街の魅力を発信する 大きな蔵の古道具店

歴史が息づく、栃木市の中心部。
「蔵の街」にある古道具店から、茂呂さん夫婦は
街の魅力までも発信しようとしている。

古道具や民藝から現代のクラフトまで、ともに豊かな時間を重ねていくものを

錆びた金属や時を重ねた木や布の質感など、古いものを扱っているとその美しさに目を奪われ、
時間を忘れてしまうことがあると茂呂裕司さんは言う。
一方、手仕事の道具などの新しいものも、暮らしにうるおいを与えてくれる。
_MG_12801
「お気に入りの陶器に草花を飾ったり、竹のかごに野菜を入れたり、
人の手が作り出したものと自然が融合した瞬間に生まれる表情には、言葉では表せない美しさがあります。
そんな豊かな時間をともに重ねていけるものを届けていきたい。
古いものと新しいものを組み合わせる楽しさも、感じていただけたらと思っています」
街中を流れる巴波川(うずまがわ)の舟運によって商業の街として栄えてきた栃木市には、
いまでも重厚な見世蔵や土蔵が数多く残り「蔵の街」として知られている。
そんな栃木市の中心部にある明治期に建てられた見世蔵を生かし、
裕司さん・貴栄さん夫妻が「MOROcraft(モロクラフト)」をオープンしたのは2014年5月のことだ。

持病のある妻と人生を切り開いていこうと決意し、お店を開くことに

裕司さんは栃木市の隣町、佐野市の出身。実家は祖父の代から縫製業を営み、
ものづくりが身近な環境で育った。
小さな頃から絵を描くのが好きで、将来は絵を描いて生きていきたいと思っていた。
けれど、美大は学費が高いうえ、絵で生計を立てる道が想像できず、都内にある大学の経済学部へ。
中学の頃から、古着やブリキのおもちゃ、各国のコカ・コーラ缶などを集めはじめたという裕司さん。
大学時代には自分で購入した古着を、リサイクルショップで委託販売してもらうように。
「いま思えばこの経験が、店を開く原点だったのかもしれません」
_MG_1213
東京の人混みが苦手だったことから、卒業後は栃木県へUターン。
宇都宮の百貨店に18年間勤め、食品から食器、外商、クレーム対応までさまざまな仕事を経験した。
その間も古いものへの熱は冷めることなく、家具や器、雑貨、コーヒーなどに興味が広がっていった。
職場で出会った貴栄さんと結婚したのは2004年のこと。
「一人暮らしなのに、部屋に椅子が30脚以上あって驚きました(笑)」と貴栄さんはふり返る。
文:杉山 正博  写真:アラタケンジ
全文は本誌(vol.17 2016年6月号)に掲載

                   

人気記事

新着記事