都心に最も近い大自然! 健康な自分を取り戻す「ヘルスツーリズム」とは?

【連載①】みなかみヘルスツーリズムプロジェクト

移住者を惹きつける、
バラエティに富んだ観光資源

東京駅から新幹線で約1時間。群馬県の最北端に位置するみなかみ町は、首都圏からこれほど近くにありながら、手つかずの自然が残る、“都心に最も近い大自然”と言われる場所。雄大な谷川岳や武尊山など日本を代表する山々に囲まれ、森林、高原、川、湖、渓谷と変化に富んだ大自然が広がっている。
また利根川の源流の町でもあり、首都圏の水の約8割をカバーする水源地として、首都圏の経済や生活を支える大切な役割を担っている。

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みなかみ町の魅力はそれだけにとどまらない。「みなかみ18湯」と称する18カ所にも及ぶ温泉地、ラフティング・トレッキング・スキーなど四季を通して楽しめるアウトドアスポーツ、清流で育まれた野菜や米、果物といった旬の食材と、心と身体をリフレッシュできる資源がとにかく豊富なのだ。
こうした環境に惹かれて、「観光やアウトドアを仕事にしたい」と都市部からの移住者が増加中。自然や食に加え、町の観光を支える個性豊かな人々も、この町の魅力と言えるだろう。

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自然の恩恵を受けるだけでなく、自然を守る活動も盛んで、2008年には、みなかみ・水・「環境力」宣言として、町の大切な自然を「まもる・いかす・ひろめる」取り組みをスタート。
そして今、それをさらに発展させて、人と自然の共生を目的とした「ユネスコエコパーク」の登録をめざし、活動を行っている。
「みなかみ町の大自然と人々の暮らしの共生するまちづくりが、“世界基準”として認められます。」
とみなかみ町役場総合戦略課・戦略推進室長の櫻井学さんは話す。

都会で働く人たちが、
心身をリリースできる場所へ

こうした恵まれた町の資源をもっと人々の健康に生かしたいーーそんな思いから、みなかみ町が今最も力を入れて取り組んでいるのが、心も身体も健康になれる「ヘルスツーリズム」プロジェクトだ。

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「都市部では働き過ぎでストレスを抱えたり、心身に支障をきたす人々が増えています。また高齢化の進展によって社会保障費が急激に増加し、国の方でも健康寿命を増進しようという動きがあります。こうした背景を踏まえ、“東京から約1時間の場所にあるこの町を、都会で働く人たちのオアシスにしていきたい”と、このプロジェクトがスタートしました。どこかにあるものを作るのではなく、ここにあるものを最大限に生かして、みなかみらしい『ヘルスツーリズム』を展開していきたいですね」(櫻井さん)

身体活動の基本であるウォーキングやトレッキングはもちろん、朝起きて自然の中でストレッチをする、地元の食を楽しむ、ゆっくり温泉に浸かる、心地よい睡眠をとる……。そんな町の環境を生かしたリラックス効果の高いアクティビティを自在に組み合わせて、みなかみ町ならではの「ヘルスツーリズム」プログラムを開発しているところだ。

このプログラムの開発には、町内だけでなく外部からも多くの人たちがサポーターとして参画。スポーツ医学や運動生理学を専門とする大学教授、健康に関する医学分野の著名な研究者、身体にやさしいメニューづくりに定評のある料理研究家やパティシエなど、あらゆる分野のプロがこの町に集まり、新たな試みに力を注いでいる。

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その開発の過程では、都市部で働く人たちに町でさまざまなアクティビティを体験をしてもらい、心身の変化について実際に計測も行う。実はこの「ヘルスツーリズム」は、実践を通じたエビデンスを取得・検証しながら、科学的根拠に基づいた健康維持・増進プログラムを開発するという、国内でも例を見ない先進的な取り組みなのだ。めざすのは、実践することで疲れた心と身体をリリースでき、健康な自分を取り戻せるようなプログラム。これが実現すれば、働きざかりの世代に向けた新たなツーリズムの形として、大きな注目を集めそうだ。

非日常を日常に生かすことで
健康な自分をキープする

健康管理というのは、言うまでもなく日常生活に密着したもの。たった一度の体験で継続的な効果を見出すことは、やはり難しい。そこをクリアするため、「ヘルスツーリズム」では、みなかみ町での非日常の体験で得た気づきや学びを日常生活に生かし、心と身体の健康が長く持続できることをめざしている。さらに、ゆくゆくは都市部の人たちに繰り返し来訪してもらえるような仕組みも視野に入れているそうだ。それは、「新幹線の駅があり、インターチェンジは2つ、JR上越線の駅は5つと、アクセスに便利な条件がそろったこの町だからこそできることです」と櫻井さんは言う。

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「みなかみ町での体験を通して日常生活から脱した非日常を感じることで、心と身体をリフレッシュし、明日からの仕事の糧にしてもらいたい。さらには、トレッキングで自然の中を歩く心地よさを体験したことで、都会に帰っても歩いてみようと思ったり、あの店で食べた料理がおいしかったので、家でも作ってみようと行動に移したり、今度は非日常を日常にどんどん生かしてほしい。もしすぐに日常で生かすことが難しいなら、月に何度か来てもらって感覚を磨いたり、そのうちこちらに住んでもらってもいいですしね(笑)。近いからこそ、長くお付き合いができる町でありたいですし、これから時間をかけて、そんな仕組みを実現していきたいと思っています」(櫻井さん)

“都心に最も近いヘルスツーリズムの地”をめざし、挑戦を続けるみなかみ町から、今後も目が離せない。

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