福井県 鯖江市 現役隊員
川口サマンサさん
活動内容:SDGs(持続可能な開発目標)推進のための情報発信・イベント企画、国連関係機関との連携・連絡調整
カナダ出身で高校時代に日本に短期留学した経験を持つ川口さんは、高校卒業後の2011年に再来日し、2013年に知人から「国連の友Asia-Pacific」を紹介され、同団体での活動を開始した。
「『国連の友Asia-Pacific』は、国連の理念・活動の重要性を広く一般に知ってもらうため、広報・啓蒙活動や、平和・環境・人権などの分野において様々な活動を行う国連本部承認の特定非営利活動法人です。そこで私はSDGsなどに関する資料の翻訳をしていたのですが、そのときに、高校時代から関心があったジェンダー平等について、鯖江市が注力していることを知り、関心を持ちました。その後、「さばえSDGs推進センター」が開設され、地域おこし協力隊を募集していることを聞き、『絶対に行きたい!』という思いで応募しました。」
こうした思いが叶って、川口さんは2020年10月、地域おこし協力隊として鯖江市へ着任した。空気がきれいで、人や交通の混雑もない鯖江市は、生まれ育ったカナダの町とどこか似ていて、とても暮らしやすいと感じたという。
「ジェンダー平等」をテーマにした講演会で講師を務める川口さん
SDGsの取り組みを広めるため、幅広い業務に携わる
川口さんの協力隊としての活動は多岐にわたっている。
「さばえSDGs推進センターを拠点として、鯖江市からSDGsを広めていく活動を行っています。海外諸国で行われているSDGsの取組の紹介や、センターが主催するセミナーの告知などです。センターで開催するセミナー以外にも、地元企業や学校、公民館などで実施することもあります。市外・国外の方にも鯖江市の取組を知ってもらうために、センターの公式SNSでは、日本語と英語で情報を発信しています。」
さばえSDGs推進センターには展示スペースも設けられており、市の取組を紹介する常設展示に加えて、月替わりの特別展示も行う。
「例えば3月8日の国際女性デーに合わせて、海外で行われているジェンダー平等の取組を取り上げたり、6月のプライド・マンスに合わせてLGBTQ+の権利を啓発するイベントを行ったりしました。その時は企画だけでなく、展示パネルやチラシなどのデザインも私が担当しました。」
左)鯖江SDGs推進センターのスタッフ一同と 右)プライド・マンス用に作った展示パネルの一部
周囲のあたたかい協力や反応にやりがいを感じる
着任するまでは、行政実務の経験がなかったので不安もあったという川口さんだが、実際に着任してみるとスタッフの協力的な姿勢に大いに助けられたという。
「私のアイディアに対し、みんなが『ぜひやりましょう!』と、前向きに捉えてくれます。何か相談事があれば、すぐに回答してくれるし、本当に何事もスピーディーに対応してもらえるので仕事がしやすいです。」
セミナーの参加者たちの反応からもやりがいを感じている。
「ジェンダー平等のようなテーマは世代によって受け止め方が異なるかもしれないという思いがありました。学生や高齢者の方などにうまく伝わるだろうかという不安もありました。でもセミナーが終わった後に『ジェンダー平等についてよく理解できた』とか『どう考えればいいかわかった』という声を多く頂いています。SDGs全般に言えることですが、まずは課題に対して現状がどうであるか、それを知ってもらうことが最初の一歩だと思うので、地道に取り組んでいきたいです。」
川口さんは、ジェンダー平等の取組の一環として、LGBTQ+の当事者とその支援者による福井県内の団体「なろっさ!ALLY」の鯖江支部の活動にも参加し、イベントの企画・運営にも携わっている。
「『なろっさ!』は福井弁で〝なろうよ〟で、〝ALLY(アライ)〟はLGBTQ+の理解者・支援者という意味です。福井県には、まだパートナーシップ制度(※各自治体が同性同士のカップルを婚姻に相当する関係と認め証明書を発行する制度)を導入する自治体がありません。早期導入を促すように活動に力を入れていますが、個人的にはまだまだ力不足を感じているので頑張ります。」
左)「なろっさ!ALLY」鯖江支部で共にLGBTQ+の普及活動をする仲間たちと 右)ナビゲーターを担当している地元ケーブルTVの番組「サマンサのLet‘s SDGs」の撮影風景
協力隊任期終了後も、鯖江市でジェンダー平等を広める活動をし続けたい
鯖江市の人たちは、みんながまちに誇りを持っていて、アクティブな人が多いと感じているそうだ。
「みんなが『鯖江って最高でしょ!』と思っている感じがして私も嬉しくなります。話しやすくて親切な人ばかりなのは、鯖江というよりも福井の県民性なのかもしれません。どの人もアイディアを行動に移すのが早いので、まちづくりには最適な環境だと思います。」
また、東京で暮らしていた頃とは、時間の使い方が変わったという。
「地域おこし協力隊になってよかったのは、自分の時間がすごく増えたこと。東京では、移動に時間がかかり、どこに行くにも片道1時間という感じでしたが、今は自宅から勤務先までわずか600m。自分の時間を有効に使えて、様々な活動もできるし、生活が快適になりました。」
そんな鯖江で、協力隊として日々活動に励む川口さん。任期終了後のプランは未定であるが、大好きな鯖江市に定住して、現在取り組んでいる活動を継続する道を探っているという。
「SDGsに関連するテーマは硬いイメージを持たれがちなので、体験型や楽しく参加できるイベントを今後も開催したいです。担当しているテレビのミニ番組のナビゲーターとしても、より幅広く発信を続けていきたい。協力隊の任期終了後も、これまでの活動で得た経験を次の仕事につなげていきたいです。とにかく、地域おこし協力隊は多くのサポートと貴重な経験を得られる制度なので、積極的にチャレンジしてほしいです。」
右)「なろっさ!ALLY」イベントでの集合写真
福井県 鯖江市 現役隊員
川口サマンサさん1993年生まれ。カナダ・オンタリオ州出身。高校時代に日本に短期留学をした後、2011年に再来日し「国連の友Asia-Pacific」での活動を開始。「国連の友Asia-Pacific」と連携して取り組んでいる鯖江市のジェンダー平等の取組に関心を持つようになり、2020年地域おこし協力隊として同市に着任。
福井県鯖江市地域おこし協力隊:https://www.facebook.com/sabae.chokky/
地域おこし協力隊とは?
地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に移住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。具体的な活動内容や条件、待遇は、募集自治体により様々で、任期は概ね1年以上、3年未満です。
地域おこし協力隊HP:https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei
発行:総務省