【10/20発売】Vol.20 特集
「里山ライフを楽しもう!」

四季の移ろいを感じながら、
新鮮な自然の恵みを毎日、味わう。
あたたかい人たちに囲まれて、
先人たちの知恵とともに生きる。
都会の喧騒を離れて、
家族と一緒に静かな夜を過ごす。
「里山」
そこには自然とつながりながら、自分らしい暮らしを、
自分たちの手でつくっている人たちがいます。
今号では、都心の便利さと、里山の魅力を存分に味わえる、
選りすぐりのエリアをご紹介します。
どういう暮らしをしたいのか、
何に囲まれて生きていきたいのか。
もう一度自分の暮らしを見つめなおしてみませんか。
写真:清家洋
今号の「TURNSな人々」でご紹介するのは、
環境・歴史学者のあん・まくどなるどさんです。

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”ほどほど”を ”ぼちぼち”やるのが
里山のいいところです。

カナダの大平原で生まれ育った。大地は360度見渡すかぎり続き、夕陽は地平線に沈んだ。高校生のとき、交換留学生として日本へ来た。1982年のことだ。ホームステイ先がたまたま大阪の河内長野だったため、河内弁をおぼえて帰り、カナダの日本語学科の先生に直された。1988年には熊本大学へ留学する。バブル真っ最中の日本。わずか6年の間に日本は急激な変化を遂げていた。東洋学と政治学を専攻していた熊本大学時代、あんさんは人生の進路を決める決定的な体験をした。イグサの手植えだ。泥まみれの過酷な作業。背中も腰も痛む。のろのろ植えるあんさんを、農家のじいちゃん、ばあちゃんがサッサと追い越していった。
「初めて『本物の日本』と接した気分になった。そして、留学生仲間が、日本の政治・経済・文学などを日本学の研究テーマに選んでいるなかで、私は農業・漁業にのめりこんでいった」(講演録『日本の農漁村とわたし』より)こうしてあんさんは日本の農村漁村のフィールドワークを始めた。

無限にみえる大陸から有限の島国へ
農漁村への興味の底には、日本で受けた”地理的ショック”が横たわっている。カナダの大平原からやって来たあんさんにとって、目の前に海、背後に山が迫る日本の地形は窮屈そのものだった。「無限のように見える大陸から、生まれて初めて島国に来て、有限を感じたんです。こんなに限られた面積のなかで、日本人は資源をどうやって生かしてきたの? まずそれが大きな驚き。それからは感動の連続になって」

農村、漁村へ強い興味を抱き、日本にとどまった理由についてあんさんはこう話した。
「私は大陸の世界観が、環境問題のベースにあると思っています。大陸の人間も資源は有限であることは頭ではわかっていますが、潜在的な意識では無限なんですね。土地がずーっと続いているから、資源も無限にあると思ってしまうんです。石油も森林も金属も、発見し、取り尽くしたら、また次へ行けばいいという考え方。そういうフロンティアの発想を見直さなくてはダメだと思い、日本への興味がふつふつわいてきました。
日本人はどのように自然とかかわってきたのか。里山では人は自然界に手を入れるが破壊はしない。”ほどほど”に恵みをもらって活用しながら、ぼちぼち持続可能な自然管理の仕組みをつくっていった。そこに魅せられました」

職人や農民の知恵を失っていいのだろうか
大学卒業後は長野県の農村塾に入塾。ほぼ自給自足の生活だった。「あの頃は、欧米じゃない所から食糧と環境問題を考えたいという思いが強くありました。産業革命以降、科学技術の開発も環境破壊もリードしたのは欧米。環境保全運動をリードしたのも欧米ですが。これも欧米が言い出したことですが、グローバル化社会なんていっても、多様性の点でぜんぜんグローバルじゃないでしょ? だから私、自分が欧米人だからこそ欧米じゃない所から見たかった。

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私が農村に入ったのは80年代終わりで、日本はまだバブルでした。農村漁村で働いている人への評価は低かったんですね。明治時代の自然観とか徳川時代の循環型社会の仕組みとか、ほとんど省みられていませんでした。だから私、職人さんや農民や漁師の話を聞いて、彼らの自然観や資源管理の思想を記録に残そうと燃えていました」

文:佐藤恵菜  写真:大畑陽子
全文は本誌(vol.20 2016年12月号)に掲載



巻頭特集では4つのまちにスポットをあて、それぞれのまちの「いいとこ、おもしろいとこ」といったエピソードから、活躍している人々、もしこの町に住むならこんな空き家・こんな暮らしといった情報を紹介しています。

兵庫県西脇市

兵庫県のほぼ中央部、東経135度と北緯35度が交差する「日本列島の中心・日本のへそ」に一する西脇市。世界のブランドが注目する「播州織」の産地として知られ、最近は繊維のまちゆえのファッション系作家も輩出。にっぽんのド真ん中のまちの魅力を探る!
nishiwaki

 

宮城県大崎市

宮城県北西部に位置する大崎市は、新幹線や高速道路が通っており、東北圏内、首都圏両方へのアクセスが抜群。美しい田園風景を望める日本有数の米どころだ。

oosaki

大分県中津市

大分県と福岡県の県境に位置する中津市は、都市部へのアクセスもよく、山々や温泉といった、豊かな自然にも恵まれている。ゆるやかな時の流れの中で暮らし、おもしろいことを始める移住者が急増中。
nakatsu

埼玉県ときがわ町

ときがわ町は、日本一都会に近い里山。そのため、里山のよさと、都会的な文化がほどよく融合し、訪れた人に「住んでみたいな」と思わせる魅力にあふれています。
tokigawa

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日本の多くは、”里山”らしい田園風景が広がる場所です。今回ご紹介した里山ぐらしはほんの一部ですが、少しでも日本の里山を知る上で参考にしていただければ幸いです。

                   

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