3月16日、石川県子育て移住セミナーvol.3が開催されました。テーマは「石川で働くママのライフスタイル」、ゲストに金沢の手作りドーナツ『ウフフドーナチュ』を展開する株式会社ウフフの志賀嘉子さんが登場。石川にUターンしようと思ったきっかけや起業、働く環境づくり、子育て環境についてじっくり語ってくれました。
ゲスト:志賀嘉子さん
石川県珠洲市出身。金沢市と高崎市にてウェディングプランナーとして勤務後、出版社に転職し編集長として勤務。石川、富山、新潟、長野の4県5都市で本を出版したのち2015年、子育て中の女性が働きやすい職場を作るために起業。現在は30人を超えるママさんスタッフと一緒に日本全国をはじめ海外にも手作りのドーナツを届けている。小学生と赤ちゃんの2人の子どもを育てるママ。夫は新潟県出身でフリーのカメラマンとして活動している
イベントは、ゲストとのクロストークからスタートしました。ゲストの志賀嘉子さんは石川県珠洲市出身。高校卒業後に金沢の専門学校に進学し、ウェディングプランナーとして働き始めます。職場は石川や群馬でしたが、プランナーとして8年経った頃、東日本大震災が起こります。
「震災当時は群馬でウェディングプランナーとして働いていたのですが、大きな災害が起こり、やはり家族は近くにいるべきなのではないかと感じるようになりました。仕事は充実していたものの、毎日仕事で忙しく、両親からの電話やメールに返す余裕もないくらいだったのですが、結婚式の中で読まれるご新婦様からのご両親へのお手紙などを聞きながらふと、 “私はあと何回両親に会えるんだろう”と考えたときに“このままじゃダメだ”と思い、石川に戻ることに決めました」
出版社で編集長として活躍していた頃
退職後“親孝行休業”として1年ほど実家で家族と過ごした後、再就職を考えます。その時働きたいと思ったのは出版社でした。震災後に震災の状況を見るために東北を旅した時、情報収集の方法は本や雑誌でした。「人を動かすことができる仕事」に価値を見出し、金沢にある出版社に就職します。編集長を務め、何冊も本を出版しますが、ある出来事をきっかけに「起業したい」「もっと働きやすい環境の会社を作りたい」と思うように。
「ある日、社長の給料未払いが発覚しチームが解散することになりました。好きな仕事を続けることができず、大好きな仲間と働くこともできない。当時、幅広く仕事を任せてもらっていたので、“自分で経営している”くらいの気持ちでしたが、誰かの元で働いていると大切なものが簡単に奪われてしまうんだと知りました」
起業時の志賀さん。現在9歳になる長女が生まれたばかり
2015年、金沢市でドーナツ専門店を創業。(2018年に株式会社ウフフ設立。)女性が働きやすい職場を目指して事業を組み立て「自分じゃなくてもいい」「代役が立てられる」仕事づくり、体制づくりを始めます。また、スタッフ各自の働き方の希望に合わせて仕事を割り振り、それぞれが働きやすい環境づくりを心がけました。志賀さん自身もお子さんを連れて出社し、子どもを膝の上に乗せて打ち合わせに参加したり、イベントに連れて行くなどもしています。
「起業して何をしようかと考えた時に、子育て中の元同僚を見ると、仕事と子育てを両立している人は、“子どもが幼稚園に行っている時間だけ働ける仕事”という職業選択をしている人が多く、“好きなことを仕事にする”“キャリアを活かして働く”ということができていない気がしました。現状の働き方だと、能力の高い女性が力を発揮する機会を逃している。そんな女性が働きやすい環境を作りたいと思いました。せっかくママさんが集まるので“子どもに喜んでもらえるものを”と考えて、子どもが好きなドーナツを作る会社にしました。スタッフの中には、フルリモートでお子さんを見ながら仕事をしている人もいますし、それぞれが働きやすい働き方をしています」
一緒に働くスタッフとの写真。次女が生まれる少し前の頃
起業する時に「悩んだり、躊躇することはなかった」と志賀さん。自身がミャンマーを旅した時に、田舎では会社という組織自体が少なく、現地の人がそれぞれ家族や個人で仕事をしている光景を多く見て自分自身の起業に対する捉え方をいい意味で変えることができた体験もあり、夫もフリーランス、父親も自営業でお店をやっていたことなどから、起業というもののハードルが低かったのだそう。また、石川県の起業サポートも心強かったと言います。
「『石川よろず支援拠点』には、創業時に大変お世話になり、営業の勉強会にも参加させていただきました。その勉強会の実際の商談相手にデパートのバイヤーさんが来てくれて、それを機に商品を採用していただいたこともありました。ジェトロさんや石川県庁さんにも、海外のバイヤーさんとの商談の機会を設けていただいたり、他の商社さんに紹介いただくきっかけをいただいたりしたおかげで、香港のそごうや中国の百貨店で販売するきっかけにもなりました」
次女と共に出社し、スタッフが次女と一緒に仕事をしている様子
株式会社ウフフでは、石川県内の高校とコラボして規格外の野菜や地元食材を使ったドーナツの開発をしたり、志賀さんが地元の小中高生に向けて講演をするなどしています。講演のテーマは「夢を持つことの大切さ」。夢の見つけ方、夢の叶え方を志賀さんの体験をもとに話をしています。
「高校とのコラボ商品は3年連続で、毎回いろいろな高校から声をかけてもらっています。コラボ商品を発売した時には、新聞社やテレビ局に取材をしてもらい、プレスリリースを一緒に出したり、取材対応についても一緒に体験してもらいました。講演をするのは、世の中にはいろいろな職業があること、自分の好きなことを仕事にできることを伝えたいからです。たくさんの大人と関わることで、いろいろな職種の方と出会い、職業選択の幅がより広がってほしいとも思います。好きなことを仕事にすることが難しいことではないことを知ってもらえるきっかけになれば、と思います」
コラボ商品を作った高校生らと一緒に撮影、プレスリリースを出して取材対応している様子、新聞社やテレビが取材に訪れた
次は、子育て面での石川の魅力について。志賀さんは子どもが生まれた後、理想の幼稚園と出会い、「子どもをここに通わせたい」と思い、幼稚園を選んだそうです。小学校では、環境を生かした石川らしい体験ができることのありがたさを感じています。
「金沢市にある川上幼稚園を見学しに行った時、子どもが一番子どもらしかったんです。自然の中で子どもたちが自然体で遊んでいる様子に惹かれました。長女は2歳からそこにお世話になりました。自然の道具を上手に使って遊んだり、裸足で外を走り回ったり。川や河原で遊んだり、梅をもいだり、食事面でも無農薬野菜にこだわり、調味料も無添加。夕方も18時半まで預かっていただいて、ありがたかったです。小学校は、家から徒歩で歩いて通っています。体育の授業には雪遊び、他にも地元の和菓子屋さんが学校に来てくれて和菓子作り体験ができたりと、文化的な体験が授業に組み込まれているのがありがたいですね」
石川らしい文化体験をしている様子。草木染め、九谷焼の絵付け、化石発掘体験など
冬はスキーやスノーボード、雪遊び。夏は海でサーフィン。兼六園でお散歩をしたり、草木染めや九谷焼きの絵付け体験をしたり。実家から届いた山菜を食べたり、金沢大学主催の能登里山里海マイスタープログラムに親子で参加したり。アクティビティから学び、文化的体験、美味しい食べ物。石川の魅力を存分に楽しみながら生活をしています。
「石川の人には、文化や自然を残したいという思いが強くあると思います。そういったイベントや行事がすごく多く、頑張って“学ぼう”“体験しよう”と思わなくても、自然といろいろな体験ができるのが素晴らしいと思っています。私が住んでいる金沢市は、自然、伝統、文化が街の中に溶け込んでいます。街がすごくコンパクトなので、自転車で観光地巡りするのもいいし、私たちも観光客気分で回ることもあります。普段あまり何も体験していないかも、と思っていたのですが、意外とたくさんの楽しみを日常で体験していると気付かされました。改めて魅力的な場所だと思います」
夏は海や山、冬はスキーやスノーボード。季節ごとのアクティビティを体験している様子
子育てと起業、異なる2面から石川暮らしの魅力を語ってくれた志賀さん。起業面では石川県のサポートが手厚く、商品の販路拡大の後押しになったというエピソードが印象的でした。子育て面からは“子どもが一番子どもらしく見えた”という理想の幼稚園と出会い、親子で日常的に石川の自然・文化を満喫している様子がとても魅力的でした。
働く、子どもを育てる、どちらの視点からもたくさんの魅力がある石川県。志賀さんの会社『ウフフドーナチュ』のホームページや『いしかわ暮らし情報ひろば』もぜひチェックしてみてください。
ウフフドーナチュ金沢の手作りドーナツ
https://ufufu-ufufu.com/
いしかわ暮らし情報ひろば
https://iju.ishikawa.jp/