「泥流地帯」映画化決定に沸く、上富良野町のロケスポットを映画ソムリエ・東紗友美さんと巡る
【上富良野町地域おこし協力隊募集】

十勝岳連峰のふもとに広がる上富良野(かみふらの)町は、麦やビート、ジャガイモ、稲作など農業が中心のまち。なだらかな丘が続く風景や町花でもあるラベンダーが有名で、日の出公園や深山(みやま)峠は、2020年夏に公開された映画「糸」のロケ地としても使われています。
これまでも、テレビドラマ「北の国から」や、映画、ドラマ、CMやミュージックビデオなどさまざまなロケの舞台となってきた上富良野町ですが、作家・三浦綾子の小説『泥流地帯』『続 泥流地帯』を映画化する地元有志のプロジェクトが2018年に立ち上がり、現在、まちを主体とした映画づくりが進められています。

『泥流地帯』は、いまから百年ほど前の大正末期に、上富良野町で実際に起こった十勝岳噴火による大災害を元に描かれた人間ドラマ。三浦綾子は何度も上富良野に通って綿密な取材を行っており、史実に基づいて描かれた小説です。明治時代に始まった入植ののち、大災害を乗り越えて“2度”の開拓を果たした『泥流地帯』の舞台・上富良野町。今回は、テレビやラジオ、コラム執筆などで活躍する映画ソムリエの東紗友美(ひがし・さゆみ)さんと、TURNSプロデューサー・堀口正裕が、「泥流地帯」、「糸」などの町内ロケ地を巡り、町長の斉藤繁氏と地域おこし協力隊の井上馨さんを交えて、上富良野の魅力や「映画のまち」の可能性について語ってもらいました。

左から「ロケサポートかみふらの」井上馨さん、映画ソムリエの東紗友美さん、TURNSプロデューサー堀口

■想像を絶する十勝岳“大正泥流”の災害遺構をめぐる

ロケ地の案内人は、「ロケサポートかみふらの」事務局の井上馨(かおる)さん。2019年に東京での会社勤務から上富良野町地域おこし協力隊に就任。かみふらの十勝岳観光協会での業務を経て、現在は役場内にある事務局担当として、町民サポーターの募集やコーディネート、動画の撮影や配信、ロケに伴う申請作業や調整などの業務を行っています。

前回の記事はこちら

まずは、上富良野町開拓記念館と三浦綾子文学碑に向かいました。

開拓記念館は、泥流災害時に村長だった吉田貞次郎の自宅を移設・復元した建物で、上富良野の復興に奔走した吉田村長に関する展示・資料が保存されています。

敷地には「大正泥流の埋もれ木」が展示されていました。泥流で流されてきた木と聞いて、「こんなに大きな木も流されてきたんですか?」と東さんはびっくり。しかも、泥流を目撃した当時の人によれば、木の幹が“縦”に回転しながら次々に流されてきたのだとか。

文学碑の前にある二つの岩は、やはり泥流で流されてきたもの。「私の背よりも大きいんですよ、信じられますか?」と、東さんは驚きの連続。三浦綾子が題字を揮毫した文学碑には、泥流が田畑や家をのみこむ瞬間の、小説の一節が刻まれています。

バリバリを音を立てて、木々が次々に濁流の中に落ち込んでいく。樹皮も枝も剥がし取られた何百何千の木が、とんぼ返りを打って上から流されてくる。
と、瞬時に泥流は二丈三丈とせり上って山合を埋め尽くす。家が流れる。馬が流れる。鶏が流れる。人が浮き沈む。(『泥流地帯』)

「泥流に対するイメージを、私は間違えていましたね」と話す東さん。「多少の石が入ったぐらいの泥が流れてくるイメージでいたんですよ。でも、こんなに大きな岩や木々までが・・・実際に起こった災害の重大さに、初めて気付かされた感じです」

「作家の三浦綾子さんは、上富良野でとても粘り強く取材を行っていたそうです。ですから、小説には上富良野の様子が割とそのまま描かれているんですよ。『あの角をどう曲がって…』とか、地元の人が読めば、すぐに“あの場所のことだ”と分かる。モデルとなった実際の家があって、町民にとっては小説というよりも、自分たちの住むまちのことを読む感じなんですよね」。井上さんの説明にうなずく東さん。

「物語と実際の場所がリンクしているんですね。三浦綾子さんという作家の、取材力のすごさも感じます」

続いて向かったのは、十勝岳爆発遭難記念碑。

記念碑の土台になっている巨大な岩の重さは、車6台分もある約6トン。泥流が始まった十勝岳の火口から17kmも離れたこの場所まで流されてきたものでした。「こんなものが流れてきたら、人間はどうやって逃げたらいいですか?」と東さん。

「泥流の速さは平均時速60kmで、このあたりでも時速40kmはあったと思います。小説では、主人公の兄が家族を助けようと泥流に飛び込むシーンがありますが、体力に自信のある青年であっても、泥流に飛び込むのはどんなに無謀なことであったか、実際に流れてきた巨大な岩を見るとお分かりになると思います」と井上さん。

「そうですね、実際に見ることで、ストーリーの視点が変わってくる気がします。こういった木々や岩が本当に転がってきたものだということを、たくさんの人に見て、知ってもらいたい。そうすれば、『泥流地帯』という物語の深みが、よりいっそう増して感じられると思います」

絶望的な土地で“二度目の開拓”を果たした人たち

『泥流地帯』ゆかりの地の最後は、上富良野駅から徒歩で10分ほどの町立郷土館。大正時代の旧上富良野村役場をモデルにした建物で、まちの歴史にまつわる資料や展示品を見学できます。

百年近く前に起こった十勝岳噴火、そして泥流に関する写真やビデオ映像に見入る東さん。

腰近くまで泥に浸かりながら、なんとか自転車を抱えて運ぼうとする人の写真もあります。当時、自転車は高級品でした。

泥流が引いた後に横たわる大量の木々。苦労して開拓した田畑や家がすべて泥流で覆われてしまっています。被災後は土地を放棄するか、開拓するか、住民の意見は二つに分かれました。しかし、上富良野は復興の道を選びます。山を削った土をトロッコで運び、泥流の上にかぶせる作業を、ひたすら地道に繰り返していきました。

「いろんな感情で、胸がいっぱいになっています」と東さん。「自然災害の恐ろしさを実感したショック、そして絶望的ともいえる被災状況。でも、そこにひと筋の強烈な希望が感じられるんですよね。普通なら放棄してしまうような土地を、ここまで実り豊かな土地に復興させた人間のたくましさ、強さを感じます。

『泥流地帯』の映画をぜひ、たくさんの人にも観てもらいたいですね。そして、私と同じように、上富良野の史跡を回ってもらって、この事実に基づいたストーリーをより深く味わってほしいと、心から思います」

ドラマ「北の国から」で田中邦衛さんが愛した温泉へ

これまでも、さまざまな作品のロケ地となってきた上富良野町。そのなかでも有名なひとつが、1981年からフジテレビ系で放映されたテレビドラマ「北の国から」です。町内には、主人公の黒板五郎扮する田中邦衛さんと、宮沢りえさんの混浴シーンで有名になった「吹上温泉」がありますが、今回は井上さんのおすすめで、田中邦衛さんがプライベートで足繁く通ったという「フロンティア フラヌイ温泉」を訪ねてみました。

当時の話をしてくれたのは、フラヌイ温泉の栗山社長。

上富良野の中心部にあり、町内の人たちからも愛されているフラヌイ温泉。施設内には、田中邦衛さんが笑顔で写っている写真も飾られていました。「ロケで泊まっているホテルから、ドラマのままの格好で来るんですよ。普通のおじさんという感じでした」と、当時のエピソードを語る栗山さん。お風呂には2、3時間も入っていて、ほかのお客さんと気軽に話したりもしたそうです。

「そんなに長い間入れる温泉なんですか?」と驚く東さん。聞けば、31度と低めの温度の源泉をそのままかけ流しで使っているそう。「最初は入るとヒヤッとしてびっくりしますけれど、慣れると気持ちがいいですよ」。皮膚病や切り傷によく、美容やデトックス効果もあるとか。「今度はぜひ普通のお客さんとしてゆっくりと入ってみたいです」と、東さんもさっそくお気に入りスポットとしてチェックをしていました。

めぐり会いが描かれた恋愛映画「糸」の舞台へ

次のロケ地巡りは、菅田将暉×小松菜奈のW主演で2020年に公開された映画「糸」のポスターに使われた「深山峠ラベンダーオーナー園」へ。

まずは、主人公・漣(れん)と葵の二人が中学時代に出会った花火大会のシーンが撮影された、上富良野町の日の出公園へ。駅からも近く、地元の人から観光客まで人気のスポットです。

「とっても素敵ですね!」と、ラベンダーやキャットミントが咲くなかを散策したり、芝生でくつろいだり。「こんなに素敵なところだったら、運命の出会いがあってもおかしくないですよね」。
ちょうど、ウェディングフォトの撮影をしている幸せそうなカップルの姿も見えました。

上富良野町には、どこを切り取っても絵になる光景が広がります。「まちのあちこちにある魅力的なスポットを、360度カメラやドローンを使って撮影し、動画を作っています」と井上さん。「さまざまな角度から立体的に撮影した動画を“体感”してもらうことで、制作会社に上富良野のロケ地としての魅力をアピールしたいと考えています」と話してくれました。

■映画を通して、何気ない場所や人がまちの宝物になる

このコキア畑も、「糸」のロケ地になっているとか。漣(れん)の中学生時代に、友だちと自転車に乗っているシーンが撮影されたそうです。
「映画では普通の道に見えたけれど、ここだったんですね」と感慨深げに眺める東さん。「意外な場所で、“ここで撮っていたんだ”といった発見ができるのが、ロケ地めぐりの魅力なんですよね」
そう話す東さんに井上さんが案内してくれたのは、町営のグラウンド。映画でサッカー部の試合に出場している漣に、葵が手作りのお弁当を渡すシーンが撮影された場所です。

といえば、やっぱりお弁当ですよね!映画のシーンを真似て、お弁当をほおぼる東さん。
「グラウンドにいるのは“あの子たち”じゃないかな?」。井上さんは、グラウンドでサッカーの練習をしている男の子たちに近づいていきました。主人公の漣は、上富良野生まれで地元中学のサッカー部で活躍しているという設定。まさに、声を掛けたのは、エキストラとしてロケに参加したサッカー部の中学生たちでした。撮影時に中学1年生だった彼らは現在3年生。当時のエピソードや、ロケ撮影で譲り受けた応援団の旗を、いまも試合で使っていることなどを教えてくれました。

「撮影時に驚いたという話、映画館にみんなで行ったという話に思わずジーンときました。きっと彼らにとっても自分の宝物のような作品になっていくんじゃないかな」
グラウンドのような何気ない場所でも、映画によってストーリーが刻まれ、ファンや観光客が聖地巡礼をしたり、まちの人にとっても特別な場所になっていく。また、出会った中学生たちのように、映画に参加することで、彼ら自身がまちの“発信者”にもなっていく。これまで数多くのロケ地を訪ねてきた東さんは、まちがロケ地となることの魅力をそう語ってくれました。

「糸」のポスター背景に使われた深山峠ラベンダーオーナー園。向かいのお店で名物のラベンダーソフトもいただきました。

ドラマ「優しい時間」で二宮和也さんが車を走らせた「ジェットコースターの路(みち)」も満喫です!

ロケ地になった役場で手作りの記念撮影コーナーが人気に

「ロケサポートかみふらの」事務局がある、上富良野町役場に戻ってきました。じつは、ここでも「糸」のロケ撮影が行われています。

大人になった漣(菅田将暉)と葵(小松菜奈)が偶然再会するシーンを撮影。当時、企画商工観光課でロケ対応をしていた石川さんと岩田さんは、「美術スタッフが映画の年代に合わせるために用意した小道具などを執務室に配置したりして、雰囲気作りをしていました」。漣が印鑑を落とすシーンは、脚本にはなかったのですが、菅田将暉さんによる提案で実現したことなど、興味深いエピソードを聞かせてくれました。

ロケサポートかみふらの事務局の井上さんと東さん

映画「糸」の公開に合わせて、石川さんと岩田さんは役場ロビーに手作りの記念撮影コーナーを設置。

「糸」のイメージに合わせた花束もお二人の手作りです。役場のコーナーは笑顔で記念撮影をする人たちの姿が見られ、同時に作成・配布した「ロケマップ」を持って“聖地巡礼”していることを話してくれたファンの方もいたそうです。

上富良野町役場の職員の人たちは、オリジナルの「泥流地帯」ポロシャツを着ていました。「泥流地帯」の映画制作、公開に向けての気運の高まりが感じられます。

景色に癒やされる、心身がデトックスされるまち

東さんは上富良野町長の斉藤繁さんを訪問、「ロケサポートかみふらの」の井上さんを交えて、映画を通したまちづくりについて対談を行いました。
(聞き手:TURNSプロデューサー 堀口正裕)

堀口 東さんは、映画ソムリエとしてご活躍をされながら、多いときは年に100回ほども国内外のロケ地めぐりをしていらっしゃいますよね。上富良野町の印象はいかがでしたか。

 なんといっても景色が素晴らしいですね。ラベンダーがやさしく揺れている様子、緑の丘や山々、田園風景といった何気なく目に入る景色がとても穏やかで、癒やされます。空気もおいしくて、心身がデトックスされるように感じました。

斉藤 私も東京出張から帰ってくるときは、旭川空港の着陸前、ちょうど飛行機が上富良野の上空を通過する時に見えるパッチワークのような田園風景や十勝岳連峰に癒やされています。上富良野に住んでいると、その景色が当たり前で、なかなかその良さに気づかないのですが、東京から来られた地域おこし協力隊の井上さんは、上富良野の良さをしっかりと発信してくれていると思います。

上富良野町長 斉藤繁さん

堀口 井上さんは、上富良野の空気と景色に一目惚れして、ここに移住されたと聞いていますが。
井上 はい、2019年の地域おこし協力隊就任時に、家族で上富良野町に移住しました。敷地に森がある中古住宅を購入して、休日には森づくりや畑仕事に精を出しています。爽やかな空気と景色の素晴らしさは、本当に日々実感していますね。

「泥流地帯」はいまの私たちにも訴えかけるテーマ

TURNSプロデューサー 堀口正裕

堀口 三浦綾子さんによる『泥流地帯』、あの壮大なストーリーの映画化を私も期待していますが、上富良野町でこの映画をつくろうとされたきっかけを教えていただけますか。

町長 小説は40年以上読み継がれてきた名作ですが、ほとんどが上富良野で起こった史実に基づいています。明治30年の入植から歯を食いしばって田畑を開拓してきた先人たち、それが大正15年の十勝岳噴火による泥流ですべてが押し流されてしまう。にもかかわらず、復興を遂げた先人たちの偉業をぜひ映画にしたいという、町の有志が始めた『「泥流地帯」映画化を進める会』がきっかけとなりました。また、ジオパーク構想も進めている十勝岳は、上富良野町の財産としてまちのPRにもなる。その思いを私が引き継いで、町民の皆さんにご理解とご協力をいただきながら、制作と公開に向けて動いております。

堀口 映画ソムリエの東さんは、現地めぐりをしてみていかがでしたか。

 実際に、現地にいまも残る大木や巨岩を見た時に、こういうものが目の前に流れてきて、そこから立ち上がった人たちの物語なんだと思うと、ショックを受けているのか、感動しているのか、自分でも整理がつかないほどのさまざまな感情が押し寄せてきました。映画を観終わったときのような感慨が、木や岩を見ただけで湧き起こってきたんですね。ですから、災害はとても大変なことだったとは思いますが、映画になった「泥流地帯」をぜひ観たいと思っています。

町長 大正泥流は上富良野町で起こった歴史の一部ですので、ぜひ多くの人に知っていただきたいと思っています。木と岩と泥に埋まった土地を復興するか、放棄するかと住民の意見も真っ二つに分かれるなか、町長が復興を決断した。農地をもとに戻すべく、大量の泥流を除去し、その上に高さ1mの土を盛ったんです。それも、すべて人力によるんですよ。

堀口 この広大な土地に、人力で土を盛っていく・・・想像を絶しますね、

 災害というのは、決して古いテーマではないんですね。いつもどこかで現実に起こっていて、私もロケ地で回った場所が被害に遭ったニュースを見ると、他人事とは思えず毎回心を痛めています。つらくても立ち上がる人間の姿というのは、きっとこの先も人類が繰り返していくテーマだと思いますし映画「泥流地帯」は、きっと誰かの“お守り”になり続ける作品にもなり得るのではないでしょうか。

映画を通したまちづくりで得られるもの

堀口 「泥流地帯」にかける思いとして、多くの人に観てもらいたいという期待があると思いますが、完成後はどのような効果を考えていらっしゃいますか。

町長 映画の公開後もネット配信サービスなどで観られますので、長く愛される作品になってくれればという思いがあります。上富良野に住んでいる人たち、ゆかりのある人たちの郷土愛を深めてもらう狙いもありますし、防災教育の教材として使うこともできる。また、上富良野に縁のない人たちにも、映画を観てこのまちに来ていただければ、きっと好きになっていただけると思います。気候も良くて過ごしやすい、おいしいものもたくさんありますので、ぜひ上富良野に来てほしいですね。

 私は名物の豚サガリを焼き肉でいただいたんですが、『こんなにおいしいものがあるの?』という驚きでした。

町長 ありがとうございます。上富良野では、豚の生育から食肉加工までを町内で行っているので、きちんと処理をした新鮮な生のサガリが食べられるんですよ。

 癒やされるまちの景色に、ゆっくりと浸かっていられる温泉、それにおいしい焼き肉も食べられるなんて最高ですよね。もっと多くの人が上富良野を知ってくれればいいのにと思います。

メディア効果をロケツーリズムにつなげていく

堀口 現在は「泥流地帯」制作の準備を進めていらっしゃいますが、町長の考える「映画のまちづくり」構想について、教えていただければと思います。

町長 富良野エリアは、メディアの影響で知名度が飛躍的に上がったという側面があります。1981年から長期にわたって続いたテレビドラマ「北の国から」の知名度と観光ブームはいまも続いていますしね。古くでいえば、上富良野町はラベンダーの商用栽培を道内で最初に行ったまちなんですけれども、人工香料に押されて富良野エリア全体で栽培が衰退してしまった。しかし、中富良野町のファーム富田だけが残っていて、1970年代にJR(当時の国鉄)のポスターとして取り上げられたことから、富良野の旅行ブームが到来したという経緯があります。
上富良野町としては「泥流地帯」の映画化をはじめ、こうしたメディアの力を利用した「映画のまちづくり」、ロケ誘致やロケツーリズムを積極的に行うまちの体制づくりに取り組んでいます。
いまは新型コロナの影響がありますが、近年は東南アジアなどからインバウンドの方々がたいへん多く来ていました。アフターコロナを見据えて、そのような国内外の方にも上富良野や富良野エリアの良さを発信できればと思っています。

堀口 私も仕事で全国を回っていますが、その土地の人との出会いに惹かれることもたくさんあります。おいしい豚サガリを焼いてもらって「焼き加減が最高!」と言いながら、いろいろなお話を聞いたり。そういったコミュニケーションのなかで、この上富良野に惚れて、活動している人がたくさんいるんだろうな、と強く感じました。

町民の得意を生かすサポーター制度

堀口 上富良野町は、今年3月にロケの誘致やサポート、ロケツーリズムを進める「ロケサポートかみふらの」を設立されていますよね。町民サポーターも広く募集しているとか。

井上 はい、ボランティアですが、エキストラやロケ隊の炊き出し、建物や土地のレンタル、SNS発信や裁縫、力仕事など、多岐にわたって協力してくれる方を広く募集しています。

 ぜひ、多くの方に参加してもらいたいですね。映画に参加したということは、その人の心に長く残っていくし、醸成もされていくように思います。そして、いつか作品自体が“帰ってくる場所”、ふるさとのひとつになったりもする。映画づくりを通して、町民のみなさんが心をひとつにできれば、とても強いのではと思います。

風通しの良い職場、新しい地域おこし隊を募集

堀口 地域おこし協力隊として町役場に入った井上さんですが、来年で任期終了と聞きました。現在は「ロケサポートかみふらの」を引き継ぐ地域おこし協力隊を全国から募集しているそうですね。

町長 はい、井上さんには地元の私たちが分からないような上富良野の良さを気づかせてもらいました。日常で何気なく見ているところが、ロケ地や観光地としてはたいへん魅力的なスポットだと教えてもらえる。この視点はたいへんありがたいし、新しい協力隊員の方にも我々に教えてもらえればと思います。

そして、上富良野をぜひ好きになっていただきたい。任期終了後に町内で事業を始められる井上さんのように、上富良野への移住を考えている方は大歓迎ですね。「ロケサポートかみふらの」の事業は続けていきますので、定住してまちづくりを手伝っていただければと期待しています。

井上 募集しているのは、必ずしも映像関係の経験がある方というわけではなく、映画やエンタメが好きで、その魅力を発信してみたい方であればOKだと思います。おそらく、必須とされるのは業務を進める中でのバランス感覚ですね。動画を撮ってSNSにアップするスキルだけでなく、制作会社の方たちにおもてなしをするスキル、まちの方々と協調するスキル、環境省や自衛隊などの組織とも交渉できるスキル、町役場のなかでコミュニケーションできるスキルが問われてきます。それぞれ、関係する機関のスタンスが違うことが多いので、その間に入って、どうやってまとめていくか・・・それが大切なポイントになるんですよ。

堀口 職場の環境はいかがですか。日の出公園でも、職員の皆さんがライトアップの準備をされていて、チームワークというか、風通しの良い雰囲気を感じましたが。

左から企画商工観光課の浦島さん、元観光課で「糸」のロケ対応や記念撮影コーナー設置に活躍した石川さん、岩田さん

町長 「ロケサポートかみふらの」事務局がある企画商工観光課は、機動力が問われる部署ですし、私から見てもチームワークが良いなと思います。また『糸』の記念撮影コーナーなど、職員からアイデアを出してもらうことも多く、主体性が生かせるセクションだと思います。

井上 上富良野では、家の庭でよくバーベキューもするんです。とてもフレンドリーで、役場の職員でも仲間のように助け合う雰囲気がありますね。

 上富良野を案内していただいて、「ここはいいな」と思える場所がたくさんありました。そういったところに気づける方が地域おこし協力隊でまた来てくれたら、さらにいろいろな作品が生まれるきっかけになるかもしれませんね。この豊かなまちをつくり上げた先人たちの歴史が描かれた「泥流地帯」の映画化を、本当に楽しみにしています。

取材中には、映画をより深く味わえて、心に豊かさと広がりをもたらす「ロケ地めぐり」の魅力を語ってくれた映画ソムリエの東紗友美さん。
「『泥流地帯』は長編小説ですが、どこに焦点を当てた映画作品になるのか、制作は大変だと思いますが、完成が待ち遠しいです!」とエールを送ってくれました。

第1回レポートはこちら
「泥流地帯」映画化に向けて。北海道上富良野町がロケサポートで活躍する地域おこし協力隊を募集

 

文・高橋明子 写真・和田北斗

 


地域おこし協力隊募集にあたって

上富良野町は、北海道の中心部大雪山系十勝岳連峰の西側に位置し、雄大な十勝岳と丘陵田園の景観が美しく、明治30(1897)年の開拓以来、農業を中心に発展してきており、わが国で初めて、農作物としてのラベンダー耕作を昭和23(1948)年から始めている農業と商工観光のまちです。また、昭和30(1955)年には陸上自衛隊が移駐し、現在では自衛隊員とその家族が町民の約30%を占め、農業と商工観光に並んでまちづくりの3本柱として位置付けられ発展してきました。

昭和後期からラベンダー観光が注目され、多くの観光客で賑わい、平成13年には年間100万人を超える観光入込客数となり、近郊の市町村を合わせた富良野・美瑛エリアは国内においても有数の観光地として認識されるようになりました。

平成期では団体旅行の減少に伴う個人旅行へのシフト、観光地の競争激化、また、経済情勢に左右されやすい理由などから年々観光客が減少し、現在では60万人ほどで推移している状況にある一方で、訪日外国人観光客は著しく増加していましたが、新型コロナウイルス感染症の全国的な蔓延流行により訪日外国人観光客は皆無となるほか国内旅行旅行者も大きく減少し、宿泊業や観光関連産業にとっては受難な状況が今もなお継続しています。

上富良野町では第2次観光振興計画(平成31年度~令和5年度)を策定し、観光地としての環境整備を観光協会や観光関連事業者との情報共有のもとに方策を検討し、着実に進めている現状にありますが、今後の基盤整備を図る中で、新たな核となる観光ツーリズムの構築が重要な課題となっています。

現在、三浦綾子の「泥流地帯」の映画化を進めており、その機会を最大限に活用するために、ロケサポート組織「ロケサポートかみふらの」を設立してロケツーリズムを推進しておりますが、このロケツーリズムを一つの観光の核とするべく、本町の観光振興に取り組んでいただける新たな人材、地域おこし協力隊を募集します。

                   
都道府県+市町村 北海道空知郡上富良野町
募集状況募集中
勤務地(勤務地)北海道空知郡上富良野町大町2丁目2番11号 上富良野町役場内 企画商工観光課 (活動範囲)北海道空知郡上富良野町
雇用形態上富良野町会計年度任用職員として任用します。
給与(1)報酬月額(月額給与)
25歳未満 月額175,000円
25歳以上30歳未満 月額205,000円
30歳以上 月額220,000円
※所定労働時間を超過した勤務を行った場合は、時間外割増報酬を手当として支給します。
(2)期末手当
   上富良野町会計年度任用職員の給与及び費用弁償に関する条例に基づいて支給されます。
(3)通勤手当
   上富良野町会計年度任用職員の給与及び費用弁償に関する条例に基づいて支給されます。

※その他退職手当等は支給しません。
福利厚生待遇及び福利厚生
 
(1)社会保険・厚生年金・雇用保険・公務災害補償に加入
(2)住居は町が斡旋し、家賃の一部を助成します。(月額最大27,000円)ただし、光熱水費、生活用品等は本人負担となります。
(3)活動(勤務)に必要なパソコンは町が貸与
(4)活動(勤務)に要する車両は観光推進員が所有する車両とします。 ただし、車両経費として月額30,000円を助成します。
(5)自己研さんに要する研修経費は町が助成
(6)活動(勤務)に必要と町長が認めるその他経費は町が助成
(7)活動(勤務)に要する旅費等は町が負担
※助成に係る費用は、いずれも予算の範囲内です
仕事内容期間中は、次の共通活動と重点活動に従事していただきます。
 
【共通活動】
(1)地域活動及び地域の維持・活性化につながる活動
(2)地域行事の支援・共同作業・イベント作業などの活動
(3)活動後の起業・就業のための隊員個々の特性に合わせた地域協力活動や自主的な活動

【重点活動】
(1)「ロケサポートかみふらの」(ロケ支援組織)の運営・管理
①全国ロケツーリズム協議会活動を通じたロケ誘致、スキル研修
②ロケ依頼に対する相談、情報提供、受け入れの決定
③ロケ支援の調整
④ホームページ管理、SNS等を活用した地域情報発信
⑤町民サポーターの管理、活用
⑥その他「ロケサポートかみふらの」の管理運営に必要な業務

(2)小説「泥流地帯」映画化事業への中心的サポート
①全般的な映画制作支援の統括
②町民向けの機運醸成事業の企画立案、実施
③映画に使用された舞台、セットその他設備を活用したロケ地観光の企画立案、実施

(3)その他町長が必要と認める業務
勤務時間勤務時間 8時30分~17時00分(休憩時間1時間)
     原則として週37時間30分の勤務となります。
休日休暇(1)週休日 勤務日指定表に定められた休務日
(2)休日 祝日、1月2日~1月5日及び12月31日
(3)その他 原則週5日勤務とします。また、行事催事等で週休日、休日に勤務命令が発せられたときは
振替日の取得又は時間外勤務手当の対象となります。
応募資格(1)映像作品の制作に強く関心のある方及びインタネットツールを活用した情報発信に精通又は関心のある方
(2)心身ともに健康で、地方都市の活性化に意欲があり、地域の特性や風習を尊重して地域住民と積極的にコミュニケーションを図れる方
(3)地方公務員法(昭和25年法律第261号)第16条に規定する欠格条項に該当しない方
①成年被後見人又は被保佐人
②禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
③当該地方公共団体において懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から2年を経過しない者
④人事委員会又は公平委員会の委員の職にあって、第60条から第63条までに規定する罪を犯し刑に処せられた者
⑤日本国憲法施行の日〔昭和22年5月3日〕以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
(4)土日祝日や夜間など突発的な活動や催しに対し、勤務に対応できる方
(5)令和4年1月1日時点で年齢20歳以上の方(性別不問)
(6)普通自動車運転免許証を所持する方
(7)インターネット、ワード、エクセル、パワーポイント、SNS、Eメールの送受信などの一般的なパソコン操作ができる方
(8)現在、3大都市圏内外の都市地域及び指定都市に在住の方で、上富良野町へ住民票を異動し、活動終了後も定住する意思のある方
募集期間2021年11月30日(火)まで
選考プロセス第1次審査 書類審査  随時
※下記応募フォームからお申し込みください
※第1次審査を通過された方にはメール・または電話でお知らせします。

第2次審査 面接審査  面接審査の日時・場所は第1次審査の結果通知時にお知らせします。
採用問い合わせ先 上富良野町役場 企画商工観光課商工観光班
〒071-0596 北海道空知郡上富良野町大町2丁目2番11号

TEL 0167-45-6983 FAX 0167-45-5362

E-MAIL:shouko@town.kamifurano.lg.jp

HPアドレス:http://www.town.kamifurano.hokkaido.jp

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