味わえるカフェを作ることに。カフェ運営経験者が誰もいない中、永住美香さんが「私がやります!」と手を挙げてくれ、「こゆ野菜カフェ」が誕生しました。
詳細はこちら → https://koyu.cafe/
3、「パパイヤ王子の挑戦」~酵素の王様、青パパイヤを世界に広げるビジネス~
地域おこし協力隊として未経験で就農した、通称“パパイヤ王子”。青パパイヤの可能性にいち早く目を付け、パパイヤの生産やお茶、グリーンカレー等の加工品開発を手掛けています。
詳細はこちら → https://www.princeofpapaya.com/
4、チャレンジショップ「おにぎり宮本」~農家の宮本さんが、60代で初めての飲食店に挑戦~
有機農業でお米を育ててきた宮本さんが、空き店舗をリノベーションした地元商工会の制度の初めての出店者として、おにぎり専門店「おにぎり宮本」をオープン。町の特産品を具材にしたおにぎりを提供しています。
詳細はこちら → https://www.instagram.com/yukimai_onigirimiyamoto/
5、「松浦牧場」~人材育成塾での出会い/観光牧場体験の実現/松浦ミルクの誕生~
かつて口蹄疫が流行した際、牛全頭を失う経験をした松浦牧場さん。それでも諦めずに酪農を続け、今では当時の倍以上の頭数を飼育されています。今年、美味しい牛乳「matsuura milk」の商品化も実現。2代目の松浦さんはアメリカ留学時に体験を重視した牧場経営に刺激を受けたことから、乳搾りやバター作りなどの体験プログラムも展開しています。観光牧場体験も出来るようになりました。
詳細はこちら → https://miyazaki.matsuuramilk.com/
進行の堀口はこれらの説明に、「毎回どんどん新しいことが生まれて、訪問するたびに面白い人、ストーリーが生まれている」とコメント。大桃さんも「新富町の取り組み、すごく面白いですね」とスライドに見入る場面も見られました。
地域の復興を伝えるために、農業の道へ
続いて、大桃さんの活動紹介です。現在、新潟食糧農業大学の客員教授であり、東京農大でも地域活性化やコミュニケーションについて教鞭をとる大桃さん。
地域と関わるようになったきっかけは、2004年10月に発生した新潟中越地震だったと言います。
新潟県に帰省中だった大桃さんは、ふるさとが大きく変わってしまった姿を見て、衝撃を受けました。当初はその復興の様子がたびたび報道されていましたが、時が経つとともに報道も少なくなり、大桃さんは「まだ復興半ばなのに、もう復興したのだと思われてしまう」と危機感を募らせたと言います。
そして、「風化させないためにも、地域のことを発信しなければ」という思いにかられました。
「この地域から発信できることは何だろうか。そう考えたとき、父のやっている農業だったら伝えられるんじゃないか。そんな思いで、地域の復興を伝えるために農業を始めました」(大桃さん)
大桃さんが挑戦しようと決めたのは、雑穀である古代米を無農薬で作ることでした。当時、東京では雑穀ブームがあり、健康・美容のために雑穀米を食べたいという人が増えていたのです。色がついた古代米は白い米に少しまぜて炊くことで赤飯のような色に炊き上がり、なんともおめでたい感じと、「がんばるぞ」という生命力を感じたのだと大桃さんは言います。
就農当初は、無農薬で作ろうとしたことで田んぼを借りるのが困難だったこと、他の米農家から黒い米の生産について理解を得ることが難しかったこと、農機具やそれを置いておく倉庫に多くの費用がかかったことなど…、本当に様々な苦労を味わったという大桃さん。
しかし、地元の方々とのコミュニケーションを大切にしながら、自身の古代米『桃米』を無事生産し、販売にこぎつけました。
また地元の小学生と一緒に農作業をする活動も開始し、メディアの取材が来るようになったことで、この取り組みが広く知られるように。
現在大桃さんは、全国の人に新潟県の震災復興状況を知ってもらうPRをかねて、この桃米を作り続けています。
東日本大震災後には、被災した福島県矢吹町からもオファーがあり、地元の小学生と一緒に農業体験をする『田んぼの学校』をスタートしました。『田んぼの学校』の特長は、産官学が一緒になって取り組んでいること。大桃さんは、作業の最後に子供たちと合唱歌「にじ」を歌うことがとても楽しかったと言います。
「現在はコロナで活動を2年ほど中断していますが、また子ども達に会えるのを楽しみにしています」(大桃さん)
住民の地域への愛が、地域活性化に繋がっている
こういった活動を評価され、地域再生大賞の選考委員を12年間務めているという大桃さん。多数の現地訪問をする中で感じているのは、地域活性化の根底にある「地元愛」だといいます。地域再生大賞に選ばれた宮崎県の12年分の事例を並べたスライドを背に、大桃さんはそれぞれの地域の活動のすばらしさを説明し、そこに見られた地域愛について語りました。
「地域づくりが成功する地域には、郷土愛があり、コミュニティがあって、智慧と工夫で問題解決を目指す人たちがいます。宮崎県日南市で道の駅を黒字経営している酒谷地区を訪れると、道路や家の前にたくさんの花が飾ってあり、地域を愛する住民の皆さんの気持ちがあふれていました。住んでいる方の地域を大好きだという思いが、地域活性化や町の発展に繋がっているのではないかと思います」(大桃さん)
終始笑顔でこれらの活動を説明していた大桃さんに、高橋さんは「タレント活動もされていて、おそらくたくさんの苦労があったにも関わらず、とても楽しそうにお話している。それが何より印象的でした」とコメント。
堀口からも「大桃さんの覚悟や本気度が伝わってくる内容でした」とその活動をリスペクトする気持ちが伝えられました。
テクノロジーが農業の在り方を変えていく
ここからは大桃さんの「テクノロジーによって農業はどう変わっていくのか」という質問に、高橋さんが、スマート農業についての取り組みを説明し、回答していく展開になりました。
「台風などの天候は、人智が及ばない領域。農業は気候に大きな影響を受けるので、そこが大変です」という大桃さん。これに対し、高橋さんは「テクノロジーによって天候を一変させることは難しいが、ロボットやシステム導入によって少しずつコントロールできることも出てくるはずです」と持論を展開しました。
高橋さんが例として紹介したのは、新富町のベンチャー企業「アグリスト」が開発した農業用ロボット。農家とエンジニアが一緒に農業の現場に入りながら開発されているこのロボットは、収穫の担い手不足の課題を解決に導く目的をもっています。
「ロボットがいいのか、土に触れながらやっていく農業がいいのかという二項対立ではない。生産に関してはテクノロジーを活用して、農家さんは時間を作る。その時間で、例えば、子ども達の体験学習の機会を作ったり、新しい販売戦略を考えたり出来る。今まで農作業をしていた時間の一部を、色んな業界の方と一緒に考える時間に充てられるようになる。それが、この先の農業の在り方ではないかと思っています」(高橋さん)
全国の農地を視察している大桃さんに、堀口がスマート農業の広がりについて聞くと、「確かに広がりつつある」と大桃さんは答えました。その中で出てきたのが、高知県のトマト農家がオランダからスマート農業が可能なハウスを取り寄せているという事例です。
そしてそこから話題は、オランダの農家の話題へと展開。大桃さんが視察したオランダのある地域では、農家仲間が集まって勉強会を行うことに加え、世界一の農業学校と言われているワーヘニンゲン大学で学んでいる方が多数おり、農家が大学院生レベルの知識を持っているのだといいます。
「オランダの農家は、システムを上手に取り入れ、産業として成り立っているんです。パプリカ農家を視察した際に、農家の方々がパワーポイントやドローンを使用して、自分達でプレゼンテーションをしたりしていて驚きました。プレゼンテーションをする時も、“私達は農家です”とか“私達はパプリカを作っています”とは絶対に言いません。“私達は世界に食糧を提供し、みんなの生活を豊かにする会社です”と言います。“自分達は人々を豊かにするために「食」の仕事をしている”と考えているんですよね」(大桃さん)
こういったオランダの農家に、アグリストの活動はつながるのではと大桃さんは言い「アグリストの活動から、大きな可能性と産業が生まれるんだなという気がしています」とコメントを残しました。
これに対し、堀口も「そういった可能性が、全国にこれから広がっていくんだということに希望を感じますね」と今後のテクノロジーと農業の発展に期待を寄せました。
一方、高橋さんは新富町の農家がこゆ財団との活動の中でどう変化していったのかについて紹介。新富町のライチ農家さんは、こゆ財団と一緒にブランド化をしていく中で活動の幅が広がり、イベントに登壇して生産者として話をする経験をしました。人前に立ち、自身の言葉で思いを伝える機会を経て、農家さんには大きな変化が生まれたと言います。
「機会があれば、農家の方の意識や視座が大きく変わっていくことを実感しました。私達が間に入って、そういう機会を作っていくことは、意味のあることだと思います。」(高橋さん)
視聴者からの質問コーナー
トークセッションの後半には視聴者からの質問にこたえるコーナーも。今回ピックアップされたのは、地域ブランドについての質問でした。
Q 地方から生まれるブランドは、元々商品価値が高いものにブランディングのプロが加勢することで生まれるのでしょうか? それとも、商品開発の段階からプロが考えるからブランドになるのでしょうか?
「新富町のライチは、もともと希少価値のあるものでしたし、私たちが仕掛けとしてのブランディングも行いました。しかし、どれだけブランディングのプロが加勢しても、思いを持った農家さんがそこにいないと、形だけしか出来ないということはすごく感じています。ライチも生産者の苦労をしながら最高のものを作り続けたというストーリーがしっかりとあり、それがブランドを支えています」(高橋さん)
「どんなにプロの人材が入ったとしても、そこに生産者の想いがないとダメだ、というのは本当にその通りだと思います」(堀口)
「SNSやライブ配信など、ITやテクノロジーを使って、農家の方一人一人が発信しやすい時代になりました。どんどん自分から発信することで、ファンになってもらえたり、色々な人とやり取りが出来たりしますし、それがブランド化にもつながっていくようにも感じますね」(大桃さん)
“生産者の思い”と“お金が入ってくる仕組み”の大切さ
イベントの終盤に交わされたのは「地域での挑戦と地元愛」についてのトークです。
地元でことを起こそうとしたとき、「エイヤっと最初に飛び出すと、そのうち助けてくれる人が集まってくるものです。第一歩を踏み出せるかどうかがとても大切」だという大桃さん。「新富町はきっとその一歩が踏み出しやすい場所」だと今日のセッションを通じて感じたそうです。
「ジャンプして川を渡ろうとしても、全員が渡り切れないことが多い。でも何度かジャンプしているうちに距離感がつかめたり、誰かが後ろを押してくれたり、一緒に飛ぼうぜと言ってくれる人が現れたりする。そういうコミュニティが理想だと私たちは思っていて、それを目指しています」(高橋さん)
「地元愛がここに加わると本当に地域が変わりますよね。有名な事例でいくと徳島県上勝町の葉っぱビジネス。和食にそえるきれいな葉っぱ(つまもの)を出荷するという挑戦をして、成功しています。ここも自分たちの住むこの場所が好き、何とかしたいという思いからスタートしていました。こういうスターをまず作っていくことが大事ですね」(大桃さん)
※はっぱビジネスの詳細は映画「人生、いろどり」をご覧ください。
これらのお話を聞いて、高橋さんは、「はっぱビジネスでも、ちゃんとお金が入ってくる仕組みを整えていた」ことに注目し、経済活動にちゃんと結び付けていくことで、活動は継続し、新たな挑戦へのエネルギーにもつながっていくと感じたと述べました。そして、改めてこゆ財団として「強い地域経済」を作っていくことの重要性、役割をかみしめていました。
そしていよいよイベントの最後には、大桃さんからの視聴者の方へのメッセージが送られました。
「日本はとても自然豊かで、こんなにも水がたくさんあります。宮崎県の海岸線の近さなどは、宝ともいえる地形。そういった土地の利を利用しない手はありません。コロナ禍を経て、テクノロジーによってどこでも仕事ができる時代が来たからこそ、農業を始めたい方、新たな事業を起こしたい方は、自分がどこで何をして生きていきたいか考えてみるととても楽しいのでは、と思います」(大桃さん)
「たくさんの場所を訪問している大桃さんには、ぜひ、新富町にも来てもらいたいですね」と堀口と高橋さん。大桃さんも「ぜひ!」と回答し、大桃さんが新富町を訪問する日もそう遠くなさそうです。
以上で、第5回のレポートは終わりになりますが、最後に大桃さん、高橋さんからのお知らせをどうぞ。
●大桃さんからのお知らせ
毎朝8時からのライブ配信『モーニング8』Facebook・YouTube・ツイッターで同時配信です!
ぜひご覧ください!!朝8時に大桃美代子を検索すると、元気が出るような放送に出会あえます。https://www.youtube.com/channel/UCeUNyht4_AhtDaPE2VL-ROg
https://twitter.com/omomo_miyoko
https://www.facebook.com/miyoko.oomomo
●高橋さん、こゆ財団からのお知らせ
『新富町でチャレンジしよう!!!』
地域おこし協力隊&こゆ財団、メンバー募集中!!現在、新富町では、地域おこし協力隊やこゆ財団の仲間として活躍したい人を募集しています。食に関する流通サポートをする方も現在大募集中。今日の話を聞いて興味を持たれた方は、QRコードからのアクセス、または、こゆ財団の問い合わせページから、ご連絡をお待ちしています。「まずは話を聞いてみたい」という方も大歓迎です!
https://koyu.miyazaki.jp/?page_id=2153
では今回のレポートはこれにて終了になります。
次回、第6回オンライントークイベントは10/26開催予定。お楽しみに!