TURNS

コテージむらを舞台に、岩手県のチームが新しい農家住宅を提案

「農家住宅」と聞くと、多くの人は“お年寄り”“田舎っぽい”といったイメージを抱くのではないだろうか。
農家住宅をもっとかっこよく、若者が憧れるようなものにできたら、農業後継者や移住者も増えるのでは。そうした考えのもと、新しい農家住宅を提案する試みが、岩手県の「雫石町南畑地区コテージむら」でスタートした。

どんな農的暮らしや住まいだったら、移住者が集まるか自由にアイデアを出し合う

雫石町は盛岡市の西隣に位置し、小岩井農場や御所湖、温泉などの豊かな自然に抱かれている。雫石駅から東京駅までは新幹線で2時間半とアクセスも良好。
コテージむらは、公益社団法人岩手県農業公社が宅地付き農地として分譲中の土地で、岩手山から秋田駒ヶ岳にかけた山並みを一望でき、家の窓からは四季折々の彩り豊かな風景を楽しめる。
西山さんが住むのはスウェーデンハウス。
西山甲士良さんは、仕事に疲れていたときにコテージむらを訪れ、紅葉の美しさに感動して約20年前に東京から移住。
自ら育てた採れたての野菜が食卓に並ぶ暮らしのなかで、演劇や唄など東京では縁のなかった文化的な活動にも挑戦。県外からの移住者が多く、古民家を移築したり、家畜を飼ったりと、みな思い思いの農的暮らしを満喫している。
「やっとうまく育った」と、畑のたまねぎを見て顔をほころばせる西山さん。畑は家の隣にあるので、窓から観察できる。
一方、コテージむらには若者の移住が進んでいないという課題もある。そこで、コテージむらをモデルに、新しい農家住宅を模索するべく、地元の若手農家や建築士、地域づくりに取り組む専門家などによる「これからの農家住宅提案検討委員会」が立ち上がった。3回にわたって検討委員会を開催し、新しいカタチの農家住宅を、多角的な視点から考察する。去る11月、第1回目の検討が行われた。
ファシリテーターを務めた「いわて地域づくり支援センター」の若菜千 穂さん
コテージむらを見学した後、ポータルサイト「別荘リゾート.net」を運営する唐品知浩さんに、全国の先進事例や、自身が行っている小屋の製作活動についてうかがい、新しい考え方を共有。そのうえで、どんな暮らしや住まいなら移住者が集まるか、絵を描きながら自由にイメージを膨らませていった。たとえば、元来百姓は複数の商いを兼業していたことから、ITやテレワークの仕事をしながら農業をする「現代版の百姓」という発想。また、いきなり移住して農業を始めるのはハードルが高いので、段階を踏むために、“シェア”を取り入れること。
(右)検討委員会のメンバーは 30~40 代の子育て世代。子どもがのびのび育つ環境をいかにつくるかも、新しい農業住宅を考えるうえで重要な焦点だ。(左)手を動かしてイメージを描くことで、よりアイデアを共有しやすくなった。
農機具のシェア。キッチンスペースのシェア。
シェアすることで徐々に仲間を増やしていく。
今後、コテージむらからどのような農家住宅が提案されるのか、注目していきたい。
文:吉田真緒 写真:佐々木光里


コテージむらとは…
コテージむらは、農的暮らしを楽しみたい人等のために造成した一団の土地。
総面積約63ヘクタールの土地には、インストラ クターの指導が受けられる体験農園や農産物加工施設などが整備され、温泉が配管された宅地付き農地として分譲中。住民は、県外からの移住者が多く、有機農業やパンづくりをして販売したり、広い土地を活かして羊を飼っている方もいる。 周辺には、乗馬、カヌー、スキー、ゴルフ、テニス、クレー射撃などの各種スポーツや鮎釣りができる環境、レクリエーション施設、個性豊かな温泉などがあり、趣味を楽しむフィールドも充実。 岩手山を望む絶景の中で、農的暮らしを楽しもう!


【現代版百姓】
副業の時代、農業を含めさまざまな働き方ができる場に。
【シェア】
農機具や宿泊小屋、食事などをシェアして移住者を迎える。
【コミュニティ】
大人も子供も集えて、外部の人とも交流できる場をつくる。
【集う】
自分が住むだけではなく、人が集まり交流する場をつくる。
【倉や小屋】
漬けもの小屋など、作物を加工する建物があると便利。