2022年10月22日(土)~23日の2日間に渡り、“親子で移住”に関心のある子育て世代に向けた、1泊2日のバスツアー。首都圏からだけでなく愛知県からも応募をいただき、6家族が参加されました。
また、2021年に開催したイベント「#わたしのにいがたじかん」に登壇した ほんまさゆり さん 髙橋真梨子さんにも、カメラマン、保育士として参加いただき交流を深めました。
新潟県内の子育て支援施設や公園などを巡りながら、現地の方々と触れ合い、先輩移住者からは移住の実体験をお聞きして、「にいがたで暮らす」イメージを膨らませていただく2日間となりました。
そのレポートをご紹介します!
1日目:長岡市、新潟市
旅の始まりである集合場所は、長岡市の中心地にある、市役所が一体となった市民交流拠点『アオーレ長岡』。そこから『子育ての駅 てくてく』へと移動し、館内を見学しつつ、長岡市子ども・子育て課の長谷川さんと、ながおか魅力発信課の佐藤さんより、子育て支援策、子育て環境、移住支援などについてお話をお聞きしました。
▲長岡市より子育て支援・移住支援を説明いただいた
『子育ての駅 てくてく』は、子育て支援施設と自由に遊べる公園が一体となった、全国初のスポット。来場者数は年間17万人。「雨や雪の日でも、伸び伸び遊ばせてあげたい」という想いがもとになっている施設で、およそ2ヘクタールもの広さがあります。常駐している保育士をはじめ、市民が中心になっている「子育ての駅サポーター」による絵本の読み聞かせや野菜栽培体験など、行政と地域が一丸となって子育て支援をしています。
▲屋内と屋外が一体になっているかのように解放感がある
施設を利用している長岡市民に混ざり、屋外の広い芝生フィールドで思いきり遊ぶ参加者の子どもたちの様子が印象的でした。
【子育ての駅 てくてく】
住所:新潟県長岡市千秋1丁目99番地6
アクセス:JR長岡駅より3km
バス 「子育ての駅千秋」バス停下車/車 長岡ICより4km
電話:TEL:0258-21-3860
HP:https://www.city.nagaoka.niigata.jp/kosodate/cate99/tekuteku/index.html
その後は、昼食会場である『どんぐりと山猫の森』へ移動。参加者のみなさんからは、広々とした座敷席やキッズスペース、絵本コーナーなどの充実したサービスに安心の声も聞かれ、「子どもと一緒でも、落ち着いて新潟の美味しいご飯を食べることができてうれしい!」と好評をいただきました。
▲食べ終わった子どもが遊べるスペースも完備
▲小さなお子さんでも座敷だから安心
【どんぐりと山猫の森】
住所:新潟県長岡市喜多町金輪88-2 ホテルビジネスイン長岡店様敷地内
アクセス:車で長岡インターチェンジより車で1分/バスで長岡駅より18分(バス停「日越」下車徒歩5分)
電話:TEL:0258-86-7547
HP:https://donguritoyamaneko-no-mori.jimdofree.com/
次は新潟市エリアに向かいました。
バスに揺られて1時間半ほど、お天気模様がやや心配される中、『県立鳥屋野潟公園』に到着。
オリエンテーションの冒頭では、新潟県私立幼稚園・認定こども園協会の丸山和幸さんをゲストに迎え、新潟県の幼児教育についてお話しいただきました。
▲イントロダクションを担当していただいた丸山和幸園長先生
一般社団法人新潟県私立幼稚園・認定こども園協会は、新潟県の幼児教育の振興や研修、子育て支援制度への提言、人材確保など新潟県の子育てをより良くするために活動しています。曽野木まるみ幼稚園の園長である丸山さんは、新潟での子育ての魅力について「ここでしか味わえない自然が身近にたくさんある事」だと言います。
「空気感を肌で感じて、食べたり、びっくりしたり、感動したり、ヒヤリとしたりと、心を揺さぶられるなど様々な体験、経験が非認知な部分の脳の発達を促します。鳥屋野潟公園はそういった体験をすることにぴったりな環境です。私の園でも遠足によく来ますよ」と公園の魅力についてもお話しいただきました。
その他にも、新潟県の食育や環境幼児教育、幅広い世代にワンストップサービスをしている「子育てなんでも相談センターきらきら」についても紹介いただき、公的な支援への働きかけだけではなく、多様な角度から新潟の子育て環境の推進に尽力されていることが伝わってきました。
新潟県の幼児教育についてお話しいただいた後は、新潟市を中心に活動する『プロジェクトワイルド&WET新潟の会』の講師である北添慎吾さんによるネイチャーゲームです。『プロジェクトワイルド&WET新潟の会』とは、親子向けのネイチャーゲームや自然観察アクティビティなどのプログラムを行う団体です。
▲講師の北添さんも関西から移住した一人
最初にアイスブレイクとして、子どもたちが興味を示した公園内のどんぐりを使ったミニゲームを行い、新潟県の自然の特徴である「潟」や「水辺」の環境について説明いただき、“水がどのように私たちの身の回りを旅しているのか” といったテーマをすごろくのように体験できるプログラムを行いました。
プログラム中は雨が降ったり止んだりを繰り返しましたが、大人も子どもも、「新潟県は、水の循環が実にダイナミックに起きていて、それをダイレクトに体感できる素晴らしい地域なんです!」という北添さんのお話に聞き入りました。
▲水の循環を体感できるすごろくゲーム
新潟県は“雪国”のイメージがありますが、「水の循環から生まれた“自然の恵み”が詰まった地域」と捉えることで、地域の見方も変わってきます。新潟県は面積がとても大きく、またその地形も変化に富んでいるため、「住む地域によって、異なる様々な自然の恵みの魅力を感じられる」ということを、参加者のみなさんに考えていただく時間になったようです。
▲目を瞑って森を歩き、音や匂いを感じる体験
アクティビティを通し、参加者同士の親睦も深まりました。子どもたちはあっという間に仲良くなり、鳥屋野潟に飛来した白鳥に歓声を上げたり、公園内の動植物を探すゲームに熱中したりと、この場所でしか味わえない “にいがたじかん” を満喫している様子でした。
参加者のみなさんからは
「普段は人の多いところに暮らしているので、すごくのびのびと過ごせているのを感じます。うちの子は自然が大好きなので、こんなところで子育てができたら良いなあ」といった声もありました。
日も暮れ、長旅でお疲れの子どもたちがまどろんでいる中、新潟市の中心エリアの夕景が車窓を流れていきます。バスはそのまま新潟市内の「万代エリア」へと向かいました。
1日目最後の行程となる夕食の会場は、『燕三条イタリアンbit 新潟店』。
新潟市にUターンで移住された木村愛子さん・正幸さんご家族をゲストに迎え、「新潟でのリアルな暮らし」についてお話しいただき、参加者の方々と様々な話が広がる熱い夜となりました。
▲木村愛子さん・正幸さんご家族(新潟市在住/Uターン)
千葉県の大学に進学し、就職は東京で10年以上システムエンジニアとして働いた木村愛子さん。現在は新潟市にUターンし、小学4年生の長男、4歳の長女、旦那さまと4人で暮らしています。Uターンしたきっかけは、出産や育児、それまで勤めていた会社の状況など諸々のタイミングが重なったことでした。現在は、旦那さまと二人三脚でシステム開発会社「株式会社Pepo」を経営されています。
「東京と違って車移動ができるのは、子育て環境としてとても魅力的です。少し走れば広い公園もたくさんありますし、レジャーが楽しめるスポットにも気軽に行くことができました。こちらにUターンしてから戸建てを購入したのですが、月々の支払いは都内の家賃よりも安く、移住当初の収入は都内にいたときに比べて一時的には減りましたが、支出はその分抑えられましたね」
木村さんは、商工会議所青年部などの地域の団体に所属をして、地域活動も行っています。自分が住んでいる地域のために何かをすることで、人との繋がりも広がっていくのだそうです。
「新潟市は人のネットワークが広がっていきやすいところ。都心でありながら、人と人との距離が近くて、仕事でも生活でも孤立せずに暮らせることが魅力です」
また、新潟市雇用・新潟暮らし推進課の田中さんからは、移住支援金や空き家利活用の補助金だけではなく、屋内施設「こども創造センター」の整備や食育体験施設の整備など、ハード面・ソフト面の両方から子育て世代を支援していることをご紹介いただきました。
▲新潟市の子育て支援・移住支援を直接聞ける時間も
テーブルには燕三条が誇るカトラリーや食器が並べられ、地場食材を使った素晴らしい食事のひとつひとつに舌鼓を打ちながら、子育て・移住談義は続きました。とても濃い内容の1日目を終えることができました。
▲彩り豊かなお子様ランチプレート
【燕三条Bit 新潟店】
住所:新潟県新潟市中央区新島町通1ノ町1977
アクセス:バス停・礎町、本町から徒歩2分/新潟バイパス・桜木インターから3.5km。車10分程度/新潟駅から1,426m
電話:025-201-7933
HP:https://bit2013.com/
2日目:新発田市
2日目は、新発田市を訪ねました。
バスに乗り込んだ6組の親子のみなさんは初日の緊張が解れ、和やかな雰囲気で2日目がスタートしました。
新潟市から車で30分ほどの新発田市は、新潟市のベットタウンとしても人気のエリアです。
▲新発田駅の目の前でアクセス抜群!
最初に訪れたのは、新発田駅の目の前にある『イクネスしばた』。カフェや図書館のほか、こども支援センターという屋内施設や一時預かりなど、子育て世代向けのサービスが充実した複合施設です。
ここでは新発田市の子育て支援策に関して、新発田市こども課の宮村さんよりプレゼンテーションで参加者に説明していただきました。
▲子育てしやすいまちを目指す新発田市
新発田市には、保育サービス専門の相談員「子育てコンシェルジュ」が在籍しており、移住支援でも“子育てしやすいまち”を押し出しています。
安心・安全に子育てができるように、高校卒業までの医療費の独自補助やひとり親世代への児童扶養手当など、市独自の制度が充実しています。
他にも、キッチンスペースでの食育や栄養士による育児相談など、孤独な子育てをさせないための取り組みを数多く実施しています。
▲図書館内に設置された子どもセンター
【イクネス新発田】
住所:新潟県新発田市諏訪町1丁目2−12
アクセス:下記をご確認ください。
https://www.ikunesu-shibata.jp/access.html
電話:0254-28-9950
HP:https://www.ikunesu-shibata.jp/
次に訪問したのは、「環境的持続可能性」と「社会的持続可能性」をテーマにした、『月岡わくわくファーム』内にある『キッコリータウン』です。新潟県の有名な温泉街「月岡温泉」のすぐ近くにあり、ツリーハウスや日本一長い木製ブランコなど、森を開放して、自然環境の中で遊ぶことができます。
▲この日は、県内各地から多種多様なお店が出店していた
この日は月に1回のオーガニックマーケット「おひさま日曜市」が開催されていました。有機野菜や自然栽培の食材を使った加工品の販売や子どもが運営する“こどもマルシェ”が立ち並びます。このマルシェでは「木のコイン」を使って買い物をすることができ、参加者のみなさんも出店者の方々とコミュニケーションを取りながら楽しみました。
▲雨でも元気に遊ぶ子どもたち
【月岡わくわくファーム】
住所: 新潟県新発田市月岡408番地
アクセス:下記をご確認ください。
https://www.wakuwaku-farm.jp/access
電話:0254-32-0909
HP:https://www.wakuwaku-farm.jp/『キッコリータウン』に関しては、下記を参照ください。
https://www.wakuwaku-farm.jp/ecoshelter
ここでは、新発田市のお隣にある関川村に移住した、川崎哲也さん・パトリシアさんご家族にゲストとしてお越しいただきました。
▲川崎哲也さん・パトリシアさんご家族(関川村在住/Uターン)
川崎哲也さんは、13年前に関川村に移住し、現在は奥さまとお子さん5人の7人家族で暮らされています。移住する前は国家公務員として働いていましたが、様々な外国人と接するなかで自分自身の生き方に疑問を感じ始め、食に興味を持ち関川村で「農」の道を選びました。
半自給自足の生活を選んだ川崎さんが感じている関川村の魅力は「雪がもたらす恩恵と自然の恵み」です。雪国の暮らしは大変さもありますが、雪があることで “春に田畑が潤い、天地自然からの恵み” になる。
それら自然への感謝と「今、この瞬間」をありのまま受け入れ、命(エネルギー)の巡り・循環の中に生きることの喜び・心地よさを感じながら生きていくことができる環境が関川村にはあり、川崎さんの生きる哲学に繋がっているようです。
そんな自然農で米づくりをする川崎さんの生き方を理解し受け入れてくれる、地域の人々との繋がり。同じ価値観を持ったコミュニティの中での暮らしは、日々の幸せの大事な要素です。
山川草木を師と仰ぎ、村に住む先人たちとの交流と継承の中で日々の暮らしをつくっていく川崎さんたちの生き方に触れることができました。
また、川崎さんは「住む場所を決めるのには “人との出会い” も重要だと言います。自身も森を管理しながら子どもの遊び場をつくり、農業体験や音楽ライブなどのイベントも開催して地域の人々と繋がる機会をつくっています。
▲農業をしながら生活の多くを自給する川崎さんご家族
「新潟県は“生まれ故郷だから”と言うことになりますが、移住先を関川村に決めたのは“人との出会い”が決め手でした。当時(移住前)、私は有機農業をしたいと思っていたところ、「関川村に有機農業をしている人がいる」と聞き、その方に会いに行き、そこから色んな話が進んで行きました。その出会いから2年半ほどかけて移住しました。あまり細かいことは考えず、「自分はこんな暮らしがしたい」と言う考え・希望を持って、会う人会う人にそれを伝えていました。私たちだったら「山の近くで、田畑付の一軒家で、農を基本に自然と調和して暮らしたい」というように。そうすることで、紹介や新しい出会いを生み、理想に近づいていけたように思います」
新潟の自然環境を活かした多様な生き方。森のようちえんや野外保育といった、首都圏ではなかなか体験することができない自然教育の在り方にも触れ、参加者のみなさんは新たな選択肢をもつことができたようです。
2日間にわたる「親子でにいがたじかん体験ツアー」。様々な場所を訪ね、多様な先輩移住者の生き方に触れることができ、あっという間の2日間でした。
移住に関する情報や子育て環境を知るためには、実際に現地を訪ねてみることが大切です。参加者のみなさんにとって、このツアーが地方暮らしへの大きな一歩になることを願っています。
新潟県には魅力あふれる地域があり、親子でたのしいスポット、うれしいスポットがたくさんあります。新潟県はすべての子育て世代のみなさんを応援します。今回のレポートを参考に、移住先の候補として、ぜひ新潟県を訪ねてみてください。
文:大塚眞
撮影:ほんまさゆり
参加者の声
●子どもを育てるのに自然環境が良い所を考えていたが、子どもを育てるだけでなく、自分も生き方をアップデートするきっかけになりました。
ネイチャーゲームの北添さんは、関西から念願の新潟に来ることができたと話しておられ、そこまで憧れる場所ってすごく良いところなのだろうなと興味深くお話を聞きました。自然が大好きで、水の循環のある新潟についてのお話を楽しく聞いていくなかで、自然と共に生きる生き方が浮かびました。
最後の川崎さんのお話とも繋がり、新潟愛は、自然に生かされているということをよく分かっている、分かろうとしている人に湧いてくるものなのかな、と感じました。結局どこに住もうと、自然と共存出来ないと難しいのかな、と大切な事に気付かされた旅でした。●新潟県は子育て支援センターがすごく良さそうで、子供の遊ぶところが充実しているところが今回一番感動しました。移住について不安に感じているのが仕事・収入面なので、そのあたりのお話がたくさん聞けると、更に移住に関しての情報収集として有意義なものになるかと思いました。
●イクネスしばたの施設充実度に驚きました。キッチンスタジオや演奏室まで備えた文化施設は稀なのではないでしょうか。広く文化というものを捉える市の姿勢に感銘を受けました。
●運営、ゲストの方々皆気持ちよくフランクに対応下さり、移住への気持ちが増しました。気候や土地も重要ですが、そこでどういう人と出会えるかも決め手の大きな要因になると改めて感じました。
●自分にとってどこか絵空事だった移住を、現実的、具体的に考えるきっかけになったと思います。ツアーで体験した事をもとに、夫婦で移住先に求める条件や自分達にとっての理想のライフスタイルをより具体的に話し合えたのも収穫でした。
●地方暮らしの魅力は、都市部と比べて人との距離が近いこと。10年くらい移住をしたいと思っていましたが、現実逃避や、子どもがうまれてからは自然豊かなところで子育てをしたいという考えが理由でした。生き方にフォーカスしてどのように生きたいか考えるきっかけとなり、移住をきっかけとして人生がより豊かになると感じました。
自分の意思をもってひとつひとつ行動していけば、自分の状況や環境は変えていくことができ、自分の人生は変えていけるという感覚をもつことができました。