広域で活動する地域おこし協力隊の新しい形
地域おこし協力隊が地方の外部人材活用のための政策として普及し、14年が経つ。当初89名から始まった制度だったが、令和5年度には年間7200人が全国の地方で活動するまでに 拡大した。その中で、新潟県の地域おこし協力隊の受入人数は全国5位を誇る。
新潟県は「受入体制、日本一」を掲げている地域おこし協力隊の先進地だ。従来の地域おこし協力隊の制度は、基礎自治体である市町村が協力隊に委嘱をし、地域や受入先に配属されるのが一般的だった。
しかし、この方式では活動範囲が市町村区分に依拠してしまい、自治体の方針によっては、対応することができる地域課題に壁が出来てしまっていた。
これを「市町村」ではなく「県」が委嘱をすることで、活動範囲を「広域化」したのが「新潟県版地域おこし協力隊」だ。通称、「ニイガタコラボレーターズ」である。
令和4年度から始まったニイガタコラボレーターズは現在14名。令和6年度においても、募集が始まっており、地域おこし協力隊制度の新たな可能性として、期待が集まっている。
実際にニイガタコラボレーターズとして活躍する協力隊2名へのインタビューと共に、ニイガタコラボレーターズの魅力を伝えたい。
※ 現在のニイガタコラボレーターズの募集は記事の最後で紹介しています。
新潟をアウトドアの聖地にする
ニイガタコラボレーターズが取り組むミッションは個別に決められており、その内容は多種多様だ。難病支援へのICT導入を推進する協力隊、国際交流協会に所属して多文化共生社会を目指す協力隊、高校と地域を繋げて探究学習のコーディネートをする協力隊。
フリーミッションや地域密着型の地域おこし協力隊とは違い、明確な公共課題に対する専門人材としてアサインされる。
「アウトドアによる誘客拡大」をミッションに令和5年7月に着任した長島遼平さんは、 都内で英会話スクールの講師として働き、趣味としてキャンプを楽しむ普通の会社員だっ た。
長島 遼平さん
茨城県出身。英会話スクール講師、カウンセラーを経て新潟県長岡市に移住。新潟県版地域おこし協力隊の二期生として着任。趣味は焚き火・モルック・登山・スノーボード。アウトドアライフ専門店WEST長岡店に所属して新潟県のアウトドアの魅力発信、誘客拡大に取り組む。
「移住前に、気になっていたアーティストが新潟で開催したアウトドアイベントがあって、そこに参加したんです。その時、新潟のアウトドアシーンに可能性を感じました。そんな折、新潟県がアウトドアをフックにした誘客拡大を行うニイガタコラボレーターズを募集している案内を見つけて、思いきって応募したんです」
海外留学や英会話講師の経験は、訪日外国人へのPRに役立てることができる。そう考えた長島さんは新潟への移住を決めた。地域おこし協力隊の制度に馴染みはなかったが、週4日勤務で月額報酬26万6千円という勤務形態は、他地域にはあまりない条件だった。空いた時間で趣味のアウトドアも楽しめるライフスタイルにも惹かれた。
「着任後、まずは自分自身がアウトドアを語れるようにならなければと思い、新潟県内の様々なアウトドア施設を巡りました。実際にキャンプをして、その様子を動画にするところから始めて、県内のスキー場をすべてリストアップして英訳してまとめたり、にいがた百名山サイト(https://www.west-shop.co.jp/mt/)で、百名山の周辺にあるスポットをまとめたりしました。最初の1年は、とにかく情報収集・インプットが大事だと思っています」
新潟県内を見渡してみると、キャンプギアメーカーが集積していることが分かる。『スノーピーク』『ユニフレーム』『キャプテンスタッグ』『村の鍛冶屋』とキャンプ好きなら、誰もが知っているメーカーだ。新潟なら、キャンプフィールドとギア(用品)の両側面から訴求ができる。受入先の力を借りながら、長島さんは県内のキャンプ場を英語を交えて紹介する「にいがた旅キャン」という動画企画を打ち立てた。
「自分自身が演者となって、動画に出演して新潟のアウトドアを広めるキャラクターになろうと考えたんです。得意な英語を活かせば、海外の人にも訴求ができる。新潟のアウトドアといえば「ナガシー」と言われるようになろう。それが活動の軸になりました」
長島さんが出演する動画は、既に21本(2024年8月現在)に達し、順調に再生数を増やしているという。自分自身が好きな「焚き火」を囲むイベントも開催して、オンラインとオフラインの両方で新潟のアウトドアのファンづくりをしている。ゆらめく炎を眺めながら、ニイガタコラボレーターズの魅力を語った。
https://www.youtube.com/@westtv3007/videos
「この制度は新潟の様々な地域課題がミッションに設定されています。まだ解決されていない課題に取り組むということは『その道の開拓者になれる仕事』ができるということ。私の場合はアウトドアでしたが、他のニイガタコラボレーターズも、それぞれのミッションを自分なりの方法で取り組み、開拓をしています。その分野の専門家になれるのが、この仕事の大きな魅力だと思います」
雪国リトリートが新しい観光の鍵になる
ニイガタコラボレーターズは中途採用の人材だけが着任している訳ではない。
大学を卒業後、新卒でニイガタコラボレーターズに着任した地域おこし協力隊もいる。立教大学観光学部を卒業し、大学時代に学んだことを活かせるのではと「新潟の新しい旅のスタイル「雪国リトリート」のブランディング」をミッションに選んだのは石井佳穂さんだ。
石井佳穂さん
東京都武蔵野市出身。立教大学観光学部交流文化学科卒業。大学時代は観光学を専攻。大学卒業後、新潟県湯沢町に移住。観光という非日常を生かし、普段しないことをして、学びを得たり、自分を見つめ直すという観光のあり方に興味を持ち、令和5年11月に新潟県地域おこし協力隊に着任。
「学生時代、これからの観光に必要なものは何か、考えていました。普段とは違う場所、空間で自分のことを省みる。そんな体験をつくるような仕事がしたいと思っていた時に、新潟県が推し進めている『雪国リトリート』に出会い、まさに私が携わりたい新しい観光の形だと思ったんです」
雪国リトリート※は令和3年度から、新潟県魚沼市、南魚沼市、湯沢町、十日町市、津南町、群馬県みなかみ町、長野県栄村の3県7市町村で展開されている新しい観光体験だ。雪国ならではの自然、文化、暮らし、体験。非日常空間で自分自身と向き合う時間をつくるプログラムとして観光商品の開発が進められている。
コーチングスキルを持つガイドと共に非日常な空間で過ごす「時間」に重きを置く雪国リトリートを広げ、ブランディングしていくことが石井さんのミッションになった。
宿泊事業者とアクティビティ提供事業者の参画を促し、雪国リトリートプランを造成していくこと。新しい旅の体験を0から作っていく仕事はやり甲斐もあるが、難しさもあった。
その中でも「リトリートガイド」が重要な要素で、雪国リトリートとして伝えたい新潟の地域資源を学び、伝えることができる人材を育成していかなければならない。石井さんは、地域で一つのブランドをつくっていくための調整から実際の企画立案まで幅広く取り組んでいる。
※リトリートは、日常生活から離れて自分と向き合い、心と身体をリラックスさせるために、ゆったりとした時間を過ごす“新しい旅”のスタイル。
「最初は雪国リトリートを運営する組織の中で事務スタッフのような形で働きました。社会経験のない私は、実際に雪国リトリートを体験して、受入先の方々に仕事のやり方を一から教えてもらいながら、ミッションに取り組んでいます」
ニイガタコラボレーターズには、ミッションに関連した受入団体が世話役としてサポートしてくれる仕組みがある。受入団体は民間企業や地域振興局のような県の関連機関など様々だ。地域おこし協力隊が孤立し、ミッションの目的を見失わないように定期的なメンタリングや研修会も実施されている。
令和5年11月の着任から約10ヶ月が経った石井さんは、既に雪国リトリートを広げていく上で欠かせない存在となった。これまで15名だったリトリートガイドは、令和6年度に24名増加した39名になる見込みで、石井さん自身もガイド研修を終えて、事業者を支援するだけではなく、自ら学生向けの体験プランの造成を進めているという。
「雪国リトリートという新しい旅の形を広げて、観光振興に繋げていくという、私にとっては難しいミッションでしたが、時間をかけて取り組んでいくうちに全体像が分かってきました。ニイガタコラボレーターズの立場は、行政でも事務局でも事業者でもない。ミッションのための個人の専門人材ということもあって、これまで表に出てこなかった関係者の本音を聞けたり、立場や領域を飛び越えて繋げて、それぞれの方と同じ目線を持って話せたりするのが良いですね」
様々なステークホルダーとの関係性の中で硬直気味のプロジェクトであっても、ニイガタコラボレーターズが起爆剤となって、物事が進んでいく。地域で物事を進める推進力として期待されているのだ。
「まだ着任して10ヶ月ですが、ニイガタコラボレーターズになって良かったと思っています。東京にいた時は、何者かにならなければいけないという焦燥感がありました。今は、1人の石井佳穂として自然体で働くことができていて、色んなチャレンジができる。都心での窮屈さを感じていて、環境を変えて、全く未知の仕事をしたいという人にお勧めしたい仕事です」
石井さんは雪国リトリートをどうやって地域に引き継ぎ、持続的なものにしていくかを日々考えているという。週4日勤務という形態だからこそ、プライベートな時間も多く持てること、新潟の暮らしを楽しめること、そうした時間が結果的に仕事の成果に繋がること。「まちづくり」という領域で仕事をするニイガタコラボレーターズにとっては、新潟での暮らしの全てが糧となり、見える景色も変わっていくのだ。
その道の開拓者になれる仕事
ニイガタコラボレーターズでは、毎年、様々なミッションが用意されている。これまでの経歴や実績を活かせるものもあれば、全く未知の領域をゼロから作っていくものもある。長島さんが話した「その道の開拓者になれる仕事」、石井さんが話した「環境を変えて、未知の仕事ができる」ということ。それらがニイガタコラボレーターズに共通する特性なのである。
地方へ移住したい。まちづくりがしたい。これまでの経験を社会のために活かしたい。そうした想いを持っている方は、新潟県全域をフィールドに、託された「ミッション」を背負って活動する「ニイガタコラボレーターズ」として、働いてみてはどうだろうか。
まだ誰も踏み込めていない、地域課題を解決する人材。新たな道を開拓して、その道のオンリーワンのプロフェッショナルなることができる。それがニイガタコラボレーターズの魅力だ。
\県内200人超の隊員同士の交流を生み出す、コミュニティマネージャーを募集中!/
募集概要・応募フォームはこちら↓
https://www.iju-join.jp/cgi-bin/recruit.php/9/detail/61294
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都道府県+市町村 新潟県 募集状況 募集中 勤務地 新潟県知事政策局地域政策課(新潟県新潟市中央区新光町4-1新潟県庁内)
※ホームページアドレス:https://www.pref.niigata.lg.jp/site/chiikiseisaku/募集職種 ローカルコミュニティマネージャー
雇用形態 (1)身分
地域おこし協力隊として、新潟県知事が委嘱します。
県と委託契約を締結します。(新潟県との雇用関係はありません)
(2)委嘱期間
委嘱の日から会計年度を超えない範囲で12か月以内としますが、最長3年まで延長することを予定しています。
ただし、職務怠慢等、隊員として相応しくないと判断された場合は、委嘱期間中であっても委嘱を打ち切る場合もあります。給与 報償費:266,000円/月
活動経費:1,440,000円(年額)(120,000円×12月)
※委嘱日が年度途中となる場合は、日割り計算
活動経費等には、住居費、活動車両借上料、活動車両燃料費、消耗品、研修受講に係る旅費等を含むものとします。
詳細は、参考URLから県ホームページをご覧ください。
参考URL:https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/chiikiseisaku/r6-niigata-collaborato.html福利厚生 ・活動の支障とならない範囲で兼業することができます。
・協力隊として活動する上で必要な心構え等や、県内で活動する市町村の地域おこし協力隊との関係構築等に関する研修会を実施します。
・地域おこし協力隊の知見を有する者等が外部メンターとして活動をサポートする予定です。仕事内容 県全体の地域おこし協力隊の拡充を目的として、隊員の円滑な活動や定住に向けた準備の促進、当県で活動する魅力の発信を図るため、バーチャルプレイス「ovice(オヴィス)」の活用等により、県内の隊員、定住した元隊員、本県協力隊希望者が交流・相談ができる体制の構築等を任務として活動します。
(1)ovice及びオフラインによる交流イベントの企画・実施
(2)イベント以外で交流や相談ができる体制の検討・構築
(3)ovice内における隊員からの相談の聴き取り(相談への対応方法は受入団体と協議)
(4)oviceを活用した県内協力隊の魅力等の効果的な情報発信の企画・実施
(5)ウェブサービス「Note」による活動状況の発信
勤務時間 ・業務委託のため、県から示された業務を推進できるよう、受入団体と調整の上、ご自身で管理していただきます。
・週4日、1日当たり7時間を想定しています。
・国民の祝日に関する法律に規定する休日及び、12月29日から翌年1月3日までの期間は原則休日とします。
※ただし、活動内容により時間外や休日での活動が生じた場合は、他の活動日の振り替えにより調整していただきます。応募資格 (1)年齢、性別は問いません。
(2)以下の県外の転出地から転入地に生活の拠点を移し住民票を異動させる必要があります。なお、既に転入地へ住民票を異動されている方は対象となりません。
<転出地>
ア 3大都市圏内の市区町村(政令指定都市除く)の、条件不利区域以外の区域
イ 政令指定都市の条件不利区域以外の区域
※3大都市圏
埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、三重県、京都府、大阪府、兵庫県及び奈良県の区域の全部。
※条件不利区域
次の①から⑦のいずれかで公示・指定・規定される市町村。
①過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法、②山村振興法、③離島振興法、④半島振興法、⑤奄美群島振興開発特別措置法、⑥小笠原諸島振興開発特別措置法、⑦沖縄振興特別措置法
<転入地>
新潟市
(3)活動の開始時期
令和6年12月中旬以降を目途に活動を開始できる方。
※可能な限り早期の着任を希望します。
(4)次のア~ウのいずれにも該当しない方
ア 暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない方
イ 暴力団又は暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有する方
ウ その他暴力団事務所に出入りするなどア、イのいずれかに準ずる方
(5)次の要件をすべて満たす方
ア 地方公務員法第 16 条に規定する欠格事項に該当しない方
イ 心身がともに健康で、かつ、誠実に職務を遂行できる方
(6)次の技術要件をすべて満たす方
ア 普通自動車免許を取得しており、日常的な運転に支障のない方
イ パソコンの一般的な操作(ワード・エクセル・パワーポイント、電子メール・SNS等)ができる方
(7)歓迎する人物像
ア 任務に意欲的で、新しい環境に柔軟に対応できる方
イ 関係団体や地域住民など多様な主体とコミュニケーションを図れる方
ウ 自ら率先し、各所と調整しながら柔軟に行動し、企画等を完遂できる方
エ SNSやデジタルツールの操作に慣れている方
オ 同じ目標に向かって、チームとして行動できる方募集期間 2024年08月27日~2024年12月2日(17:00まで) 選考プロセス 【カジュアル面談、実施中!】
今後の転職や移住を考える中で、ニイガタコラボレーターズに関心のある方向けに制度やミッションの説明や質疑応答を行うカジュアル面談を実施しています。採用エントリー前の下準備として、ご活用ください。
採用問い合わせ先 新潟県知事政策局地域政策課 品田、諸橋
〒950-8570 新潟県新潟市中央区新光町4番地1
TEL: 025-280-5095
FAX: 025-280-5227備考・その他 1 提出書類及び提出方法
(1)応募用紙(履歴書及び職務経歴書)
応募用紙は、関連ファイルからダウンロードしてください。
PDF形式にて、応募フォームから提出してください。
(2)誓約書
誓約書は、関連ファイルからダウンロードしてください。
PDF形式にて、応募フォームから提出してください。
(3)住民票(抄本)の写し(発行から3ヵ月以内のもの)
PDF形式にて、応募フォームから提出してください。
(4)運転免許証の写し(両面)
PDF形式にて、応募フォームから提出してください。
【応募フォームURL】
https://apply.e-tumo.jp/pref-niigata-u/offer/offerList_detail?tempSeq=13923
2 選考方法
(1)第一次選考(書類選考)
ア 提出書類をもとに、書類審査を行います。
イ 選考結果については、応募から1週間以内に、応募用紙記載のメールアドレスあてに通知します。合格者には併せて第二次選考の日時等の詳細をお知らせします。
(2)第二次選考(面接)
ア 第一次選考合格者を対象に、意欲、コミュニケーション能力、行動力等について面接審査をオンライン(Zoom)で行います。
イ 選考結果については、面接から1週間以内に、応募用紙記載のメールアドレスあてに通知します。
(3)留意事項
ア 応募に係る経費(書類輸送費、交通費等)はすべて応募者の負担となります。
イ 選考経過及び結果について問い合わせには応じられませんので、予めご了承ください。