神奈川県西部に位置する「西湘・足柄(せいしょう・あしがら)エリア」。東京へのアクセスの良さと豊かな自然に恵まれた地域は親子で楽しめる公園や子育て支援施設が充実しており、都会で働きながら、のびのびとした環境で子育てをしたいという理想を実現できる場所。
神奈川県ではそんな西湘・足柄エリアの暮らしを伝える移住検討者向けのツアー「子育てスポットを巡る1泊2日のたび~おやこで移住体験ツアー~」を企画。第1弾に引き続き1月24日~26日にかけて開催された第2弾では、湯河原町、小田原市、箱根町、真鶴町の4市町を訪れました。子育て支援施設の見学、先輩移住者との交流、地域の豊かな食文化体験など、この土地での暮らしを深く知ることができる多彩なプログラム。TURNSが、濃密な3日間をレポートします。
1日目 湯河原町・小田原市を巡る
多世代交流の拠点「駅前の居場所」
午前10時、小田原駅に集合した6組16名のご家族を乗せてバスツアーがスタート。
最初に到着したのは湯河原町の「駅前の居場所」。子どもの居場所づくりを中心に、地域内外の人々がつながる場として、湯河原らしい子育て環境の魅力を発信。 町に関心を持つ人々や移住希望者のマッチングの場としても機能し、行政・民間団体・住民・企業が協力しながら、安全・安心な居場所づくりを進めています。
一般社団法人ユガラボを運営する中嶋拓未さんも移住者。施設の説明とともに、湯河原町の特徴や魅力もご紹介もしていただきました。
駅前の居場所を運営する中嶋さん。
「湯河原町は温泉地としての魅力に加え、海と山が近く農産物も豊富で、特に柑橘類の生産が盛んです。町の規模がコンパクトなため、住民同士のつながりも強く、顔の見える関係が築きやすいのも魅力のひとつ。アクセス面では、東海道線で東京まで直通で行けるため、都市との距離感を考慮しつつ、地域に根差した暮らしを実現しやすい環境が整っています。地域に密着したライフスタイルに価値を感じる20代・30代の世代の方々の移住を支援したいですね」
移住を考える際に重要なのは「人とのつながり」と中嶋さんは語ります。湯河原町には地域で暮らす楽しさを体験できる環境が整っており、「駅前の居場所」はその一歩を踏み出すための場所。移住に興味がある方は、ぜひ足を運んでみてください。
子どもも大人も楽しめる、「ピザカフェ&BAR もりのたね」
次に向かったのは「ピザカフェ&BAR もりのたね」。ここで昼食をいただきます。
湯河原町に移住したご夫婦が営むこちらのお店は、「子どもを安心して連れて行ける店」がコンセプト。
「子育て世帯も気軽に外食を楽しめる場所を作りたかった」と語るオーナーの言葉には、移住者だからこそ生まれた、地域への温かいまなざしが感じられました。
もりのたね店主の諸橋良安己さん・さゆりさんご夫妻。
ご飯を食べ終わった後は、2階のキッズスペースへ。食べ終わった後も子供が楽しめる工夫が施されています。
お腹がいっぱいになった後はみかん狩りへ!
美味しいピザを堪能した後は、湯河原町名物のみかん狩りへ。湯河原町は温暖な気候を活かしたみかんの産地で、道端の木々にもみかんが実るほど。中嶋さんのご案内のもと、かつてみかん農家だった方の畑へ。参加者は思い思いにみかんを探し、収穫のひとときを楽しみました。
日本の歴史公園100選にも選ばれた「万葉公園」へ
みかん狩りのあとは、日本の歴史公園100選にも選ばれ、2021年にリニューアルされたばかりの「万葉公園」へ移動。目の前に広がる壮大な自然のなか、川のせせらぎが心地よく響き、思わず深呼吸したくなるような場所です。
公園内には無料のコワーキングスペースや軽食が楽しめる施設もあり、参加者からは「ここで仕事できちゃうね!」と感嘆の声が。都市部とは一味違う時間を過ごす時間を過ごすことができます。
自然豊かで開放感あふれる「上府中公園」でフリータイム。
湯河原町を出発し、次の目的地・小田原市へ。「上府中公園」は噴水や遊具、広々とした芝生があり、家族連れやグループでのんびり過ごせる場所です。小さいテントを持ち込んで1日ゆったり楽しむ人、夏場には噴水で遊ぶ子供たちもいるとのこと。公園では、地元農家による新鮮野菜の販売など、地域交流イベントが開かれ、移住者と地元住民が交流できる場としても賑わっています。
「かもすた(Kamonomiya Start Place)」にて夕食、懇親会
移住ツアーの最後に訪れたのは、小田原市鴨宮にある「かもすた(Kamonomiya Start Place)」。
「何かを始めたい人を後押しする場」をコンセプトに、移住者である石塚さんと中津川さんが運営しているコミュニティスペースで、日々さまざまなイベントや活動が行われてます。
施設を運営している中津川毬江さん、(写真:左)石塚栄樹さん(写真:右)。
石塚さん「中津川と一緒に建築士として活動をしながら、『かもすた』を運営しています。何かを始めたいと思いここを訪れた人が、新しいことにチャレンジできるような環境や街を楽しむイベントを創り出していけたらと思っています」
中津川さん「私は一度地元を離れ、3年ほど前に小田原へ戻ってきました。『かもすた』を通じて、鴨宮を楽しい街にするため、面白いことができたら嬉しいです」
『かもすた』は、普段レンタルスペースとしても活用され、シェアキッチンとしての機能も持っています。この日の夕食は、『かもすた』にて定期的にランチカフェを運営している「ひとさじ」さんによる地元の野菜をふんだんに使ったお弁当を頂きました。
『かもすた』のお二人や県庁・市役所の職員の方々もご参加頂き、自然と会話が弾む食事の時間は「暮らしのリアル」を感じられる貴重な機会となりました。
2日目 小田原市・箱根町を巡る
朝9時にホテルを出発した一行は、西湘足柄移住コンシェルジュのコアゼ ユウスケさんの案内のもと、小田原市内の散策をしました。
最初の目的地は、小田原駅直結の商業施設「ミナカ小田原」6階にある小田原駅東口図書館。
コアゼさん「小田原市だけでなく、近隣の市や町の人も本を借りることができるんですよ。小田原周辺に移住しても、この図書館は日常的に利用しやすいと思います」
コアゼさん「この商店街には100年近い歴史を持つ老舗が多くあります。一方で、ファストフードやカフェなどの有名チェーン店も充実しています。移住すれば、馴染みのお店を見つけて通う楽しみもあるし、気軽にチェーン店で一人ご飯をすることもできますよ」
次は「かまぼこ通り」へ。
「この通りには、かまぼこ専門店が軒を連ねています。小田原の人はみんな、お気に入りのかまぼこ屋さんがあるんです。冬になると、おでんの具材も売られるので、地元の人たちはよく買いに来ます」
御幸の浜で自由時間。〝海の近くの暮らし〟を体験
かまぼこ通りを抜け、しばらく歩くと視界が一気に開け、目の前には 御幸の浜の青い海が広がりました。子どもたちは海岸で貝殻を拾ったり、波を眺めたりと、それぞれの楽しみ方を見つけていきます。
自由時間の後は、海のすぐ近くにあるカフェ「ケントスコーヒー」へ。オーナーの 平井さんは、喫茶店のオーナーとしてだけでなく、「小田原の歴史や魅力」を伝える案内人としても活動しています。
平井さん「小田原の海では、約1600種類もの魚が釣れるんです。だから、移住すれば新鮮な魚を楽しめますよ。昔の小田原は、城下町だった影響もあり、商売人が多くてちょっと高飛車な気質があったんです。でも、今はすごくウェルカムな雰囲気に変わりました。」と語ります。
たくさん歩いたあとのランチは、「小田原名物鈴廣かまぼこの里」にあるビュッフェレストラン「えれんなごっそ」へ。相模湾で獲れた新鮮な魚介や小田原市・箱根町の地元野菜をふんだんに使った料理が楽しめるレストランで、好きなものを好きなだけ味わえるのが魅力です。
ランチの後は、箱根町「仙石原幼児学園」を訪問
ランチを終えた一行は、小田原市を離れて自然豊かな箱根町へ。最初に訪れたのは、「仙石原幼児学園」。ここは、子どもたちがのびのびと過ごせる環境が整った認定こども園で、隣接する小学校と連携しながら、地域ぐるみで子どもを育てる取り組みを行っています。 園長の小山さんから、園の特色や子育て環境についてお話を伺いました。
小山園長「箱根は観光地としてのイメージが強いかもしれませんが、観光業で働く親御さんも多いため、保育に柔軟性が求められ、子育て支援が充実しているんですよ。祝日や日曜でも子どもを預けられるようにしたりと、親御さんが安心して働ける環境を整えています」
都会ではできない、「落ち葉のふれあい体験」「ハコママさんとの交流」
見学を終えた一行は、(一財)自然公園財団箱根支部での「落ち葉のふれあい体験」へ。今回の体験を企画してくれたのは、「自然を楽しもう!」をコンセプトに箱根から自然情報を発信し、活動しているスタッフの築紫さん。
「遊ぶためには、大人が遊び場に連れて行かなければいけない場合が多いと思います。なので、大人が「楽しい!」と思っていただくことが大切だと思います。今日は、ぜひお子さんと一緒に、全力で遊んでみてください!」
スタッフが室内に大量の落ち葉を広げると、子どもたちはもちろん、大人たちも思わず笑顔に。五感をフルに使いながら、自然とふれあう楽しさを体いっぱいで感じる時間となりました。
思いっきり遊んだ後は、箱根町の親子向けコミュニティ「hacomama」(ハコママ) さんから実際に移住されたお話を伺う時間です。
ハコママを運営する金子さん(写真:左)、青山さん(写真:真ん中)、松坂さん(写真:右)。
休日の過ごし方や生活の利便性、物価の違い、子どもの習い事など、住んでみないとわからないリアルな質問が飛び交い、移住を検討する参加者にとって貴重な学びの機会となりました。
移住の先輩たちと語らうひととき
1日の締めくくりには、箱根町の食事処にて、地元の食材をふんだんに使った料理を楽しみながら交流会を行いました。先輩移住者ご家族をお迎えし、移住のリアルな体験談を聞きながらの夕食会となりました。実際に住んでみないとわからないくらしのあれこれについて、実体験を交えながら話してくださいました。
3日目 真鶴町を巡る
まちのくらしに包まれる、真鶴なぶら市
真鶴町で開催される「真鶴なぶら市」。真鶴なぶら市は、毎月末の日曜日の朝に開かれるローカルマーケットで、新鮮な野菜や果物、海産物、おもちゃ、雑貨、手作りの食品など、多彩な商品が並ぶ、真鶴ならではのイベントです。 野菜や果物を手に取りながら生産者と話す人、新鮮な魚を前にどれを買おうか迷う人、市場全体が和やかな雰囲気に包まれています。
観光地のマーケットとはひと味違い、地元の人たちが普段の暮らしの延長で買い物を楽しむ市場は、真鶴町のリアルな暮らしの一端を体験できる朝でした。
「ぺぺコーヒー」でひと休み。真鶴を想うバリスタのこだわり
市場のあとに訪れた「ぺぺコーヒー」。店主の松木一平さんは、都心で修行したあと、小田原でカフェを開業した真鶴町出身の Uターン移住者。「真鶴で新しいことをしたいひとを応援したいしその架け橋になりたい」とお話ししてくださいました。
港喫茶ペペコーヒー店主の松木一平さん。
ぺぺコーヒーは、かつて割烹料理店だったお店。この日いただいたのは、香り高いコーヒーと、店の名物である ほっとみかん。こだわりのコーヒーは深みのある香りと味わいが特徴的で、心安らぐひとときを過ごしました。
「真鶴未来塾」で地域に根ざした子育て環境を知る
次に訪れたのは「真鶴未来塾」。地域の子どもや大人たちも楽しめるイベントやコミュニティ活動を運営している団体です。運営を担う移住者・玉田麻里さん、西村梨沙さんからお話を伺いました。
真鶴未来塾を運営する西村さん、(写真:左)玉田さん(写真:右)
玉田さん「未来塾は地域の子どもたちが安心して過ごせる場を提供するだけでなく、大人たちが地域や地域の環境について考えることができるきっかけもつくっています」
コロナが大流行したタイミングに都市部からの移住者が増えたが、全体的な数では少ない子どもたち。「ここでは子どもが少ない分、年齢関係なくみんなで遊びながら育っていきます」と西村さん。
未来塾では 、子ども食堂を運営するチームと連携し、月に一度、町民センターやコミュニティ真鶴で、みんなでつくった食事を一緒に楽しむ機会を設けています。
食事の後に来ていただいたのは 「特定非営利活動法人ディスカバーブルー」 の皆さん。真鶴の海と自然をフィールドにした環境教育を行う団体で、クイズを交えながら、子どもたちにもわかりやすく、楽しく活動を紹介して頂きました。
特定非営利活動法人 ディスカバーブルーのスタッフ、寺西さん。
お話の後は、実際に海の生き物を触れる時間。触れたことのないヒトデを手に取り、「思ったより怖くない!」「かわいい!」と笑顔を見せる子どもたち。
一方では顕微鏡をのぞき込み、プランクトンの世界に夢中になる子どもも。好奇心や興味を育てるワクワクする体験が、日常のそばにあります。それが、真鶴の大きな魅力です。
真鶴の自然の豊かさに触れ、ツアーは終了。
各々が次のステップへ。
海の生き物たちと存分に触れ合い、真鶴の自然の豊かさを体感した後、一行はツアーの最後の「振り返りの時間」へ。
参加者それぞれが、この移住体験ツアーを通じて感じたこと、考えたことをお話しいただきました。
大田さんご家族 「今住んでいる地区は小学校が1学年で多いところで10クラスあるんです。十分な指導やサポートが受けられるのか、教育的な面も含めて移住を考えていたところ、このツアーを知って参加しました。子どもが小学生になるまで時間があるので十分に比較、検討をしたいです。こういった機会あればまた是非参加したいですね」
坂下さんご家族 「海が好きで、海沿いのまちに移住して子育てしたいと思い、参加しました。ゆくゆくは個人で開業をしたいと考えているので、そういった確認も含めて、このツアーに参加しました。どこでもそうですが、移住することで子どもの教育としては良い面、悪い面どちらもあると思っています。その辺を見極めながら、検討していきたいと思っています」
名倉さんご家族 「最近、戸建ての住まいを建てたいと思うようになり、良い場所が見つかるかもと思い参加しました。ツアーで実際に住むイメージを明確にすることができて良かったですし、その土地の魅力を実体験と一緒に提供してもらえる点が説得力があると感じました。通勤時間を加味して小田原が気になりましたので、小田原近辺の物件を確認したいと思いました」
ツアーを終え、理想とする移住に向けて、次のアクションを語ってくれた参加者の皆さん。
自然の魅力やリアルな暮らしぶりに触れた今回のツアーは、移住に向けての大きな一歩となったようです。
西湘・足柄エリアへの移住をお考えの方へ
本記事を通じて、西湘・足柄エリアでの暮らしに興味を持たれた方は、「西湘足柄移住コンシェルジュ」までお気軽にお問い合わせください。それぞれの地域の特色や、移住・子育て支援制度について、詳しい情報を得ることができます。
また、今回訪れた市町以外にも西湘・足柄エリアには魅力的な地域がたくさんあります。是非実際に足を運んで、ご自身にぴったりの暮らしの舞台を見つけてください。
西湘足柄移住コンシェルジュ
https://www.pref.kanagawa.jp/osirase/0602/seishoashigara-ijyu/
写真・内田麻美