移住を考えるU・Iターン希望者にとって重要項目である“仕事”。どこで働くか、どうやって仕事と出会うか。山形の企業の魅力を都会の若者に向けて発信している田中麻衣子さんに地方の人手不足を解消するためのヒントをうかがった。

U・Iターン希望者と企業を結ぶサイト

山形県にU・Iターンしたい人たちがアクセスするサイトがある。山形ミライLab.だ(以下未来Lab.)
内容は、山形にU・Iターンした人たちの働き方をじっくり描く「山形仕事図鑑」のほか、イベントや交流会の情報、暮らしや街の情報など盛りだくさんだが、中でも注目すべきは求人情報だ。募集要項だけではなく、会社や経営者の思い、仕事の魅力をていねいに伝えている。

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未来Lab.を通して山形オートリサイクルセンターに就職した2人の男性と工場長。
このサイトを運営しているのは田中麻衣子さん。山形の人材会社キャリアクリエイト社員として未来Lab.を運営し、U・Iターン希望者の就職を支援している。「地方移住を考える人はよく、“行きたいけどやりたい仕事がない”と言いますが、山形を例に見ても、多様な職種の仕事はあります」
まず、実際に山形の有効求人倍率は1.30(2016年9月時点。パート・アルバイト含む)。
ではなぜ、「仕事がない」と言われるのでしょうか。

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「理由はたくさんあると思います。中でも未来Lab.が解決しようとしているのは、企業と求職者の間に生まれているすれちがいです」
かつては、地方でも声をかければすぐに人が集まり、採用に苦労することはなかった。そのため、地方の中小企業の多くは仕事の魅力を発信する重要性にまだ気づいていないという。

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そして求職者は、都市部と同様に、「営業」「人事」などの職種を基軸にして仕事を探してしまう。しかし、多くの中小企業にはその探し方が通用しない。なぜなら、一つの部署が複数の職種を兼ねていることが多いからだ。例えば人事職で探す場合、総務の中に人事があるから職種としては「総務」で探さないと人事にはたどり着けない。こうした経緯で「地方には仕事がない」という印象ができてしまうのだ。

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企業の素顔と環境、仕事のおもしろさを伝える

未来Lab.はその問題を解決するための、企業と移住者のハブである。求人情報ページでは、企業がどんな理念で、どんなスタンスで事業を展開しているかが読み物のように描かれていて、「自分がここで何をやれそうか」「どんな人と一緒に働けるのか」を読者に想像させる。実際、未来Lab.を見て仕事を決めた人も多いのだ。
「私たちの強みは潜在的な移住者をつかんでいること。イベントや体験・交流会では、いつか山形へ行きたい、機会があれば山形に住んでもいいかも…という人たちとつながりを作っています」
「この層に向けて、山形の企業の魅力や働きやすさを伝えることはとても重要です。これから人口も減っていくのだから、今の採用スタンスのままでは人はますます集めにくくなる。だから企業も変わっていきましょうと」
「なかには、育児や介護をしながら働く人もいるはずで、リモート勤務もOKというように、働きやすい環境の整備を目指している企業も体質を変えていかなければならない。企業にもそう話しています」

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もっと山形を盛り上げたい

田中さんは山形の出身で、一度は地元で就職したが、その後上京し大手求人サイトの専属代理店に営業として入社。地元から離れて暮らしてみて初めて「山形っていいな」という思いがわき、未来Lab.の前身となるGirl Lovers YAMAGATAという団体で、山形の魅力を伝えるイベントを開催していた。東京で結婚していたので山形にすぐ帰ることはできないが、故郷に貢献したいという思いが未来Lab.の設立につながったという。
いま、ともに事業をつくり上げる仲間を募集中だ。

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株式会社キャリアクリエイト/ヤマガタ未来lab.主宰/田中麻衣子さん
山形県山辺町生まれ。大学卒業後、地元ディーラーに就職、のちに東京の会社に転職。会社勤めのかたわら山形をPRするイベントを開催。2011年からは、山形の人材会社キャリアクリエイトの一事業として未来lab.を運営している。山形県政策審議会委員。
http://mirailab.info

 

文:有川美紀子 写真:ツチダユリコ イラスト:磯田裕子
全文は本誌(vol.21 2017年2月号)に掲載

                   

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