2023年1月21日(土)、千葉県唯一の村である「長生村」で子育て世代に向けた移住交流体験ツアーが開催されました。教育施設や家族で遊べるスポットを巡るほか、農業体験、そば打ち体験、先輩移住者との交流会といった楽しいイベントも実施。長生村での移住生活を身近に感じられる盛りだくさんの内容となった『千葉県長生村移住交流体験ツアー』。その様子をたっぷりとご紹介します。
長生村ってどんなところ?
房総半島の九十九里浜に面した長生村は、東京から約60km、県庁所在地である千葉市から約30kmの距離にあります。千葉駅までは普通電車で約45分、東京駅まではJR外房線の茂原駅から特急電車に乗れば約1時間というアクセスのよさも魅力。村内にはスーパーやホームセンターなどの商業施設が揃っているので、買い物に困ることなく不自由のない生活が送れます。
気候は、太平洋の黒潮による影響を受けて年間を通して温暖。稲作や野菜・果樹栽培、酪農のほか、九十九里浜での沿岸漁業を中心に発展してきましたが、1982年に西部地区に工業団地が開設されて以来、工業生産の分野でも成長が見られるようになりました。
九十九里浜に面した千葉県唯一の村は「長くいきいき暮らせる村」
午前8時15分、東京駅に集合した参加者5組18名のご家族を乗せて、バスツアーがスタート。最初に向かったのは「長生村交流センター」。2021年6月にJR八積駅近くに完成した村の中心拠点で、地域住民が生涯学習の場や交流の場として利用したり、村外からの来訪者や新たな居住者を呼び込むことを目的に建設されました。
多くの人が集い、世代間交流や生涯学習を行う場となることから「寺子屋」をイメージしたという建物。九十九里浜沿いにある村の立地から、屋根は波をイメージした湾曲形状となっています。
1階のラウンジコーナーには、長生村の観光案内の展示があります。ここで、長生村の小髙陽一村長から村についてのレクチャーを受けました。
「長生村は真っ平らな地形が特長です。畑や田んぼがつくりやすいので、『長生トマト』や『長生ネギ』、『ながいきそば』といった独自ブランドの農作物が名産品となっています。アイガモ農法によるコシヒカリもおいしいですよ。坂が少ないので歩きやすいですし、自転車でも村を一周できます。九十九里の海など自然も豊か。健康に暮らせるので、私も70歳になりますが、とっても元気です。長生村は、長くいきいきと暮らせる村なんです」(小髙村長)
センター1階のラウンジコーナーにて、小髙村長からレクチャーを受ける参加者。
小髙村長。
レクチャーのあとは、多世代の交流を育むフリースペース「ふれあいルーム」、乳幼児と保護者が遊ぶことができる「子育てルーム」を見学。参加者からは「広い!」「ここなら子どもたちも安心して遊べそう」と声が挙がっていました。
誰でも立ち寄れる「ふれあいルーム」。約100㎡もの広さがあり、ゆったりと過ごせます。
2階には、パソコンも使える「学習室」、音楽活動を楽しめる「防音室」などもあります。長生村では、主な公的施設の多くでWi-Fiを完備。外出先でもスムーズにインターネットを利用できます。「自然環境がいいのにネット環境も意外といい」と驚く参加者も多く見られました。
授乳室、おむつ替えスペース、ミルク調乳用の給湯室などを備えた「子育てルーム」。村民は無料で利用可能。英会話で遊ぶイベントなども開催しています。
【長生村交流センター】
住所:千葉県長生郡長生村岩沼874-1
アクセス:JR八積駅より徒歩約4分
電話:0475-32-3770
HP:https://chosei-koryu.com/
農業を通じて自然と触れ合う
村の概要がわかったところで、さっそく農業体験へ。長生村ではトマト、タマネギ、米、サツマイモ、イチゴなどさまざまな 作物が栽培されており、なかでも特に人気なのがブランドネギの「長生ネギ」。実は千葉県は、長ネギの生産量全国1位!
堆肥を十分に施した畑で収穫される長生ネギは、粘土質の土壌の地中深くまで根を伸ばして栄養を吸収するため、肉厚でジューシー。火を通すとトロトロに甘くなります。
参加者一行が長生ネギの収穫体験に訪れたのは、有本さんの畑。有本さんは和歌山県出身で埼玉県で暮らした後、長生村に移住してきてネギ農家となりました。長生村では多様な農作物をつくれることから、新規就農のために移住してくる人も増えているそうです。
「地元の農家の方々もとてもオープンで、快く受け入れてくださいました。おかげでこんなにいいネギがつくれるようになりました」(有本さん)
一面に広がるネギ畑。参加した家族は夢中になってネギの収穫に取り組みました。
大きく太く育ったネギと向かい合った子どもたちは最初はおっかなびっくり。でも、すぐに大胆にむんずとネギをつかんで全力で引き抜くようになりました。収穫したネギは自宅まで郵送されることに。どんな料理になるのか、帰宅してからのお楽しみです。
平らな地形で視界を遮るものも少なく、畑の頭上には大きな空が広がります。土を触ったあとは腰を伸ばして深呼吸。田畑を通り抜ける風には、冬の冷たさとともに心地よさも感じることができました。
ネギ農家の有本さん。「新規就農をサポートする制度や仕組みがあるので、農業に挑戦しやすかったです」。
お昼ご飯は手打ちそばと村の名産品
畑で奮闘した後は、「BUB RESORT Chosei Village」へ。ここは、廃校の敷地をリノベーションしたグランピング施設。約4万㎡の敷地には冷暖房・ベッドが完備されたテントやコテージが点在し、バーベキューなどの各種アクティビティを楽しむことができます。
ここでは、そば打ちを体験。長生村では休耕地を活用し、そばを栽培しています。村で採れたそばは「ながいきそば」としてブランド化。農薬不使用栽培と自然交配に近い受粉ができるみつ蜂交配によって、そば本来の味わいを高めているそうです。
初めてのそば打ちに参加者はみんな興味津々。子どもも大人もみんな一生懸命に取り組みました。
そば粉をいちからこねて延ばす、という手打ちの工程は皆さん初めてのようで、「もっと水いるの?」「なんでぼろぼろになっちゃうの?」と大騒ぎ。施設のスタッフと一緒になって、なんとかそばの形にしていきました。
完成した打ち立てのそばは、その場で茹でて昼食に。ほかにも飯盒で炊いたアイガモ農法のコシヒカリご飯を長生村名産の青海苔で包んだおむすび、さきほど畑で収穫したばかりのネギの炒め物など地元で採れたものをいただいて、味覚でも村を味わうことができました。
地元産の食材でつくったお昼ご飯。自分たちでつくったおそばの味は格別だったことでしょう。
【BUB RESORT Chosei Village】
住所:千葉県長生郡長生村金田2811
アクセス:東金有料道路「茂原北IC」、アクアライン「茂原長南IC」より約20分
電話:0475-36-7770
HP:https://bub-resort.com/
海、公園、広いこども園。遊ぶ場所はいっぱい
食後は村の東端にある一松海岸へ。九十九里浜の中でも遠浅の整備された海水浴場です。サーフィンなどのマリンスポーツも楽しめます。夏季にはライフセーバーが常駐。海の家も設けられます。
雄大な太平洋に面した一松海岸。地元ではお正月の初日の出の名所としても親しまれています。
続いて、「高根こども園」を見学。ここは、村内に3つある村立こども園のひとつで、1991年に開設されました。定員120名で生後6か月からのお子さんを預かり、3歳~就学前までなら、就労等の条件に限らずすべてのお子さんが入園できます。
「こども園の隣にある高根小学校と連携して英語教育を行ったり、地域ぐるみで子どもたちを育てていこうという姿勢があります」(園長の御須先生)
そのほか、長生村独自の子育て支援としては、妊産婦へのタクシー助成や高校生までの子どもの医療費の助成などが挙げられます。豊かな自然の中に広がる園庭の中で思わず駆け出す子どもたち。おおらかな気持ちで育児に取り組めそうな環境でした。
園舎は平屋の鉄筋コンクリート造。保育園の広い敷地内には駐車場があり、送迎もスムーズ。
園長の御須先生(写真中央)から説明を受け、その後はそれぞれ自由にこども園を見学しました。
【高根こども園】
住所:千葉県長生村本郷6937
電話:0475-32-2109
HP:https://www.vill.chosei.chiba.jp/0000000125.html
広い園庭を見て「遊びたい!」という気持ちがふくらんだ子どもたちのために。次に立ち寄ったのは、「尼ヶ台総合公園」。東京ドーム2個分ほどの広大な敷地には、野球場や運動広場、テニスコート、冒険子ども広場などがあります。週末ということもあり、駐車場は車でいっぱい。村の内外から多くの家族連れが訪れていました。
多くの家族連れが遊びに来ていた公園内。それでも込み合うことなく、それぞれのペースでゆったりと過ごしていました。
自然の地形を生かした公園内は散策路で結ばれ、シンボルの時計塔や花壇、せせらぎなどが設けられています。春は桜の名所としても有名だとか。公園内はどこもきれいに整備されており、心身ともに解放されるよう。そこで過ごす誰もが朗らかな笑顔を浮かべていました。
駐車場の脇には地元の農産物の直売所も。野菜を買い込む参加者もいました。
【尼ヶ台総合公園】
住所:千葉県長生郡長生村本郷5366-1
アクセス:JR外房線茂原駅から小湊バスで尼ケ台総合公園入り口下車
電話:0475-32-0997
HP:https://www.vill.chosei.chiba.jp/0000000170.html
先輩移住者に聞く、長生村の暮らし
ツアーの最後に向かったのは、「長生村文化会館」。そこには2組の先輩移住者が待っていてくれました。
ひと組目は、養蜂業を営む橋澤小百合さん。娘さんの誕生をきっかけに2019年、よりよい住環境を求めて長生村で築4年の中古戸建て住宅を購入し、東京都小金井市から移住してきました。
「もともと自然が好きでした。長生村は東京駅まで特急で1時間。隣の白子町からも高速バスが出ていて、意外と交通の便がいいんです。隣の茂原まで車で15分も行けば、たいていの買い物はできます。けっこう便利に暮らせます」(橋澤さん)
橋澤さんが長生村で暮らすようになって出会ったのが養蜂という仕事でした。「この地域だからできる仕事を夫婦で始めたいと考えるようになりました」と橋澤さん。そして2021年に養蜂を本業として取り組むことを決意。現在は、合同会社 HANAPを設立し、「ハチミツとハーブの専門店 HANAP FACTORY SHOP」 をオープン。純粋ハチミツやフレーバーハニー、自家製のミツロウ製品の販売のほか、メディカルハーブを中心にハーブティーの販売などに取り組んでいます。
2組目は、井桁千明さん親子。出産を機会にご主人の実家に近い長生村に移住することに。
「私はそれまで田舎暮らしを経験したことがなかったのですが、夫に『経験したことないなら住んでみよう』と持ちかけられて、いつの間にか村人になっていました(笑)」。
現在は、自宅でエステサロン「 baby skin」を経営。通勤のストレスのない、のんびりした暮らしを満喫しているそうです。
橋澤さん親子(左)と井桁さん親子(右)。
お二人に、長生村に移住してよかったことについて尋ねると、
「夏は涼しく、冬もそこまで冷え込まないので過ごしやすいです。手の届く価格で庭付き一戸建てをもつことができたので、家の中でものびのびと過ごせます。家から海まで歩いて行けますし、夜は星がきれいなんですよ」と橋澤さん。井桁さんは、「野菜も魚介類も新鮮で安い。そしてとてもおいしい。娘も好き嫌いなくなんでも食べます。健康的に暮らせますね」と教えてくれました。都心では得難いゆとりある暮らしを楽しまれているようです。
参加者からは、地域の人とうまく付き合えるか? という人間関係を心配する質問がありましたが、
「長生村は移住者が多いので、地元の方も外から来る人に慣れているようですね。閉鎖的で困るということは感じませんでした。夏にはマルシェなどのイベントも多数開催されるんですよ。田舎ではあるけれど賑やかで刺激もあります」(橋澤さん)
「すれ違う子どもたちがみんな挨拶してくれるんです。本当に礼儀正しくてびっくりしました。大人と子どもがいい関係を築いている地域なんだなと感じます」(井桁さん)。
お二人のリアルな日常の談話に参加者も納得。具体的な暮らしのイメージをつかめたようです。
写真なども交えて、お二人の生活の様子が紹介されました。
長生村での一日もいよいよエンディングに。長生村文化会館の中にあるプラネタリウムでリラックス。実際に住むようになれば、澄み切った空にたくさんの星がまたたく様子を実際に見ることができるはずです。
一日の締めくくりはプラネタリウム。初めての経験をたくさんした参加者のみなさんもこのときばかりはリラックス。
【長生村文化会館 プラネタリウム】
住所:千葉県長生郡長生村岩沼2119
アクセス:JR外房線「八積駅」より徒歩約8分
電話:0475-32-5100
HP:http://www.chosei-bunkahall.jp/
東京都狛江市から参加したご主人は、「今すぐ移住ということは考えていませんが、もし長生村に移住したら、こんな暮らしや子育てができるんだな、というイメージがわき、移住先の一つの選択肢になりました」と話します。
この先、参加者たちの未来はどんな展開になるのか。自然が身近にある環境で、子どもにすくすく育ってほしいと移住を夢見る家族それぞれの思いを乗せて、バスは東京へ帰っていきました。
取材・文:渡辺圭彦 撮影:松井 進
ツアー当日の様子は、下記動画からご覧いただけます!
https://www.youtube.com/watch?v=mc3q5mHTaPQ